ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「急に戻って来たかと思えば特訓中の事故で緊急退避とはのぅ」
若干呆れた様子のブラスに俺達はただ、頭を下げた。俺達が戻ってきたと聞いて、赤ん坊を寝かしつけわざわざ様子を見に来たと聞けば、これは平謝りするより他にない。
『本当にすみません』
「ごめんなさい」
「いやいや、何もないというならそれが一番じゃわい」
再度謝る俺達にブラスは片手を振ってみせ。俺達は顔を見合わせると一つ重く頷いた。
「戻ったらあの偽アバンぶちのめす」
視線の意味を言語化するならそんな感じだろうか。もっとも、俺達はカールに旅立たないといけない為、偽マァムの俺に任せることになるのだろうが。
『では俺達はこれで』
『お邪魔しました』
「俺はロモスにしばらく滞在してこちらにも時々顔を見せますので、埋め合わせはその時にでも」
口々にブラスや周囲のモンスターへ言うと俺がルーラの呪文を唱え。
「ぶべっ」
俺は自分が思うよりイラッとしていたらしい。瞬間移動呪文の到着先は、偽アバンの真上だった。カエルがつぶれたような声を上げて下敷きになった偽アバンはポフンと煙を上げてメラゴーストの姿に戻り。
『俺もモシャスしておけば良かった』
足があるが故に唯一元偽アバンを踏みつけている偽マァムを見てA5がボソリと呟いた。
『あー』
気持ちはわかるというか俺もそうしたいかもとは思ったが、俺まで変身するとなるとルーラを使える人物にモシャスするより他なく。
(偽アバンが二人になったらややこしいもんな)
モシャスで変身できてルーラを使え、足のある人物が師匠しかいないためにこれは断念せざるを得なかった。
「気持ちはわかるから、これは俺がもうちょっと踏んでおく」
『あ、うん』
『よろしく』
絵面がマァムに踏まれる俺の図にしか見えないので俺達としてはちょっと複雑ではあったが、偽マァムの好意に俺達は頷き。
『さてと、変なところで時間を無駄にしてしまったし』
『俺達はゆくな?』
「うん、気をつけて」
偽マァムと視線を交わし合った俺達は口をそろえ一つの呪文を唱える。
『『モシャス』』
姿を変えるのは、クロコダインを掴んで運んでいたあの鳥の魔物だ。
「「クエ―ッ!」」
一声鳴いて羽ばたけば、恐ろしく簡単に身体が浮き上がり、連続することでどんどん高度が上がってゆく。
「クエッ」
行こう、とでも言ったのだろうか。
(惜しむらくはこの姿だと意思疎通ができなくなることだよな)
呪文も使えるかもしれないが、クエと鳴くことしか出来ないため会話は成り立たず、せいぜい今の様に鳴き声で相手の注意を向けると言ったことしか出来ない。
(会話する時は元の姿に戻ればいいんだけど)
遅れを取り戻す為にも暫くは飛び続けるだろうから、それはしばらく先の筈で。
「クエエエ」
視線をちらりと下にやって眼下で手を振る偽マァムを見つけた俺は、一声鳴いて小さく旋回してから既に前方に居るA5の後を追う。
(早く飛ぶには……こう、かな? とりあえずA5に追い付かないと)
まだ慣れるはずもない飛翔に試行錯誤しつつとにかくA5を追い。
(ふぅ)
一息つけたのは、飛び方に慣れだしてA5の横につけた頃。
(しかし、空から見る景色って格別だなぁ)
身一つで飛ぶからこそ味わえるパノラマに感動しつつ俺は飛び続け。
「クエエ」
「クエ?」
不意に聞こえたA5の鳴き声でそちらを見れば、A5は顎をしゃくるような動きで眼下の一点を示していた。明らかに人工物、建物が海の近くに集まっていて。
(港町?)
最初はそれがどうしたと言う感じだったが。
「クエ?!」
一瞬おいて俺は思わず声をあげた。鳥の魔物の姿ではただの鳴き声になるだけだが、そんなことはどうでもいい。
(この港町って)
原作での話だが、俺には見覚えがあった。原作で後々大魔王によって消し飛ばされる港町があったのだが、俺は港町であること以外どこの場所であるのか全く覚えていなかったのだ。
(そうか、ロモスにあったのか……よかった。最悪分裂したメラゴーストで偽魔王軍を作ってわかる限りの港町全ての住民を追っ払って一時的に占拠しないといけないかなとも思ってたけど)
これでローラー作戦ともいうべき効率の悪いことはしなくて済む。
「クエエ」
良かったという気持ちを鳴き声で表しながら俺は進路を修正する。横を向いたので進路が若干西にずれていたのだ。
(ロモスの北北西ってところかな)
ただ港町の位置だけは忘れないように心に刻み。俺達はただただ飛び続ける。北へ、北へと。
次回、十話「アレックス」に続くメラ。