ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
『ビックリした』
胸のドキドキが収まらない。
(これが、恋……って、こんなボケは要らないわ!)
思わず現実逃避にふざけないといけない程度に衝撃的な目覚めだった。
(はぁ、俺って寝相そんなに悪かったっけ)
幸いだったのはヒュンケルの方がまだ目を覚ましていなかったことだ。モシャスも解けて元のメラゴーストに戻っている俺だが、不死騎団の長として分裂した俺と行動を共にしてたヒュンケルからすればただの部下の寝顔の様なモノ。逆の立場だったとしても動じたりはしない事だろう。
「起きたか」
『あ、うん』
思わず声も出ていたので、クロコダインが俺が起きたことに気付いて声をかけてきても動じることなく答えて身を起こし。
『あれからヒュンケルは目を覚ました?』
「いや。だが、お前のべホイミが効いたのだろうな。苦しんだり魘されては居なかったぞ」
『そう』
良かったと続けて起き上がり、俺は大きく伸びをする。
(んっ、人間だった時ならこういう時身体がバキバキ鳴ったりしたもんだけどな)
人間でなくなってしまったことを実感するのはこういう時だろうか。
(それはそれとして、とりあえずヒュンケルが起きるまでどうしよう……クロコダインと話しててもいいけど、声で起こすことになっちゃうと申し訳ないような気もするし)
けが人の睡眠を妨げるのははばかられて、俺は意識を内に傾ける。
(確かヒュンケルに一度勝ってることは黙っていてくれってのは、クロコダインに伝えてあったはず。念のためにヒュンケルが起きてからもう一度言ってもいいんだけど、絶対理由を聞かれるよな)
今のところ打倒ヒュンケルの特訓をしてるダイ達を見て言うに言えなくなったという言い訳くらいしか思いついていないので、これはできれば避けたいのだが。
(下手なことを言ってまた『やらかす』くらいなら、一度伝えてるしこのまま別れた方がいいかな)
沈黙は金とも言う。
「ウ……ウ……」
隣から呻き声が聞こえたのは、そうして俺が黙っていようと決めた直後だった。
『あ』
「……ど、どこだここは……!!?」
「気がついたか、ヒュンケル」
俺が声をあげたことよりも身を起こしたヒュンケルの独言を聞いてだろう、意識を取り戻したのを察したクロコダインが声をかけ。
「ク……クロコダイン!!?」
ヒュンケルはピンクのワニさんの方を見て、俺は綺麗にスルーされた。というより、気づかれなかったのだ。クロコダインと違ってタイミングを失って声をかけなかったし。
「ならば、これはおまえが?」
「いや、それはおまえの隣のヤツがやったことだ」
「……隣? なッ」
溶岩に呑み込まれたにしては明らかに軽症な自分の様子を見ての問いだったが、首を横に振ったクロコダインが示す先を見てようやくヒュンケルは俺の存在に気づいたらしい。
『……やあ』
流石に何も言わないわけにもいかず、軽い挨拶になってしまったが俺は片腕をあげてみせ。
「何故オレを助けた」
『理由はいくつかあるけど……マァムが気にしてたとか、同門の兄弟子だからとか色々。けどしいて言うなら……』
師匠も気にしてたような気がしたから、と俺は続け。
「……な、に?」
『ほら、俺って見ての通りのメラゴーストだからさ。いくら師匠が善人だからって弟子入りを受け入れて貰えたのは申し込んだ俺が言うのもちょっとアレだけど、驚いた部分もあったんだ。だけど、ヒュンケルの話を聞いて、ヒュンケルとそのお父さんのこと気にしてたってのも弟子入りを認めてくれた理由の一つなんじゃないかなって思って』
直接聞いたわけではないんだけどねと付け加えつつも俺は空を仰いだ。
「アバン、……師が」
『勿論それだけじゃなくて、俺がそうしたのは、ダイ達の力になって欲しいって下心もあってだし。俺、ダイ達の側を離れて修行の旅に出ることにしたからさ』
「なんだと?! うぐっ」
ただ他にも理由があったこと、話しておかないといけないことがあったが故に俺が明かせば、ヒュンケルは驚いた様子で身を乗り出し、身体が痛んだのか顔をしかめた。
「そいつがダイ達の元を離れるというのは、オレも先ほど聞いたところだ。説明も受けた」
『あー、うん。クロコダインは納得してくれたから、それで呑み込んでもらえると助かるかな?』
流石にヒュンケルを前にしてお宅の部下が色々やったのでメラゴーストの姿でダイについてくのは拙い気がしたなんて説明はできない。
『それはそれとして……何で助けたってのはさっき聞いたけど、ひょっとして「あのまま死なせてくれればよかったのに」とかとも思ってない?』
「ッ?!」
強引な話題変更ではあったが、図星だったのかヒュンケルは俺を視界に居れたまま目を見張る。
(まぁ、原作知識を利用したカンニングなんだけど)
とりあえず、思うところがあったので言葉を続ける。
『俺だから言えることなんだけど、その死が終わりとは限らないからね? 未練が残ったら不死族として蘇ることもあるかもしれないし』
そして、溶岩に呑まれての焼死ならば肉体は残らないだろうから俺のようなメラゴーストになったりする可能性もある。
『この身体、溶岩は平気だけど可燃物とか持てないし、人に触るのも火傷させちゃいそうだし、割と不便だから人にはお勧めできないんだよね。俺は師匠のおかげでモシャスの呪文を使って一時的に克服できるようにもなったからさ』
「おまえ……」
『メラゴーストの後輩はいらないから。分裂した俺で間に合ってるし』
冗談めかしてそう言うと俺はクロコダインの方を向き。
『クロコダイン、ヒュンケルは起きたみたいだから俺はちょっと赤ん坊の方の様子を見てくる。後は任せてもいい?』
「……ああ」
『よろしく、ルーラッ』
そう本物ダインが頷くのを見てから俺はルーラの呪文を唱える。
(説得とか柄じゃあないし、向いてないもんな。ここは本物に任せてへっぽこメラゴーストは退散することにしないと)
それにここに居座ったら、アレが来てしまうのだ。
(原作だと、ヒュンケルが起きて少し経ったタイミングで、砕け溶岩に呑まれた筈のヒュンケルの鎧が剣と合体した状態で主人の元へ戻って来たからなぁ)
目撃を避けたかった俺が向かったのは、ロモス。ヒュンケルの武器がなくなったという名分をもってダイが一度受け取るのを拒否したオリハルコン製の剣、覇者の剣を借り受ける為だった。
次回、四話「俺はちゃんと返す」に続くメラ。