とある戦姫の翳裂閃光   作:ドナルド・カーネル

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どうも作者です。
この話は戦姫絶唱シンフォギアIBに載せていたとある戦姫の翳裂閃光の加筆修正版となっております。読んだことのある方も、初めての方もどうぞご覧下さい。
それではどうぞ。


あり得ない出会い/First days

1

 

 

 

『この人殺し!』

 

『沢山の人を見殺しにて、自分だけ生き残ったそうよ』

 

・・・やめて。

 

『ねえ知ってる。ノイズに襲われるて怪我をするとお金がもらえるんだって』

 

 

『それって、パパやママが払っている税金だよね。あんなのに渡すのって本当に無駄遣いじゃん』

 

・・・うるさい。

 

『響が生きてるだけで、おばあちゃんもお母さんも嬉しいんだよ』

 

『だから笑って、響』

 

・・・嘘だ。

 

 

 

そんなの嘘だ。

 

 

 

本当に嬉しいって感じているのなら、

 

 

 

何で、お父さんは私をおいて出て行ったの?

 

 

 

何で、周りのみんなは私に酷いことをしてくるの?

 

 

 

何で、お母さん達が辛い目に遭うの?

 

 

 

私は、本当に生きていていいの?

 

 

 

そんな疑問が少女の中から湧き上がる。でもこの疑問を誰かには打ち明けることは出来なかった。だってこんなことを尋ねれば余計に迷惑をかけるに決まってる。なら私一人で抱え込めば良いんだ。そう思い、少女は我慢した。

 

でも、言葉の暴力による傷は癒えるまもなく増えていき、体の傷も少しづつ増えていく。それを隠すために長袖の服を着る。そうすれば、お母さんやおばあちゃんにバレたりしない。それでも、少女や少女の家族に対する陰惨な行いは終わらなかった。そして少女は一つの事を考えを動いた。

 

「・・・・・そうだ、ここから出て行こう」

 

そうすれば、お母さん達に迷惑が掛からない。そう思い少女は少しのお金を持ち、家を出た。行き先も決めずただただ、街を彷徨う。だがそんな生活は、どこにでも居る少女に耐えられるものではなかった。辛い、苦しい、寂しいそんな感情が湧き上がる。でも、その気持ちにしたがって、家に帰る訳にはいかない。これ以上、最後の味方に迷惑をかけるわけにはいかない。だがら少女はそれを無視して、今日も一人当てもなく彷徨う。

 

 

 

ああもし、一つ願いが叶うのなら。

 

 

 

(・・・・・私を、一人にして。もう誰にも、迷惑をかけたくない)

 

 

 

そう思い少女は今日も公園のベンチで一人眠る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2

8月もあと10日すれば終わるというのに、真夏の都会はとても暑い。天気予報のお姉さんが言うには、熱を貯めやすいアスファルトが原因で熱が籠もりやすいとかなんとか言っていた

 

「あ、暑い。溶ける・・・」

 

 そしてこんなクソ暑い中、ツンツン頭の少年上条当麻は腕や頭に包帯を巻いたまま、家路に就いていた。包帯で巻いた部分に熱や汗がこもってとても辛い。なぜまだ病院で安静にしなければならない見た目のまま家に帰っているのか。それは、少年の持つ残金が原因であった。

 

無能力者(LEVEL0)に支給される奨学金は少なく、またお盆に入ったと同時にキャッシュカードを踏み砕きお金を下ろすことが出来ず、さらにそのまま()()()()()()()()()()()()()。そんなこんなで少年が持つ現金は少なく、このままでは支払うことも出来ないため、早めの退院となったのであった。

 

・・・実際はその事故はとある少女をかばったことが原因で起きたことで、その少女が彼の入院費を支払ったのだが、少年からすれば見ず知らずの誰かに入院費を支払ってもらうなんて言語道断であるため、自分で支払うと言い、その少女にお金を返すよう医者に言ったのであった。

 

(・・・医者(せんせい)は俺が誰かをかばって入院したって言ってたけど、あの事故は俺の不幸で巻き込まれたものなんだけどなぁ)

 

そんなことを思いながら上条は炎天下の街を歩く。こんな腕じゃ料理もまともに作れないため、帰る途中で激安スーパーに寄り、数日分のカップ麺等を買う。片手しか使え内のことを不便に思いながら少し妄想に耽る。

 

(・・・こんな時、寮の管理人のお姉さんとか彼女がいたら『もう、しょうがないんだから』って言われながらご飯とか作ってもらいたいな~)

 

だが、そんなものは少年の妄想であり、現実は一人寂しいカップ麺生活なのであった。余計なことを考えていたら辛くなってきたのでさっさと帰ろう、そう思っていた上条の目に異様な物が映った。

 

 

それは、公園で眠っている少女であった。

 

 

何度も言うが、今日は本当に暑い。それなのに家にも帰らず、こんな日の当たる公園で眠るなんてはっきり言って異常としか言い様がない。さらに彼女が着ている服装は、夏物の服装ではなく、長袖のしかもどう見ても季節外れの物であった。

 

(何やってんだ、あの子。まさか、熱中症で倒れてるとかじゃ・・・っ!?)

 

 

そんなことを考えながら上条はいつの間にかその女の子に近づいていた。少女の格好は、長袖の灰色パーカーに長ズボン。髪の色は茶髪でショートヘアー。年は自分と同じか一つ上だと予測する。

 

「おいあんた、大丈夫か!?返事しろ!!」

 

そう言って上条は片手で少女の肩を揺らす。もし返事がないのなら急いで救急車を呼ばなくてはならない。そんなことを考えながら肩を揺らしていると少女から声が聞こえてきた。苦しそうな、辛そうな呻き声だった。

 

「う、うう・・・」

 

「おい聞こえてんのか、おい!?」

 

「・・・・・誰、なの?」

 

苦しそうな呻き声から、一転、気怠そうな声が少女から少女の口から漏れる。

 

「・・・あんた、何なの。勝手に人の体にベタベタ触って」

 

「ああ、それは悪い。こんな()()()()()の外で、しかも苦しそうに寝てたから、熱中症かと心配してさ」

 

「・・・暑い、ってあんた何言ってんの」

 

少女は今が冬の寒い日だと思っていた。だが事実は違う。太陽はさんさんと輝き、湿度や気温は冬のものではなく、その真逆の季節のものであった。

 

(・・・どういうこと、ていうかここどこ?)

 

少女は今自分が置かれている状況が理解できていなかった。季節は反転し、自分がいる場所はいつも寝ている公園ではなかった。視界に映るのは風車や見たことない高いビル、そしてその目に映る人の多くは自分と同じくらいの年齢の人たちであった。まるで長期休暇で学校を休んでいる位の学生の姿が目に映る。少女は学校には行っていない。だから自分の曜日感覚がズレているのは知っていたが、少なくとも今が土日や祝日ではないのは知っていた。だから、この学生の量が異常なほど多い事に違和感を覚えた。

 

「・・・・・本当に何処なの・・・っ!?」

 

突然頭を締め付けらるような痛みが走る。めまいや吐き気がして気持ち悪い。思わず少女はその場に蹲ってしまう。そんな彼女を見て少年は焦り始めた。

 

「おい、やっぱ熱中症になってんじゃねえか!取り敢えずこれ飲め!」

 

「・・・・・そんなのいらな「強がってんじゃねえよ!金なんか取らねえから、さっさと飲め!」・・・・」

 

怪しいものを見るような目つきのまま少女は少年から飲み物をもらう。それはよくあるスポーツ飲料であった。恐る恐る口に運ぶ。だが、体は正直なようで自身の乾きを癒やすかのように一気に飲み干してしまった。そんな少女のようすをみて上条は呆れていた。

 

「たく、何やってんだよお前。このクソ暑い中冬物のパーカー着てるとか、マゾなのですか」

 

「・・・・・別にどうでもいいでしょ」

 

愛想なんて感じない様子で、少女は答える。

 

「はぁ、無愛想なヤツ。とりあえずさっさと家帰って水分とれ。こんなアホなことして病院運ばれるとか、笑えねえぞ」

 

「・・・・・家なんて、ない」

 

そんな言葉が少女の口から聞こえた。聞き間違いかと思ったが、そうではなかった。

 

「・・・・・私に、帰る家なんてない」

 

「・・・・・・、」

 

呆然としてしまった。誰もが当たり前に持つそれを目の前の少女はないと言いはったことに。そして上条はこんなことを考える。目の前の少女はどこかの研究施設から逃げ、多分着の身着のまま出てきたのではないかと。だが、それだと少女の服装に違和感を覚える。その服装は、まるで自分とは時間の進み具合がずれているかのように感じ取れた。

 

「・・・・・分かったならほっといてくれない。私は一人の方がいいの」

 

そう言って少女は上条から背を向け、どこかへ行こうとした。だがその足取りはおぼつかない。今度こそ本当に、倒れてしまいそうな足取りだった。

 

上条当麻には、この少女に何が起きたのか分からない。今日会った赤の他人で、自分はもう大丈夫だと言った。だからここでお別れしてもいいと思った。でも。

 

(・・・ダメだ、やっぱりほっとけない。俺の家で無理にでも休ませた方が・・・)

 

勝手ニ関ワッテ、助ケヨウトシタ誰カヲマタ傷ツケルノカ?

 

自分ノ『えご』デ、マタ人ヲ殺スノカ?

 

 

 

コノ人殺シ。

 

 

 

そんな声が頭の中に響く。上条には念話能力テレパスのような能力は通じない。それでも、この声は自分にしか聞こえないものだと理解した。だって自分は、とある少女を助けられず、死なせてしまった。自分のわがままで勝手に介入して、なのに最悪の形で事件を終わらせた。

 

泣い苦しんでる女の子を救うことが出来なかったのに、また同じことを繰り返すのか。伸ばそうとした手が少しづつ引っ込められていく感覚に陥る。別の何かから力を加えられたのか、それが自分の意思なのか、分からない。

 

でも。だとしても。

 

それらを無視して上条は無理やり体を動かし少女の腕を引っ張る。先程よりも嫌そうな顔で少女がこちらを見る。

 

「・・・・・ほっといてって言ったよね」

 

「・・・ああ言ったな。でもな」

 

少女の腕び先程よりも力を込めていることにすら気づかずに少年は言葉を紡いだ。

 

「やっぱり見過ごすことなんかできない」

 

少年は少女の腕を掴んだまま歩き始める。ここではないどこかへ向かうために。少女は一瞬困惑したがすぐに思考を切り替え、掴まれた腕を振り払い、やめるように言う。

 

「ちょっ、何す・・・」

 

「うるせぇ。体調崩してる女の子ほっといてって、家になんか帰れるかっ!!」

 

「っ!?」

 

びくっ!っと少女の体が震える。だが上条はそんな様子を無視して、話を続ける。

 

「とりあえず、俺の家ここから近いからそこで休めよ。それにお前の服、汗でびっしょりじゃねえか。シャワーと洗濯機も貸してやるから、さっぱりしていけ」

 

「・・・・・・」

 

「無言は肯定とみなすぞ」

 

そう言って上条はもう一度少女の腕を掴んで家へと歩み始める。少女も観念したのか、それ以上何も言わなかった。

 

上条は掴んでいない右手を見る。自分が誰かを守ることが出来ず、その命を繋げなかったことがトラウマになったとしても、偽善使いフォックスワードですらない人殺しでも、それでも。

 

(目の前の誰かを、見捨てる理由にはならない)

 

それが少年の、上条当麻の決意の表れであった。

 

 

 

 

 

 

3

家についてすぐ、自分の服を貸し立花を風呂場に放り出した。ただ、男一人暮らしの寮に女性物の服や下着があるわけもなく、取り敢えず着ても違和感のないスウェットを貸し出した。

頭を拭き、上がったばかりで頬も少し赤くなった立花がリビングに来た。

 

「・・・お風呂、貸してくれてありがと」

 

「別に構わねえよ。それと悪いな、男物の服しかなくて」

 

「・・・借りてる身で文句が言えるわけないでしょ」

 

「それとノーパンだけどだいじょ、グフッ!?」

 

「・・・・・ふざけたこと言ってんじゃないよ」

 

絶対零度の目と共に上条の頭に拳が降りかかった。怪我をしている身ではさすがに避けることが出来ず、まともに喰らってしまう。

 

「ちょ、ちょっとした冗談じゃねえか・・・っ!?」

 

「・・・言っていいことと悪いことがあるって知らないのかな、この変態」

 

「す、すみません・・・」

 

「・・・ハァ、まあいいよ。名前もまだ知らないヤツからセクハラされるなんて予想外だったけどね」

 

「ああ、そっかまだ自己紹介してなかったか」

 

立花をベッドに座るように促し自分は床に座る。少し濡れている髪のせいか目の前の彼女が色っぽく見える。

少し咳払いをして上条はあらためて立花を見た。

 

「俺は上条当麻。改めてよろしくな」

 

「・・・立花響。よろしく」

 

やっぱり愛想なんて感じない短い言い方で答えた。上条も慣れたのかその無愛想さには突っ込まなかった。冷たいお茶を渡し、改めてあんなところで眠っていたのかを尋ねた。

 

「なあ、なんでお前あんなとこで眠ってたんだよ。それに家がないってどういうことだ?」

 

「・・・だから、あんたには関係のないことだって言ってるでしょ。何、人助けが趣味だとでも言うの?」

 

すこし馬鹿にしたように立花は返事をする。そんな挑発じみた返しには乗らずに、

 

「いや、だってあんなとこで寝てたら熱中症になってたかもしれないだろ。てか、普通になってたじゃねえかお前」

 

「・・・なってない」

 

「いや、なんでそこで強がってんだよ。何なの、青髪ピアスみたいに被虐趣味(マゾヒスト)なのですか」

 

「・・・なんでそうなんのよ、ていうか誰、青髪ピアスって・・・・・?」

 

明らか人の名前ではない言葉に疑問を持つが、古い付き合いの上条ですら彼の本名を知らず、ずっとそう呼んでたためそういうヤツなんだよとしか言いようがなかった。

 

「まあいいや、何か言いたくなさそうだし・・・。そんで、お前は今日どこで寝る気なんだ?まさか、またベンチで寝るとか言うんじゃねえだろうな」

 

「・・・仕方ないじゃん、それ以外に寝床なんてないし・・・・」

 

実際家出をしたときに持っていたお金はもうなく、野宿生活をしていたのもそれが原因であった。ネットカフェにも行けず、体を洗うことも出来ない、女の子の生活としては最悪な生活環境でいきていたのであった。

そんなふうにもじもじしている立花を見て、上条はある提案をする。普通に考えればあり得ない提案を。

 

「なあ、もしお前が良ければなんだけどさ。しばらく俺の家に泊まるか」

 

「・・・・・・・はあ!?あんた何言ってんの!?」

 

初めて彼女の口から感情的な言葉が出てきた。それもそうだろ。、今日始めて会った男からお泊まり宣言をするなんて、少女漫画でしかありえない展開だったのだから。だがそんな彼女を気にせず上条は話を続ける。

 

学園都市(ここで)野宿なんてしててたら警備員(アンチスキル)に捕まって補導されるか、不良共(バカ共)に見つかってグへへへ、な展開の二択だろ。前者ならお前は無理矢理家に帰らされて、後者なら下手したら二度と何処にも行けない可能性がある。外で寝るメリットなんて皆無だろ」

 

「・・・そう言って、あんたが私を襲わないって信じられると思うの?」

 

「一緒に寝るわけないだろ。俺は風呂場で寝て、お前はベッドで寝ればいい。それに、ちゃんと鍵も閉めるしさ」

 

「・・・あんたが寝てる間に私がこの家の物を盗んで出て行くかもしれないんだよ」

 

「そんなこと言う奴はやらない奴だよ。で、どうするんだ」

 

立花は考える。この家に来るまで、清掃ロボットや飛行船等からここが自分の知る場所ではないことは理解した。つまり、自分が望んでいた一人ぼっちの世界にいるのだ。だから、それでいいのだと思っていた。自分が願ったことが起ったのに、なのに。

 

 

何故か今になって、自分が一人ぼっちなってしまったことがとても怖くなってきたのだ。

 

 

だからなのか、今日始めてあった少年の言葉が心に沁みる。優しくて裏なんてない、善意だけの言葉がとても魅力的に感じる。信じていいのか、考え考え、そして、

 

「・・・・・分かった。じゃあよろしく、上条」

 

「おう、よろしくな立花」

 

こうして立花響はしばらくの間上条の家の居候になるのであった。すると寝床が決まったことに安心したのか、ぐーー、と立花のお腹から音が聞こえ、年相応の女の子のように顔が真っ赤になった。

 

「腹減ったのか。飯のことなんだけどさ、この手じゃ料理できないからカップ麺でもいいか?それとも弁当のほうがいいのなら買ってくるけど」

 

「・・・うん、カップ麺でいいよ。ていうか、その怪我どうしたの?」

 

「あーこれか。ちょっとバイクと事故っただけだ」

 

「・・・怪我してるのなら上条がベッド使いなよ。私が風呂場で寝れば・・・・・」

 

「バカ言え。女の子をあんなとこで眠らせる訳にはいかないだろ。それに、見た目ほど酷い怪我じゃねえよ」

 

・・・ならば何故、料理が出来ない等と言ったのか?そんな疑問を口にしようとしたが、この少年の頑固っぷりはここ数時間で分かったためもう何も言わなかった。

それから二人は食事を取り、早めに寝ることにした。上条は本当に鍵を閉め風呂場に布団を敷きねむりだした。

立花にとっては久しぶりの布団での睡眠、高級な素材が使われてたりや受注生産(オーダーメイド)の特別な物でもない普通の布団はとても柔らかく、ぐっすりと眠れる物であった。




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