転生したら霜男だった件 それいけジャックフロスト 作:機関銃くん
錐揉み大回転から生還した俺はランガに肩を借りながら?何とかリムルさんのもとへ。
大回転のせいで脳が三半規管が激しく揺さぶられ酷い車酔い状態のデバフに掛かってしまい。
時折来る酷い吐き気を催すが無理矢理飲み下す始末。
大丈夫かって?大丈夫だ不安しかない。
「うぶっ…………それで、あれが……
口元を手で押さえながら恐らく親玉であろうデッカイ豚を見やる。
俺やリムルさんを簡単に握り潰せるであろう巨体、体内から溢れる魔素量。口内から大量の涎を垂れ流しながら飢餓に襲われた虚ろな白眼で俺達を見ている……のだろうか。
それとも食材にしかみえていないのか。
「どうやらそのようだな……てか大丈夫か?酷い顔だぞ」
「ははっ………うっぷ。だ、だいじょぶだ……酔ってても
掌から冷気を出すとちゃんと戦えますよアピールをしながら自身の額に当て冷気で冷やし酔いを紛らわす。
本当に大丈夫か?
そんな視線をリムルさんから向けられるがここで退くわけには行かんでしょ。
流石にあの魔素量を相手取るには皆前哨戦で魔素を消費している訳で俺のソフトクリームでの回復も全快とまでは行かないしな。
「リムルさんを一人にはしないからさ」
「ふっ、生意気だぞっ!でもサンキュな」
「「さーて行きますか」」
と意気込んで戦場に向かった訳なのだが………。
「ゲルドよ!何をモタモタしているんだ!!」
その前に何か空から飛んできた。
ペストマスクを着けた古臭い貴族風の変な男。
そう言えばベニマルから聞いたな。仮面を着けた魔人と
「あれが黒幕?それにしては小物感が半端無いけど」
魔力感知で見るが大した魔素量も無いようだし。
「お、おお!ゲルミュット様!我を助けに来てくれたのですね!!」
ガビルがペストマスクの男へ感激の声をあげる。
ゲルミュット様と心酔した表情を浮かべ崇める。その様子にガビルの名を付けたのもゲルミュットだったのだろうと用意に想像が出来た。
急に現れた横槍を指差し。
「なぁなぁリムルさん、あれどうする?」
「あー、どうするかな」
と思案している間に。
「ゲルミュット様ぁぁあ!!」
ゲルミュットの名を叫びながら俺が作った氷の砦から飛び出してしまったガビルとその一味。
よっぽど名付け親に会えたことが嬉しかったのだろうなもう一目散にって感じで。
「あれは………どうする?」
「……………はぁ………助けるしかないだろ?」
ですよねぇ。
あれは殺されるよね。
「
足元を凍結させ地面を滑りガビルを追い掛け、追い付くとガビルはゲルミュットにすがり付いていた。助けてくれと。
しかしガビルの懇願は無視され、ましてや鬱陶しいと足蹴に、手を離したガビルへ追い討ちをかけるようにステッキで殴る。
ガビルを失敗作だと口汚く罵り、魔弾を撃ち込むが間一髪でガビル一味がガビルの盾となる姿。
「
撃ち込まれた魔弾は俺の魔素に触れると凍り付き地に落ちると同時に地面から脈動回復の鈴蘭が咲き誇る。
そして、御披露目スキル《大自然》
◆◆◆
《大自然》
成長:魔素を流した対象を成長させる。
植物を限界を超えて育てる。
スキルの熟練度を一定時間、限界値まで成長させる。
◆◆◆
脈動回復で生み出した純白の鈴蘭が大自然の効果で大きく成長する、降り注ぐ光はガビル一味を包み込み瀕死の状態から全快まで回復させる。
「……ヨクル殿、我輩の子分達を……」
「あぁ、問題ない子分は無事だ。後は任せて後ろに下がれ、良い仲間を持ったな」
「う、うむ!」
自分を慕って着いてきてくれた子分達、自ら盾になり自分を守ってくれた子分達。
ガビルは込み上げる涙をグッと唇を噛み締め耐えると子分達を背負い下がって行く。
「さてと………えっと、ゲル……なんとかさん。あんたが今回の黒幕でいいんだよな?」
「な、なんなのだ貴様は!?ゲルド!助けろ!俺を!行き倒れのお前に飯を名を授けたのは俺だ!恩を返せ!!」
ゲルミュットの叫びに動き出し手に持った鉈を振りかぶる。
巨体から繰り出される一撃に一歩下がり身構えたが、鉈の矛先は俺に向けられてはいなかった。
「はははっ殺せ!皆ごろしに…ぐひゃ!?」
振り下ろされた鉈は名付け親のゲルミュットの頭と胴体を両断し、ゲルミュットは何が起こったか理解できずに絶命。
「ゲルミュットさマの………ノゾみをカナエル」
ゲルミュットの死体にかぶり付くゲルド。
肉を喰らい、骨を砕き、血を啜る。
《確認しました。個体名ゲルドが魔王種への進化を開始します。》
何だこの声、前にも聞いたような。
それよりも魔王種?魔王になんのか?
ゲルドの身体から魔素が滲み出し身体を包み込んで行き、妖気が溢れだす。
「ヨクル!妖気に触れるな!!」
リムルさんの警告に脱兎のごとく離れた、背後を確認すると妖気に触れた死体がグズグズに溶けて行くではないか。
「………腐食……してる?おぇ……きもい」
ドクンッ………!
ドクンッ………!!
ゲルドを包む魔素の繭から鼓動が響く。
そして繭が割れ禍々しい妖気が吹き出す。
《個体名ゲルド。
「オレの名はゲルド。
魔王ゲルドと崇める
やはり伊達に魔王を名乗っていないな、魔素量が段違いだ、それはリムルさんもクロウやベニマル達も感じているようだ。
「シオン!!」
ベニマルの声と共に駆け出し斬りかかるシオン、だがシオンの膂力を受け止め更に押し返して見せたゲルドの腕力。
しかし、押し返し腕が伸びきった瞬間にハクロウが首を跳ねた。
だが、首を跳ねられてもゲルドは止まらないハクロウに鉈を振り下ろし自身の頭を掴むと胴体とくっつけた。
その後、続けざまにベニマルの
流石にもろに喰らって無傷では居られないだろうと思われた連続攻撃をもゲルドは耐えきった。
大きな傷には味方を喰らい
「流石魔王って感じじゃないっすか、これ」
少しでも体力が残っていれば回復する、ならば即死させるしかない。たが今の攻撃でランガは魔素切れとなり戦力が大幅に減り、決定打に欠けてしまった。
ならば………行くしかないだろう。
「リムルさん……行きますか?」
「あぁ、そうだな」(聞こえるかベニマル、後は俺達に任せろ)
俺達はゲルドの前に立ちはだかった。
近くに寄ると一層感じる腐食属性を孕んだねっとりとした魔素。
「鬼人5匹と狼はどうした、我の獲物を何処にやった」
「ランガの事か?ランガなら俺の影の中だ」
「喰ったのか……?」
「まさかお前じゃあるまいし」
しーーーん
「えっ……めっちゃ煽るじゃん……」
ブォォォン!!
「あっぶね!?何で俺!?煽ったのリムルさんですけど!?」
鼻先を掠める鉈に俺は仰け反り回避。
そして苦情を申す!!
「
しかしゲルドは聞き耳を持つ処か更に俺に向かい腐食の蛇を飛ばしてくる。
そして自身はリムルさんと一騎討ち。
「
腐食の蛇は俺に触れる寸前に凍り付き砕ける散る。
これにはゲルドも多少驚いたらしく攻撃が一瞬止まる、そして隙を見逃さず攻撃を加えるリムルさん。
刀でゲルドの腕を斬り飛ばすと傷口に黒炎を燻らせ再生を阻害すると言う技術を使う。
リムルさんは続け様に攻撃を加えて行く、俺のすることと言えば腐食の蛇を凍らせ防ぎ。ゲルミュットが使ってた魔弾を凍らせ落とす。
サポートするくらいしかなく、しかも、俺がわざわざサポートしなくてもリムルさんなら問題無いまである。
あれ?またしても俺いらなくね案件発生中。
しかし、リムルさんの猛攻を耐えたゲルドはリムルさんを鷲掴み腐食で取り込もうとしてるではないか。
「リムルさん!!手を離せ!!」
俺はゲルドの身体を一気に凍結させ、自己回復、
あわよくば心臓も脳も停止させてやろうとしたが、ゲルドから常時漏れ出る腐食でそこまで俺の魔素を流し込めなかった。
だが、流石に此処までやればと思ってしまった。
「やべっフラグだわ……!」
《個体名ゲルドが凍結耐性を獲得しました》
「うわっやったなこれ」
耐性の効果で魔素が更に入りづらく、
「ハッハ!オレに氷は効かないようだぞ?」
「うっわ煽り返されたんだけど……」
「落ち着けヨクル。俺に良い考えがあるお前も手伝え」
リムルさんから流れてきた念話。
「なるほど了解!」
俺はリムルさんの指示通りゲルドの全身を凍らせるのではなく氷で拘束した。
その隙にスライムとなったリムルさんがゲルドを補食する。
「お前が
「
「うるさい!!」
ただゲルドも黙って喰われて堪るかと
リムルさんが喰えればゲルドも喰らう。
ゲルドが喰らおうとすれば俺が荊で邪魔をする。
俺に邪魔をされ腐食で攻撃すれば魔素を伝い逆流した俺の魔素がゲルドを体内から凍らせる。
勝負は目に見えて明らかだった。
喰らうというフィールドでリムルさんにゲルドが勝てる筈もなく、ましてや俺の
魔素の流れが停滞し、スキルの効果も一部停止、荊による身体拘束。
ゲルドの全身はスライムの粘体に包まれ泡となってリムルさんに取り込まれた。
ゲルドの肉も骨も意思も罪も全てリムルさんに喰われ。
スライムから人形に変化したリムルさんに俺は尋ねた。
「終わったんですか」
「あぁ、終わった。ゲルドは俺が喰らった」
こうして
余談として討伐の後処理とゲルド率いる約15万の
勿論議長は今回の立役者、リムル=テンペスト。
会議は激化するかと思われた。
同胞を虐殺された鬼人達、領土を踏み荒らされた
きっと
位になるんじゃないかと思っていた。
が、実際はそうはならなかった。
リムルさんがゲルドの罪を喰らった。
即ち
当然只では押し通る物ではない。
許す代わりに
リムルさんの意見に鬼人達も
今回リムルさんが居なければ全滅も可笑しく無かったわけでリムルさんの意見を尊重するのはそうなんだが、まさか二つ返事で返されるとはリムルさんも想像して無かったみたいで目を丸くしてたよ。
「というわけで此れからバリバリ働いて貰うから覚悟しておけよ」
「ハッ!!命に変えてもその任全うさせて頂く所存!!」
会議の末、めでたく
そして勘当され湿地帯を追われたガビルと賑やかなガビル隊。
そのお目付け役として妹のソーカ達が仲間入りして、リムルさんの町は一層賑やかになっていった。
よく分からんな、この間なんてリムルさんを讃える踊りとか何とかの練習してたな。
あっそうそう、俺はと言うとゲルドと仲良くなったんだよ。
あぁゲルドってあれね。
自然と距離が縮まっていったね、うん。
「ほいっゲルド。頑張ってるね、休憩もしないと駄目だぞー」
「これはヨクル殿。
俺のアイスは旨そうに食ってくれるし、飲み物だって冷たい旨いと飲んでくれる。
本当は誰も殺しなどしたくは無いのだろう、だが種族が環境が身分がそれを許しはしないのだろう。
同族を好き好んで喰らう者が何処に居ると言うのか。
「んじゃ無理せず頑張れよー!」
俺はゲルド達に手を振り別れると木陰に腰を下ろし思った。
魔物として生きるって俺が考えていたよりもずっとずっと大変だったと。
何処の世界でも爪弾き者は辛い思いを抱えて生きているのだと。
俺も強くならないとクロウやリムルさん達を守れるように。
そして、俺はいつの間にか寝入ってしまってた。
まさか俺の知らない所で俺の中で急速に変化しているなど思いもせず。
『……主さんよぉ。逆境をぶっ壊すには力が必要なんだぜ?わかるだろ?』
《個体名ヨクルがスキルを習得しました。
《ユニークスキル
《
《成功。
『主さん、これから頼むぜ?ギハッ……!』