ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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十二話「カール勝利せり?」

「とりあえず、宿をとらないと……戦争中に部屋をとれるかはちょっと微妙だけど」

 

 キョロキョロ周囲を見回すA5の姿をカンテラの中から見つつ俺は声には出さず確かにと同意した。

 

(最悪の場合、負傷者を運びこむ野戦病院さながらの状態になっていることもありそうだもんな)

 

 少々見通しが甘かったのかもしれないと思いつつも、カンテラの中の炎のふりをする手前A5の様に周囲を見回すことは出来ず。

 

(もどかしいけどやむなしか)

 

 一人がメラゴーストのままなのは、モシャスの効果が切れそうになった時もう一方が変身して入れ替わることも考えてのことなのだ。

 

(宿が駄目ならそれはそれで人目につかないところに移動してどうするかを話し合うとか何とかするだろうし)

 

 上手く部屋が借りられることを祈りつつ炎のフリを続けること暫し。

 

「こんにちは。ええと、武器を売りたいんだけど」

 

 俺はA5の声にあっと声をあげるところだった。どこかの建物に入ったのは解かったのだが、よくよく考えたら拾った武器をお金に変えないと宿代がないのだ。宿の部屋を確保することに気をとられ過ぎて宿代のことを失念していたと言うのは迂闊も迂闊だが、A5はちゃんと覚えていたようだ。

 

(そっか、武器屋なのか、ここ)

 

 聞き覚えのない声で銅の剣なら一本六十ゴールドで引き取ろうという声がし。

 

「ろ、六十?!」

「ああ。見たところこの剣、攻めて来た鎧のモンスターが落としたものだろう? ここのところこれが持ち込まれることが多くてね」

「あー」

 

 A5の納得した声を聞きつつ、俺も炎のフリを続けつつそりゃそうなるよなと思った。

 

「いや、それだけ魔物を倒せてるってことはいいことなんだろうけど、これを研いで置いておいても全く売れなくてね。溶かして別のモノに加工しようにも鍛冶屋は今大忙しだ」

 

 故に通常より安い値段での引き取りになったということなんだろう。

 

「それじゃ、その値段でお願いします」

 

 ともあれ、ここでお金を手に入れないとどうしようもない。俺達はこうして銅の剣の束を売り払ってお金を手に入れ。

 

「あっ、財布が……すみません、財布ってどこかで扱ってます?」

「財布? 失くしたのかい?」

「いえ、仲間に預けてたんですけど相当古くなってて、お金も手に入るから買い換えようかなって」

「なるほど。雑貨屋だったらこの店の正面だ。財布ならこれぐらいあれば買えるから後の受け渡しはその後でいいかな」

 

 機転を利かせてくれた武器屋の主にA5はありがとうございますと言って店を出て行き。

 

「お客さん、ランタン置いたまま……ま、いいか。すぐ戻ってくるだろうし。さてと、とりあえずこの銅の剣をよいしょっと」

 

 武器屋の店主がA5の置いていった剣の束を持ちあげた時だった。

 

「おい、聞いたか! モンスター達が、モンスター達が逃げていったってよ!」

 

 戸口を開けて顔を出した見知らぬ男が叫んだ。

 

「へ?」

「あの空っぽの不気味な鎧たちが攻めるのをやめて引き上げてったのを見たってやつが居るんだ。きっと騎士様たちに散々ボコボコにされたからこの国を落とすのをあきらめたんだろうぜ」

「本当か?」

 

 驚きつつ問い返す武器屋の店主に男は自分のことでもないのに得意げにおうと答え。

 

「最強とうたわれたカールの騎士様たちが負けるはずもないだろ。カールは勝ったんだ!」

 

 カール万歳と快哉を叫ぶ男の話を聞いて、俺は察す。

 

(それ、撤退したんじゃなくてダイ達にぶつけるためにカール攻略の軍勢を一部下げただけなんだよね)

 

 くわえて魔王軍最強の軍勢がここに派遣されることを俺は原作知識で知っていた。

 

(普通なら軍を派遣するにも兵站とか考えないといけないし、行軍にも日数かかったりするけど……瞬間移動呪文とかキメラの翼とか移動時間無視するモノに心当たりが複数あるこの世界だとな)

 

 下手をすれば今日の内に次の軍団が攻めかかって来かねない。

 

「じゃあな、邪魔した」

 

 先の言葉を伝えることが目的だったかの様に男は出て行き。

 

「すみません、お待たせしました」

 

 かわりに戸を開けて戻ってきたA5が手にしていた財布を見せて、これに入れてくださいと言い。

 

◇◆◇

 

「ごめんください……あの、ここ宿屋ですよね? 部屋は借りられますか」

 

 財布を購入してからはとんとん拍子にことは運んだ。さっきのカールが勝利したという見解があってか、宿は通常営業を再開したようで、A5の言葉に愛想よく応じた宿の主人はどの部屋になさいますかと聞いてきたし。

 

「いやー、眺めの良い部屋が借りられてよかったな」

『うん』

 

 宿の従業員が下がった後、窓の外を眺めつつ俺はA5の言葉に頷いた。

 

「けど、これからだ。襲ってくるのは超竜軍団。ドラゴンで編成された魔王軍最強の軍団」

『とはいえこっちもオリハルコン製の武器がある訳だし、軍団長はともかく、配下のモンスターならやりようはある、と』

「自己再生能力のあるやつらは仕留めて、そうじゃない奴らは適度に負傷させて攻めの手を緩ませ、軍団長が出て来たら顔見せ、深入りはしない……そんなところ?」

『今のところは』

 

 どこまでそのプラン通りに行くかはわからないが、出来るだけ犠牲者は減らしたい。

 

「けどさ、こんなことやってるって知れたら、絶対ポップ辺りに怒られるよ?」

『あー、うん。だよね』

 

 A5の指摘に俺は目をそらし。

 

「それ以上に他の俺から袋叩きにされると思うけど」

『う゛』

 

 続く言葉に顔を引きつらせたのだった。

 




ちなみに、今話の部分ですが、原作のダイ達一行の場合「フレイザードに敗れて逃げ、マトリフに助けられ、ポップが修行を始めてちょっと経っている」くらいの時間軸になります。(四巻の真ん中くらい)

次回、十三話「出したり引っ込めたりする勇気1」に続くメラ。


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