転生したら霜男だった件 それいけジャックフロスト   作:機関銃くん

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14話《シュニィの実力》

「本日はここに来ました!」

 

 そんな掛け声と共にやってきたのはジュラの大森林奥地、人も魔物も滅多に寄り付かない洞窟。

 ここはかつて暴風竜ヴェルドラが封印されて居た地であり、今も尚高濃度の魔素が滞留する危険区域。

 

 加えて高濃度魔素を乗り込もうと魔物が跋扈する魔窟となってしまったらしく。

 不幸なことにこの魔窟には資源がわんさかあるみたいで、始めリムルさんが召喚されたのも魔窟だったらしい、その後ヴェルドラの魔素で育っていたヒポクテ草、高純度の魔鉱石がたんまりあったと言う。

 

 ヒポクテ草はフルポーションの原料として重宝され、リムルさんが解析、複製出来るとはいえ手放すには惜しい。

 魔鉱石は武具の作成等で使用し高純度であるほど使用者の魔素に良く馴染むとか何とか、こちらも手放すには惜しい。

 

 どちらも後々リムルさんの町の開発に役立つ筈。

 

 ならば魔窟の中を掃除し無ければな、となったわけで。

 そこで俺とシュニィに白羽の矢がたった。

 

 俺の絶氷者(ヴィネア)は広域殲滅に適しているからな。

 魔素を流して凍らせてしまえばそれで終わりだ。

 

 後このお掃除にはシュニィの実力を測るという意味も含まれている。

 俺の前でキャキャと楽しそうにはしゃぐシュニィ。

 先日仲間として迎えられたのだが、実は冷たい顕現(イタカ)と言う宇宙的恐怖的な種族である。

 

 何が出来て何が出来ないのか理解しなくては主として制御出来ないからさ、まぁリムルさんにも言われていたし。

 

「シュニィ君。これから洞窟探検だ!」

 

「おぉーー!!たんけん!!」

 

 シュニィの手を引きながら俺達は魔窟の中へ。

 暫く魔窟の中を歩いて行く、魔窟内は薄暗く光藻の様なものがボンヤリと照らす。

 ひんやりとした空気と奥から漂う魔素と魔物の血の匂い。

 

「ヨクルさま!ぼくからはなれたらダメだからねっ!」

 

「ははっありがとう。頼りにしてるよ」

 

 ふんすっ。

 気合い十分と言った様子で俺の手を引いて先導するシュニィ。可愛い。

 そうして暫く歩いた頃奥から呻き声の様な物が響いてくる。

 

 その声にシュニィの足がピタリと止まった。

 

 ん?もしや怖いのだろうか?

 なんて親心的なムーブで手を優しく握り直す。

 

「シュニィ大丈夫か?怖いなら俺が前を歩こうか?」

 

 そう問い掛ければシュニィは勢い良く顔を上げ俺を見詰めると。

 首を横に振った。

 

「だいじょうぶ。ヨクルさまはぼくがまもるよ!」

 

「…………そっか、なら任せようかな。でも無理しないでくれよ」

 

「うん!」

 

 そして再び魔窟の奥へと歩き出す。

 また暫く道なりに歩いて行く、魔窟は奥に行くに連れてどんどんと複雑になって行き。視線を感じるようになってきた。

 

 じろじろと値踏みするかのような粘着質でねっとりとした視線に背筋に走る不快感と嫌悪感。

 ましてやその視線が我が子同然のシュニィにまで注がれているかと思うと怒りが沸き起こる。

 

「…………絶氷者(ヴィネア)……」

 

「ん?ヨクルさまなにかいった?」

 

「いいや、何でもないよ。さぁ先を急ごうか、モタモタしてたらリムルさんに叱れちゃうからね」

 

「わわっそれはたいへんだ!いそがないと!」

 

 俺達は小走りで道を進んで行く。

 

『キシシッ………とんだ親バカだな……!』

 

 俺達が去った後には生命は存在しなくなっていた、何故なら俺が片っ端から凍らせていたからな。

 シュニィをゲスな目で見る方が悪いと言っておこう。だから俺は悪くない、それに元々処理する筈だったんだから問題ないだろ。

 解離者(カワリモノ)から呆れたような反応をされるが、知らん顔でシュニィとの探検を続ける。

 

 結構な距離を歩いただろうか。

 ちょうど大きな地底湖にたどり着いた辺りで何かが地底湖から飛び出し水飛沫を上げ俺達の前に降ってきた。

 

 巨大な甲羅には何個もの魔鉱石を癒着させ、甲羅から伸びる手足はずっしりと重量を感じさせる程太い。

 それは俺達を視認すると目を細め、次の瞬間手足を閉まったかと思えば高速回転。

 俺達に突っ込んで来た!?

 

「うおっ!?」

 

 俺は咄嗟にシュニィを抱き上げると全力回避、横に思いっきり飛ぶ。

 ずさっ!!

 先程まで俺達が居た場所は甲羅の回転で地面が抉れ、土埃が立っていた。

 

 そう、それは亀。

 全長6mはあろうかというほど巨大な亀、絶対に硬ったいなと感じさせる重厚で年期の入った甲羅。

 のっそりと遅い動きとは反対にあり得ないほど高速の回転を実現させる筋力。

 

 実際、あの魔鉱石が張り付いた甲羅の回転は掘削機とほぼ変わらない。

 つまり、当たったらミンチ確定な訳で………。

 しかもあの掘削機、俺の氷も粉々にしてしまいそうで………どうしましょうかね。

 

「ヨクルさま!ぼくにまかせてやっけるよ!!」

 

 抱き抱えていた筈のシュニィがモソモソと俺の腕から這い出るとビック亀の前に立ちはだかる。

 

「シュニィ!?無理しなくていいんだぞ!!」

 

「だいじょうぶ!まかせて!!」

 

 ニカッと力瘤を見せながら笑うシュニィ。

 いや確かにムキムキで凄いですけど、あの甲羅スピンアタックにシュニィが耐えられると思えないぞ!

 しかもビック亀は既に回転を始めているではないか。

 ギャリリリリリ!!!!

 地面を削りながら尚も回転数、速度を上げて行き。

 

 シュニィ目掛けて突撃してきた!

 

 両手を広げ受け止める気満々のシュニィに俺は思わず目を塞いだ。

 

 

 しかし、何時まで立っても衝撃が来ない。

 俺は恐る恐る目を開けると、そこには思いがけない光景が広がっていた。

 

 ガガガガガガガッ……!

 

 なんと自身の身長その何倍もある亀をシュニィは真っ正面から受け止め、甲羅を鷲掴みにしているではないか。

 信じられない光景に俺は呆気に取られた。だってそうだろう、まさか掘削機を受け止められるとは思わんだろ。普通に。

 

『あれは《豪腕》と《屈強》のスキルだな』

 

 続けて解離者(カワリモノ)が《豪腕》《屈強》の解析を行ってくれていたらしく情報が脳内に流れてくる。

 

 

 

 《豪腕》

 強化:自身の筋力、握力、腕力を1000倍に高める。

 

 

 

 《屈強》

 硬化:身体強度を高める。

 

 自傷回復:攻撃を受けている間、持続回復が発動する。

 

 

 

 内容はシンプルイズベスト。殴って耐えて勝つという気概を感じますね。

 正しく脳筋。THE脳筋だった。

 

 しかし、それでも亀は止まらなかった。

 シュニィの受け止めた腕からは耐えず血が吹き出し。

 傷口が回復して塞がっては再び血が吹き出し。

 傷付き回復して傷付き回復しての繰り返し。

 

 このままではジリ貧になってしまう、幾ら回復があるからといっても痛みを感じない訳じゃない。

 

「シュニィ!!」

 

 俺は加勢しようと掌を地面に当て、魔素を流し込み亀を氷付けにしてやる。

 そう思っていたのだが。

 

 シュニィから思いもよらない台詞が飛び出した。

 

「ぼくがたおすよ」

 

 傷付き血塗れになりながらもシュニィは俺に対して笑い、そう言い放った。

 

 俺は微かに目を見開き。

 無理するな!

 そう伝え、後は任せろと肩を引いて助けに入りたかった。

 助けに入ることはとても簡単だ。俺のスキル《絶氷者(ヴィネア)》を使い、亀の身体能力、生命活動を凍結してしまえばそれで終わる。勿論生命活動の凍結なんて事触れなければ出来ないが触れるだけなら怪我を覚悟し触れば良いのだからすぐにでも出来る。

 肉を切らせて骨を断つという奴だな。

 だが………ただ真っ直ぐに俺の方を見るシュニィに対して俺は助けに入る事が出来なかった。制止の声すらグッと飲み込まざる終えなかった。

 信じて任せて欲しい。俺と同じ蒼い瞳がそう強く訴えかけていたからだ。

 

 目の前でシュニィが血塗れになっている様子を黙って見ているのは辛いが。今頑張っているシュニィが信じて欲しいと願うのならば、俺は信じようじゃないか。

 

  シュニィの主として!!

 

「おう!やっちゃえ、シュニィ!!」

 

「うん!!」

 

 返事をした瞬間、シュニィの魔素が爆発的に膨れ上がった。

 ボウッ!!!!!

 

「《冷たい顕現(イタカ)》」

 

 シュニィがそう告げると突如魔窟内の雰囲気が一変する。先程まで洞窟特有のヒヤリとした空気が漂っていたと言うのに今は重く全身に酷い倦怠感が襲う。

 それは収まること無く、寧ろ徐々に強くなり。シュニィを中心に円のように渦巻く冷気。

 冷気は次第に空気中の水分を凍り付かせ、シュニィの身体に氷が纏わり付くと武装して行く。

 

 触れた者を凍てつかせ打ち砕く、手甲。

 踏み締めた大地を凍らせる、足鎧。

 鋭い冷気を放ち相手を震え上がらせる、額当て。

 

 氷の獣のような姿となったシュニィ。

 四つん這いになり飛び出した!!

 シュニィは音を置き去りに加速し、目にも止まらぬ速さで亀に接敵すると全力で殴る!!

 

『グゲェェ……!?』

 

 呻き声と共に後退した亀。

 頭を振り再びスピンアタックを見舞おうとした亀だったが。

 

『…………グ……ゲ……!?!?』

 

 なんとシュニィに殴られた箇所から氷柱が貫通する。

 時間差で身体から生えた氷柱に亀は困惑する。

 

 しかし亀に理解する時間など与える筈もなく、シュニィはタックルを頭に当て。

 仰け反る亀の口を鷲掴み、ぶん投げる。

 

 仰向けになり無防備な亀の腹を殴る、殴る殴る殴る!!

 何本もの氷柱が亀を貫き、血が氷柱を流れ落ちて行く。そしてシュニィが何十回と殴り続けると。

 

『…………………グェ…………』

 

 亀の命が尽きた。

 何十本もの氷柱に貫かれた亀の姿は最早亀としての原型を留めておらず、氷の針山となった。

 

「ヨクルさま!おわったよ!!」

 

「お、おお。良くやったなシュニィ、偉いぞ!!」

 

 血塗れのまま満面の笑みを浮かべ駆け寄ってくるシュニィの姿。

 ひぇ……亀を惨殺した後無邪気に笑うシュニィは何か狂気的なものを感じさせる。

 

冷たい顕現(イタカ)……か。やべぇな……!』

 

 解離者(カワリモノ)の呟き。 

 

 

 

冷たい顕現(イタカ)

 

 顕現:イタカを身に宿す。一定時間、身体能力大幅向上。

 

 狂氷武装装着:全身に氷の武装を施す。触れた対象へ氷柱を撃ち込み、対象の魔素を喰らい氷柱が大きくなり貫く。

 

 狂気:自身の周囲にいる生物へ狂気を振り撒く、一定時間狂気を取り込むと〓・・★◆〓∞◆・〓×◆★。

 

 

 

 ひぇ…………。

 何で文字化けしてんのさ!!

 どうなるの!?一体どうなるのー!?!?

 

 まぁそれは置いといて。

 えっ?軽くないかって?

 

 だって狂気に振りきれたらどうなるか……。

 クトュルフ神話を少し齧っていたら大体想像出来るだろう。そう、そう言うことだ。

 

 そんなことよりも今はシュニィの手当てが先だ。

 自傷回復は攻撃を受けている間の回復だからな、敵の居ない今回復することが出来るのは俺だけだからさ。

 

「《脈動回復》」

 

 シュニィの身体を包むように白い花が咲き誇り、花弁の触れた箇所から徐々に回復して行く。

 しかし、傷は直せても失った血液は復元出来る訳じゃないので立てるようになったら帰ろうか。

 

「ねぇヨクルさま!ぼくがんばった!」

 

「おう、偉いぞ。格好良かったな!」

 

「えへへ、それでね。これひろった!」

 

 と言いシュニィが懐から取り出したのは白い石。

 微かに発光する不思議な石を受けると解離者(カワリモノ)に解析を頼む。

 

「どうだ?」

 

『おう、魔鉱石だな』

 

「へぇー白い魔鉱石なんてあるんだな……」

 

 リムルさんから見せてもらったのは七色に輝く鉱石だった筈。

 キラキラと輝く白い魔鉱石を掲げ、眺める。

 

「ヨクルさまにあげる!」

 

「え、いいのか?シュニィが見つけたんだろ?」

 

「ううん、いいの!ヨクルさまのためにひろったんだから、うけとって!」

 

「そっか…………なら有り難く貰おうかな。ありがとなシュニィ」

 

「うん!!」

 

 暫く脈動回復を掛けていたシュニィ。

 見た目よりも心身にダメージを受けていた為回復に時間が掛かってしまったが漸く歩ける迄回復したので今日は帰ることにした。

 

 リムルさんには魔窟の奥にデカイ亀が居た事と大抵の魔物は凍らせて処理した事。

 そして、シュニィの実力を報告した。

 

 肉弾戦特化型で神風特攻隊戦法で戦い。奥の手《冷たい顕現(イタカ)》。

 超絶強化、拳と追撃の氷柱。

 そして文字化けスキル。

 

 狂気を報告した際のリムルさんの何とも言えない表情、俺も釣られて二人して不思議な顔を浮かべた。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「こんちは!クロベエ居る?」

 

「おん?なんだべヨクル様、おらに用か?」

 

 俺が訪ねたのは町から少し離れた場所にある、クロベエの工房。

 奥から布で額の汗を拭いながら現れたクロベエに俺はあるものを手渡した。

 

「………魔鉱石だべか?不思議な色さしてんなぁ」

 

「そうなんだよ。でさ相談なんだが………」

 

 俺はクロベエにある物の作成を頼んだ。

 クロベエは俺の依頼内容に不思議そうに眉を潜める。そりゃそうか、わざわざ潰す意味が無いもんな。

 だが、俺の手にはその方が馴染むんだよ。

 

「刃の潰れた刀を造ってくれ」

 

 白い魔鉱石がキラリと輝いた。

 

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