ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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八話「後は任せた」

『ふぅ』

 

 ゲームで言うところのHPと言うモノが数値化出来るなら、今幾つくらい減っただろうか。俺はそんなことを考えて居た。

 

『流石と言うか、何と言うか。スクルトを重ねがけするとそれなりの力で殴ってるのに当たってもほぼノーダメージだな』

『油断するなよ? 当たり所悪くて「かいしんのいちげき」になると防御力無視の一撃になるんだからな、おっと』

『それはわかって、っ』

 

 実力込みの師匠に変身できるか、技の再現はなるかなど気になるところもそれなりにあったからこそ俺達は、まず殴り合い中に生じる分裂で数を増やすことに決め、補助呪文で防御力を高めた上で殴り合っていたのだ。勿論村人に見られない程度に村から離れた場所で。

 

『しかし、こう、あと一人が意外と遠いんだよな……増えた俺にも加わってもら、うぐっ』

『それやって増えすぎたらどうすん、って大丈夫か? おい、そこの俺達、悪いけどどっちかマァムかレイラさんにモシャスして回復呪文を』

 

 油断していたわけではない筈だが、いいパンチを俺が貰ってしまうと慌てて殴り合ってたA5が分裂で増えたばかりの俺に言い。

 

『じゃ、俺が。モシャス』

 

 変身呪文でマァムに姿を変えた新しい俺の片方が俺にそのまま回復呪文をかける。

 

「これでどう?」

『ありがとう、助かった。さて、あと一人か……』

 

 偽マァムに礼を言って俺は再びA5に向き直り。

 

「ねぇ、A。その残り一人だけど俺とこいつで増やしておこうか? 二人はカールに向かうつもりなんだし、これ以上消耗するのは良くないんじゃない?」

『っ、そう言われると』

「それに遅くなりすぎて暗くなったら、鳥のモンスターの姿で空が飛べるかどうかもあるし」

『うっ』

 

 呼び止められての提案と指摘に俺は言葉を失った。何一つ間違ったことは言っていないのだ。

 

「先に師匠の技を再現したりできるかを確認しよ? マホカトールで試せば、あの村も安全になるし、俺達もメラゴーストの姿でうろつける範囲が広がるからさ」

『そう……するか』

 

 結果的に俺は折れ。

 

『じゃ、師匠への変身担当は俺か』

 

 口を開いたのは偽マァムにならなかった方の新しい俺だ。

 

『モシャス』

 

 呪文を唱えて生じた煙の中に現れたシルエットはまぎれもなく師匠のそれで。

 

「ふむ……おおっ、これはグットですね」

 

 手を握ったり開いたりしてからこちらを見て、その偽アバンはメラゴースト君と俺を呼んだ。

 

『いや、そういうなりきり良いから。それより、その様子からすると』

「ええ。師匠のスペック、レベルだけなら現在のお、こほん。私たちより下だったようで、マホカトールの方は問題なく使えそうです。ので、問題はアバン刀殺法ですね。さて、危ないので少し離れて居てください」

『あ、うん』

 

 必要ないといっても師匠の振りは手放さず告げた新しい俺の言葉に従って俺が下がると、偽アバンは足元に落ちて居た木の枝を拾い。

 

「ではいきますよ。ブラッディ―スクライドッ!」

『ちょ』

 

 しょっぱなから全く違う技をぶっ放した。

 

「いきなり何やってんだ!」

『いらないんだよ、そういうボケ!』

『いや、原作じゃ絶対見れないって意味では貴重だけれども!』

 

 自分を殺すために編み出された技を使う師匠の図を見た残る俺達は、偽アバンに総ツッコミし。

 

「いやぁ、手厳しいですね。ですが、身体に覚え込ませた剣技の方なら別の姿でも使うことは可能なようです。とは言っても、どちらも同じ流派の剣ですから、獣王痛恨撃もこの格好で使えるかはちょっとまだ自信がありませんが」

『そういうのいいから。それより本題の方先にやって』

「うんうん」

 

 頭をかく偽アバンをジト目で見て俺が言えば偽マァムが腕を組んで頷き。

 

「わかりました。師匠に変身できたことで年甲斐なくはしゃいでしまったようですので、これは反省するとして……それでは行ってみましょう。アバン流刀殺法――大地斬ッ!」

 

 余計なことを言いつつも放たれた太刀筋はまぎれもなく師匠と同じモノ。

 

「そして、おなじみの海破斬ッ!」

 

 模擬戦で何度も呪文を斬られて若干トラウマになりかけた二つ目の技を続けて放ち。

 

「さて」

 

 ポツリと漏らした偽アバンが目を閉じる。

 

『空裂斬、か』

 

 それは神から授かった以外の生命を持った邪悪な怪物たち、その邪悪な生命を断つ剣だ。

 

(ピンポイントに俺達みたいな相手を殺す技なわけだけど)

 

 だからこそ、模擬戦で師匠が俺に使ってくることはなかった。

 

(模擬戦でも喰らったら死にかねなかったしな)

 

 メラゴーストはヒャド系の初級呪文一発で即死する様な弱いモンスターなのだ。

 

「剣に正義の闘気を蓄積し、一気に敵の本体へ放つ」

 

 ブツブツ呟きつつ枝を左手に持ち替えてとったのは抜刀術の構えに近い。うろ覚えの原作知識にある動きをなぞろうとしているのだろう。

 

「A、とりあえず離れておこう。まかり間違って当たったら武器が枝でもメラゴーストの姿の二人は危ない」

『『あ』』

 

 言われて確かにそうだと思った俺が偽マァムの後ろに隠れれば、A5も同じように隠れ。

 

「アバン流刀殺法、空裂斬ッ!」

「ちょ」

『『ちょ』ルーラッ!』

 

 くるっと向き直った偽アバンは目を閉じたまま正確に俺達の位置を見ぬいて一撃を放った。

 

「あっぶな」

『A5、ナイス』

 

 とっさにA5が瞬間移動呪文で逃がしてくれなかったらどうなっていたことか。

 

「……とりあえず、後で分裂するまでアイツ殴っておくわ」

『『よろしく』』

 

 真顔の偽マァムに頼みつつ俺達は声を揃え。

 

『それじゃ、空裂斬が放てたのは確認したし、続きは旅の中で俺達も練習するからさ』

『後は任せた』

 

 偽マァムにやるせない気持ちを託すと、周囲に居るデルムリン島のモンスター達に何と説明するかを考え始めるのだった。

 




やったね、ダイより早く空裂斬完成だ!(白目)

次回、九話「おおぞらをゆくものたち」に続くメラ。

ちなみにデルムリン島でダイ達を鍛えてた時のアバン先生のレベルは36なのだとか。
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