転生したら霜男だった件 それいけジャックフロスト 作:機関銃くん
泣いた赤鬼、タイトルでわかる通り泣きます。
では、楽しんで貰えると嬉しいです。
俺事、
俺には元々目的が無かったし訳で、そんな根なし草の俺を案じてくれた同じ転生者であるリムルさんが、この町に居ても良いと言ってくれて。
危うくリムルさんの優しさに涙ぐむ所だぜ。
と言うことでお言葉に甘えることにした。
この町は本当に良いところだった。
住んでみればわかる、ここは心地好すぎる。危うく万年床に付き添うになってしまう位には心地好い。
それに加えて住人も本当に気の良い奴ばかりで余所者の俺を歓迎してくれるし、なんて懐の広い方々だろうか。
ホブゴブリンのリグルドさんにリグルさん、ゴブタ達。
ドワーフでつい最近この町に来たと言うカイジン達。
そして……………。
「えっと………ベニマルさんで良いんだよな………?」
「…………………ヨクル殿」
はい、ベニマルさんです。
ベニマルさんは少ーし、本の少ーしだけ苦手だぜ……。何せ初対面が最悪だったからな。
俺ってば不注意故の事故てはあったがこの町に攻撃を仕掛けてしまったのだから。
言わばリムルさんを攻撃してしまったようなものだろう、臣下の魔物達からしたら警戒されて仕方がないよな。
現に今も睨まれてるし。
正直、ちょっと怖いわ。ベニマルさんのしかめっ面に思わず後退る俺、仕方ないだろうがベニマルさんめっちゃ美形だけど美形が眉を潜める姿って超怖いんだぜ!?
と、自分から話し掛けておいてへっぴり腰の俺の何て情けないわぁ。
よしっ心の中で己を叱咤激励し、いざ意気込み。
出会い頭に町を凍らせてすいませんでした!!
OKOK、よっしゃ、イメージは良いぞ。
俺が謝る筈だった。
「…………申し訳無かった!!」
「うぇ!?何故!?何故に!?」
けれど何故か目の前には土下座するベニマルさん。
てっきりリムルさんに対して失礼な挨拶をした俺を毛嫌いしていると思って、だからこそ許して貰おうとしていたのだけれど………。
とにかくベニマルさんを町中でしかも、周りの目が有る中何時までも土下座させられねぇよな。
「ベニマルさん!?顔を上げてくれよ」
「はい………」
俺は何とかベニマルさんを立ち上がらせると木の影に腰を落として、何故土下座なんてしたのか。お互いに腹を割って話をすることに。
ベニマルさんは終始俯いた様子であまりにも暗くて俺、居心地悪いよ、うん。
「そうだ、ベニマルさん。アイス食べるか?」
「アイ……ス?申し訳ありません、知識不足ゆえヨクル殿の仰っているアイスが俺には理解が及びません」
なんと、アイスを知らんとは………かぁー!勿体ない!!
では、存分に食すがよい!!
「ジャーン!!これがアイスだ!!」
俺は懐からジュラの大森林で採取した果汁を俺の
俺の自信作なんだぜ、食べ過ぎるとクロウに叱られるがな!!しかし、けれども止められんのよ、此れが!!
「ハムッ………んーーー!!旨いっ!!」
俺がアイスを頬張り口内に広がるひんやりとした冷たさ、果汁の甘味を満喫している様子を見て。ベニマルさんも恐る恐る口に含む。
初めはアイスの冷たさに肩を跳ねさせていたが、慣れてくると目を丸くしながらアイスを堪能しているようで、良かった良かった。
「旨いか?」
「はいっ!初めて口にしましたが……とても美味しいです。ありがとうございますヨクル殿」
「いんや、気にするな。ただクロウには内緒だぞ俺が叱られちまうからな」
「ハハハ、了解です」
そして、アイスをじっくり味わい食べ終わるとベニマルさんはポツリ、ポツリと語り始めた。
「俺と妹のシュナは……
「……里は
だが。
ベニマルさんが俺の手を掴むとグッと握りしめる、未だ
「ヨクル殿………仲間を、クロウを救ってくださりありがとうございました。俺は頭に血が上ってしまい録な対話もせず激情のまま刃物をクロウの恩人に向けてしまいました、誠に申し訳なかった!」
「…………良いんだよ。辛かったんだな、俺には貴方の辛さを十全にわかってはあげられないけど辛い時は泣いたって良い、叫んだって良いんだ。全部吐き出したら前を見て歩いて行こう……な」
ベニマルさんの抱える一族の敵打ちや里を失った喪失感が少しでも和らいでくれるならその一心で俺は俺より身体の大きいベニマルさんを抱き締めると背中を擦った。
ベニマルさんの嗚咽が微かに聞こえ、肩が震えて額が押し付けられた肩が熱く濡れる。
………きっと誰にも打ち明けられなかったのだろうな、仲間の鬼には棟梁の息子と言う立場から弱く情けないところを見せるわけにも行かない。
かといって主君であるリムルに頼ってしまっては、臣下として示しがつかない。だから自分でどうにか出来るのだと毅然とした姿を見せつけなければならなかったのだろう。
良い意味でも悪い意味でもベニマルさんは真っ直ぐで辛抱強い方なんだろう。悲しみも辛さもグッと噛み締め、復讐の炎を絶えず燃やす為の燃料としていた。
だが、復讐に燃えていた矢先、命からがら逃げのみ生き残った同族の姿を見て、これまで押さえ付け耐えていた物が堪え切れずに溢れてしまったんだ。
魔物と言えど意志があり、想いがあり、心がある。
仲間を殺されて辛くないわけがない、悲しくないわけがないんだから。
「…………くっ……あぁあぁ…………!」
「…………………頑張ったな、此れからは俺も頼ってくれな。俺の命を掛けてお前達の敵打ちに全力を尽くすから」
何れくらいそうしていただろうか、そろそろ俺も自分より体格の良いベニマルさんを支えていられないから、足が痺れてきたよ。
もう、いいかな?
そっと肩口を横目で見れば穏やかな寝息を立ててぐっすり眠るベニマルさん。
そっと身体を離し起こさないようにベニマルさんの身体を横たえる。
「………うっわぁぁぁぁ…………足が………ビリビリするぅぅ……!!」
両足を全力で伸ばし全身に走るビリビリと痙攣するような痺れ、ベニマルさんを決して起こすまいと俺は両手で口を塞ぐと静かな悲鳴を上げる。
「いっつ………それにしても本当に不思議な体験だよな」
異世界転生なんてまるで小説やアニメじゃないか、まさか本当に実在し況してや俺がそれを体験するだなんて想いもよらないじゃないか。
これまで転生してから魔物に襲われれば凍らせて力を奪っていた。まるでVRみたいな感覚で生活していたんだ。
だけどクロウとの生活、リムルさんと話をし、ベニマルさんの想いを聞いて、俺の心境は変わりつつある。
俺の認識が二次元から三次元へ。空想、想像から現実に。
「………………俺は、この世界で死んだら。今度はどうなるのだろうか……」
「…………生きて行くしか無いよな。全力で全速力でな」
ベニマルさんの寝顔を何となく見詰めながら、そう心に決めた俺。
えっ?てかベニマルさん睫毛長過ぎかよ、ヤバくね?
魔物に美容の概念とか無いよな、手を加えてなくてこの肌、この睫毛。こりゃ現実の女子高生。OL。美容ガチ勢が嫉妬の嵐ですぜ、こりゃあ。
約30分後。
目を覚ましたベニマルさんとバッチリ目と目が合うー!
「……うあっ!?」
「ちょっ!?と、溶けるからぁーー!!」
ベニマルさんを驚かせてしまった俺。咄嗟に作り出された深紅の炎、その熱気が俺の全身を猛烈に熱して来たから汗が出ているのか俺の身体が溶けているのかよくわからないんだぜ!!
ギャァァァ!!
「……………と、溶ける所だったんだぜ?ベニマルさん、いやベニマルくん?」
「まっ事申し訳ござらん……」
と数時間前のデジャブを再び繰り返した俺達、だが数時間前には無かったであろう絆が確かにそこにはあった。
◆◆◆
今日はクロウとベニマルと共にリムルさんの町の開拓を手伝う事となった、と言っても俺が無理に仕事を貰ったわけだが。
だってあのままじゃニートじゃん!?
町でブラブラ、他の皆が汗かき働いてるのに罪悪感を感じるなと言う方が無理だっての。
それと自慢ではないがあの日の一件以来俺とベニマルさん、いやベニマルとはマブになった!
うん、大の仲良しとなったから行動を共にすることが必然的に多くなり、その事にクロウが嫉妬?
しているのだろうか良くベニマルに絡むように。
現に今も移動中にも関わらず俺の背後で何か言い争っているような雰囲気がバンバン伝わってくるわ。
そうしてリムルさんから指定された狩り場に到着。
仕事の内容は食料の調達。
今までは食べる時に食べる分だけの食料しか狩って来なかったらしく。毎日のように狩りに出ていたみたいで、狩りすぎても腐らせるだけだからな。
リムルさんの捕食者で体内保存していてもいいんだが、それだと食料が必要な時にリムルさんが居なければいけなくなる。
リムルさんの行動を制限することになってしまう。
それでは町のトップとして有事の際直ぐには動けなくなるのでは無いか、そう思った俺。
そこで俺の登場。
俺の
クロウ、ベニマルの討伐した魔物に触れて凍結するだけの簡単なお仕事。
「…………暇だなぁ」
討伐すれば触れて。討伐すれば触れて。討伐すれば触れて。
この繰り返しで俺の傍らには魔物の肉の山が築かれており、加えてあの二人。
目の前で俺が多く討伐しただの、我の方がとか、なんか言い合いしているし。
ベニマルはまだ若そうだから血気盛んなのもわかるけれど、クロウに至っては我とか古臭い話し方のくせして超武闘派で血の気が多いんだから。
「………おーい、そろそろ良いんじゃないかなぁー!」
声を掛けるが一向に止まらない殺戮解体ショーにやれやれと首を降る。
と、油断していた俺は背後から近付いてくる黒い影に気が付かなかった、俺はその魔物に殴られた瞬間。
ピキィン………!!
魔物が氷像へと変わり果てる。
「お!?おぉビックリしたぁ」
しかし、本当に強いスキルだよな。自画自賛で申し訳ないが、本当に強いと思う、凍らせるし奪い取るしで。
あっ……スキルと言えば
丁度今暇だし、俺は静かに目を閉じ己の内を意識すると仄かに感じるスキルの存在。
「
そう唱えた瞬間、隣で凍らせた獲物の氷が枝分かれし俺の前まで伸びてくるとフワリの氷の花が咲いたではないか。
お、おぉ?
これは……なんて精巧な氷花何だろうか……思わず溜め息が出る程綺麗だ。
そして驚くことに
だって、目の前で小さな氷で造られた兎がピョンピョン跳び跳ねているんだもん。
あー、可愛いぃ。心がピョンピョンするんじゃぁ。
……………そして
なんて物騒なスキル。呪怨だぜ?呪いに怨念だぜ?絶対楽しいスキルな訳がないだろうが。
何でこんなものと思うけれど持っていれば気にはなるもので、使わなくても効果は知っておきたいじゃん?
と言うことで。
「
と、スキル名を唱えて見たけれど
可笑しいな、首を傾げ再び唱えても変化が無い。
「あれれー?おっかしいなぁ……外れスキルなのか?」
結局その日は
そして満足したのだろうスッキリと爽やかに汗を拭う鬼共。
やっと終わったかと俺はベニマルから差し出された手を掴んで地面から立ち上がると。
山の様に積み上がった凍結済みの獲物を見上げ。
どうすんのよ、これ。
目測だが、凡そ5mくらいの山だ。
持って帰るにしても俺にはリムルさんみたいに吸収の能力が無い為、地道に足で運ぶしか無いと言うのに。
どうすんですか?
俺はそう目で訴えながら両隣の鬼共の顔を見るが、二人して勢いよく顔を反らす。
ふざけんなよ!?
「あぁーもう!!バカクロウ!!」
「何故!?我のみ!?」
だってベニマルに手を上げる訳にはいかないだろ、だが俺の憤りは発散させなければ。つまりクロウが殴られるしか無い、それしかない。
結局俺達では持って帰ることが出来ず。
ベニマルの念話でリムルさんを呼んで貰うことになってしまった。
折角お世話になってる町へリムルさんの役に立てると思ったのに結局頼ってしまっては意味がないではないか………。
すると、空から飛んできてくれた美少年?美少女?
性別リムルの美人さんが現れた。
「たくっ何やってんだか、張り切りすぎだろう。これは」
リムルさんも同様に獲物の山を見上げて苦笑いを浮かべながら捕食者で山を取り込んでくれて。町に戻る道中鬼共はトボトボ落ち込んだ様子だった。
「何か疲れるけど、楽しいですね。これ」
「そうだな……見てて可愛いよな」
俺達の言動で一喜一憂する様子がこう言っては悪いが何とも微笑ましい。
その日の夜は俺が冷凍してきた大量の肉や果物を使用して大宴会となり、皆でどんちゃん騒ぎ。
俺は自信作の果実アイスをリムルさんに披露してみせた。
「じゃーん!!」
懐から取り出したるはアイスキャンディ。
「おおぉ!?こ、これは!?旨い!!ちょーうめぇ!!」
「リムル様、それは何ですか?」
リムルさんの声が人を呼び、次から次へと人が集まり輪になる。
「それは!アイス!ヨクル殿、俺にも!!」
そして、ベニマル。
こいつは前にアイスの旨さを知っている為我先にと俺に飛び付きアイスをねだる始末。
「えぇい!!欲しい奴は並べや!!」
こうして皆でアイスの至高の甘さを堪能し、こうして大宴会は幕を閉じることに。
俺もクロウと共に寝床に戻ったのだが…………。
まさか、あんなことになるとは、この時の俺は想像もしていなかった。
「ヨクル!!」
氷細工。
これは冷血者に関わらず氷を操作し形作るスキルですね。
追加効果として細工する際に流し込んだ魔素でオートで動き回ります。
そして。
謎のスキル、呪怨者。
次の話でこのスキルの概要を書いていきたいと思います。
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