転生したら霜男だった件 それいけジャックフロスト   作:機関銃くん

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19話《暴風大妖渦》

「えー、リムルさんから貴方達を任されてしまいました。ヨクル=ライフ。よろしくー……さてとりあえず係稽古しよっか?」

 

 ヨウム英雄化計画が(予定)から本人の意識を確認した後に(本格)となり、やはりと言うべきかヨウム育成ゲームは俺に任されることとなった。

 刀の扱いはハクロウがピカイチでそのつぎに悔しながら次席に俺という扱いだ。

 ならば何故ハクロウに頼まないのか?簡単だ。リムルさんからしたら俺の方がヨウムの打ち込みに良いということ、俺の戦闘スタイルはかなり受け身だからな。

 

「本当に真剣でいいのかよ?」

 

「え、ああ。問題ないさ、当たらなければ問題ないんだし」

 

 凍雪の刃紋を撫でながら。当てられるなら当ててみろ、そう言わんばかりのヨクルの発言に勘に触ったのか青筋を浮かべながら剣を強く握り締める荒くれ者達とヨウムに。

 

「寧ろ当ててみて……?」

 

 ケラケラと笑いながら煽るヨクル。

 今、燻った怒りの火種に灯油をぶっかけ業火となる。

 

「おらぁぁぁぁああ!!」

 

 我先にヨクルに突撃し剣を大きく上段に振りかぶり振り下ろす、しかし剣が完全に降り下ろされる直前、凍雪で剣の腹をスッと真横にズラしてやれば、剣はヨクルを避けるように斜めに走り地面に刺さる。

 立て続けに畳み掛けようと迫る剣の数々をヒラリヒラリと避けて行くヨクル。

 摺り足で凍雪で対捌きで時々ヨウム達の身体へ凍雪の打撃か入り刀の異様な冷たさに身を震わせる。

 

 数分後。

 凍雪を鞘に納め、懐からアイスキャンディーを取り出し口に含んだヨクルは鼻歌混じりに帰路へ。

 ヨクルが去った後には荒い息使いで地面に倒れた調査団、ヨウムの死屍累々。

 何とかヨクルを追いかけようとか身体に鞭打つが、疲労で全く(・・)動かない身体はもがき身体に土を付けるだけだった。

 

「…………一撃も当てらんねぇのかよ……化物が……」

 

 しかし、流石はリムルさんに英雄にと提案されるだけのことはある、ヨウムは次こそはあのヘラヘラ笑うにやけ面をぶん殴ってやると決意を固くするのであった。

 

「ふんふーん。しかしまぁ、結構根性あるもんだね。絶氷者(ヴィネア)で身体能力低下していってるのに粘られたからなー」

 

『…………マジで陰険だな……主さん……』

 

 ケラケラ。

 解離者(カワリモノ)が何か言ってるが、知らん知らん。やはり上達と言うものはとことん苛め抜いた先にあるんだよ。

 ハクロウにぶちのめされた俺が言うんだから間違いない、ヨウム達がどこまで耐えられるか見物だね。

 

『ホンット……マジで……今の顔、やべぇぞ?』

 

「……ヘラヘラ……剣道ってこうじゃなきゃね。切っても死なない剣術が剣道だ、ならとことん殺らないとな?」

 

『主さんって急にスイッチ入るよな……』

 

「さぁ、楽しくなってきたぞー!!」

 

 凍雪をクルクル降りながら、口に加えたアイスキャンディーを噛み砕いた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「食らえや!!」

 

「よっと、まだ大振りだな。もっと小さく、足を使えー」

 

 カンッ……キンッ……!!!

 

 稽古を開始して数十分。

 既に残っているのはヨウムだけ、唯一生き残っているヨウムも恐らくは体力は限界、今ヨクルに打ち込んでいるのは最早根性、気力で無理しているのだろう。

 

 しかし、そこからが打ち込み稽古の肝だろう。

 限界を超えてこそ向上があるのだ!!

 

「さぁーこーいー!」

 

「うおりゃあぁぁあ!!!」

 

 腹に籠った充足した気合いは剣先を震わせ、力が込められる。ヨウムにとっても打ち込めるであろう最後の一撃。

 遠間からジリジリと足を使い間を詰めて行くヨウム、そして一足で切り合える間になると、フッと息を止めた。

 

 勝負は一瞬。

 中段から右上に切り裂く鋭い一撃、しかしヨクルはそれを読んでいた剣激がくるであろう箇所に凍雪を構え受け止める瞬間。

 ヨウムの剣先は凍雪に触れる直前に切り返し、右上段から左上段に。

 

「くらえやぁぁぁあ!!!」

 

 咄嗟にバックステップでかわしたヨクル。

 全てを込めた一撃をも避けられたヨウムは限界を迎え、ゆっくりと地面へと倒れた。

 

「……くっそ……またダメだったか………」

 

 と悔しげに呟くと意識を暗転させた。

 

「………へー……やるじゃん!」

 

 しかしヨウムの一撃は外れたが、カスッていたのだ。

 ヨクルの胸元から脇腹に掛けてスッと切られた服を摘まみながらヨクルは倒れたヨウムに賛辞を送るとそっと口の中にアイスを突っ込んだ。

 

「…げぼっ!?!?何しやがる!!」

 

 突如捩じ込まれた冷たい物体に意識を無理やり覚醒させられたヨウム、だが意識は覚醒しようと身体は既に動かずアイスを吐き出す事しかヨクルに抗議する術がない。

 

「あー、酷いんだ!俺のアイスを吐き出すとは許せん」

 

 おらおら。

 ヨウムが吐き出す度に再度突っ込まれるアイスキャンディーの踏襲にヨウムは叫んだ。

 

「ゆっくりと気絶させてくれよぉぉぉおーーー!!!」

 

 やったね、ヨウムの剣術、根性が成長したぞ!!

 

 そして着々とヨウム育成ゲームは進んでいった。

 実践は俺が担当とことん苛め英雄足る精神と実践での剣術の向上、俺が足らない細かな剣術の技術はハクロウが装備等はシュナとクロベエの合作。

 と、順調に進んでいたのだが……。

 

 予想外な訪問に一旦育成ゲームは中止を食らう羽目となったのだ。

 

 それは森妖精(ドルイド)の訪問だ。

 かつてテンペスト国設立の際に立ち寄った森妖精(ドルイド)の一人、しかも、その姿は傷付き魔素の乱れが目立つ。

 

「リムル様、ヨクル様。このような姿で訪問されたことを御許し下さい、私はトレイニー様にお仕えしている森妖精(ドルイド)でございます。直ちに戦闘の準備を暴風大妖渦(カリュブディス)が復活し、此方に向かっております……!」

 

暴風大妖渦(カリュブディス)……!って何だ?」

 

 俺としてはそもそもの存在が分からないので何が危険なのか理解できないんだよね。

 皆が森妖精(ドライアド)の警告に生唾を息をのみ身構えてるのかがな。

 

暴風大妖渦(カリュブディス)ってのはでっけぇ魔物よ。恐らくは厄災クラスの魔物だ』

 

 へぇー、厄災?ミリムと一緒?

 それって結構ヤバいのでは?

 

「それがこっちに向かってるのか……何で?」

 

「恐らくは復活したばかりで魔素が足りないのかと推察しております、ですので魔物を食らい魔素を補充するのが目的かと」

 

 ふむ、復活したばかりでご飯が欲しいのか。

 ならば降りかかる火の粉は払わねばなるまいよ、しかし魔王級と言われるとミリムしか参考が居ないからな。

 いまいち対策と言われてもと思うところだが。

 

「……てか魔王級なら、ミリムに倒してもらえば良いんじゃ?俺たちはそのサポートみたいな?」

 

 それが一番手っ取り早く確実なのではと思った俺だった、ミリムだってこの街に来てから戦闘は極力しないという約束だったようだし身体が鈍ってるだろう。

 案の定、俺がそう提案すればミリムは目をキラキラさせ、リムルさんに許可を貰えるのを今か今かと待っているではないか。

 

 だが、俺の提案はバッサリ切り捨てられた。

 リムルさんにでは無く、周りの仲間に。

 

「いえ!我々の力を見せる時です!リムル様!」

 

「………リムル~!」

 

 鬼人達の我らの街は我らの力で守るのだという主張と。

 久々に暴れたいのだっ!と言わんばかりのミリム。

 

 結果は。

 

「……俺達の力を信じろミリム、俺らの事は俺らで何とかするから……なっ!ヨクルッ!!」

 

 トンッ……!

 肩に掛けられた腕に俺は渋々頷いた。

 

「………はぁ……また戦いか……戦闘の日々は魔物の本分なのかね……」

 

 深いため息と共に俺の背後にもやる気満々のクロウとシュニィを振り返り、再び深いため息を吐くのだった。

 

「やってやりましょう、ヨクル殿!」

 

「うん……!僕もがんばるよ……!」

 

「………あ……うん……頑張ろーね……」

 

 そうしてまたもやテンペスト国は大規模な戦闘に巻き込まれて行くのだった。

 

 

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