ダイの大冒険でメラゴースト転生って無理ゲーじゃね 作:闇谷 紅
『あからさまと言えばあからさまだけど……』
戦いで疲れた体を宿で休めた翌日。城下町の外れへ向かった俺達はそれを見た。木々で幾らか隠れてはいるし、緑と言う体色は場合によって保護色とはなるだろうがその巨体を見落とすはずもない。先方だって隠すつもりなど毛頭ないだろう。
「ドラゴン、ドラゴン、ドラゴン、ドラゴン。ヒドラみたいな多頭や上位種もドラゴンでいいよね、これ」
『割とどうでもいいかな……』
数えるのが嫌になるくらいの数のドラゴンは先の様に俺がどこかに逃げられないようにする楔でもあるんだろう。この場を離れれば、数で一番重要な王都であるここカールを押し潰すという言葉なき意思表示。
「A、現実逃避してるところ悪いけど、移動するよ。敵が攻め寄せてくるのは一方からだけとは限らないし」
『あ、うん』
念の為に他も見ておこうというA5の提案に従った俺達は、透明化呪文でぐるっと周辺を回ることにし。
『……挟み撃ちとか』
北方にも複数のドラゴンからなる一群があることを知って、俺は空を仰いだ。たぶん、おれ達を最後に目撃したのがカールの北側だったからこその抑えも兼ねてるんだろうが。
「アレックス探知機も兼ねてるってとこかな? こっちで戦ってるのが確認されたらきっとバランがこっちに出張ってくるって」
『だろうな』
しかもご丁寧にこちらのドラゴンは互いに一定以上の間隔を広く保っている。範囲攻撃によって短時間に殲滅されないための対策だ。
『はぁ、厄介な』
「それで、どうする?」
『うーん、確か偽ポップってまだ宿に残ってたっけ?』
嘆息した俺はA5の言葉に俺は最新情報を持って戻ってきた新しい俺のことを問う。
「んー、どうだったかな。あの新顔なら『死にたかねぇよ』って今頃逃げ出してても驚かないけど」
『……たまに居るんだよな。何故か変身後の相手になりきるヤツって』
俺もヒュンケルの時は一度やってるから強くは責められないけど。
『一度戻って、まだ居るようなら北の部隊を間引いてもらおう。最悪の場合女王陛下だっけ? ともかく、王族と非戦闘員を逃がせる程度には数を減らしてもらいたいし。その前に離脱の合図だけは決めてだけど』
バランと戦うことになれば、他所に気を使うような余裕はおそらくない。俺達の共通認識であり。
「そうしようか。ドラゴン達がいつ動くかもわからないし」
決断するや否や、俺達はすぐさま宿に引き返し。
◇◆◇
「や、やぁ……お早いおかえりで」
ノックしてドアを開ければ、借りていた部屋に引きつった顔の偽ポップが居るのを確認し、俺達は北の軍勢を任せたいのだと言う要件と離脱の際の合図を伝えた。
「雷が二度目に落ちるとしたら、まずバランが電撃呪文を使った時になると思う」
『そっちにバランが向かうと拙いから、一度はこっちからライデインを使う予定だからね』
バランが先に電撃呪文を使った場合は、数合わせの為に周辺のドラゴンにでも使うために電撃呪文を使うつもりでいる。
「おまっ、本当にバランと戦うつもりなのかよ?」
『出来れば避けたいけどさ、バランと剣でなら互角だったって言うここの騎士団長さんは出来れば助けたいし、そうなってくるとこのまま離脱するわけにはいかないからさ。それよりそっちの首尾は?』
「っ」
原作ではバランに倒された人物のことを上げれば、苦いモノでも呑み込んだかの様な顔をした偽ポップはちゃんとやったと答えて窓の方を見た。
「何でおればっかりこんな偽勇者みたいなことをとは思ったけどな。透明化呪文で図書館に侵入。これはって思った本はだいたい盗み出してもう一人の俺とルーラで持ってったさ。アバンの書を含む貴書消失の可能性はねえ」
『そう、ありがとう』
原作では誰かが運び出して無事だった師匠の書き残した書物だが、俺の介入によって原作通り運び出されるか不明だったため、情報を持ってきた偽ポップ達に骨を折ってもらったのだ。
「これで戦いに専念できる」
「まじかよ……」
A5の言葉に信じられない様な顔をする偽ポップだが、正直言うと俺も結構不安なところはある。
「大丈夫だよ偽ポップ。おれだって死ぬつもりはないからさ」
「偽ポップゆーな!」
「ははは、悪いとは思うけど他でも分裂してるとナンバリング被るかもしれないからさ」
それじゃ、行ってくるねと俺入りのランタンをもって出てゆくA5の後ろから、偽ポップのこえがポツリと一つ、死ぬなよ、と。
「戦えない者は城へゆけ! 急げ」
「北にもドラゴンだと?!」
宿を出れば、高所で声を張り上げる騎士が居て、伝令に目を見張る騎士も居た。ドラゴンの大軍勢が近づきつつあるのを知ったのだろう。町の空気は物々しく、出歩く町人の姿は殆ど見受けられない。居ても家財道具を運び出し城へ避難しようとしている住民くらいだ。
「おい、そこの――」
ダイの姿をとったA5が見た目は少年だからだろう。避難誘導をしている騎士に声をかけられたが、覇者の剣を見せた上でA5はアレックスと名乗り、ここ数日あちこちでドラゴンと戦っていたことを明かせば、先日助けた人から話が通っていたのだと思う。
「君が……そうか、失礼した。しかし、ここに居るということは」
「はい。おれも戦います。けど、騎士の人達にあわせられるとは思わないから、おれなりにですけど」
「いや、それでも助かる。君の倒したドラゴンの死骸は私も見た」
信頼に足ると見た騎士は武運を祈ると言い。失礼します断りを入れたA5は歩き出す、俺達の戦場へと向かって。
すみません、予定のとこまで書き進められなかったんで分割します。
次回、十九話「死地2」に続くメラ。