ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね   作:闇谷 紅

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十七話「プチ遠征」

「何ともわかりやすい待ち構え方をしてくれるよ、本当に」

 

 翌日、俺がそう漏らしたのはカールから北にあるザババの港町へ向かう途中、見晴らしの良い場所で腕を組んで単身佇む男の姿があったからだ。背に剣を背負った男の名は、バラン。今カールを攻めている超竜軍団の軍団長にして昨日落雷で俺達が振り回した相手でもある。

 

『しかも向いてる方向がザババとか。これは確実にザババが襲撃されてるよな』

 

 おそらく遠目でも落雷が見えればまっしぐらに向かう為であり、カールから騎士団が救援に来た場合、一人で片付けるためでもあるのだろう。

 

「超一流の相手だ。姿が透明でも気配とかで気づくこともありそうだし、不意打ちは不可能。なるべく遠巻きに迂回してザババへ」

『了解』

 

 相手は魔王軍で戦いたくない相手の五指に入る強者だ。俺の言葉にA5も同意して俺達は迂回しつつザババを目指して進み始める。

 

(こういう時素早さを増加させるピオリムの呪文があればと思うけれど)

 

 あれは僧侶の呪文。この世界で能力増強系の補助呪文の使い手が確認できない今、ただのないものねだりだとはわかっていても胸中で漏らさざるを得ず。出来うる限りの速力で先を急げば、やがて見えて来たのは立ち上る煙。

 

『見えた、アレックス剣を』

「うん」

 

 頷き差し出す覇者の剣にA5がかけるのはマヒャドの呪文。

 

『爆音や炎だと雷ほどでなくてもバランに気取られるかもしれないし』

 

 そもそもドラゴンは炎を吹くのだ。自身の扱う炎には耐性があっても不思議ではなく。

 

「ありがとう、喰らえアイシクルスクライドォッ!」

 

 直線状にドラゴン以外の姿がないことを確認してから放ったヒュンケルの技が軌道上にあった部分をごっそりえぐり取ったドラゴンの死体を凍り付かせる。

 

「アレックス・ディノ見参! ゆくぞーッ! 氷結海破斬ッ!」

 

 道は切り開いた。俺は繰り出した技で作りだした空間をかけつつそのままアバン流殺法を振るい、仲間の悲鳴を聞いて頭を出したドラゴンの首を刎ね飛ばし。

 

「ううっ」

「っ、確か」

 

 倒れてうめき声を上げる騎士らしき人を見つけ、荷物を漁って薬草を取り出す。

 

「大丈夫? 食べれます?」

「ぐ、あ、ああ」

「良かった」

 

 差し出す薬草を倒れた人が口にするのを見て俺は安堵の息を吐き。

 

「出来るならここから生き残った人を連れて退避を。ただ、カール方面以外に。こことカールの中間であのドラゴン達を指揮する男が待ち伏せてるのを見ました。カールからの救援を待ち伏せするつもりなんでしょうけど」

「そうか、あいつらの大将がドラゴンを率いて待ち伏せてるなら、そんなところにはいけないな。手当てに加えて情報まで……ありがとう」

「気にしないでください。俺はアレックス。またいずれどこかで」

 

 必要な情報だけ伝えて俺は騎士の側を離れる。

 

(この人と一緒だとA5が側にいられないし)

 

 何より申し訳ないが怪我人一人に割く時間なんて殆どない。

 

『アレックス、そろそろ移動しないと拙い』

 

 まるでそれを補強するかのように騎士から離れるなり近寄ってきたA5が告げ。空を示せば浮かぶ小さな点が一つ。おそらく魔法で飛翔するバランだろう。

 

『たぶんこの戦場のどこかに偵察用の悪魔の目玉が潜んでるんだと思う』

「そっか」

 

 電撃呪文を使わずとも配下を蹴散らせる強者が現れればバランへ知らせる準備ができていたということだろう。

 

『逃げるよ、ルーラッ』

 

 俺の返事も待たずA5は瞬間移動呪文を唱え。

 

「っ、ここは……ああ、前にも来た木こり小屋」

『カールだと出動する騎士団と鉢合わせになるかもしれなかったし』

「あー、確かに」

 

 A5の選択はおそらく正しかったと俺も思う。

 

『それはそれとして、アレックス。ライデインは単独で撃てる? ラナリオンの補助がいるようなら分裂しないとルーラで逃げる為の人員が必要になるんだけど』

「あ」

 

 そして、指摘されて気が付くあたり俺はやっぱりどこか抜けている。

 

「そう言えばダイが単独でライディン撃てたのは原作だとベンガーナのデパートでで、フレイザード戦の後だったよな」

 

 俺のモシャスの元になってるダイはヒュンケルに勝利した後のダイだ。スペックを鑑みると難しそうな気がする。

 

『やっぱりね。攻撃力と防御力は補助呪文で下駄をはかせられるけど、いくらモンスターを倒しても参照元が同じ以上その格好の強さは成長しないからなぁ』

「うん、失念してた。ゴメン」

『どうする? カールに戻ればひょっとしたら昨日雨雲呼んだ偽ポップがダイ達と一旦合流してモシャス的な意味でのアップデート情報持ってきてるかもしれないけど』

 

 謝る俺にA5が一つの可能性を上げるも、俺は少し迷ってから今は良いやと首を横に振り。

 

「とりあえず、別の場所を回って、そっちで分裂してライデインを使おう。バランに暴れられるとさっきの場所の被害が大きくなるし」

『了解』

 

 A5が頷いたことで俺達はモシャス役を交代、一人分裂で増えてから噂をまくついでに聞きこんでおいた別の町に向かい、その町にも飛べるよう二人そろって町の入り口の景色を覚えた後、ドラゴンの襲撃がないため別の村へ向かおうとし、そこでドラゴンの一団と出くわした。

 

「あれは、方角からするとザババの町からの避難民ってとこだな? じゃ、さしずめあれは追っ手か。行くぞアレックス! ラ・ナ・リ・オーンッ!」

「うん、ライデイン! からのライトニングスクライドォ!」

『ルーラッ!』

 

 放つのは一撃、そして放ち終えた時には俺達の姿はもうそこにはない。

 

「これでバランは引きはがせたろ」

『たぶんね。けど、これだけやったらこっちの手口ももうあっちにはたぶんバレてると思う』

 

 新しい偽ポップの言葉に俺は頷いてからいい。

 

「となると、決戦は」

『明日……かな』

 

 A5の声に続けた呟きはひどく乾いて聞こえたのだった。

 




次回、十八話「死地」に続くメラ。
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