転生したら霜男だった件 それいけジャックフロスト   作:機関銃くん

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18話《人間のお客さん》

 魔王ミリムと魔王カリオンのタブルパンチ、突撃テンペスト国を受け、カリオンの使者をミリムが殴ってしまうという暴行傷害事件から数日。

 

 全くもってあの事件には肝を冷やした。

 ここテンペスト国は建国から数週間、国としてはまだまだ若輩にも関わらず国主は絶賛魔王注目のリムルさん。加えてここジュラの大森林は大国に挟まれる領土である。

 今までは暴風竜の加護のもと不可侵領域だったが暴風竜はリムルさんの腹の中。

 

 いつかは他国からの接触があるだろうとは思っていたけれど、まさか他国の使者を殴り飛ばす事になろうとは。

 それが同じ魔王の手であったとしても、難癖つけられて此方が不利になる条件を飲まされる可能性もあるのだから。

 

 と、頭を当初は抱えていたものの。

 

「平和だねー………」

 

「平和なのだー!」

 

「へいわだー!」

 

 俺は今縁側でミリムとシュニィの三人で仲良くアイスを楽しんでいた。

 

 あの事件以来、使者を送り返したユーラザニアからは一切の音沙汰無しだった。

 余程ミリムが魔王として位が高いのか殆ど不問みたいな感じで収まりつつあった。

 

「うむ!やはりアイスは旨いのだ!もう一本欲しいのだ!!」

 

 棒アイスの最後の一口を頬張ったミリムは冷たさと甘さに舌鼓を打ち更なるアイスを求めにじり寄って来る。

 確かにアイスを一本、二本と求めてしまう気持ちは分からなくもないが。

 

「駄目だろ。リムルさんから食い過ぎ注意くらってんだから、マブダチとの約束は守らないとなー」

 

「ぐっ……ぐぬぅ……確かにそうなのだ、約束は守らねばな……!」

 

 だが、目線はアイスに釘付けだぞー。

 仕方なしにこっそりアイスを取り出してやる。

 

「しー。リムルさんには内緒だぞ?」ニカッ

 

「う、うむ!ありがとうなのだ!」

 

「あ、ヨクルさま、いけないんだ!リムルさまにつげぐちしないと…!」

 

「あ、あわわ!ちょっと待つのだ!シュニィ!はんぶんこしよう!なっ!だからリムルには言わないで欲しいのだ!」

 

 てな、感じでシュニィとミリムは何故か仲良しになっていた。まぁ確かに見た目の幼さも雰囲気も似た感じだからだろうか?

 初対面から意気投合まで秒殺だったからな。

 と楽しげにアイスをペロペロする二人を眺めていた俺だった訳だが。

 

 断じてショタコンではないので勘違いしないようにっ!!

 

 仲良くアイスを片手に談笑していたのだが、何やらジュラの森林奥に複数の気配を感知した。

 

 俺がなっ!!

 

『いや、俺だよっ!!』

 

 いやいや!俺も感知出来てたしー!!

 解離者(カワリモノ)と軽く言い合いをしながら俺は腰を上げた、ミリムとシュニィにお代わりのアイスを預けてだ。

 だってこいつらやりすぎるんだもん。小さな子供と一緒だ、簡単だったはずの買い物があれよあれよと何時間にも及ぶという不思議現象が起こってしまうからな。

 それにゴブタの警備隊も感知場所から離れているし。

 

 放っておいても大丈夫かも知れんが、この街の近くで死亡なんてされたら目覚め悪いし。

 

 俺は絶氷者(ヴィネア)で地面を凍らせるとスィーと滑って行った。

 街を抜け、ジュラの大森林を滑って行くと土埃が立つ場所が見えてきた、気配は複数。

 内1つは魔物か。

 

「………ふむ、助けるかー」

 

 コキコキ、手首を軽く鳴らした感じで土埃の中に滑って行く。

 やはり、人間がでっかい、えー………あれは………蜘蛛か?なんかよくわからん魔物に襲われてた。

 

『ありゃ槍脚鎧蜘蛛(ナイトスパイダー)だな、あいつら死ぬんじゃね?』

 

 ふむふむ、やはり蜘蛛か。

 いつ割り込もうかと考えていたが、丁度良いタイミングで人間の男が手にしていた剣が折れてしまったようなのでこれ好機と割って入る事に。

 

 颯爽と茂みから飛び出した俺、目の前で蜘蛛の足か?なんか鎌のついた足?前腕?なんか知らんけど。

 とりあえず鎌に切られそうになっていた人間を背後に庇い、蜘蛛に向かい掌をむける。

 

「よっとっ解離者(カワリモノ)

 

 『絶命せよ』

 

 蜘蛛は俺の声を聞くと一度痙攣した後、その巨体を地面に横たえた。すでに目に光は無く、鼓動も途絶えた。

 

「おー、初めて使ったが便利な物だな。呪詛って!」

 

 『呪詛』

 

 解離者(カワリモノ)に統合されたスキル。

 対象を呪い行動を強制する。

 

 強い呪いには多量の魔素が消費され、呪いに掛ける対象の魔素量と自身の魔素量を比べ劣っていれば簡単な呪いでも多くの魔素が必要となる。

 

「格下の対処にはもってこいだな」

 

『おいおい、主さんよー。呑気にしてるとこ悪いんだが、目茶苦茶警戒されてっぞ?』

 

 解離者(カワリモノ)に指摘され、助けた人達をぐるりと見渡せば皆が一様に武器を俺に向けていた。

 

 おっつ。

 やっべー。魔物から助けたけど、俺も魔物だし。

 しかも皆面識無いわー。そりゃ、警戒されるわー。

 参ったなー。………よしっ……ここは必殺技に頼るしかないな!

 

「リムルさんの使いで来ましたー。お怪我はありませんかー?」

 

 見たかリムルさんに丸投げ。

 リムルさんならジュラ〓テンペスト国の国主、知名度は抜群の筈だ。新米の国とは言え、使者と名乗った俺を攻撃すれば国対国となるはず。

 まぁミリムみたいなのがこの人間達の中に居たらどうしようもないがな!その時は俺も渋々戦おう。ただしリムルさん人間殺すの嫌がるから拘束することになるけど。

 

「リムルさんの?」

 

 おっしゃーい!来たー!!

 この機を逃すな俺!

 

 人間達が二の句を告げる前に畳み掛ける!

 人間がこのタイミングで来た理由は大体検討がつく、恐らくはオークロードを討伐した者の調査。

 話によるとこのジュラの大森林は大国と隣接しているらしい、しかも最近ガゼル王と共に国として機能している。

 ならば視察と調査だろう。

 味方になるか敵になるか、交渉し互いに不可侵となるか。そこら辺はどう落ち着くか分からないが、めんどくさい話は勘弁被る訳で。

 

「リムルさんをご存知で?ならばこう言いましょう。ようこそ、我等の国へ」

 

 うっし。

 この流れで街に案内してリムルさんに丸投げしてやろう。えっ?敵だったらどうするか?

 いやいや、言っては悪いがこいつらにはリムルさんどころか俺にすら傷つけることも出来まいよ。ケラケラ。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「……って訳で連れてきましたっ!」

 

「………何がって訳なんだよっ!バカっ!」

 

 助けた人間達を連れて客間まで案内した俺、道すがら通りかかったベニマルにリムルさんへ客だぞーっと伝えて。

 ベニマルからの伝言で来たのだろうリムルさんに当初から予定してた丸投げを実行した。

 勿論、結果は反感を買ったようだったが、気にしない。

 だってめんどくさそうなんだから、てなわけで案内終了した俺はそそくさ客間から退室、もとい逃亡を謀ったが。

 

「………おい……お前どこ行く……?」

 

 ガシッ………!!!

 擬音通り、まさしくガチ掴み。襟ではなく首をだ。

 

「ぐえっ!?」

 

 まさか、首を掴まれると思うか?

 否、断じて否だっ!

 

 カエルが踏みつけられ絶命する一歩手前みたいな声が出たのは俺のせいじゃないリムルさんのせい。

 渋々、逃亡を失敗した俺は未だに痛む首と軽い酸欠で目頭に浮かんだ涙を拭うと席についた。

 

 一人は憤慨し、イライラとした様子を隠すことなく誰かさんに向けてくる。

 一人は、てか俺は未だにブーブー不貞腐れ痛む首を擦る。

 

 そんな雰囲気で話を切り出さなければいけない人間達の心境や如何なものか。だが、この雰囲気を断ち切り話を進めなければいけない、てか話さんと来た意味ないし!

 

「………え……ゴホンッ……私はフューズと申す者、ブルムンド王国の自由組合支部長を任されております」

 

 フューズの用件とは森の調査を行っていた三人組と故人である英雄のシズさんとやらの供養と先日のオークロードの件だった。

 まぁ正確にはオークディザスターだが、とりあえずリムルさんが先だって人間国に忠告としていたお陰で対策も取れたとそしてオークロードの対処をしてくれたリムルさんへのお礼だったらしい。

 えっ?俺は?とかは言わないお約束だ。

 

 後はお察し、今度はオークロードを片したリムルさんが驚異になるのではないかという危惧。

 だが、そこは安心何故ならガゼル王のお墨付きなのだから。

 とここまで話した所でフューズの脳内はパンクした、リムルさんが抱える戦力と資材、技術に驚いたのだろう、無理もない。

 

 そして、フューズと三人組を除いた。その他多数。

 見るからに荒くれ者という感じの集団に発言件が移る。

 

「なんでスライムが喋ってんだよ」

 

「ブフォッ!!アハハッ!そこ突っ込むの!?だれも触れなかったのにっ!?あー、腹痛ぇー!!」

 

 案の定、黙らされたがな。物理で!

 して、こいつらはファルムス王国からの調査団であった。

 そもそも、調査団はリムルさんの街にくる予定ではなかった、あくまで調査対象はオークロードであったのだから。

 しかし、ファルムス王国ブラックだねー。

 調査に行くと言うのに装備は安物ときたもんだ。しかも、荒くれ集団が言うこと聞かなきゃ契約魔法とやらで強制労働だと、鬼畜の所業!

 

 しかしなかなかどうして荒くれ者と言う割りに団長のヨウムは義理に厚く仲間からの信頼も厚い男であった。

 

「あ、なんか嫌な予感するわ。オークロードの討伐はしれ渡っていない、何故なら知れていたら調査と言わずリムルさんの討伐くらい話が膨れ上がっていても言いはずだ。ならば……オークロードの討伐は上の管理職くらいしか知らない。ならば今なら影武者を作れる、リムルさんへのヘイトが格段に減るわけだ………つまり、俺に面倒事が降りかかる!!」

 

「………流石よくわかってんなヨクル!ヨウム君、君英雄にならない?」

 

 今、ヨウム君英雄化計画(予定)の火蓋が切られた!!!

 

 

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