ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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十話「アレックス」

「クェッ」

 

 海だと口にしようとして漏れ出たのは鳴き声だった。

 

(たぶん、あれは内海みたいなモンだよな)

 

 脳内にロモスでパプニカへ向かう前に見たこの世界の地図を思い浮かべる俺の影が陸地を離れる。ここに来るまでに一度陸に降りて休憩も挟んでいるので、内海を渡り切る前に力尽きるということはないだろう。

 

(まっすぐ北上してるはずだから、地図が正しいならカールは海を越え陸地についたらすぐ真東の筈)

 

 もっとも、そのまま飛んでカールに向かう様なつもりはない。クロコダインが破れた上に勇者側へついたことでクロコダインが指揮していた百獣魔団は解体されていると思うが、いまの俺の姿はその百獣魔団に居た鳥の魔物のそれなのだ。

 

(魔王軍と戦争中なんだから魔物の姿で上空を飛ぼうモノなら矢や魔法が飛んできたって文句は言えないし)

 

 だからこそ俺達は海を越えたらどうするかを休憩中に話し合い、対策は立てていた。

 

「クエッ」

 

 鳴き声を上げたA5が示すのは、魔物に襲われたのかあちこちに損傷が見られる灯台で。

 

(目的のモノ、あそこにあればいいけど……よくよく考えれば師匠が使ってたでっかいランタンぐらい持ってくるべきだったんだよな)

 

 そう、俺達が欲しているのはメラゴーストの姿のもう一方を怪しまれずに連れて行ける偽装用の品。ちなみにこれで大きなランタンが手に入らなかったら、太めの木の棒に抱きついて松明のフリをするくらいしか思いつかなかったので、何としても見つかってほしいところだが。

 

(あれだけボロボロだと灯台守とかはもういないよな?)

 

 無断で失敬するとするなら好都合だが、魔物に荒らされていた場合、存在したランタンが壊されてる何てオチもありうる。

 

(さてと)

 

 大まかに灯台の上空を旋回すると俺は一声鳴いて降下を始める。灯台にお邪魔するためだ。

 

(遺棄された建物の中まで監視するほど魔王軍の使い魔も暇じゃないだろうし)

 

 建物の中なら人目を気にせず別の姿にモシャス出来るというものでもある。徐々に大きくなってくる灯台の入り口に向けてぶつからないように減速しながら俺達は降りて行き。

 

『お』

 

 ポフンと煙を出して元に戻ったのは、ドアの外れた入り口からピョンピョン跳ねて中に入って暫しのこと。

 

『じゃ、まずは俺が……モシャス!』

 

 すぐにダイの姿になると、床に転がっていた覇者の剣を拾ってからくるりとA5の方を向き直り。

 

「さて、探索開始といこうか。A5はそのままの姿で明り代わりよろしく」

『わかってる』

 

 俺の要請に答えたA5は念の為にとスカラの呪文を自分にかけてから階段を上り始め。

 

『けど、階段でよかったよな。梯子だったら俺もモシャスしないといけないとこだった』

「ああ。梯子、燃えちゃうもんな」

 

 同意してからA5の後ろをついて俺は歩き出す。

 

『それはそれとして』

 

 それからA5が唐突に口を開いたのは、螺旋を描く階段を幾らか上ったところで。

 

「うん?」

『本当にやるのか? あれ?』

「まぁ、ね。ザボエラに竜の紋章見せなかったのは俺の都合だから、穴埋めはしないと……今の俺はアレックス・ディノ。そして、勇者ダイのお忍びの姿って設定だ」

 

 この偽名については、ダイが実の両親からつけられたディーノと言う名を連想しやすいようにとチョイスしたもので、他に深い意味はない。そしてダイの顔は母親の面影があると原作で実父が語っていたので、この顔でディノなんて名乗ってれば実父はすぐ気づくだろう。

 

「紋章を出せるかは未検証だから、こっち方面から勇者ダイがディーノだって気づかせるくらいしか思いつかなかったんだよな。ただ、それにはダイの親父さんと顔見せしなければならない訳で」

 

 オリハルコン製の剣を持つ上魔王軍に居るダイの父親にいきなり一刀両断されないためにわざわざ同じオリハルコンの剣を借りてきたのだ。

 

「ヤバくなったらルーラで逃げるつもりだし、出来る限りの保険はしてきたんだから」

 

 失敗は許されない。

 

『保険ね。俺はもう嫌な予感しかしないんだが』

 

 遠い目をするA5をチラ見してから視線を戻した俺は階段を上りきり。

 

「あ。良かった。A5、それっぽいのあるよ!」

 

 予備の品か、埃は被っていたものの破損はなさそうなソレに近寄ってA5の方を振り返る。

 

『良かったって、俺の話聞いてた?』

「聞いてたよ? けど、ここまで来たらもう引き返せないし」

 

 引き返したらここまで来た意味だってなくなってしまうのだから。

 

「俺さ、割とあちこちでやらかしたり好き勝手やって来たからさ。その分の埋め合わせ、少しくらいはしておきたいんだ。そうでもしないと、こう、途中でフェードアウトした上で安全なところに引っ込んで暮らすの何て許されない気がしてさ……」

 

 せめて自分の身が危なくならない程度で、命を落とす人を救ったっていいんじゃないか。俺はそう思ったのだ。

 




自分の作った原作のずれの為、死地に飛び込む男、メラゴーストッ!(蜘蛛男っぽく)

次回、十一話「それにはつけないしおやつでもないけどここはカール」に続くメラ。



ダイの大冒険コラボ福引70連でピックアップ0だった闇谷はちょっとふて寝したい気分。
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