ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「はぁ」
一度目の戦いではかなわず、メラ公に庇われる形で逃がされたおれとダイは不死騎団長のヒュンケルに特訓で完成させた電撃呪文とダイの魔法と剣を組み合わせた魔法剣で勝った。
「そうだよ、勝ったてえのに……」
気分がはれることもなかったんだ。メラ公は決着がついても姿を見せず帰ってこねえし、ヒュンケルは最後に改心したみてえだったが、おれ達を最後に助けて溶岩の中に沈んじまった。そのせいか、マァムは地底魔城の方を眺めたままどうにも元気がねえ。
(おれだってメラ公のことが気になってたんだけどな)
ほっとけなくてつい声をかけただけじゃなく、あいつのことが好きだったのかなんて余計な質問したあげく、大丈夫だとか死にゃしねえよなんてあいつのフォローまでしちまって。
(自分で自分に「何やってんだろ、おれ」って思ったすぐ後にあれ……だもんな)
肩当てが直ったらしくダイが喜ぶ声がして、そっちを振り返ったら、ダイの向こうにメラ公が居て。
「めっ、メラ公!!」
お前、無事だったのかと口にしようとしたところで、被せるようにメラ公は何か言った。
(相変わらず何言ってるのかわかんねえ)
ダイと言い、ヒュンケルと言い、何でこれを理解できるのか不思議で仕方ない、そう思ったおれだったが。
「赤ん坊?」
「は? 赤ん坊ってどういうこった?」
ダイの口から出てきたのは、想像もしない単語。思わず聞き返して、ダイに訳してもらったメラ公の話はなんでそうなったと叫びたくなるような内容だった。あのヒュンケルが部下の拾ってきた赤ん坊の世話を部下と一緒にしていて、それをマァムにも手伝わせていたとか。
(いや、たしかにあいつの生い立ちは聞かされたし……自分と同じ境遇の奴を放り出すとかできなかったんだろうけどよぉ。マァムと同じ赤ん坊の世話とか、まるで夫婦……って、何考えてんだ、おれは!)
良からぬ想像に慌てて頭を振ってから我に返り、はっとして周囲を見回す。幸いにもおれの奇行が気づかれた様子はなく。ほっとしたのもつかの間。
「えっ」
ダイが弾かれたようにメラ公の方を見たかと思えば、叫んだんだ。
「抜けるってどういうことだよ、メラゴースト君?!」
「はぁ?! 抜けるぅ?!」
まさに青天の霹靂だった。アバン先生に弟子入りしてから、一時は別行動もあったがそれでも一緒だったメラ公がおれ達の元を離れるって言い出したんだ、実力不足を感じて修行の旅に出たいなんて理由で。
「実力不足って何だよ?! クロコダインを倒したのだって、ダイがやられそうだった時に庇ってヒュンケルの野郎の一撃を代わりに受けたのだって……メラ公、お前だったじゃねえか!」
冗談じゃねえ。メラ公が実力不足なら、おれは何だ。クロコダインとの戦いの時だって最初は逃げだしたし、ヒュンケルの野郎と戦った時だって雨雲を呼ぶくらいのことはしたが、倒したのはダイだ。
納得がいかないおれを前にメラ公は、あいつは言ったらしい。強くなれそうなあてがあると。
「強くなれそうなあて?」
おれ自身がメラ公が何と言ったかの一端を掴めたのはダイの声を聞いたからだが、あいつはどこか得意そうに胸をそらしていて。
「あてって何? どこで何をするつもりなんだよ?」
その疑問はもっともだったから、おれもダイの言葉に頷いてメラ公を見れば、メラ公の話はこうだ。
「師匠はもう居ないけど、師匠にはハドラーを倒す為に共に旅をした仲間が居るって聞いている。それに師匠の故郷を尋ねたら、それはそれで師匠の強さを知るヒントとか見つかるかもしれないし」
なるほど、一理あるかもしれないとは思った。
「先生の仲間ってことは、母さんとか?」
もっとも、マァムからすれば先生の仲間って言や両親だ。別の反応をしてたが、メラ公はこれに頷き。ダイの通訳を介してだけど、ロモスには寄るつもりだってことを聞いて。
「母さんのところに寄るっていうことは、Aは僧侶になるつもりなの?」
「なぬ?!」
口を開いたマァムの言葉におれは思わずメラ公を二度見た。確かにこのパーティーはメラ公とおれ、魔法使いは二人いる。
「け、けどよ。使える呪文の格はメラ公の方が上だろ? 魔法使いをやめて僧侶になるってのは――」
「え? あ、ポップ。『違う』って」
「へ?」
どうなんだと続ける前にメラ公が何か言って、それを訳したダイの言葉でおれはきょとんとした。
「メラゴースト君が言うには、アバン先生の話とかが聞きたかったんだって」
「なんだよ、焦らせるなよ……」
てっきり魔法使いをやめるかと思ったら、それはとんだ誤解だったらしい。
「それから、これはメラゴースト君からのお願いなんだけど……『人間の町や村なんかを通る時、おれ達の姿を貸してほしい』って」
「姿? あー、そう言うことか。確かにメラゴーストの姿じゃ町中には居られねえわな」
ダイを介したお願いとやらは少々気になるモノだったが、理由としてはもっともで。
「けどよ、おれの格好で変な事とかしねえだろうな?」
「ポップ」
疑わし気にメラ公を見れば、マァムから名を呼ばれ。
「貴方がそれを言うの?」
「へ? って、どういうことだよ?!」
ジト目で見られて叫び返すが、不意に出会ったときのことを思い出してあっと小さく声が漏れる。そういえば、おれってであった時こいつの胸を指でつついたような気が。
「どうやら自覚があったようね」
「自覚ってなんだ?! おれは知らねえ!!」
頭を振ってみるが、どうにも分が悪い。
「そ、それで、ロモスに寄ってその後は」
話題を変えて二つ三つと訊ねれば、ダイの通訳越しにメラ公は答え。
「本気なんだな?」
おれは先生にこいつのことをメラ公のことを頼まれている。だからこそ行かせたくなんざなかった。
「けどよ、修行ってことはおれ達と一緒に魔王軍と戦うよりゃ遥かに安全なんじゃねえか」
そんな考えが浮かんだのも事実で、おれは結局頷くあいつを止められなかった。止めることができなかったんだ。
一部プロローグと被りますが、ポップ視点でした。
次回、一話「そして二人の元へ」に続くメラ。