転生したら霜男だった件 それいけジャックフロスト   作:機関銃くん

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24話《……命をかけて……!》

 リムルさんから盟主代理を任命されて数日がたった。

 現在、中央都市リムルでは事故、事件はまだ確認されておらず。平和な日々を謳歌していた。

 関所での警備も今のところ順調だ、何人か盗賊崩れが不法侵入を試みたが氷像の監視を逃れることは無く。関所の設置は成功だったろう。

 

 あ、それと。

 数日前にまたヨウム達が街を訪れている。え?暇なの?と言わざる終えない。

 俺が盟主代理だと言ったときのアイツの顔、稽古を厳しくしたのは当然の摂理だろう。

 しかも今回は女連れだぞ。ミュウランと名乗る、その女。鼻の下をデレデレと伸ばすヨウムに額を押さえたものだが……。

 ミュウランとやら体内に何か混じっていたのを感知した。もっと詳しくと胸に手を当ててしまったのは不可抗力だ。何故叩くんだヨウム。

 ミュウランの心臓に纏わりつくように、締め付けるように動く魔素の動き。

 胸に手を当てた際、羞恥心よりも恐怖心が顕著に現れた反応と言い。何か事情を抱えているのだろうが……変に刺激して激昂されても迷惑なんで、とりあえず放っておく事にした。

 念のためミュウランにはマーキングを付けておく、何かしようものならその心臓は凍り付くであろう。

 

 つまり………そういうことだ。

 

 だが、それ以外は順調そのもの。

 最近は盟主として仕事をしていたから、久々に氷菓子屋さんの方に顔を出していた俺、やはり人の流れが活発になったからか物珍しい氷菓子は皆の目を引き大盛況。

 

「はい!アイスキャンディー三本ねっ!楽しんでっ!」

 

「うんっ!おにいちゃん、ありがとう!」

 

 アイスキャンディー三本を可愛らしい少女に手渡す、少女は大切に落とさないように手に握るとテトテト走り去って行き。

 お母さん、お父さんなのだろう。三人で仲良くアイスキャンディを食べる姿に平穏を感じ胸の内が温かくなって行く。

 

「……はぁ………全く平穏を楽しめない無粋な輩が来たようだな……シュニィ、クロウ、店番を頼んだぞ。俺はちょっと出てくるからさ」

 

「はいっ!おまかせをっ!」

 

「うむっ、任されよ」

 

 二人に店番を任せ俺は関所へ向かった。

 氷像の視覚を共有させ、氷像が現在見ている映像が流れる。

 そこには三人の男女。

 体格の良い男と糸目の優男、それと高飛車な生意気そうな女。

 感知の情報では常人よりも魔素が高く、身なりを鑑みるに民間人では無さそうであり、顔立ちは古くから見覚えのある日経の顔立ちだった。

 

 関所で門番をしているゴブタ達の元へと急ぐ。

 

『痴漢っ!!この魔物痴漢しましたっ!!』

 

 ねっとりと肌を舐めるように粘着質な魔素を孕んだ言霊は人々の脳に干渉しその言葉が真実であるかのように誤認する。

 女がニタリと笑った、恐らくこの後に起こるであろう罵倒や批難を想像し嫌味たらしく笑ったのであろうが、そうは行かんね。

 

「ちょい待ち。こいつの好みはシオンみたいなナイスバディだ。お前みたいなちんちくりんに興味はねぇんだよ。変な誤解は止めて貰おうか?え?小娘……!」

 

 騒ぎが広がる前に言葉に含ませた魔素を停止させながら背後に……あれ、あのー……ゴブタの友達を庇い避難するように指示する。

 ゴブタ達は未だ人だかりになっている民間人を避難させ遠ざけていると。

 

 解離者(カワリモノ)から批難の声が脳内に響く。

 

『……………名前覚えろよ……』

 

 しかたねぇだろ!俺にはリムルさんみたいに完全記憶出来ないんだから!

 

『いや、あれは大賢者が記録してんだろ?』

 

 え?そなの?ならお前が覚えろよ!!

 

『…………メンドクセェ……』

 

 脳内で自身と喧嘩していたら、俺が小馬鹿にした小娘が再び魔素を高め始めたのを感じ。

 視線を鋭くする。

 恐らく最近の小娘の言う事など大体予想が出来るであろう、言った言葉を実現する能力ならば。

 

『死…』

 

『黙れ』

 

「………っ!?…………!!!」

 

「おい、どうしたんだ?さっさと殺せよ?なぁ!」

 

 小娘は声が出せないことに驚愕しパクパクと口を動かすが溢れるのは空気の漏れる音のみ。

 漸く仲間の異変に気付いた男達は小娘の肩を揺するが、小娘はそれどころでは無いだろう。

 

「さてさて、君らは何処の国からの刺客かな?正直に話して貰えると助かるんだけどね」

 

 魔素を高が高まり足元のタイルがパキパキ凍り付いて行く、異様な光景に三人の刺客は何を相手にしているのか気付いたのか。

 ジリジリと後退して行くが逃がすわけがない。

 

 先ずは小娘を潰す。

 絶氷者(ヴィネア)を発動させ、足元の霜を真っ直ぐ小娘へ伸ばし足を凍らせる。

 仲間は随分と薄情なのだな。小娘が凍り、恐らく能力も使えないと判断したのか小娘の肩を押し見捨てた。

 

絶氷者(ヴィネア)、凍らせる奪え」

 

 小娘の身体を氷が覆い尽くし、その息を止めさせた。

 最後の小娘の顔は可哀想なものだったよ、嘗ての俺のよう寒さに震え声も出せずに死んだのだから。

 だが、後悔はしない。

 殺らねば殺られるのだから、俺の仲間は死なせない。

 

『……狂言師(マドワスモノ)を奪ったぜ。呪詛と組み合わせるか?』

 

 おう、そうしてくれ。

 

『うし、狂言師(マドワスモノ)と呪詛を結合。新たなスキル。呪う笛吹き(ハーメルン)を獲得』

 

呪う笛吹き(ハーメルン)

 

・集団催眠:魔素に触れた対象の脳を操作し傀儡にする

 

・魔笛:呪いの笛を聞いた者を殺す、対象の選択は出来ない。

 

「え、使えな。仲間殺したら意味ねぇじゃん……まぁ集団催眠は使えるかな」

 

『まぁ。そのうち対象の選択も出来るようになんじゃね?』

 

「てきとー………えーと、さてさて……」

 

 使えない能力はこの際置いておこう。

 それよりも今は眼前の敵だな。

 

 未だ残っている二人の男。

 しかし、男達は逃げるどころかニヒルに笑っていた。

 

 その理由を直ぐ様、理解することに。

 

 街の至るところで大規模な爆発、悲鳴が響く。

 焦って氷像と視覚を共有すると至るところに鎧を着こんだ兵士の数々。

 

 炎、風、雷、土。

 あらゆる魔法が飛び交い魔物の血が流れる。

 

「くそっ!!こいつらは囮だったかっ!!」

 

 氷像を操作し兵士の対処をしようと魔素を操作するが、突如魔素が霧散し氷像の動きが止まる。

 

『おいっ!結界が張られたぞっ!!!聖魔破邪の結界だ!気を付けろっ!!しかも他に二種類も張られてやがる、一つはシュナの嬢ちゃんだが……あと一つは……』

 

「………いや、それよりも急務は皆の安全だ!!!」

 

 皆の元へと急ぐ、しかしそれは背後からの攻撃に無抵抗になると言うこと。

 二人の刺客は今もなお健在、それよりも優先することがある。

 

 剣が飛んでこようと、背中に強烈な打撃を受け内蔵が破裂しようと、脈動回復を全力で掛け普段の半分も力が出ていないが無いよりましだ!!

 

絶氷者(ヴィネア)!!!!!」

 

 背後の二人を拘束、皆の守護の為に氷の砦を結界の性で全然魔素が安定せず構築に時間がかかるが何とか操る。

 それでも足りない、足りない!!

 力がっ………仲間を守る為の力が!!!

 

 結界の効力故か段々と弛緩して行く手足と朧気に霞む魔素。

 

 だが、例え力が足らなくても。ここは守る!絶対に!!

 

『…………スキルを獲得したぜ。……博愛者(アイアルモノ)

 

博愛者(アイアルモノ)

 

・自己犠牲:自身の命あるかぎり仲間を守護する。ダメージを全て肩代わりし仲間は怪我を負わない。

 

「ははっ…………お前ら(仲間)は俺が命に変えても護ってやる!!!博愛者(アイアルモノ)!!!」

 

『麻痺耐性獲得。火傷耐性獲得。物理耐性獲得。斬劇耐性獲得。火傷耐性獲得。気絶耐性獲得。毒耐性獲得。眠り耐性獲得。混乱耐性獲得。耐性を結合、状態異常耐性獲得。精神汚染耐性獲得。状態異常無効獲得。暴風耐性獲得。水流耐性獲得。全属性耐性獲得。即死耐性獲得。即死無効獲得。』

 

 脳内に走る世界の声の連続と肉体に走る恐らく激痛であろうダメージの数々。

 

 内蔵は潰れ、喀血で口から溢れ鉄の味が口内に満たされる。四肢は折れ肉が骨に突き刺さり抉れ砕ける。

 だが痛みは無い、痛覚無効で感じないから……だけど。

 皆はそうじゃない。きっと痛かったろう、辛かったろう、涙を流したのだろう。

 俺のスキルが発動する前に死んでしまった仲間も居たかもしれない、俺の力不足が招いた結果だ。

 

 だから、俺は最後に足掻いて、みようと思う。

 

 今、俺は皆のダメージを肩代わりし何度も死ぬであろう攻撃を受けている、脈動回復でなんとか命を繋いでいる状態故に即死無効を獲得した………だから使える能力が出来た………。

 

「かはは……折角シュナに作って貰ったのに……台無しじゃ……ねぇかよ…………呪い笛吹き(ハーメルン)。魔笛」

 

 眼前で暴れる二人を掠れ始めた視界で収め、笑った。

 

「ヘラヘラ……人を殺すなら殺される覚悟はあるんだろ?一緒に死んでくれや……カハッ…ゴフッ……」

 

 なんか二人が騒いでいたが俺にはもう何も聞こえてはいない耳なんてとっくの昔にイカれたさ。

 掌に現れた黒いラッパを震える腕で口元に当てるとそっと息を吹き込んだ。

 

 プォォォォ……………!!!

 

 死の音色が街に木霊した。

 その音色は敵の命を枯らし殺して行く。

 

 しかしその光景を目の前で生き絶える兵士を眼前にしながらも、魔物や観光客の身には何も起こらない。その理由は簡単に想像がついたであろう。

 リムルと共に街を護っていた守護者だった人物。

 ふざけているようで何処か憎めない、飄々としているが熱さを秘めた人。

 ヨクルが行っているのだろうと。

 

 兵士が倒れている光景に安堵しながらも何処か胸騒ぎが止まらない。

 どうしてなのか………。

 

 ラッパの音色が収まると同時に周りを囲っていた氷の砦が崩れ落ちた。

 

「……………え?……どうして……?」

 

 誰がか呟いた。

 何故?今崩れたのか?

 

 ヨクルが解除したのなら何故、目の前にあの人は居ないのか。

 

 クロウとシュニィは主の元へと駆け出した。

 大丈夫だ、あの人は死んでしまう訳がない。

 あの人は問題ないと、少し出てくると言っていたのだ。

 

 大丈夫……大丈夫……大丈夫!!!

 

 自らに言い聞かせるように何度も何度も唱える二人は血濡れの大地に沈む白い主人を…………。

 

 ヨクルの死体がそこにはあった。

 

「「………………あ……あぁ……」」

 

 ああああああああああぁ!!!!!

 

 ヨクルの死体を抱き締め、冷たくなっていく体温に掌から溢れる命の雫。

 クロウは主を抱き締め天に吠えた………。

 シュニィはヨクルにすがり涙を流す……。

 

 ヨクル〓ライフ……死亡。

 並び人間の子供を庇いシオン……死亡。

 その他、数人が致命傷を受け出血死。

 

 被害が最小に抑えられたのは一重にヨクルによる功績が大きいであろう、しかし被害は零であったわけではないのだ。

 皆は冷たくなる仲間に死を実感し悔やみながらも戦いは幕を閉じた。

 

 魔物側も犠牲を負いながらもヨクルの魔笛により人間側にも凡そ1万人の兵士を失う大打撃を与え撤退を余儀なくされた。

 

『…………告……ヨクル〓ライフ……魔王への進化が可能となりました。……実行しますか?』

 

「…………………」

 

『実行しますか?実行しますか?実行しますか?』

 

「…………………」

 

『…………………』

 

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