ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
『ありがとうございました』
分裂した俺を連れてきてくれたブラスに礼を言い、後はこちらの話ですし赤ん坊の方を見ていてあげてくださいと帰るよう促せばブラスは俺へあいさつをしてすぐに帰って行った。
『しかし、なんだろうなこの安心感。やっぱり既に一人育てた実績は違うというか……うん』
『しみじみしてるのはいいけど……A、俺を呼んだ理由は?』
『ん? あれ? 聞いてない?』
その背を見送った俺はブラスに連れてこられた俺に声をかけられ我に返って聞き返したが、口にした答えはそれだけとは思えないというもの。
『Aのことだからきっとろくでもないこと思いついたんだろうなって』
『ちょ』
別の俺からの俺の評価が酷い。
『いやまぁ、色々やらかしてはいるんだけどさ……それにしても、こう、なんと言うか』
『ならさっさと話す。違うなら言えるだろ、何するつもりなのか』
『うぐぐ』
謎の敗北感を感じつつ俺が明かしたのは、師匠の仲間に弟子入りして後で合体することで複数の職業の強みを統合したパーフェクトな俺、いわば完全体になる計画だった。
『おかしいな……Aの発想にしてはまともに聞こえる』
『おィ?!』
『とは言えガバガバな上に弟子入り断られる可能性もあるわけだからこんなものか』
『ぬぐぐ……』
あまりな言いぶりに声をあげてもまだ続く辛辣な評価へ俺は屈辱に震えたが、ここで協力を拒まれるのは避けたい。
『漸く平穏に過ごせると思ってたんだが、まあ俺だけ良い目を見るのもあれか。けど、今回だけだから』
ぐっと不満を堪えていた甲斐があってか、その俺は同行を承諾してくれて。
『というか、今更かもしれないけどお前の名前というか識別名は?』
『A5。紙の大きさみたいとか言ったら殴るから』
本当に今更ながらの問いへこちらの感想へ先回りした上でA5は答えた。
『しかし、5か。俺も気づかない内に相当増えてたんだな』
不死騎団に拾われた俺ことBナンバーがかなりの数だったし、その一部と合流した氷炎魔団に加わっているって話のCナンバーのことを鑑みるに、三十名以上の俺がいるのは確定している。
『ひょっとして三桁を超えてたりはするんだろうか?』
『否定はできないかもな。不死騎団と氷炎魔団のスカウト漏れしてる野生の俺が残っていたとしたらギルドメイン大陸だっけ? あっちに残ってるのが増えてても驚きはしないし』
『うわぁ』
A5の意見に俺の目は遠くなり。
『それはそれとして、クロコダイン達を待たせてるんだろ? 出発すべきでは?』
『あ』
指摘を受けて我に返った俺はA5にモシャスでの変身を頼む。
『いいけど、誰になればいい?』
『ダイかな。クロコダインはロモスの騎士が居るこの島だと気まずいし、ヒュンケルも一時ここで囚われてたわけだから』
武器二つを持てて、あの二人を驚かせない相手となると他に思いつかず。
『了解、モシャスッ!』
ポンッと煙が生まれて、晴れた中から出てきたのはまさにダイそのものの姿のA5で。
「じゃ、行こうか。……この手伝いが終わったら俺、またここでのんびり暮らすんだ」
『いや、何故そこでフラグ立てるし?!』
武器を担ぐA5の言葉に俺は思わずツッコんで。
「いや、こういうのって逆にフラグ立てておくと生き残れるって聞い――」
『この時俺は何故A5を止めておかなかったのかと後に後悔することになる……』
「ちょ、そっちこそ縁起でもないナレーションすんな! って、熱っ?!」
『ふはははは、人の子の身体でメラゴーストに掴みかかって来るとは実に愚か』
そんな風に冗談をいいあって騒いでいたからだろうか。
「ウホ?!」
「あ、ごめんなさい」
『すみません』
何事かと姿を見せたこの島の猿系モンスターに俺達はそろって頭を下げる羽目となり。
「余計な時間を食った。今度こそ出発を」
『うん。ルーラッ』
流石にここで言い争って同じことを繰り返すつもりはなく、瞬間移動呪文を唱えた俺はA5と共にクロコダイン達の元に飛び。
『ただい……ま?』
「むッ、戻って来たか」
帰還を告げる途中で、立っていた二人の内ヒュンケルを二度見したところでクロコダインが声をかけた。
『えーと、ヒュンケルが怪我がどうのって以前に完全武装してるんだけど……ヒュンケルの鎧って砕けて溶岩に呑み込まれたんじゃ?』
「うむ、それなのだがな」
原作知識で復活して主の元にやってくることは知っていたが、敢えて驚いたように問えば、クロコダインは語ってくれた。ヒュンケルを説得し、ヒュンケルがダイ達と共に戦う意志を見せたところで呼ぶような音が聞こえ、音の元に向かうとヒュンケルの失った剣の魔鎧が完全復元した形でそこにあったのだと。
『あれ? それじゃ、俺って無駄足だった?』
「うん? 無駄足と……それはッ?!」
『あ、うん。クロコダインがロモスのお城に残していった斧。それから、こっちはロモスのお城から借りてきたオリハルコン製の剣ね。ヒュンケルの武器がないと困るんじゃないかって寄り道して持ってきたんだけど』
遅れて運んできた武器に気が付いて目を見張るクロコダインに俺は説明するのだった。
次回、六話「出立」に続くメラ。