転生したら霜男だった件 それいけジャックフロスト 作:機関銃くん
怒髪天を着く勢いで部屋に駆け込んでいたリムルさん。
ドスの効いた声の超怖いモーニングコールで飛び起きた俺、何が何やらさっぱりわからないまま。
言われるがまま、と言うか胸倉を掴まれ強制連行状態でリムルさんに連れていかれ、ある寝所に放り込まれた。
尻を強く打ってしまい痛ててと擦りながら寝所を良く見れば、横たわるベニマルとクロウの姿があった。
え、寝てる?
…………ってそんなわけ無いよなぁ。
だってリムルさんが怒り俺を連れてきたと言うことは俺に何かしらの落ち度があり、二人が死んだように寝ているのには理由があって俺が関係しているのだろう。
「………えっと……これは?」
だが、一応聞いておこう。もしや俺は悪く………。
「知らん。大賢者の解析によるとこの症状は呪い……らしいな。ヨクルお前が関係してるんだろ。コイツらに纏わりつく魔素はお前のものだからな」
俺が悪いですぅ!!
えってか魔素に識別とかあったの?
指紋みたいな?声紋みたいな?
いやいや、そんなことより今はこっちだろう。
横たわる二人の口元に手を寄せれば確かに呼吸はしているし、胸の鼓動は正常だ。
しかし、何をしたところで一切起きる気配がない。
それどころかだんだんと呼吸が弱くなって居るような気さえしてくる。
いや待って。このまま死んじゃうなんてことないよね?
何が
てか、これはあれだろ。
「おい……このまま死ぬなんて事になったら……許さんからな……」
「………ひぇ……」
うっわ………ちょーこえぇんだけど。
いやいやでも、俺も
どうしたものか、まさに八方塞がり。
何で俺にもこうなってしまったか原因はわかるけれど。何故かが分からん、効果も知らんしどうしたら解除出来るかも不明だし。
本当に死んでしまうのか。
それすらも俺には何も分からないのだから…………だけど。
チラリと後ろを見れば………激おこスライムさんが仁王立ちしているし。
何が出来るか分からないけれど俺が原因なら何とかしなくてはいけない。
よしっ。
いっちょやってみるか!
「………と、とりあえず。失礼しまーす」
これが呪いという症状なら俺の
そっと横たわる二人の身体に触れてみれば、確かに何かが纏わりついている感覚。
俺の
これは、まるで……まるで……心霊的なあれみたいな感覚に近い。
ゾワッと全身に鳥肌が立つがビビっていられるか。俺の背後には幽霊なんかよりよっぽど怖いスライムさんがいるんだぞ!?
てか、スライムの貫禄じゃねぇわ!!
やるしかねぇよ!!ダメ元だろうがやらないと俺がやられる!!
「凍れぇぇぇぇええ!!」
俺は腹野底から気合いを入れて凍らせたさ、だが俺の呪いはなかなかに粘り強い。
凍らせた端から氷を突き破って寧ろ俺にまで牙を向いて来た。
黒い禍々しい気配が目に見える程、濃密に集まり可視化した呪いが黒い触手となり襲ってくる。
だが、舐めるなよ。俺が俺のスキルに殺されて堪るか!!
俺の掌から冷気が吹き出し、リムルさんの部屋をも巻き込み凍り付く。
可視化された触手は俺の目と鼻の先で完全に凍り付き動きを止めた。
しかし、俺の
この呪いの進行を停止させた所で直せた訳ではない、かといって奪い取るにしても元々の出所が俺なのだから奪い取れる訳もない。
なら、どうすればいいか。
リムルさんに任せればいい。
他力本願だが、実質俺には打開策のだの字も浮かんではいないし。このまま俺が
そうだ、あの人ならもしかしたら……。
そう思った俺はリムルさんの元へ歩み寄ると頭を下げて頼んだ。
「俺を
リムルさんが驚いて俺を見ているよ。
ははは………仕方ないだろ、だって打開策は今のところ此しか無いんだからな………。
俺には解決出来ないなら解決できるに
これが俺の出した解決案だ。
◆◆◆
突然今朝。
「リムル様!!」
俺の寝所にリグルドが飛び込んできて何事かと飛び起き、案内された場所には横たわるベニマルとクロウの姿。
皆の話によると死んだように眠り続けているそうだ、そんな大袈裟な昨日の宴会ではしゃぎすぎたんだろう、こやつめ!
なんて考えていた俺だったが、実際にみてみれば間違いだった。確かに寝ているクロウとベニマルから妙な気配を感じる。
念のために大賢者さんに解析して貰ったらこれは呪いだって言うし。解除は出来ないそうで。
ただ魔素はヨクルのものだと言うものだから、俺もちょっと冷静ではなかったと思う。
もしかして……そんな最悪の可能性を考えてしまうと一気に血が昇っていたな。
全速力でヨクルの元に走り俺はヨクルの言い分も聞かずに胸倉を掴むと強制連行、二人の前に突き出し問い詰めた。
そして、全てをヨクルに押し付け俺は見ていたんだ。何とかしろよって何様だよって話だよな。
ヨクルなんて、俺よりもこの世界に来るのが遅く。転生して数日だろう、そんな奴に責任を押し付けるなんてな。
現にヨクルは慣れないスキルを駆使して呪いの進行を止めた、呪いという未知の症状へ何とか対抗してくれた。
ヨクルが呪い共々住居を凍り付かせた時に俺も漸く冷静になってきており、ヨクルに全てを押し付けた事を反省したさ。
改めて協力し対抗策を考えようかという時に。
まさかあんなこと言われるとはな。
だって自ら
恐らくヨクルの態度、対応を見る限りヨクルのスキルであるのは間違いないが。
本人にも解除が出来ないのだろう、もしくは制御が出来ていなくて誤爆、暴発を起こしたのかも知れないな。
……だが、スキルの暴発なんて起こり得ることなのだろうか。俺が覚えている限りでは心当たりはないけれど…………?
と思考巡らせるが……。
あっ……そうか。
俺には大賢者さんが居るんだもんな。暴発、誤爆なんて万が一にも起こり得るわけがなかった訳でヨクルのように手探りでスキルを確認していく必要もなかったんだな。
だって大賢者さんがスキルの詳細、発動のタイミングまで教えてくれるんだから。
本当に有能すぎ大賢者さん!!
そう考えると何だが俺がズルをしているみたいで少しヨクルに対する後ろめたさを感じるな……。
だが、原因を詮索している時間は今は無い、そしてヨクルの言う様に手立てがないのも事実だ。
コイツらをこのまま凍り付けにしておくわけにも行かないからな、一刻も早く解放してやらんと。
さて……大賢者!
ヨクルを捕食し呪いのスキルを解析。出来るか?
《可能です。個体名ヨクルを捕食しますか? YES/NO》
「んじゃ今から喰うからな」
「………い、痛くしないでね……!」
「頬を赤らめるな!?大賢者、YESだ!」
俺の了承の声と共に捕食者が発動、俺のスライムボディがブワッと広がるとヨクルを包み込んだ。
《補食完了。収納し解析を始めますか YES/NO》
「YESだ、出来るだけ早めに頼むよ」
《了。解析を開始しました。完了まで37分程かかります》
と、大賢者が解析を始める。
すると、俺の脳内に誰かの記憶が流れ込んできた。
酷いノイズの後、俺にとって見慣れたコンクリートジャングル我が故郷日本の街並み。
歩道を詰まらなそうに据わった目で歩く青年にピントが合う、恐らくあれが転生前のヨクル何だろうな。
これは解析に伴いヨクルの記憶が流れ込んで来ているんだろう、なんか勝手に他人の生活を覗き見て背徳感に罪悪感が半端じゃないぞ。
「おーい、深海!」
「………なんだよ、仕事で疲れてんだよ」
「わかってるって本当に冷めて冷たい奴だな、俺じゃなきゃとっくに友達止めてんぞ?」
「あー、はいはい。止めたければ止めればいいだろ。俺はかまわない……」
ふむ、深海は随分と冷めていたんだな。
今とは大違いじゃないか?
死んで吹っ切れたのか?
すると場面が飛ぶ。
雪山で遭難し、雪に覆われた深海。
転生直後のようだ。
雪山で死んだ深海は俺同様に世界の声を聞いて転生したようだ。恐らく俺と同じようにジュラの大森林に来たんだろうな。この辺りにはまだヴェルドラの魔素が滞留しているんだし。
だが、ヨクルの飛んだ先は一面の雪景色だった。
『何処だ……ここは……?』
まさしく永久凍土の大地という様相。
ヨクルはジュラの大森林に転生した訳じゃなかった。
それじゃあどうやってこの凍土の世界から何故大森林に来れたんだ……?
ヨクルの話では目覚めたら大森林だったって言ってなかったか?
すると猛吹雪の奥から歩んでくる人影。
その人影を見た瞬間、大きく高鳴る鼓動。
『………!?』
それは俺の鼓動では無い。
体内に収納されたヴェルドラが物凄く反応している、と言うか半ば拒絶に近い。
何だ!?何だ!?
人影はヨクルに近づき何かを囁くと空間に穴を開けて存外に放り込んだでは無いか。
そうしてヨクルはジュラの大森林にまで来たようだな。
と、そこまでの記憶を見ると俺の身体は引っ張られ意識が凍り付いた室内に戻ってきた。
「ふぅ、やっと戻ってきたか。と言うか勝手に覗いてしまって申し訳なかったな……」
しかし、不思議な体験だった。
何故あれ程まてヴェルドラが動揺、拒絶をしたのか。あの人影は一体何だったのだろうか。
《告。個体名ヨクルの解析が終了しました。呪いのスキル、名称
《能力の詳細。己の魔素を媒介とし対象者の体内に呪詛を流し込むスキル。自身の魔素の量に比例して呪いが強くなり対処者の身体を蝕み、死に至らせる。呪いの加減調整は可能。呪いの解除は本人にしか出来ずそれ以外で無理矢理解除した場合は自動反撃行動に移行。解除方法は対象者の身体に浮かび上がる黒い掌の痣へ術者の血印を押すこと》
…………………こわっ!?
想像してたより何倍も怖いぞ、これ。
まぁいい。知りたかった解除方法はわかったのだし、そろそろ吐き出してやろうかな。
「大賢者、ヨクルを取り出すからな」
《了。個体名ヨクルの体組織の再構築。完了、排出します》
大賢者の声と共に吐き出されたヨクル。
「ほら、早く起きろー」
ぺしぺしっ。
色白なヨクルの頬を軽く叩いてやれば、眉を潜め身を捩るヨクル。
「………んっ……あっあぁ……」
「変な声出すなっ!!」
◆◆◆
「………んっ……あっあぁ……」
目を覚ますと氷の部屋だった。
いや、たしか俺はリムルさんに喰われて………。
「そうだっ解除方法!!」
「ほら、大賢者さんが調べてくれたぞ」
おお!ありがたい!!
え~と、何々………。
読み進めるほどに己のスキルながら陰湿で粘着質で陰険な内容に自分でも頬がひきつっているのが分かるわ。
それより解除方法の面倒さときたら、そもそもが解除する前提では無いのがマル分かりだ。
これは使用した=相手を殺すに等しいよな。
俺は解除方法に従い二人の身体を隈無く調べるとやはり痣があった。黒く禍々しく浮かび上がる痣。
ベニマルのは掌にクロウのは肩甲骨の右側に、そのどちらもが昨日俺が
ベニマルには地面から立つ時に手を貸してもらっていたし。
クロウには獲物の事でその辺りを確かに叩いていた。
その時に俺の魔素呪詛が入り込んだんだろうな、すまなかった……。
今助けてやるからな指に犬歯を突き立て皮膚を噛りきる。
てか、これまで歯で指を切るなんて事をしたことがあるわけ無い俺、当然の如く上手く出来るわけがなく皮膚はボロボロ、若干肉が見えてしまう程に深く噛んでしまった。
やはりアニメのようには上手くいかないものだと普通にナイフで切れば良かった………。
だって超いてぇぇんだもん!!
だが……やってしまったものは仕方ないだろう。我慢、我慢だ俺!!
ズキズキと鈍く断続的な痛みに目尻に涙を堪えながらも黒い痣へ血印を施せば黒い痣はスゥーと溶けるように消えていった。
ベニマルとクロウに纏わりついていた黒靄も消え、無事に解除出来たことにほっと胸を撫で下ろした。
「はぁ……よかった。おっとと氷も溶かさないとな」
床に掌を当てれば氷は魔素に変換され俺の元へ戻り、室内は今朝と全く同じ状態に戻った。
それじゃあ…………謝らないとだよな、うん。
「リムルさん、俺……ごめんよ。まだスキルを上手く使えなくて、こんなことになっちまってさ……」
そういって俺が頭を下げればリムルさんは困ったような笑顔を浮かべると俺の頭を撫でてくれた。
「俺の方こそ悪かったよ。ちょっと……いや、かなり頭に血が昇ってしまってな。お前だって転生したばかりだったのにな……すまなかった」
えっ……許して貰えるのか……?
こんな俺を許してくれるって言うのか?
「………いいのか?俺を許してくれるのか?」
「……あぁ。許そう、若輩者を許して支えるのが先輩の勤めだもんな!」
そう言って俺を許してくれたリムルさん。
なんて心の広い人なんだろうか。こんな先輩、生前の俺の回りには一切いなかったんだが?
「…………ごめんなさい、ありがとう……!」
俺は涙を溢しながら差し伸べられた手を強く握り締めると謝罪と感謝を伝えた。
あ、決して指の痛みで泣いているわけでは無いことを伝えておく。痛いけど痛いんだけど……泣いているのは胸の痛みにだからね!!
こうして俺のスキル、俺の個性豊かで一癖も二癖もあるユニークスキル。
なんか、リムルさんに比べると……って感じだよな。
てか、大賢者様。
俺も欲しいわぁーーー!!
結果、大賢者様最強。
いかがでしたか?
呪怨者。
これは相手を呪い殺すスキルですね。
生前の呪ってやるというワードと実際に死んだ経験から獲得したスキルです。
これは映画の呪怨に近いような性質と考えて貰えるといいのかなって。
あれ必ず殺しに逝くんだもんね……こわ。
では、次回の話まで!
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