転生したら霜男だった件 それいけジャックフロスト   作:機関銃くん

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8話《豚頭帝 ぱーとつー》

 何だか…………楽しくて堪らないな。

 眼前で俺が造り上げた氷像が猛威を振る度に心臓が高鳴り全身の血液が沸騰しているかのように熱く滾り興奮する。

 蝶々が触れた箇所から凍てつき凍傷を引き起こし。

 猫と犬が噛んだ肉が凍り凍てつき体温を、感覚を奪って行く。

 鹿が踏み鳴らした大地に冷気が波紋のように広がって行き豚頭族(オーク)を一瞬にして氷像に変えてしまい。

 鷹が羽ばたき飛散した翼が触れた途端に凍り肉と共に弾け飛ぶ。

 

 なんて、綺麗なんだろうか………。

 恍惚し目が奪われ思わず勝手にため息が溢れ出てしまう。

 豚頭族(オーク)達の悲鳴が嗚咽がとても耳に心地好い、まるでオーケストラでも聞いているかのような高揚感が全身に駆け巡り身体が震える。

 こんな加虐体質だっただろうか。

 他人が蹂躙されている姿に興奮するような人間だった……いや今は違うけれど。

 嘗ての自分を構成していた全てがガラガラと音を立てて崩れ去る、自分が自分で無くなってしまう、そんな宙ぶらりんでいるかのような浮遊感に陥りながら俺は…………。

 

 -------壊れた。

 ガチャリと何かが切り替わる-----。

 

 あぁ……あぁ………!

 何が戦いたくないだよ……これほど迄に生を実感できる物があるのか?

 

 否……否だ!!

 あるわけねぇ!!!

 

「クハハッ死ね、死ね!!俺の氷がお前らの全てを奪うぜ!!」

 

 俺が操作した訳でもないのに黒く禍々しい呪いが止めどなく足元から吹き出す。

 呪怨者(クロキモノ)が溢れる。

 溢れた呪い(クロキモノ)(コゴエルモノ)と結び付き。氷結した大地に闇より黒く深淵の漆黒を体現する呪いが広がる、雪に氷に呪いが混じり触れたものを絶命させる。

 

 ---俺の筈なのに……俺じゃない何か(・・)がいる---

 

 腹の中をぐちゃぐちゃとかき混ぜられている用な不快感、だが脳の方は今この瞬間に強烈な生を享受し続ける。

 スイッチが繰り返しオンオフしているような感覚、俺と俺じゃない俺が終始入れ替わっているような気持ち悪さ。

 

 ----あ………もう駄目かも……しれん。

 

 俺は不快感に呑まれた、ぐらんぐらんと振れる視界に目を回し倒れた。

 

 ガシリッ…………!

 

 倒れた……筈だった。

 

「……………主殿、ご無事ですか……」

 

「…………ごめんな、クロウ。ありがとう……」

 

「いえ、主殿。ご無事で何よりで御座います」

 

 グラグラと振れる視界が捉えたのは俺のスキルでボロボロになってしまったクロウの姿だった。

 肌に霜が張り付き体温を奪われ、呪いが身体を蝕み苦しいだろうに。

 申し訳がない、まさかこんなことになるとは思わなかった。

 

 ガンガンと激痛の走る頭を押さえながらクロウの肩を借りて何とか立ち上がるとそっとクロウの頬に手を宛がう。

 すると黒く身体を這っていた呪いが霧散し体温を奪っていた霜は溶けて行く。

 

「感謝します我が主」

 

「いやいや、元はと言えば俺のせいだからさ」

 

 さてと。

 まだ気持ち悪いし今すぐ布団に潜り込んで寝ていたい気分だけど……いやマジで本当に寝ていたいけど。

 

「クロウ、まだ行けるか?」

 

「無論、何処までもお供します」

 

「よし、グダグダだが任された以上は最後までやり遂げないと……なっ!?」

 

 と息巻いて一歩を踏み出して見たものの踏み出した足には全く力が入らずガクンと膝から崩れ落ちる。

 クロウが慌てて支えてくれなければ情けなく地面に倒れ伏していたことだろうな。

 

 どうやら俺が想像していたよりも先程の暴走は俺の身体、魔素を酷く酷使したようで今更になって指先から震えだし始めた。

 全くという程身体が言うことを聞いてくれない、脳から信号が送られようと動かす筋肉、動力の魔素が圧倒的に足りていない。

 

 俺は焦る。

 ここは戦場だ、今も戦闘は激化して行く。俺の冷血者(コゴエルモノ)も永遠ではない、魔素が無くなれば溶けて消えてしまうのだから。

 そんなもの焦らずにいられるかって訳で。

 俺は全く言うことを聞かずまるで自分のものではなくなった様な手足を動かそうと脂汗を滲ませ渾身の力を込めるが努力虚しく手足は痙攣を続けるだけ。

 

 俺の痛々しい姿は見てられないと言わんばかりに顔を歪ませ目を伏せたクロウ。

 俺を地面に座らせるように降ろすと正面に周り跪いた。

 

「我が主、この場は我に任されよ。必ずや期待に応えよう」

 

 いやっ!まだ俺は戦える!!

 リムルさんから任されたのだから途中で投げ出すわけにはいかない!

 そう言おうと思っていたし実際その言葉は喉まで出かかってい

た。

 ………でも言えなかった。

 クロウがあまりにも辛そうな表情を浮かべているものだから……。

 

「っ…わかった。お前に任せる、豚共を蹴散らして仲間の手向けにしてやれ!」

 

「御意……!!」

 

 力強い返答、立ち上がり一礼したクロウは拳を鳴らすと吠えた。

 ビリビリと空気を空間を震わす咆哮に豚頭族(オーク)が二の足を踏む。

 クロウから立ち上る闘気、魔素にビビったのだ。

 

「我が同胞の手向けとなれ」

 

豪雷鬼神(ごうらいきじん)

 

 豪ッ!!!

 突如クロウの鍛え上げられた肉体に落雷が降り注ぐ。

 皆一様に目を剥いた事だろう、あれだけの宣誓をしておいて落雷で死ぬとは。

 笑う、笑う。指を指し蔑む。

 お笑い草だなと隣に居た仲間(オーク)に話し掛けるが、さっき迄指を指して笑っていた筈だった、だが今はもう首から上が無くなっていた。

 

「は…………?あぇ……!?」

 

 その豚頭族(オーク)も次の瞬間には頭を捕まれたような感覚を最後に絶命した。

 

「おー………すっげぇ早っ」

 

 今現状何が起こっているかを的確に理解できていたのは俺だけだろうな。

 視線の先にはバチバチと雷を纏う雷光と化したクロウの姿。豚頭族(オーク)に接敵し一撃で首をねじ切ると視認されるよりも早く次の敵へ。

 

 スキル名の名の通り豪雷だな。

 なんて、戦闘にも参加できない俺はただただクロウの戦いを眺めていることしか出来ないのだった。

 ソフトクリームを舐めながら(・・・・・・・・・・・・・)

 

 え?何か?文句でも?

 え、さっきまでのシリアスはどこ行った?

 嫌々あれはシリアルだからサクサクお菓子だから。それに、そう、これは違うから。

 ただアイスが食べたかった訳では無いんだ。そうあれだ、これは魔素を回復するために食べてるだけだから。

 途中敗退はカッコ悪いだろ?少しでも早く戦線復帰するために食べてるだけなんだから。

 

 あ、うま。

 

「………ちょっとチミチミ、ソフトクリームは美味しいかな?」

 

「うん、旨いぞ…………あれれー…おっかしーぞー?何やら聞き覚えのある鬼スライムの声」

 

 あれれー?

 可愛い顔して鬼畜鬼スライムのこえがするね?

 なんか来るの早くない?

 

 いやいや、まさか。

 聞き間違いだろ、うん。

 

 まっさかー………おう。

 

「ハローリムルさん。お早い到着で」

 

 背後にはやはりというか、仁王立ちで腕を組むリムルさんが立ってたよ。

 気のせいでも何でもなかったね。

 

 いや、でも責められること無くない?

 ちゃんとガビルは保護して氷の檻に隔離してるわけだから安全だし。

 豚頭族(オーク)軍団の統率や連携を乱してやった訳だから。

 

 と、そこまで考えてふと気づく。

 リムルさんがこっちを見ている?

 いや正確には俺の手元、ソフトクリームへと注がれていた事に。

 

「………食べます?」

 

「おう」

 

 ほんのり頬を染め伏し目がちにソフトクリームを受けとるリムルさん。

 ……………可愛い……って男だぞ!?しっかりしろ俺!!

 

 チビチビとソフトクリームを舐めながら俺が到着してからの事を一応リムルさんに説明することに。

 ガビルの一騎討ちから横槍を入れる形で参戦したことを。

 冷血者(コゴエルモノ)呪怨者(クロキモノ)氷細工(アイスワーク)を使い豚頭族(オーク)を葬ったことを。

 そして魔素を使いすぎてダウンしクロウとバトンタッチして今に至る所まで。

 

 あの出来事(暴走状態)は一応伏せる事にした、俺でさえ良くわからない事に巻き込みたく無かったし、只でさえ村の長として多忙のリムルさんに余計な心配は掛けられないからな。

 

「まぁ、言ってしまえばこれはあいつら(鬼人)の戦な訳だからこれ以上やりすぎてもなって感じだしな。よしっ報告ご苦労、お前は此処で魔素の回復に努めてろ」

 

 そう言ってソフトクリームの最後の一口をパクリと頬張ったリムルさんは背から蝙蝠のような羽を生やすと颯爽と飛び去っていった。

 

 えぇー、飛べんのかいっ!?

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 リムルさん達の参戦で戦いは一方的な物に変わりつつあった。

 群として喰らったスキルを共有する豚頭族(オーク)だがそもそも喰らえなければ意味がないわけで。

 リムルさんから名を授けられ進化した鬼人達が負けるわけもなく。

 

 黒炎で焼かれ、肌を肉を骨までも焼却され焦げあとのみが残ってたり。

 大刀の一振込が大地を割り辺りに肉片を撒き散らし。

 豚頭族(オーク)の群れに突っ込んだかと思えば、通りすぎた後には剣戟で細切れとなった肉片のみが残り。

 雷鳴が轟き豚頭族(オーク)がミンチとなる。

 

 え?これ、俺いるの?

 的な状況な訳だが俺特別製魔素回復ソフトクリームのお陰で辛うじて身体機能及び魔素を回復したので。

 

 俺は………。

 ソフトクリームを配って配って配りまくろうと思う。

 

 え?戦わないのかって?

 ノンノン、周りを良く見たまえ。

 わかったかな?魔素切れで息も絶え絶えみたいな子達も居るわけですよ、皆が皆リムルさん達の様な強靭無敵な性能をしてる訳じゃないんですよ。

 

 てなわけで。

 

「おひとついかがっすか~!!」

 

 俺はソフト片手に戦場を駆け回る。

 いつの間に進化していたのか黒嵐星狼(テンペストスターウルフ)になっていたランガ君。

 進化ではしゃいでいたのか獲得した黒稲妻なんて凶悪なスキルをバンバン使って魔素が切れていたランガに近付きソフトクリームを差し出す。

 

「ヨクル殿!かたじけない!」

 

 ランガは差し出されたソフトクリームにがっつく。

 みるみるランガの枯渇した魔素が回復して行き毛並みが艶々し始める。

 

 うんうん、この旨さの前には誰も敵うまい、そうだろう旨いだろう!!めっちゃ尻尾振っておるわ。

 

 ブンブンブンブン!!!

 

 てか、振りすぎじゃね?

 

「お、おい!?ランガ!?ランガさん!?風がっ……風がぁぁあ!」

 

 ブンブンからゴォンゴォンと暴風を巻き起こす風に俺の身体は吹き飛ぶ。

 

「ヨ、ヨクル殿ォォォォオ!!??」

 

「なんでさぁぁぁあ!?」

 

 暴風に吹き飛ばされた俺、宙をくるくると何回転してるかわからない程ぐるんぐるん振り回される。

 遠心力で手足は外に引っ張られるし痛いし。

 

「ぐぉぉお!?手足……千切れるぅぅ!!??」

 

「ヨクル殿ぉぉお!!お気を確かにぃぃ!!」

 

 何処までも回転しながら飛んで行く俺、地上で俺の名を叫び駆けてくるランガ。

 あれだ傍から見たらフリスビーで遊ぶワンコに違いないな。

 

「……………何やってんのあいつら………?」

 

 そして、その姿をバッチリリムルに目撃されからかわれる羽目になるとはこのときの俺は思いもよらなかったとさ。

 

「いてぇぇぇ!!ランガァァア!!ヘルプ!!はよ助けて!!」

 

 

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