ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
「さてと」
その後、武器屋に戻って覇者の剣の鞘を作ってもらったり、念の為に薬草を購入したりして俺達は戦いに備え。
「もっと早く鞘を作ることを思いついてたら、さまようよろいで空裂斬の練習ができたんだけどね」
『確かに失敗したなって言いたいところだけど、どこかの偽師匠みたいにこっちに攻撃飛んで来たら笑えないし』
宿に戻るごとにモシャスでダイになるのを交代してアレックスになった俺の言にA5が相づちを打ち苦笑する。
「とは言え本格的に戦いが始まってから分散するのはいざというときルーラで逃げられなくなるから避けたいし」
『あー、難しいところだね』
帯に短したすきに長しというものだろうか。
「やるとするなら、本腰を入れて敵が攻めてこないだろう侵攻序盤だけど。A5には連絡用の新たな俺を増やしておいて欲しいし」
ここで死ぬつもりはないが、もしダイ達の元に戻れないようなことがあれば、せっかく得たあの港町の情報を伝えられなくなってしまう。
『ああ、情報を渡すなら早い方がいいか』
「うん。そういう意味でも俺が派手に暴れて敵のとカールの人たちの目を引き付けるからさ。あ、念のために透明化呪文くらいは使っておいてほしいけど」
『わかってる。メラゴーストって分類は明らかに他の軍団の魔物だけど、ミストバーンの配下と間違われても仕方のない見た目してるし』
A5はすぐ頷くが、それも頭の痛いところではある。うっかり戦いの中でモシャスが解除されるとカールの騎士団から敵と誤認されかねないのだ。
(それもあるから派手に立ち回って敵を倒して味方ですよアピールしておく必要があるんだよな)
敵の懐に潜むための偽装で大多数の味方を殺す者などいない筈だ。骨を回収すればすぐ復活させられる不死騎団時代のヒュンケルのような特例でもなければ。
『それでどっちに行く? 丘の上にあるお城か、この城下町の外か』
「いつ敵が来るか不明だし、外かな。お城は高い場所に見晴らしはいいけど、有事の際すぐに駆け付けられないし」
自由に空を飛べるトベルーラの呪文でもあれば別なのだが、瞬間移動呪文は思い浮かべた場所に飛ぶ呪文であるため、イメージにズレが生じると想定していないところに飛んでしまう可能性がある。
(原作のポップがネイルにマァムを送ってく時に村じゃなくて最初に出会った場所に間違って飛んでしまったりしてたしな)
緊急時に移動先ミスなど目も当てられない。
「それに、大立ち回りして目を引くなら真っ先に敵めがけて突撃して行けた方がいいからさ」
カールの人々は知らないはずだ、別の軍団が差し向けられ襲ってくることなど。
『なら、先に街の外に出て分裂しておくべきじゃ? 分裂した俺に鳥の魔物か何かになって偵察して貰って敵が来てるってわかったら合図送ってもらうとか』
「それも考えたけど、その魔物自体が見つかることも考えられるし、遠くから進軍してくるの警戒してたら町の前にルーラされましたじゃ笑えないから」
『え、Aがそこまで考えて……今日はドラゴンが降る、は場合によって普通にありそうだし……ステテコパンツが降るな』
「どういう意味だよ、A5?!」
こうやって軽口をたたきあえているのも、戦いの前の緊張を誤魔化す為か。宿を出て、ランタンをもったまま町の外に俺は向かう。名目上は宿代と路銀を稼ぐためのモンスター退治だ。カールの人々の視点だと落ち武者狩りのような残敵掃討と映るかもしれない。
「それじゃ分裂は任せたよ。今の俺だと手加減してもA5には痛いと思うから」
『わかってる。町の人に発見されるとまずいから、町から離れる形で駆けまわりつつ分裂する方向でいく』
「うん、とは言え明るいと人目を引くから始めるのはそれなりにはなれてからね」
『ああ、レムオル』
A5が唱えた呪文によって姿を消し、俺は目をつむって集中する。
(なるほど、これがA5の気配かな?)
ただ、それっぽいものを見つけようと集中だけして、ようやくといったレベルなので、まだ戦いには使えそうにないが、この感覚を研ぎ澄ませていけば空裂斬もやがて放てるようになるのだろう。さすがにやらかした偽アバンと違って俺はこの状態で技を放つつもりはないが。
「やるとしたら、さまようよろいでも視認出来たときでかつあいつが近くに居ないタイミングでだな……あ」
そこまで考えて、俺はふと思う。ダイについてゆく別の俺、間違ってダイの未完成空裂斬で誤射ならぬ誤斬されないだろうか、と。
「だ、大丈夫。ダイはやるときはやる子だから。俺みたいなやらかしをすることは……あ゛」
言葉の途中でふいに思い浮かんだのは、合図の火薬玉だか何だかのある倉庫を塞ぐ瓦礫をよりにもよって炎系の魔法剣で吹き飛ばして誘爆させた原作での一幕。
(あったーっ! やらかしの素質あったわー、ダイーッ!)
どうしよう、急に不安になってきた。思わず頭を抱えたくなった俺だったが。
「っ」
重い足音が聞こえて顔をあげれば、木々の緑に混ざる様にしてうねる巨体が垣間見えた。
「来た……」
超竜軍団がいよいよ押し寄せてきたらしい。
(少し下がるか、ここだと町に離れすぎてて孤立するし)
A5のことが少し気がかりではあるものの孤軍奮闘しすぎて数で押しつぶされたら話にならない。
(ダメージ受けすぎてモシャスが切れるのも拙いし)
俺はドラゴンに気づかれないようにゆっくりと後ずさり始めるのだった。
次回、十四話「出したり引っ込めたりする勇気2」に続くメラ。