ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
(って、謀は密するを良しとするって言うけど、俺にも伏せ過ぎだろあいつら)
状況の整理がつかず俺が立ち尽くす中、眼下の舞台が湧き出した溶岩に呑まれ始め。
「だっ、だめだっ!! もう逃げられない!!」
退路を溶岩に妨げられたダイが叫び。
「なんとか……あの上へ!!」
「み……みんなそんな体力残ってねえよ!!」
観客席を示すマァムにポップが頭を振って、ダイ達の足元が沈んだのはその直後だった。おそらくは、地震で脆くなっていたのだろう。支えを失った地面が周囲より低くなれば、当然周りの溶岩が流れ込んでくる訳で。
「うわあああっ!!」
迫りくる溶岩に悲鳴を上げるポップを視界に収め、この時俺は呪文の詠唱を始めていた。
「ヒュンケル!!」
目をつむり、身をこわばらせたダイ達が一向に襲ってこない溶岩を訝しみ、足場になっていた地面ごと自分たちを持ちあげたヒュンケルに気付いて声を上げ。
「ウッ……グッ……」
呻きつつも地面を支えるヒュンケルを見つめたまま、その時を待つ。
「ヒュンケル!」
「や、やめてヒュンケル!!」
「……こっ、こんなところで……おまえたちを殺すわけにはいかん……!」
騒ぐダイ達の下で力を込めるヒュンケルを見据え、やがて呪文は完成する。
『バイキルト』
「むッ?! これは……力が……」
ヒュンケルの口が微かに動いた。
「奇跡か」
そう言ったように見え。
「ぬううううううっ!!!」
そのまま口元を綻ばせると、ダイ達ののった地面を持った両手へ更に力を込める。
「あ……あ……! やめて! だめよ! ヒュンケル!!」
何をしようとしているかを察したらしいマァムが止めようとするが、ヒュンケルは止まらない。
「うおおおおおおお―――ッ!!!」
雄たけびと共に放り投げたそれは放物線を描いてダイ達ごと闘技場の外まで投げ飛ばす。
(人間じゃないよな、本当に)
他のアニメでバイキルトを筋力増加に使ってるのがあった気がしたから、ダメもとでかけて補助したとはいえ、人三人を乗っけた地面だか岩だかをかなりの距離投げ飛ばしたのだ。
「ヒュンケル!? ヒュンケル~ッ!!」
声に振り返ると、身を起こしたマァムが叫んでいるのが見え、応えるようにヒュンケルが片手を上げる。まるでさらばと言っているかのようであり。
(救援はまだ来ないか)
俺はハラハラしつつ空を見上げる。予定ではクロコダインがヒュンケルをすんでのところで救出することになってるのだが、原作でもそのシーンをダイ達は見て居ない。
(どうしよう……って、そうだ! あの手があった!)
空振りさせてしまうクロコダインには悪いが、流石に俺も何もせずには終われない。
(よっと)
こっそり溶岩に飛び込んだ俺はもはや溶岩に呑まれそうになっていたヒュンケルの元まで泳ぎつくと、その身体を抱え、呪文を唱える。
『レムオル』
そう、透明化呪文の対象は自分を含む仲間にもできるのだ。
(姿を消させてしまえば溶岩に呑まれたことにできるし)
幸いと言うのもアレだがさすがのヒュンケルも既に意識を失っており。
(このままヒュンケルを抱えて離脱すれば、この戦いで何もしなかったという汚名は返上できるッ!)
クロコダインがもう居ないヒュンケルを探すことになるかもしれないのでもちろん既に救出済みだということはクロコダインが現れ次第、伝えるつもりだが。
『さてと、ここまで運べば大丈夫』
俺はヒュンケルを背に載せて溶岩を泳ぎ切ると、観客席に空いた穴へ隠れて、再び呪文を唱える。
『モシャス』
唱えたのが変身呪文なのは他でもない、俺が回復呪文を使えないから、ただそれだけのことで。マァムの姿になった俺は、ヒュンケルへ手をかざし、呪文を唱えた。
「べホイミ……魔法力もそろそろカツカツだし応急手当で俺の魔法力はほぼすっからかん、かな」
ただ、この怪我人を背負って安全なところまで運ぶ必要がある。
「その後はたぶん一人は残ってるだろう別の俺と合流して、クロコダインと合流して――」
ヒュンケルの傷が治れば、フレイザードとの戦いの応援へとクロコダイン達は向かうことになるだろう。
(ハラハラさせられたけど、これで何とかなったか。流石にもう俺が驚くような事態はないだろうし)
もう一息だと自分に活を入れ、俺はダイ達がすでに立ち去ったのを確認してから、マァムの姿でヒュンケルを背負って階段を登るのだった。
次回、最終話「遅れて来たダイン」に続くメラ。
ようやく三巻編も終わりそうかな。