ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「ふぅ、ようやく人の居そうな場所にたどり着けた」
ここはカールの国ではあっても国内の原作作中には出てこなかったような小さな村なのだろうが、それでもまだその村は健在で、灯台から歩くこと暫し。大きなランタンを片手で持った俺は村の入り口に立ちつくしていた。
「さてと、とりあえず情報を軽く集めて先に行こう」
モシャスの効果時間の都合もあるが、俺のうろ覚えな原作知識ではこの国がたどる大まかな流れしかわからないのだ。
(現在の戦況確認は重要だし)
問題があるとすれば、今の俺の格好がダイの姿であるということか。
(ダイがデルムリン島に流れ付いて十年ちょっとだっけ? 当初赤ん坊だったことを鑑みると、この格好の外見年齢って十代前半なんだよなぁ)
つまり、情報収集でおなじみの酒場に足を踏み入れるには年齢が足りないのだ。かと言って、俺がモシャスで変身できて成人してる人間と言うと師匠くらいしかいない。ロモスで一度姿を借りた兵士だか騎士の人は接した時間が短すぎて本人を見てすぐとかでないと化けるのは厳しく。
(ヒュンケルは元魔王軍、ちょっと拙いことになるかもしれないからやはり変身は出来ないし)
どうしようかと頭を悩ませたのは少しの間。
「……うん、そりゃ需要の関係を考えたら当たり前だよな」
通りかかった村人に尋ねたところ、この村に酒場なんて洒落たものはないとのこと。どうやって入って情報を集めるか以前の問題だった。
「加えて俺ってよくよく考えたら一文無しだし」
普段の燃える身体では革袋にコインを入れるような財布を持ってても燃えてしまうからこそなのだが。
「単独で行動するならもっと考えてから動くべきだった」
ランタンの中から生ぬるい視線を感じるが、今更資金集めをするわけにもいかない。
「とりあえず通りかかる村人に話を聞いてから、先に進もう」
已む得ずそう決断して俺は歩き出す。
「ちなみに、やたら独り言を言っているのはランタンの中のA5へ俺の意向を伝えるためであって、やらかしが気まずくて現実逃避してるわけではないことだけは敢えてここで言明しておく」
誰に向けての説明だよ、と一瞬思わないでもなかったが、きっと自分に対しての言い訳なんだと思う。
「……中が空っぽの動き回る鎧、ね。と言うことは今、この国を攻めてるのは魔影軍団か」
お城の方に用事があって向かおうとしたものの鎧の集団を見かけて命からがら引き返してきたという村人の言葉を聞き、俺は原作知識からこの国に侵攻している軍団の名を察した。
(軍団長は作中で遭遇したくない敵のナンバー3に入るけど、とある理由から当人が出張ってくる可能性は低かったはず)
それもあってか原作だと攻めあぐねたところでハドラーから要請を受け、別の軍団が侵攻してくることになるのだが。その軍団長がダイの実父なのだ。
(つまり、現状は下手に手だしせず、見かけた殺されそうな人が居ればこっそり助けつつ、次の軍団が来るまでしのぐ、と)
もっとも、話を聞いた村人がこの村に帰ってきて今に至るまでに状況が変わっていることは十分考えられる。
「とりあえず、カールのお城までは行ってみよう。最新の状況が知りたいし」
入国税みたいなのをとられる可能性もあるが、その時は透明化呪文で踏み倒せばいい。
「と、その前に……」
俺達は村を出ると、先の村人から聞いた場所へと向かった。何でも、村はずれから少しいったところに魔王軍の侵攻で放棄された木こり小屋があるそうなのだ。寄り道になるが、人目に触れずモシャスのかけなおしができそうな場所はありがたく。
「あった、あれだ」
小屋にたどり着くまで時間はそうかからなかった。そして、小屋に入ってしばし後のこと。
『モシャス』
ダイの姿に変じたのは、俺ではなく、A5。流石に長い間ランタンの中は俺もA5も嫌だったので交代制を取ることにしたのだ。
(次に俺が外に出るのは、お城と言うか城下町についた後か)
先ほどは資金集めなどしている余裕はないという話だったが、待ちの姿勢をとらねばならないとなって事情が少し変わった。
「それじゃ、ここからは俺がアレックスだから」
ランタンに入った俺に断りを入れたA5は俺入りランタンを持つと、小屋を出て周囲を見回しつつ歩き出す。
「敵と出くわしたら、俺だけで片付けるからその中で見てて」
メラゴースト同伴の旅人なんて姿を魔王軍に知らせるわけにもいかないと考えたのだろうか。
(村の人が見かけたって話だし、このままお城に向かえば動く鎧の魔物に遭遇する可能性はあるはず)
俺の記憶が確かなら、その鎧のモンスターはご丁寧に武器と盾まで持っている。俺達の狙いはまさにその武具だ。
(ゲームの方のさまよう鎧だと、そのまんまの呪われた鎧や銅の剣を落とした筈)
そんな作中外情報と照らし合わせた結果、武器と盾なら普通の武具として売れると俺達は判断したのだ。
(まして今は戦時中。武器防具の需要は高い筈)
売ったお金で財布を買って、残りは財布に入れ、ダイに変身してる方が持ち歩いて宿屋に部屋を一つ借りる。それが、俺達の今後の仮拠点となる訳だ。
「あ」
などと言ってるそばからと言うべきか。A5の声に我に返った俺がランタンの中から前方を見れば、文字通りに道を彷徨う鎧の集団がそこにあり。
「アバン流刀殺法――大地斬ッ!」
断末魔すら上げることなく、鎧の集団はバラバラに吹っ飛んだ。
「よーし、大量大量♪」
A5は嬉しそうに浅いクレーターのできた場所へ近寄ると散らばった武具を拾い集め。
「ここが師しょ……先生の故郷か」
それから何度かの戦闘を経て、背中に蔦でくくった剣の束を背負い、弁慶か何かを彷彿とさせる格好になったA5が声を上げる。前方に広がる町の向こうには城が見え、俺達は遂にカールへとたどり着いたのだった。
次回、十二話「カール勝利せり?」に続くメラ。