ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「すまん、わざわざオレの為に……。だが、わざわざオレのところに戻ってきてくれたこの鎧の魔剣の気持ちを裏切る訳にはいかん」
俺の説明が終わると、ヒュンケルは持ってきた剣と斧を使うことを謝辞し。
『それじゃ、クロコダインは? この斧は元々クロコダインのものだし、二刀流ならぬ二斧流だってその腕力なら可能だと思うけど』
「むう……」
ヒュンケルとは違い、こちらは元々本物ダインの愛斧なのだ。
(思い入れもあるかもしれないし、それよりなによりクロコダインが受け取り拒否した場合、運用できる人物がいないんだよな)
メラゴーストの俺では持つのも厳しいし、モテたところで体格的にも両手斧扱いにしないとバランスが取れないと思う。
『俺はモシャスして剣の方を使うつもりだからさ』
「そうか。そこまで勧められて断るのも失礼か。わかった、真空の斧はオレが使わせてもらうとしよう」
『よかった』
持ってきた努力がふいにならず、かつ斧の使い手が見つからず浮いてしまう事態を避けられた安堵に俺は胸をなで下ろし。
『これで俺も思い残すことなく旅立てる……って言いたいところだけど、出立の前に一つダイ達のこと以外でお願いしてもいい?』
「願い? なんだ」
『うん、二人の技を見てみたいんだ。モシャスして技を借りることがあるかもしれないから、その時の精度向上の為に』
俺はそう補足して技の披露を願い。
「なるほど、そう言うことであれば」
「協力しよう。おまえには借りもあるしな」
『借り?』
頷く二人の内ヒュンケルの方の言葉に何かしたっけと首を傾げれば、これだとヒュンケルが取り出したのはどこかで見た巻貝。
「この父の遺言状……地底魔城にこの鎧の魔剣と共に失ったとばかり思っていたが、気が付いたら近くの物陰に置いてあってな」
『そう……けど、ゴメン。こういう時に言うのはあれだけど……それを回収したの、俺じゃなくてヒュンケルの部下だった方のメラゴーストだと思う』
「何ッ?! しかしあいつらはフレイザードについていった筈」
流石に別の俺の命がけの努力の結果を奪う訳にもいかず、俺が明かせばヒュンケルは驚きの表情でこちらを振り返り。
『それ、分裂した個体だったんじゃない? あのフレイザードって奴、何するかわからないタイプに思えたし』
実際、地底魔城はフレイザードのせいで溶岩の底に沈んだのだ。
『俺達メラゴーストには溶岩も効果ないし、分裂した自分についていかせて目を誤魔化していざとなったらヒュンケルを助けようとしてたんなら辻褄は合わない? 実際はその前に俺が助けちゃったから真相は闇の中だけどさ』
「あいつら……アバンのことといい、オレの目はどこまでも節穴だったようだ」
ふいにヒュンケルがこちらに背を向けてぼそりとこぼし。俺は空気を読んでヒュンケルに背を向ける。
(誤解も解けてめでたしめでたし、でいいのかな。後で余計なことしやがってって殴られそうな気もするけど)
遠くを見てるとピンクのワニさんが頷きつつ尊敬の目を向けてきてた気がしたけど、きっと気のせいだろう。斧を取り戻してくれた感謝の視線だったに違いない。
「さて、ではまずオレから技を放とう。準備はいいか?」
『あ、うん』
クロコダインも空気を読んだようで、ヒュンケルを残したまま俺へ尋ねて来たので頷きを返し。
「俺もいいよ」
「あ」
『あ』
想定外の方向から聞こえてきた声に俺と本物ダインの声がきれいに重なった。
「『あ』って……そりゃないよ。話の邪魔になんないように自主的に少し離れてたけど、今のって完全に俺の存在忘れてたよね?」
「すまん。しかし、こうしてダイの姿をとられていると本当にあいつがここに居るようだな」
『こう、似せようって意識からか時々無意識にそれっぽくしゃべろうと思っちゃう時とかあるからなぁ……さっきの「そりゃないよ」とか本物っぽかったし』
モシャスがとけていなかったからだろう、ダイの姿でほっぺたを膨らますA5に俺達は謝り。
「さてと、それじゃ、見せて貰おうかな」
「うむ」
A5が促すとクロコダインは徐に鎧の肩アーマーを外しだした。
『あっ』
「あー」
その様子に俺達が声を上げたのは、クロコダインの技について覚えていたからだ。
(そう言えば、クロコダインの技って腕が肥大化して肩アーマーが吹っ飛んだんだっけ)
実戦ならいざ知らず、壊れるとわかっているなら脱ぐのは当然のことであり。
「ではゆくぞ、むうううううん!!」
肩アーマーを外したクロコダインが力めば腕の筋肉が隆起して腕自体も肥大化。
「ぐぬわあああああッ!!」
鱗があるはずの肌に血管が浮かびあがり。
「うがあああっ!!」
右腕に闘気を集中させた獣王が咆哮を上げる。
「括目してみよッ! 獣王痛恨撃っ!!!」
「わっ」
『うわっ』
前方に突き出した腕より放たれ、地面を抉りながら進むソレに俺達は思わず声を上げるが。
「では、次はオレだな」
「え」
『え』
クロコダインの技に気をとられていたが故にいつの間にか近くに来ていたヒュンケルに俺達は気づけなかった。
「ゆくぞ、ブラッディ―スクライドッ!!」
鎧から剣を外してヒュンケルの放った一撃が、獣王痛恨撃同様に余波で地面を抉り、削り。
「ありがとうございました」
『ありがとうございました』
俺達は二人に頭を下げた。
「なに、大したことはしていない」
「ああ」
謙遜するクロコダインと頷くヒュンケルに俺達はそんなことはないと首を横に振ってからそろそろ出立すると告げ。続けてダイ達が窮地に陥るようなことがあれば力を貸してほしいとも言い添える。
「できるだけ早く修行を終えて合流するからさ」
『ダイ達のことは頼みます』
「わかった」
「任せておくといい」
承諾する二人にもう一度頭を下げてから、俺は呪文を唱える。
『ルーラ!』
目指すはネイルの村。そこで一人分裂してマァムの母に弟子入りを請うのだ。
次回、七話「そう言えばあの村で覚えてるところって村のど真ん中なんじゃ」に続くメラ。
タイトルの時点でやらかしがわかるとか斬新だなぁ。(白目)