転生したら霜男だった件 それいけジャックフロスト   作:機関銃くん

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16話《ガゼル・ドワルゴ》

「この辺かな……おっ、いたいた』

 

 ハクロウの稽古場から森林を抜け、魔素を頼りに進んで行くと其処には羽を羽ばたかせる天馬(ペガサス)とフルプレートアーマーで武装した人達。

 

『いや、ありゃドワーフだぜ?』

 

 ドワーフ? 

 確かカイジン達と同じ種族だったけ、て言う事はカイジン達と同郷?

 そう言えば、前にリムルさんから聞いたな何だっけか。

 えー………あ、思い出した。武装国家ドワルゴンだったはず。リムルさんがエールぶっかけられたって所だったよな。

 

「何しに来たんだろうな………」

 

 完全武装している様子からして遊びに来た訳じゃないよな。しかも魔素の感じは滅茶苦茶警戒しているみたいだし。

 

 どうしたものか。

 勝手に出て行って事態をややこしくするのもな。 

 リムルさんに報告した方が良いだろうか。

 

 何て考えている内にカイジンや鬼人達を引き連れリムルさんがやって来た。

 

「久しいなカイジン、スライムよ」

 

「お久しぶりでございます、王よ。本日は何用で参られたのでしょうか?」

 

「いや何、其処スライムの本性を暴いてやろうと思ってな」

 

 あれが王様か。

 ドワルゴン王国、国王ガゼル・ドワルゴ。

 精悍な顔立ちと立派な髭、渋いおじ様。見た目、THE・王様って感じ。

 やはり王様だからだろうか魔素の質も量も他のドワーフ達に比べ段違い。しかも賢王とも呼ばれ、王でありながら剣の腕も超一流。

 

 しかし、ガゼル王のリムルさんに対する発言は鬼人達の反感を買ったみたいだな、魔素が漏れ出ていますよー。

 隣にいるハクロウからも剣気が漏れ出てるし、目付き悪すぎて怖いんだけど。

 

 でもリムルさんを崇めている鬼人達には悪いけど俺からしたらガゼル王の言い分の方が正しい様な気がするけどな。

 だって王様が来たのは豚頭魔王(オークディザスター)の件をリムルさんが解決したからだろ?

 ジュラの大森林を壊滅させる一大事だった訳だし、しかも豚頭帝(オークロード)から魔王への進化。

 不足の事態に陥りながらも見事解決して見せたスライム。

 

 それは隣国からしたら確かめ無いわけには行かないだろう、もしかしたら豚頭魔王(オークディザスター)よりも厄介な敵になる可能性もあるわけだからさ。

 

「リムル様に対しあの発言。赦しがたいですな………」

 

「でもあっちも王様って立場があるわけだし、下手に出るわけにもいかないだろうしな」

 

 カイジンもめっちゃ腰低い感じだし、鬼人達の殺気にリムルさんも困り顔だぞ。

 対してガゼル王は澄まし顔で気にもしていない様子、その態度が更に鬼人達の気をさか撫で怒気が高まる。

 嫌なピリピリした空気の中、二三言葉を交わしたリムルさんとガゼル王だったが、何故か剣術勝負をすることになってしまっていた。

 

「剣を取れ。剣を通してお前と言う人格を図らせて貰おう」

 

 おお、王様もそっち系の方だったみたいだ。

 拳を交え、理解する系の方だった。

 

 リムルさんからしたら勘弁願いたい所なのだろうが、ガゼル王は殺る気満々で引く気は無いのだろう。

 それに加えて鬼人達の期待の視線を受けて引き下がる訳にも行かず。リムルさんは渋々腰から刀を抜き取り構えた。

 

 ガゼル王とリムルさんは刀を交え鋭い剣劇、数回の攻防の末。

 何故かガゼル王の太刀筋その癖がとても見覚えがあった、何処だろうかと考えハクロウじゃん。

 何故?

 

「中々成長しましたの」

 

「ガゼル王ってハクロウと会ったことあるの?」

 

 そう聞けば何でも300年ほど前にガゼル王へ剣の指南を行っていたらしい、通りで見たことがあるものだ。

 

 なんてハクロウの昔話を聞いている内に勝負は佳境に差し掛かる、ガゼル王の威圧をリムルさんが気合いで押し返した所でガゼル王が奥義を出してきた。

 だが俺と同じようにハクロウから剣の指南をされているリムルさん。見事ガゼル王の奥義を防ぎリムルさんの勝ちで勝負を終えた。

 

「…………ところで何時まで覗き見しているつもりなんだ、ヨクル」

 

「………やべっバレれら」

 

 ガゼル王の圧が弱まって、俺の魔素を感知されたのだろうか上手く隠れていたつもりだったのに流石リムルさん、いや大賢者さんだろうか。

 まぁドワーフ達から隠れる必要も無くなった訳なので、ここは素直に観念して茂みから姿を現そう。

 ガサゴソと茂みを掻き分け出て行くと。

 先程まで何も感じなかった場所から俺が現れた事にドワーフの戦士達は驚き武具に手を掛け始めたんです。

 

 もう、俺ビックリ。

 え、え、第2ラウンド始まるの?

 

 と、あたふたしている内にリムルさんが前に出て俺を背後に隠し。

 

「待ってくれこいつは俺の………親友?……だからさ!」

 

 庇ってくれた訳だが。一言言うなら、おい、そのクエッションはなんだよと言いたい。不振がられるだろうが。

 なんて一悶着があり、俺の後に続いて出てきたシベリアンハスキーが刀を背負っていた事もあってガゼル王の眼光が鋭く光ったが声をかけられる前にそそくさ逃げてきた。

 失礼?粗相?

 は?逃げるが勝ちと言うことわざをしらんのかね?

 

『ひよってんな。情けねぇ主さん』

 

 うっせ、不必要な争いはしないんだ!

 

「えー、霜男(ジャックフロスト)のヨクル=ライフです。よ、よろしく……?」

 

「…………ふむ、霜男(ジャックフロスト)とは珍しい」

 

 新事実発覚。

 俺は珍しいらしい、なんでも霜男(ジャックフロスト)という魔物は極寒の地。

 具体的にはマイナス何度の世界でしか、その存在を保てないらしい。

 そもそも俺の容姿、人間の姿なのだが。本来の姿は雪だるまの様に雪が固まった姿みたいなんだってさ。

 だから寒くないと溶けるらしい。

 

 俺は特殊魔物(ユニークモンスター)名持ち(ネームド)と二重に珍しい部類だった用だ。

 改めて自身の特異性に触れてしまった訳なのだが、前ほど驚きが無いのはここ最近驚きの連続で慣れてしまったのだろうか。

 

 まぁそんなことは今気にしたところでどうしようも無いのだから気にしない事にした。

 切り替えって大事だと思う。

 

 そして俺達はガゼル王とその部隊を客人として迎え、只今日本家屋風の屋敷にて宴会の真っ最中なのだ。

 皆がどんちゃん騒ぎ、街で開発中の酒を持ってきたり、ポテトのフライ、畑で育て収穫した野菜、魔物の肉等がズラッと並ぶ。

 

 リムルさんはガゼル王と呑んでいる。

 何か真剣な面持ちで話をしているようで邪魔するのも気が引け、俺は宴会場をそっと抜け出し外に出ることに。

 

 外のベンチに座ると懐からアイスを取り出しペロペロ。

 

『戻らなくていいのかよ?』

 

 いいさ、俺は関係ないだろ?

 この街はリムルさんとその仲間達の物だ、俺が変に干渉するのもな。

 それにそういうの苦手だし、何か重大な決定とか責任のある仕事とか苦手だからさ。

 

『………そうかい………』

 

 本当にリムルさんは凄いと思う。

 魔物達の命を預かり、生活を守っているだから。

 俺には絶対に出来ないな、俺は俺の身を守るのに精一杯さ。何せ臆病者の冷血者だからな。

 

『……違いない、それに多重人格者だしな。カハハッ……!』

 

 おいおい、ここはそんなこと無いと言うところでは?

 

『言ってほしいのか?』

 

 ………………いや、流石理想の君()だな。

 

 俺が外で自虐的な話に花を咲かせていた頃。

 

 宴会場でこんな話が出ていたとは梅雨ほどにも思わなかった。

 

「所でリムルよ。ヨクルと言ったか、あの霜男(ジャックフロスト)は」

 

「あぁあいつがどうかしたのか?」

 

「………いや……何でもない」

 

 なんとも歯切れの悪いガゼル王の返答にリムルは首をかしげた。

 

「……何かあるなら話して欲しいんだが」

 

「ならば言おう。霜男(ジャックフロスト)とは元来極寒の地を好む、何故なら其処でなければ生きて行けぬ故に。だがあの者は違う、この土地でも生命を散らすこと無く生きている。普通と違うと言うのは異常と言うことだ。俺は貴様(リムル)を信用しているが……あの(ヨクル)は違う。目を離さぬ事だな」

 

 今日知った奴に何を偉そうに。

 そう思った、だが。リムル自身この世界の事、魔物の事情、その全てを把握している訳ではない。

 ならばこの忠告はありがたく受け取って置こう。

 

「忠告は受け取る。だが、何があろうと俺がアイツを止める何せ親友だからな」

 

「ふっ……そうか。要らぬ世話だったな。赦せ」

 

「いやいいさ。俺よりもあっちの方が大変そうだしな」

 

 リムルが後方を指差せば。

 

「貴様!主………モゴッモゴゴゴッ!!!!!」

 

 其処にはベニマル、シオン、その他魔物達によって拘束され口を塞がれたクロウの姿。

 恐らく先程の会話が聞こえていたのだろう、主を愚弄されたとあれば黙って居るわけには行かない。

 

「ガハハッなる程なあの者にもリムルと負けず劣らずの器があるようだ。今度はあやつの本性を暴くのも面白いやも知れんな」

 

「グガーーーー!!!!!」

 

「………その辺にしといてくれよ」

 

 

 なんて、会話がされていたなんてな。

 

 外でアイスを食べ、宴会場に戻ってきた俺が見たのは両手両足を拘束され口をタオルで塞がれたクロウの姿。

 そしてそれを見て笑うガゼル王と困り顔のリムルさん。

 

「………うん?何が?」

 

 俺には何が何だが。

 とりあえずクロウをおとなしくさせようとタオルを外し素早くアイスを放り込む。

 

「むぐっ………!?」

 

 物理的に黙らせる。

 

 モゴモゴ、デカイ身体でアイスをチマチマ舐めるクロウ。大型犬か?

 と、クロウをおとなしくさせた所で俺に視線が集中していたことに気付く。

 

「………ヨクル殿、それは何でしょうか?」

 

 近くに居たドワーフにアイスを指差し問われた俺。

 ならばこう答えるしかあるまい。

 

「………これはアイスだ!!ご賞味あれ!!」

 

 アイスをばら蒔き、旨さを布教して行く。

 誰もが甘美な優しいミルクの味に酔いしれる。

 

「ガゼル王もお一ついかがですか?」

 

 始め目にする食べ物にガゼル王はビクッと肩を跳ねさせたがリムルさんがペロペロしてる様子におずおず受け取ると舌を這わせた。

 

「………旨いな……」

 

「良かった!もっとありますよ?今度は果実アイスなんてどうですか?甘酸っぱい口当たりが癖になりますよ!」

 

 俺は沢山の方にアイスを振る舞った。

 そりゃ、誰だって手作りを喜んで貰えたら嬉しいものでしょうかが。

 まさに大盤振る舞い。

 

 それにしれっと宴会に参加していたトレイニーさんにも美味しいを頂きました。

 

「リムルよ、俺は考えすぎだったかも知れんな……」

 

「………どうだろうな、アイツはよくわからんから」

 

「さぁ、もっとありますよーー!!」

 

「「「「「アイスさいこう!!!」」」」」

 

 アイスは皆を繋ぐ。

 

 


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