転生したら霜男だった件 それいけジャックフロスト   作:機関銃くん

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10話《新たなスキルと胃袋小話》

 オークディザスター、ゲルド討伐から数日後。

 二代目ゲルドと沢山のハイオーク達。街の開拓も益々盛んになり俺は氷菓子を配給しながら街の住人達と仲を深め。

 リムルさんと共に街の開拓に右往左往する日々。

 

 そんなある日。

 

「嘘だと言ってよ……」

 

『ギヒッ誰に言ってんだ?主さん』

 

 頭から俺の声だけど俺じゃない奴の声が聞こえてきた。

 何言ってるかわからないだろ?俺も分からないし混乱は人一倍だ。

 よく漫画やアニメで、こいつ直接脳内にっ!?的な状況があったがまさか自分に起こり得るとは考えもしないだろう、普通は。

 暫く俺の身に起きた現象に対して処理が追い付かず呆然としていたがおもむろに立ち上がりリムルさんから貸して貰ってる自室から飛び出した。

 

『お?どこ行くんだ主さん。俺様、魔物の串焼き食ってみてぇぞ!』

 

 お前の食いたいもん何か知るかぁ!

 脳内でギャンギャン騒ぐ誰かさんの発言に反発し声を荒げる俺。だがこの声は俺にしか聞こえていないのだろう。

 そうすると、どうなる?

 端から見れば俺は大通りで突然大声を上げる変人だ。

 子供ゴブリン達から指を指されたこと俺は絶対に忘れないからな!!

 

 俺は心で号泣しながらリムルさんの元に駆け込んだ。

 

「リムルさん!!俺の頭で声がする!!」

 

 転げ込みながらリムルさんに泣き付いた俺。

 仕事中のリムルさん、秘書のシオン、半ばタックルするように飛び付いてきた俺に二人は驚き目を見開いていた。

 が、俺にはそんなことを気にしている余裕は全くない。

 

 だって今も絶えず脳内には愉快と笑い転げる何かが居るんだから!!

 

「うわーー!!気持ち悪い!!」

 

『気持ち悪りぃだぁ!?』

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「で、何があったんだよ……」

 

 ズズズッ………ゴクッ。

 お茶を啜り、舌を火傷してヒリヒリする俺は今朝の事を話し始めた。

 

「実は…………俺の頭に変なのがいるんだ」

 

 …………………………。

 

「変なのはお前だろ。みたいな目で見るのは止めてくれ!本当に本当なんだってば!」

 

 違和感を感じたのは正しくゲルド討伐の時からだった。

 戦闘に対する高揚感に血液や悲鳴を感じる度に走る快感。それこそ転生前だって俺はそんなサディストでは無かった筈だし、転生後だってサディスティックにはなっていなかったと思う。

 

 それなのに……あんな感じになっていて。

 ゲルド討伐後もちょくちょく耳鳴りみたいに聞こえていた雑音。今になって思えばあの雑音がこの声だったのだろう。

 

 そして今朝だ。

 ハッキリと聞こえてきた単語、耳鳴りのような雑音では無くて言葉。

 

『これからよろしくなぁ主さんよぉ』

 

 俺の声で俺じゃない言葉遣い、粗暴で乱暴な印象を与える何か。

 俺の中に何か居るだけでも恐ろしく気味悪いと言うのにまさか自身の声と同じなのだから、身を襲う恐怖はより一層だ。

 

「リムルさん!大賢者先生で俺を解析してくれ!お願いします!」

 

 俺は懇願した。どうか、解析をしてくれと。

 リムルさんも渋々了承してくれた。

 それもそうだろうな、俺を補食するのはこれで二回目なのだから。仲間を補食するのは気分の良いものでは無いだろうし。

 寧ろ嬉々として補食するような人なら、おやスライムなら凍り付けにしてかき氷に変えてやるわ。

 

「リムル様、執務の方は問題ありませんのでヨクルさんの要望を叶えてあげましょう!」

 

 おお!シオン!なんて良い奴なんだ!!

 

「シオン!ありがとう!料理が出来ない、不器用、触るものを粉砕するデストロイヤーだとか噂で聞いたがそんなことないじゃないか!聖女か!お前は女神だ!!」

 

「…………………………いえ!お気になさらず!さ、さ、善は急げですよ!」

 

 シオンに背を押されリムルさんに押し付けられる俺。

 

「お、おいシオン?どうかしたのか?」

 

「いえいえ、不安な事は早く解消した方がよろしいかと思いまして!」

 

「そ、そうか?ありがとうな、シオン!」

 

「…………………因みにヨクルさん、先程の噂は誰からお聞きに……?」

 

「え?あれは…………確かベニマルだったかな……何でそんなこと聞くんだって………あれ?シオンは?さっきまでそこに居たのに」

 

 何故と問い掛け振り替えればそこにはシオンは居らず、開け放たれた扉があるだけで。

 どこ行ったの?と首を傾げリムルさんの方を見れば額に手を宛天を仰いでいた。

 

「…………俺、不味いこと話しました?」

 

「あぁかなりな。ベニマルよ安らかに眠れ」

 

 そのすぐ後リムルの街に絶叫が鳴り響いたとか。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 その後俺はリムルさんの捕食者で喰われた。

 ヒヤリとしたスライムボディが俺の全身を包み吸い込まれる感覚、暗転する意識と全身を探られるようなむず痒い感覚。

 

 そして、目を覚ますと俺は真っ黒な空間に寝ていた。

 

「……ん?リムルさんの部屋じゃないよな………何処だここ」

 

 何処までも何処までも広い空間。

 恐らくは前にリムルさんに聞いていた胃袋という異次元空間だと思うのだが、多分で何となくだ。

 

「おーい!リムルさーん!!」

 

 どうすればいいか。

 なにすればいいのか。

 わからないのでとりあえずリムルさんを呼んでみる、リムルさんが反応すればそれでいいし、リムルさん出なくても大賢者先生が反応してくれればと思ったんだが、俺の声は届かさず声が反響し消えていく。

 

 暫く助けを呼んでみたもののリムルさん達からの返答が無く。

 どうしたものかと頭を悩ませていた俺。

 返答も無かったからてっきりこの空間には俺しか居ないんだろうなと勝手に思い込んでいた俺。

 

「貴様、我が姉と面識があるのか……?」

 

「うへぇあぁあ!?」

 

 背後から突如掛けられた声に驚き跳ねたのは当然だろう、だって一人だと思っていたんだから。

 

 しかし、驚いたことは別として誰かが居た事を確認できたのだから良しとしよう早速意気揚々と振り返った俺はまたしても驚く事となる。

 何かでっかい竜がいた。

 黒く分厚い鱗。口から覗く鋭い牙。黄色く光る眼光。

 そして、酔ってくる程に濃すぎる魔素。

 

「我の問いに答えろ、お前は我が姉と面識はあるのか!」

 

 俺の事などお構い無しに凄んで詰め寄ってくる竜、ずりずりと後退し近付いてくる顔を押し返すが竜はそれでも諦めない。

 目の前の自分勝手な振る舞いに俺はだんだんと腹が立ってきた。

 なんだなんだ。人をいや、善良な霜男を捕まえて突然詰め寄り意味のわからんことばかりいいよって!!

 

「はぁ!?あんたの姉なんか知らんわ!!そもそも名乗らず赤の他人を捕まえて質問責めですか!?自分勝手が過ぎるんじゃないか?そのでかい図体と膨大な魔素をちらつかせれば言うことを聞くとでも!?ふざけんなよ!?こちとら朝から変なのが頭にいるわで苛立ってんだ!!少しは他人の事も考えて欲しいね!!」

 

「……………………」

 

 はぁはぁ………言ってやったぜ。

 竜はポカーンと呆然と口を開けていたが、次の瞬間。

 

「フハッフハハハハ!!面白い!!お前面白い奴だな!!」

 

 大口で笑い始めた。

 

「…………面白いの意味がわからんのですが……」

 

「いや何、我を前に啖呵を切るような輩は久々でな。そうか、そだな。名乗りは大事であろう失念していた我の落ち度だ」

 

 そして、竜が名乗ったのはまさかまさかのお名前だった。

 

「我はヴェルドラ=テンペスト。ジュラの大森林の守護竜でありリムル=テンペストの盟友だ!」

 

「……………あー、ヨクルですぅ。よろしくお願いしまーす……」

 

 まさか消えた暴風竜に会うとは思わんだろ、普通。

 その後ここはリムルの胃袋であるとヴェルドラが説明してくれた、ここで無限牢獄に囚われたヴェルドラを解析し解除している最中だと言う事も。

 リムルさんとの馴れ初めも……聞いてないんだが。

 

 後何故俺を呼んだのかも説明された。

 何でも俺の魔素と雰囲気、出で立ちがヴェルドラの姉に似ているのだとか。

 昔姉にこっぴどい躾とは名ばかりな拷問を受けていたヴェルドラはめっぽう姉が怖いみたいだ。

 

 まぁ確かに躾の方法を聞く限りかなりクレイジー。

 爪を噛む癖を矯正するために爪を全部剥ぐなんて思わんだろ普通。

 その話をしているヴェルドラの怯えようはかなりのものだった。

 

「………わ、我怖く無いからな……我が領地に………来ている……なら!我が相手をせ、せねば……うん」

 

 それと怖すぎる姉も氷を扱うのだとか、だから余計に俺と被って見えたんだろう。

 だが、俺にはその姉との面識は無いし。

 

「気のせいじゃないのか?俺は姉とやらに会ったことは無いと思うぞ?」

 

「そ、そうか。我の……考えすぎやも知れん……な」

 

 白氷竜、ヴェルザード。

 それがヴェルドラの姉の名前らしく会ったことは無いのに何故か気にかかるそんな不思議な感覚を胸に俺はヴェルドラとの初対面を果たした訳だが。

 

「で、どうやって戻るの……」

 

「…………その内戻れる筈だ」

 

「なんでそこら辺あやふやなの、呼んだのあんたでしょ」

 

「だ、だって呼んだ事はあるけど、戻した事は無いんだもん!!」

 

 不貞腐れそっぽを向くヴェルドラ。

 デカイ図体でもんって……。

 

「まぁいいか、リムルさんが何とかしてくれるでしょ」

 

「うむ!流石は我が盟友と言う所だの!」

 

 ヴェルドラはまるで自分の事の様に誇らしげに胸を張る。

 よっぽどリムルさんのことを気に入っているだろう、そりゃ何百年も一人で過ごし、近寄ってきた魔物もヴェルドラを視認すれば蜘蛛の子を散らすように逃げていってだろうから。

 たった一人の友人、盟友か。

 かつて現実に飽き、一人で居たいとひねくれてた俺と友達になりたいと言った親友の姿が脳裏に浮かぶ。

 まぁ、こいつが原因で死んだんだが……それでも俺のたった一人の親友だった。

 あれ、何か悲しみが溢れてきたぞ。

 やはりなんだかんだっていてもアイツの事が大切だったんだな俺、死んでから気付くなんてな。

 最後に呪詛的な事を言ってしまったのが申し訳無いな。

 

 もう会えないアイツを思うとヴェルドラとリムルさんの関係が眩しくて尊くて、少し羨ましいなと思ってしまう。

 

「盟友か………仲良くて羨ましいよ」

 

「ん?何だ突然」

 

「いや、昔を友達を思い出してさ、もう会えないんだなって実感して。少しセンチメンタルな気分に……な……」

 

「………………うむぅ……そうなのか。……ならば新たな友を作れば良かろう。名案があるぞ!!今日から我らは友だ!盟友はリムルが居るからな、お主は我の親友だ!」

 

 まさか、まさかの急転直下の展開。

 暴風竜と友達になろうのフラグが立っていた。

 

「えっ?いや、俺が暴風竜の親友!?俺にそこまでの価値は無いだろう!?」

 

 ヴェルドラの友達宣言は嬉しいが、かの暴風竜の親友なんて。

 と、否定するけれど。

 

「ならば貴様にも名を授けなければな!!」

 

 親友に相応しい名を!!

 そんな感じで盛り上がっているヴェルドラを止められるわけもなく。

 

「名前ならもうあるんだからな!!」

 

「雪、氷…………うーむ……ヨクル、ヨクル……」

 

「駄目だこりゃ……」

 

 ヨクルに続く名を思考すること凡そ30分。

 胃袋内の時間の流れが外と同じかは知らないが、それくらいだ。

 

 俺は自身のスキルで作った雪で雪だるまを作っていると。

 

「決まったぞ!!!お主の名はヨクル=ライフだ!!」

 

 ヴェルドラが俺の名を宣言すると共に俺の身体の内から力が沸き上がる、それは全身にまで行き渡る。

 

「…………なんか超疲れんだけど……」

 

「うむ!!中々に良き名を授けられたのではないか!?流石我だ!!」

 

「………ありがとうな、ヴェルドラ。親友からの贈り物大事にするよ」

 

 ヨクル=ライフ。

 霜男にしてヴェルドラの親友となる。

 

 胸の内から溢れる力と刻まれた名を染々と感じながら胸に手を当てていると。

 突然身体が引っ張られ徐々に浮かび出す俺の身体。

 

「リムルからの呼び出しだな、それではな。何れ会おうぞ親友、ヨクル=ライフ」

 

「あぁそうだな。待ってるぞヴェルドラ!」

 

 

 眩い光に包まれ、目を覚ますとそこはリムルさんの執務室だった。

 リムルさんから水が入った木工カップが手渡され、受け取り口に含む。

 

「解析終ったぞ………ん?お前なんか変じゃないか?」

 

 と、怪訝そうな顔で見られる。

 でしょうね。

 何たってヴェルドラから名を授けられるとは思わんだろうからな。

 

「………何か胃袋でヴェルドラに会って、名をつけられた」

 

「へぇー、ヴェルドラに会ったのか。そんで名付けまで…………ん?名付け??」

 

「はーい、ヨクル改め。ヨクル=ライフになった霜男でーす」

 

 顔の横でピースなんかをして決めて見るが、そんな茶々で空気が変わるわけが無くて。

 

「えぇぇぇぇぇえ!?!?!?」

 

 この日リムルの街に2回目の絶叫が鳴り響いたとさ。

 

「フハハハハ!!聞いて驚けイフリート!!我に新たな友が親友が出来たぞ!!」

 

 その頃胃袋のヴェルドラはイフリートの将棋をしながら俺の事を話していた。

 鼻唄を歌いながら上機嫌だった。

 だから……ヴェルドラは気付かない。

 次のイフリートの一手、それは自身の敗北の一手だということに。

 

「王手です」

 

「…………………」

 

 

 

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