転生したら霜男だった件 それいけジャックフロスト   作:機関銃くん

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23話《盟主代理って何ですか?》

 使節団がテンペスト国を出立して数日が立つ。

 

「今度はお前がユーラザニアに来い!……あの……あっ案内してやるっ!!」

 

 とスフィアさんからの別れの挨拶を受けたのは記憶に新しい。何故か頬が赤かったようだが、昼間から酒を呑んでいたのだろうか?

 そう呟いた後にめっちゃ憐れみの目で見られたんだが、解せぬ。

 

 因みに帰ったのはアルビスさんとスフィアさんだけだぞ。

 獣人の若者らは勉強の為にテンペスト国に残った。

 ユーラザニアには無い建築、食に工芸品、見るもの全てが物珍しいのだろう、視界に入った端から目を輝かせ尻尾をフリフリ。

 

 うん、可愛い。

 と獣人達を案内しながらごくごく和やかな日常を過ごしていた俺。

 

 ユーラザニアの使節団が戻ると同時にベニマル達もユーラザニアから帰ってきて。益々活気が溢れる街となりつつある中央都市リムル。

 土産話によるとベニマルはユーラザニア滞在中にカリオンに喧嘩を売ったらしい!なんともベニマルらしいと言うか何と言うか。

 まぁ笑われてあしらわれたらしいがな。

 

 カリュブディスに壊された街道も着々と修復が進んでいるし。

先日リムルさんはドワルゴンでの盟主として宣誓と演説を行ったらしい、俺は留守番だったが。お供していたシュナやシオンの話だと凛々しいお姿だったよう。

 演説した当人はガゼル王からのダメ出しの嵐で少し落ち込んでいたが、何はともあれ。

 こうして、ドワルゴンとの国交も順調。ユーラザニアとの関係も良好。さぁ、いよいよ国として流通や貿易をガンガン回し、益々の発展をさせていくのかと思いきや。

 

「俺、暫くここ留守にするから。よろしくな盟主代理!」

 

「………………はい……?」

 

 突然の盟主代理に任命される羽目になった俺。

 いやいや、なんで?急にこれから軌道に乗って街を発展させてくんじゃないの!?

 そう詰め寄った俺にリムルさんは話してくれた。出掛ける用事というのは同郷の友から託された忘れ形見の生徒を助けに行くと言うもので。

 そんな真剣な顔で、深刻そうに言われてしまっては俺は言葉に詰まってしまう、ズルい人だ、ズルくて優しすぎる人だよ。本当に。

 

「………あー、もう!どうなっても知らないからなっ!!」

 

「アハハッ!信頼してるぞーヨクル!」

 

 こうして短い間だがテンペスト国及び中央都市リムルを任されるとこになった俺。

 はい、盟主です。代理ですがっ何か?

 

 と言うことでヨクルです。

 執務室の椅子って座り心地やベー………あー、リムルさんいつもこんな椅子に座ってのかよー。鞣した皮のすべすべ感、降ろした腰を重力のままに受け止めるクッション性。

 

「…あー、やばー……何と言う脱力感……」

 

 ポカポカした日差しも相まって俺は盟主代理あしからぬ姿でグデーと手足を投げ出しクルクル椅子を回している。

 だが、バタンッと強く開け放たれた扉に驚き椅子からずり落ちた。

 

 何だっ!何だっ!

 執務机からそろりと出入り口を見れば……。

 

「ヨクル様!!リムル様から盟主という大役を受けているというのに何とだらしのないお姿!!こんなことではリムル様の名に泥を塗るおつもりですか!!」

 

 ぶちギレ寸前のシュナ、その背後で自身が怒りを買っている訳では無いと言うのに恐怖に顔を強張らせたベニマルの姿。

 

「…………えーと……すまん……」

 

「すまんではありません!!先ずは服装ですっ!!」

 

 服装?

 そんな変だろうか?俺は自身が今、というかこっちでずっと着ている真っ白のTシャツとパンツを眺めるが。

 別段、不味い服装だとは思わないんだが……?

 

 しかしシュナはそうは思わなかったのだろう。

 俺は威圧的に靴音を立てるシュナによって半ば無理矢理執務室から連行されする事となった。

 執務室からの去り際、ヒラヒラと手を降って見送るベニマルに対し俺はニッコリ満面の笑みでこう返してやるのだ。

 

 そっと右手を突きだし中指を立てるのだ。

 

 シュナ腕を引かれ連行された先、外ではまさに首輪を付けられた犬の散歩の様であった。

 皆の視線が痛すぎるが腕を振りほどこうにもシュナの腕はまるで岩石のよう、乙女には酷い言いようかもしれんが、ホントにそれな。

 だって爪が肌に食い込んでる、てか刺さってる。なんか赤いの流れてるんですが?

 あ、気にしない方向なんですね、さいですか。

 

 そうして連れ込まれた先はシュナの服飾工房。

 投げ込まれるようにダイナミックに入室した俺はごろごろと転がりうつ伏せで倒れこむ。

 すると前方に見えるは男の足?

 

 足にそって視線を上にあげて行くとそこにいたのはドワーフ三兄弟。

 ガルム、ドルド、ミルドであった。 

 

「お、こんちは。はじめまして……かな?」

 

「おおう。面と向かって話すのは初めてかも……しれんな」

 

 ガルムは俺の腕を引き上げ、立ち上がらせると服についた埃を叩いてくれた。

 わお、紳士やん。

 

「にしても……兄ちゃん。顔立ち良くて肌も白くて綺麗なのに、服が……こりゃシュナちゃんが怒るわけだわ」

 

「えー。そんなに変かなー?」

 

「変ですとも!!仮にも盟主代理!そんなお姿では訪れた方々に示しがつきません!!今!此処で!貴方の服を製作致します!!」

 

「………あ、はい……よろしくおねがいします……」

 

 そう面と向かって変って言われるとさ、傷付くよね……。

 それなら作って貰えば文句は言われないだろう、どんなものになるか正直言えば少し楽しみになってきた所だ。

 

 先ずは採寸。胸部、腹、腕、肩幅等を計測して行き。

 生地選び。仮縫い。試着。手直し等々……。装飾は色の組み合わせは、動きやすさは通気性は保温性は………。

 

 目の前で徐々に組上がっていく衣服に感動を覚えながら同時に手間が掛かるものだなと感心していた。

 この街で着られている衣服は主にシュナが製作している。俺のだから凝っていると言うわけでも無いだろうし。これだけの作業量を街全員分行っているのかと思うと脱帽しかあり得ない。

 

 そうして出来上がった衣服に袖を通す。

 さらさらとした手触り。肩も回りやすく張るような窮屈さは微塵もない、なのにだらしない感じには見えない。

 

「うん、良い感じだ」

 

 主に色合いは白と蒼の二色。

 白を基本とし襟に蒼のラインが入ったシャツに胸元に光るラインストーンの青い雪の結晶。

 黒いパンツ、正面から縦に入る白いライン。

 極めつけが長らく締めることが無かった黒いネクタイ、どうやってこんなの作ってんの?

 とシュナや三兄弟の勤勉さ手先に器用さに脱帽でございます。にしてもネクタイなんて前世で毎日巻いていたが、久々に締めると何やら気持ちが引き締まるような思いだな。

 

「ありがとう、大切にするよ」

 

「えぇ、これこそ盟主様として相応しい服装ですっ!」

 

「だなっ!兄ちゃん、随分男前になったぞっ!」

 

「………………!!」

 

 そして俺は新たな衣装を手に入れる。

 パリッと真新しいシャツを身に纏い、盟主代理としての仕事をしっかり努めようかなと気持ち新たに街へ歩みを進めた。

 

「では、街の警備を強化します。現在、中央都市リムルにはユーラザニア。ブルムンド。ドワルゴン。それぞれの国家から商人、交易商人、観光客が沢山訪れる。それは良い、街が賑やかなのは良いことだ。それに伴い問題が発生する」

 

「あの、問題とは………?」

 

 シオンが何が問題なのだろうかと首を傾げながら挙手、気付いてる者は居るだろうが敢えて俺が答えよう。

 

「外部からの脅威に弱くなったと言う事だ。リムルさんからの約束事で人間との争いを禁じているな、だがそれでは人間から武力で攻撃された際に俺達は大幅に遅れを取ることになる。誰しも受け入れるリムルの街だが、その分悪意のある人間も容易く入れると言うこと……俺達は魔物だ。ヨウムにフューズさん達みたいにすべての人間が俺達を理解してくれるわけではない、俺達魔物は強いが強いからこそ人間達は恐怖し自身の平穏の為に排除を望むかもしれん、目的の為なら知恵を数を頭を手段を選ばないのが人間だ」

 

「本当はリムルさん不在の時に色々手を加えるのはどうかとも思ったが……しっかりしろと叱咤されたからな……」

 

 こちらを見詰め微笑むシュナに頬を掻きながら困ったように笑うと宣言した。

 

「中央都市リムルに監視氷像の設置及び関所を設置する」

 

 俺の宣言後、早速取り掛かった。

 

 中央都市リムルに入国する道へ関所を設置、魔力を関知する氷像の設置と交代制での門番。

 少しでも不振な動きをすれば氷像が捕縛し解析、記憶を奪い取る。

 

 そして、街の店、屋根、等々に監視カメラ代わりの氷像を設置。その全ての視覚を俺と共有させる。

 これで街の全てを監視できる訳だ。

 

 リムルさんが戻る迄は俺が皆を仲間を守る。

 勿論訪れた人達も守って見せる。

 

「………さて、何事もなくやり遂げられますかね……」

 

 しかし、ヨクルの願いとは裏腹に着々と悪意は直ぐそこ迄近づいていたことをこの時のヨクルは知らなかった。

 

 

 

『………………お前らは俺が命に変えても護ってやるっ!!!』

 

 

 




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