転生したら霜男だった件 それいけジャックフロスト 作:機関銃くん
フワフワと空を漂っていた俺は心地の良い感覚に脱力の境地へと至っていた。このまま空の碧に溶けて消えていくんだろうか、なんて頭がお花畑的な思考に陥り、アホみたいな事を考えていたんだが。突如猛烈な吸引力に引っ張られ、地上に広がる真っ黒なブラックホールに吸い込まれ。
地上に引き摺り下ろされたと同時に背中から走る強烈な痛みに目を覚ます。
空の眩い太陽に目を細めると見知った顔が俺の顔を至近距離で凝視していたことに気付いた。
「おはます。……リムルさん」
「………蘇生を確認、無事で何よりです。ヨクル=ライフ」
ん?なんか変?
口調が何か機械的?それじゃあまるで………。
「大賢者先生みたいな口調して、どうしたんすか?」
「現在の私は大賢者ではありません。
「……………ん?なんて?」
「
「はぁ……そうっすか……えっとリムルさんは……?」
「リムル=テンペストの意識は現在、深い眠りの中に居ます。進化の最中と伝えた方が分かりやすいでしょうか?」
ふむ。
要するにリムルさんが進化の真っ最中で行動できないから代わりに大賢者先生改め
てか、俺が生き返ったのもそれのお陰みたいだ。
状況確認を行っていた俺の後方から微かに聞こえた物音に背後を確認しようと振り返った瞬間に。
「ヨクルさまー!」
「主殿!!」
眼前に広がる逞しい筋肉の塊に俺は押し潰され揉みくちゃにされる。
「……ぐふぅ……くる……じい……」
圧迫された肺は酸素を取り込めず、酸欠に陥りかける。何とか腕を伸ばしてシュニィかクロウなのか分からないがギブギブと身体を叩き伝えようと奮闘する。
しかし、俺の蘇生に感極まった二人には届かず、それはそれで少し嬉しかったりしたが。
そろそろ本当に限界だった俺は視界が暗転し気絶した。
意識の最後に二人の叫びを聞いたが俺は答えることは無かった。
暫くして…………。
「ん……んぁ?ここは………何処……?」
深い闇から覚醒した俺は見知らぬ地で目覚めた。
気を失う要因となった二人は勿論、知識之王となっているリムルさんも俺と同じく冷たくなった仲間達も見当たらず。
ただただ殺風景な雪景色が広がっている。
頭上の暗く分厚い雲から深々と降る雪の粒。
とりあえず横になっていても仕方がないと思い、立ち上がり服に付いた雪を叩き落とす。
「さて、どうしたもんか」
「どうするんだ?」
「それを今から考えるんだろうが、お前も考えろよ」
「あぁ、だが考える必要はねぇがな」
何時もの如く俺の
何か変だ。
何時もより声が響かないな、それに少し後方から声が聞こえるんだけど、何故なのか?
何気なしに声のする方向を見てやれば、そこには俺がいた。
ふむ、俺が立っている…………ん?立ってる??
「…………お前……まさか?」
「ピンポーン。正解だ、主さん。俺は
まさかの答え。
すると俺が現在居る場所も見当が付く。
「ここは俺の脳内なのか?」
「またまたピンポーン!大正解だぜ!!」
なんでまたこんな事になってるんだ。
そう考えてたのが表情に出ていたのか
「主さんは魔王になる気はあるか?」
「…………なんだって?悪いな耳が馬鹿になっているようだ、もう一度ゆっくり話してもらってもいいかな?」
「ま・お・うになる気はないかー?」
おうっ……まさかの聞き間違いでは無かった。
てか何で急に?
と思い返した時、そう言えば死ぬ前になんか声が聞こえてきていた気がするような、しないような。
「………まぁ……なってもいいか。リムルさんもなったみたいだし、置いて行かれるのは寂しいし、あいつらにも2度とあんな顔させたくねぇし」
「………そうか、ならやってやろうぜ主さん!」
片手に伝わる確かな体温に
そして。
急激な眠気と共に俺の意識は暗転した。
《
「身体は任せておけ」
こうして魔王へと進化することとなった俺。
なんか理由も確かじゃないし、ろくに決意みたいなものも無いけれど何か
だから魔王になる。
俺が守れる範囲には限界がある、それは自覚しているだけど俺の手の届く範囲は絶対に守りたいし俺も死なないようにするんだから。
んで、長い眠りから覚めた俺は信じられん者を目にすること。
「…………な、な、なんだお前!!」
目を覚まして直ぐに見たのは俺。
そう、俺。瓜二つの俺の姿。
なんか、めっちゃデジャブを感じる出来事にまさかと思いつつ問い掛けた。
お前は誰だと。
「
「なぬー!?」
目覚めて直ぐの俺は
なんかみんなめっちゃ強くなっててヤバって感じ。
あれだな、適当説明勘弁だけどホントにそんな感じっす。
街ですれ違う人に解析してたけど、なんかユニークスキル持ってる人が沢山居たわけですよ。
「目を覚ましたか、ヨクル。リムル様がお待ちだ」
途中であったベニマルから爽やかな笑顔で先を促されたんだが、解析してみると、やはりベニマルもユニークスキルを持っていて。
なら
てかさ………。
「………お前呼びづらいんだよ、長いんだよ名前がよ!なんかスルーしてたけど何でお前実体があんだよ!スキルって説明雑すぎ笑た!」
「今さら!?仕方ねぇだろ!ホントにスキルなんだからよ!!後で詳しく説明してやんよ!今はリムルに挨拶すんのが先だろが!」
「はぁ!?たくっ……とりあえず説明は後でいい。今はそれよりも急務がある!てめぇにアダ名をつけてやる!呼びづらくて敵わん!!」
「………はぁ……お前名付けの重要性まだ理解してねぇのかよ」
うっわ、自分の顔で自分が呆れ返されるなんて思いもしなかったわ!!
「知らんがな。いちいち
その瞬間に急激に失われた魔素にクラっと立ち眩みした俺だが、その体感で確かに名付け出来ているのだなと確信する。
「………おっとと……うしっじゃあ改めて宜しくなアダム」
「たくよ……おうっ!よろしく!」
とアダムとの親睦を深めリムルの所に向かった俺、しかしながら不本意な事に開口一番言われたことはなんだと思う?
「何でお前まで魔王なってんだよ!!」
「えーー??だってなれるらしいから!?なってた方がいいんじゃねみたいなっ?」
「軽いよ!?フワフワかよ!!」
「いーじゃんか!俺だけ仲間外れかよ!!寂しいじゃんか!!」
「餓鬼か!貴様!!」
なんだい、なんだい。あんな言い方あるものかね、誰が命がけで街を守ったと思ってんだい。
なんてリムルさんも後悔しているであろう事を蒸し返して弄る訳にも行かず、自身の心の中で思い。
少しいじけて唇を尖らせてそっぽを向いたけど。
「……その、あれだ………悪かったな……お前のお陰で街が守れた」
振り返ると真剣な表情で頭を下げたリムルさん。
「…………そこは……ありがとうって言ってくださいよ。謝ってほしい訳じゃないっすから、俺も……その……仲間なんですからっ…!」
少し気恥ずかしい台詞に顔が少し熱くなり、誤魔化すように頬を掻く。
そんな俺に笑みを溢しリムルさんは感謝の言葉を俺に贈ってくれた。
「あぁ、そうだな。ありがとうヨクル、街を、仲間を守ってくれて」
「うす……!」
と、こんな感じでがっしり握手を交わした俺とリムルさん。
いやー、改めて絆を感じたね俺は。うんうん。
ちなみにリムルさんの無駄に整いすぎている美人フェイスで頬を赤らめるなんて所業、主に童の貞の方には刺激が強すぎるのではと思ったのは口が裂けても言えんな。
なんて思いながら自身の氷菓子屋に歩を進めていたんだが、前方から迫る魔素に気付くと足を半歩引き腰を落とすと衝撃に備える。
数秒後。
歓喜の咆哮と共に訪れた重みに僅かに拮抗して見せたが、それも数瞬と持たず俺は地面に倒れ混んだ。
胸を圧迫し肺から空気が漏れる。
「…………お前ら………くるしっ……どけっ!!」
「おかえり!ヨクル様っ!!」
「戻られましたかっ!!主殿!!このクロウ目覚めを待ちもうしたぞ!!!」
視界いっぱいに映る俺の仲間。
あぁ、こうして熱を重みを感じて改めて思う……本当に守れたんだな俺の、この小さな手でも……と。
なら返す言葉はこれだろう。
「………ただいま……!」
「おーい、俺もいるんだけどな……もしもーし……」