とある戦姫の翳裂閃光   作:ドナルド・カーネル

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どうも作者です。
IBが詰まったからちょっとこっちの方の更新をしました。IBの続きはもう少しお待ちください。
それではどうぞ。


不安定な子供達/ Third day

1

『蜜蟻!返事をしてくれ、蜜蟻ッ!?』

 

森の中を叫びながら、少年はとある少女を探す。彼女を探している途中に携帯電話をなくしたせいで、連絡を取ることが出来ないため、最後に目撃情報があった場所『グラウンド・ジオ』に向かっていた。だが、この広い山の中を一人で探し見つけ出すのは、自分とは縁のない『幸運』が必要な程である。

 

(どこだっ、どこにいるんだよ・・・ッ!?)

 

『みつ・・・っ!?』

 

放とうとした言葉は最後まで出なかった。

視線の先にあるのは大きな人工湖、綺麗にそろえられた靴と封筒。そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『ッ!?』

 

それを見た瞬間、頭の中はグチャグチャになった。たくさんの感情が一斉に脳に叩き込まれまともな思考が出来ない。でも急がないと、自身が思っている最悪の事態になってしまう、そう感じた少年は直感に身を任せ、湖に向かって走り出し、その勢いのまま湖の中に飛び込む。

時刻は夕焼けが沈み始め、太陽の代わりに湖の周りに設置されている街灯の光がともり始める頃。人工の光のおかげで周囲は明るいが、さすがに水中までは照らせないようで、どれだけ必死にさがしても深く暗い水が邪魔をする。

 

けれども少年は、必死に探し出す。少女に生きて欲しいと、この世界は残酷なもんじゃないと伝えるために。

すると暗い湖の中ではあるが、見覚えのあるものを見つけだす。

チョコレート色の髪を持ち、常盤台中学の学生服を着ている少女。その少女こそ、上条当麻が探していた蜜蟻愛愉本人であった。

 

(蜜蟻ッ!?)

 

やっとの思いで見つけた少女の元へ向かうために、急いで泳ぎだす。

そして、近いづいてくる少年に気がついた少女もまた、泳いで少年の方

へと近づき。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『が、ゴホッ!!』

 

(みつ、あり。なんで・・・ッ!?)

 

少女の手を振り払おうとするが、信じられない程の力で掴んできために振り払うことはできなかった。

肺の中にある空気一気に消えていき、酸素が脳に届かなくなったせいで目の前が暗くなってくる。どうにかしないとと考えるも、何も出来なずに意識を保つことが出来るのもほんの十数秒だけだと、本能が悟った。

水の中ではあるため聞けるはずがないには分かっていたが、それでも少女に辞めるよう、最後の力を振り絞り、言葉を放とうとしたその瞬間。

 

『・・ドウシテ、キテクレナカッタノ』

 

『ゴホッ!?(え・・・?)』

 

『マッタテイタノニ、ズットヒトリデ、マッテイタノニ。ドウシテ、キテクレナカッタノヨ、コノヒトゴロシ。ダカラシネ。シネ、シネ、シネ、シネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネぇぇぇエエエエエエッッッ!!!!!!!???』

 

鬼気迫る表情で息を止めるのではなく、首を折りにかかり始めた。

そして、少年の首から、パキッっと折れる音が聞こえ、その音が聞こえたと同時に、少年の意識は暗闇に沈む。

そして、そして、そして・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あああぁぁぁああああああああああああああああッッッ!!!!!!??」

 

バスユニットから跳ね上がるように、上条当麻は目を覚ました。

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ・・・・・・」

 

息を整えながら自身の首が折れてないことを確認する。そして、傷を負っていないことを確認すると、ゆっくりと自分の心臓を落ち着かせようと試み始めた。

 

(・・・夢、か)

 

そう、あれは夢なのだ。あの日、結局少年は探している少女を見つけ出すことはできなかった。今もなお、あの少女は暗く深い水の中に沈んでいると事を、少年は知っている。

だからこそ、たまにあんな夢を見ては、自分が人殺しであることを再認識するのだ。どれだけ困っている人を助けようとも、善行を重ねようと、自分が犯した罪は、刺青の如く剥がすことは決して出来ない。

それでも、少年は生き続ける。自殺なんて方法で自分を罰しようとは思わない。生きて、生き続けて、必死に償い続ける事だけが、上条当麻に与えられた罰なのである。

ある程度息が整ってき出すと、寝汗ですっかり重くなったシャツを脱ぎ、ベタついた体を洗おうと思った。

 

あいつ(立花)、起こしちまったかな・・・)

 

あんなうるさい叫び声のせいで起こしてしまったと思うと、昨日からの罪悪感がさらに積み重なった気がした。

こうして今日も、少年の1日(償い)が始まったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

2

立花響は朝っぱらか不機嫌であった。それは昨日とある少年が起こしたハプニング(ラッキースケベ)が原因である。嫁入り前の少女の裸を見たという、完全にケジメもののやらかしをしてしまったために上条は、朝から許して貰えるように行動していた。

 

「あの、姫。そろそろ機嫌を治して頂きたいと、爺は切に願っているのでせうよ・・・」

 

「・・・別に怒ってなんかいないよ、この変態バカが」

 

「白い目で睨み付けながら罵声を浴びせてる時点でまだキレていますよね」

 

「ならもう少し真面目に謝りなよ・・・」

 

ベッドの上で足を組み、ある一定層の人からすればご褒美ものの視線をぶつける立花。だがその一定層の人間ではない上条からすれば、ただただ辛いものであった。

 

「・・・私、男に裸を見られたのって初めてだったんだけど・・・・・」

 

「じゃ、じゃあお互いハジメテという事に「脳ミソブチマケラレタイノカ・・・・・」本当すんませんでしたぁあああ!!?」

 

さっきまで赤い顔をして照れていたと思いきや、急にとてつもないプレッシャーを放ちながら物騒なことを言い出すとは、『女心と秋の空』と言われるほどに女の人の心は変わりやすいらしいが、そうだとしてもここまで真逆の反応をするとは昔の人も思わなかったであろう。

そして、彼女の性格は人の土下座を見てゾクソクする女王様タイプではないので、さっさと頭を上げろ的なことを言った。

 

「あの、ひとまずは許していただけたという事でせうか?」

 

「・・・まあ、一応は許してあげる」

 

「ありがとうございます!立花様っっ!!」

 

「まじでそういうのやめて・・・」

 

めんどくさそうな顔してはいるが、それでも先程よりもましな雰囲気になっている。

顔を上げた上条は時計を見ると、出かける支度をし始めた。

元々一人で食べる事を前提で買ってきた食材も、立花と一緒に暮らす事になったため予定が狂い、買い物と一緒に今日こそキャッシュカードの再発行をしに行こうと考え動いていた。

 

「どうする?今日も着いてくるか、それとも家にいるか」

 

「・・・今日は家にいるよ。まだちょっと疲れてるし」

 

「分かった。じゃあ鍵は置いてくから、もし出かけるなら鍵閉めたあとに郵便受けにでも入れといてくれ。あと、家の物は勝手に使って構わねえからな」

 

じゃあ行ってきまーす、言いながら出かけた上条を見送った後、先程まで座っていたベッドに倒れ込んだ。

 

(・・・ダメだ、やっぱり疲れが溜まったままだ。あいつが帰ってくるまで寝とこう・・・・)

 

ここ最近、あの不思議な力を纏った後は、風邪をひいたときみたいに体が熱くなって気怠くなる。何故そうなるのかはよく分かっていないが、眠ればある程度回復していた。ただ今までは公園のベンチかお金があったときならネットカフェで寝泊まりしていたので、完全に体の調子が戻るのに時間がかかっていた。

自分の物ではないが、ベッドで眠れるのでグッスリと眠れば明日には元に戻るだろう。そう考えながら目をつむると、意識は完全に夢の世界へと向かっていた。

 

 

 

 

夢を見るのは好きじゃない。

だって、夢を見るといつも嫌なことを思い出す。

陰口を叩いてくる同級生。死ねや消えろといった悪口が書かれた張り紙。唐突に投げられる石やバケツの入った水。

そういうのが嫌になって逃げるけど、逃げ場なんて何処にもない。それでもいつかたどり着ける、そう思いここではない何処かへと思い、走り続ける。

そして、何時も最後は決まって、真っ暗で自分の位置すら分からない暗闇で一人、胸から黄色宝石のような欠片が生えてくる。痛いのに、苦しいのに、叫んでも誰にも気づかれないまま、体全身が欠片となり、立花響は人ではない何かに変ってしまう・・・・・・。

 

 

「やだ、イヤだッッッ!!!!!!??」

 

叫びながら目を覚ます。浅く早い呼吸をしながら、体中汗でびっしょりであることに気がついた。汗はベッドにまで染み渡っており、借り物のベッドを汚してしまったと後悔する。

 

(・・・洗わなきゃ)

 

布団のシーツを外し、ベッド脇に置いてあったスプレー型消臭剤をマットと布団に使った後、それらを外に干す。そしてシーツと汗でびしょ濡れのスウェットを洗濯機に入れる。家のものは使っても構わないと言われていたことを思い出し、それに甘える形で浴槽も借りることにした。

 

 

 

 

「あいつ、しんどそうだったけど一人にさせて大丈夫だったかな」

 

買い物袋を肩にかけ、上条当麻は炎天下の中を歩いていた。なんとかキャッシュカードを再発行することができ、当分の食材と女の子のご機嫌取りにとアイスクリームを買い、溶けないうちにと急いで家に帰っていた。

額に汗をかき、やっとの思いで寮に着くが、行くときは壊れてなかったエレベーターがまさかの故障のため、7階までやっとの思いで階段を上り家に着いた。

鍵を開けよと鍵を探すが、家においてきたことを思い出しそのままドアノブを回す。

 

「ただいま・・・・・」

 

玄関に入るとそこにいたのは昨日と同様一糸纏わぬ姿の立花響であった。

何故裸なのか!?と驚くが彼女の髪が濡れ、頬がほんのり赤くなっているのを見ると、シャワーを使っていたのだと予想づけた。

そして昨日同様確実にキレた様子のまま、

 

「・・・・・・・・・・・・・・・何か言うことは?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・お仕置きの前にこれを冷凍庫に入れたいのですが」

 

「フンッ!!」

 

上条の顔面に拳がクリーンヒットした。

 

 

 

 

 

 

 

3

「本ッッッッッッ当に申し訳ございませんでしたぁぁぁあああああああああッッッ!!!!!」

 

「分かったから顔上げて・・・」

 

本日二度目の土下座なんて誰が予想しただろうか。でもここ2、3日ずっと土下座ばかりしているので、こう土下座の価値がガクっと下がっりっぱなしであることに気がついてはいない上条だった。

 

「・・・今回の件は私にも原因があるし、それに勝手にお風呂や洗濯機使ってたからどっちかと言うと私の方が怒られるべきだよ・・・・・」

 

「いや、使っていいって言ったんだからそこは気にしなくていいぞ。ところで、なんで布団を干してあったり、シーツを洗濯してたんだ?」

 

「・・・ちょっと寝汗が酷くて、それで汚しちゃって」

 

「ああそうか・・・」

 

(確か女の子って男よりも体温が高いんだっけ。それとも汗っかきなのかな・・・)

 

汚したことに対してばつ悪そうな顔をする立花に、変な考察をしだす上条。別段汗っかきな女の子が好きな訳でもないし、そうやって自分の身だしなみを気にすることが出来る点を見るに上条の立花に対する好感度は地味に上向きだったりする。

 

「あ、そういえばお前、今朝怠そうだったけど今は大丈夫か?」

 

「うん。寝たらだいぶマシになった・・・」

 

「うーん・・・・・・」

 

どっちかといえばまだ気だるげな印象を持つので、本当かどうか確かめるために上条は彼立花に近づき彼女のおでこに手を当て、

 

「!?!?」

 

「熱っぽさはないな。・・・って、あれ?さっきより熱くなって・・・・・」

 

「ほ、ほんとに大丈夫だからっ!ちょっとお風呂上がったあとで熱く感じるだけだからっ!?」

 

「お、おう。そっか、なら良かったよ」

 

顔を真っ赤にしながらうろたえる立花の姿を見て、本当に大丈夫そうだなと確信した。まだ調子が悪いのなら晩御飯を雑炊にでもしようかと考えていたが、この調子だと今日もカップ麺で問題は無さそうだ。

 

「じゃあ今日も昼晩共にカップ麺だな。本当ならちゃんとしたの作りたいんだけど、まだ左手の包帯外せなくてな。でも、明日にはやっと包帯外せれるからさ、ちゃんとした美味しいの作ってやるよ!」

 

「・・・いいよ。無理しなくても」

 

「いやいや、俺本当に飯作れるんだって!なんなら簡単な1品ものくらいは作ろう」

 

「そうじゃなくて・・・」

 

立花はちょっとだけ暗い顔をして、何かを言い淀みそうになったが、少しだけ時間を置いてから口をゆっくりと開き、

 

「・・・私みたいな怪しいヤツをいつまでも置いておこうなんて思わなくていいよ。今日で3日もここにいるけど、私は1度もアンタに何かを返すことはできてない。そんな恩知らずな人間を、いつまでも置いてたらお荷物になるのは見えてるからさ」

 

これは嘘だ。本当の気持ちは、ずっととは言えなくともまだここに居たいと思っていた。世界でたった一人ぼっちになってしまった自分の前に現れた暖かい光。その暖かさを知ってしまえば、もう一度あの冷たく暗い場所に戻りたいなんて思わない。でも、これ以上彼に迷惑をかけたくはない。ならば、まだ離れられるうちに出ていくべきなのだ。

少年の方は、鳩が豆鉄砲喰らったようにポカーンとした顔をしていたが、言われた内容をちゃんと理解してから少年は、

 

「いや、別にお荷物だなんて思っていないぞ。それに俺は、お前に何かして欲しいからここに置いている訳じゃねえし」

 

「じゃあ、なんで・・・・・?」

 

「初めにあった時も言ったけど、俺がやりたいからやってるだけだ。恩返しを望んでもいないし、報酬が欲しいからやってるわけじゃねえよ」

 

自分は人殺しだ。手を伸ばしていた少女を助けられなかった。でもだからって、それを理由に別の誰かを助けなくていいなんて通りは無い。偽善使い(フォックスワード)を自称する人間だからこそ、自分がやりたいと思うことは全力でやり通さなくてはならない。もしそれが出来ないのなら、ここにいる資格なんてない。だが履き違えるな。少年は資格を持ち続けるために人を助けるんじゃない。いつだって悲劇を見たくないからこの少年は助けるのだ。

 

「・・・・・、」

 

「まあお前が俺の家に居たくないって思うのなら、他の誰かに頼むけ「そんなことないっ!!」そうか、じゃあここにいろよ立花」

 

「!?・・・・・本当に、いいの?」

 

「ああ、男に二言はないっ!!」

 

ニカッと笑う上条を見て、涙が込み上げそうになった。自分はここに居ていいのだと面と向かって言ってくれた人がいたのだ。

ならば、今は、今だけは、それに甘えてもいいだろう。

 

「よし!じゃあ昼にしようか。立花、醤油とカレー、どっちがいい?」

 

「・・・じゃあカレー」

 

「了解。じゃあ腕によりをかけますか!!」

 

「・・・お湯注ぐだけじゃん」

 

「うっせ。こういうのはノリだよノリ」

 

「ハイハイ分かったから・・・」

 

少年のノリは今も苦手なところがあるが、それでも彼とのやり取りは少しだけ、楽しいと感じ始めだした。




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