ヒロト達ビルドダイバーズがアルスの暴走を止めてからしばらくの時が経った。平和になった惑星エルドラには、今も時折ビルドダイバーズの面々が復興の様子を見に訪れている。
「皆さん、お待ちしてましたっ!」
そう言って皆を出迎えたのは、彼らをこのエルドラの地に召喚し、そしてビルドダイバーズのメンバーとして最後まで共に戦ったフレディだ。
「おうフレディ! 元気だったか?」
そのフレディに最初に話しかけたのはビルドダイバーズのリーダー、カザミである。
「はいっ! 皆さんもお元気そうで何よりですっ!」
言葉通り元気いっぱいのフレディに、他のメンバー――ヒロト、ヒナタ、メイ、パルヴィーズの四人は笑みを零す。
そして今日はもう一人、新たにエルドラを訪れていた。いや、帰ってきた、という方がいいかもしれない。その者の声がフレディは気になった。
「今の声って……」
「ああ、この子だ」
そう言ってメイは抱えていた赤ん坊を彼に見せる。
「あぅ~」
「もしかして、この子って……」
「元はアルスだった――だが今は私と同じELダイバーだ。私の弟……と言ってもいい」
彼女は自身の腕の中で笑う赤ん坊に微笑みかけた。その姿を見たフレディは目を輝かせて二人を見る。
「じゃあ改めて、ボクの自己紹介をしないとですねっ!」
嬉しそうに言う彼に、メイは「ああ」と応じて赤ん坊がフレディの姿を見やすいようにした。
「初めまして……でいいのかな? ボクはフレディって言います。皆さんと同じビルドダイバーズの一員なんです! よろしくお願いしますっ」
「う~、あ~!」
驚かせないように優しく話しかけるフレディ。その声に赤ん坊は笑顔を見せる。
「よぉし! 二人の挨拶が済んだところで、そろそろ村に向かおうぜ。マイヤ達も待ってるだろうしな」
「姉さんはンガの実の唐揚げを沢山作って待ってるって言ってました!」
「お、そいつはいいじゃねぇか! んじゃ早速出発と行きたいが、フレディ、今日は誰のガンプラに乗るんだ?」
「今日はパルさんと一緒に行きますっ!」
パルヴィーズへと駆け寄っていくフレディ。
「そうか、ならフレディは頼んだぜ、パル! じゃあ行くか!」
「「はいっ!」」
カザミはそう言ってガンダムイージスナイトへと乗り込んだ。それに続いてパルヴィーズもフレディと共にエクスヴァルキランダーに乗り込む。
「ヒナタ、メイ、俺達も行こう」
「うん!」
「ああ」
ヒロトとヒナタ、それにメイもコアガンダムⅡに乗り込んだ。
「全員準備出来たな。よっしゃ、行くぜッ!」
カザミの機体が飛ぶと、ヒロトとパルヴィーズも続けて機体を飛び立たせた。
× × ×
山の民の村。
フレディの故郷であり、ビルドダイバーズのメンバーもお世話になった場所だ。
「おーい!」
先頭のカザミが機体を降下させながら村の人達に声をかける。その声に反応して見知った顔が外に出てきた。
「おっ、マイヤ!」
「みんな来たわね。待ってたわよー!」
ガンダムイージスナイト、エクスヴァルキランダー、コアガンダムⅡの三機がそれぞれ着陸する。ビルドダイバーズの面々とフレディが機体から降りてくると、それにマイヤは笑顔で出迎えた。
「元気にしてたか?」
「ふふ、何それ。そんなに長い間来てなかった訳じゃないでしょ?」
「そうだけどよ、お前の顔見たらなんだかそう聞きたくなったって言うかさ……」
「っ! ……もう」
カザミの言葉に彼女は顔を赤くする。
「んんっ、それよりもうちに上がってったら? ちょうど料理も出来上がったところだし」
「マイヤの手料理はこっちに来る時の楽しみだからな、もちろん頂くぜ!」
――またそうやって……。
嬉しさと恥ずかしさで思わず手を出しそうになるが、それではいつまでも良くないと我慢した。
「ん? あれは……」
気を取り直したマイヤが全員を家へ案内しようとするとヒロトがある事に気付く。
その声に他のメンバーが同じ方向を見ると、別の家の影から怯えるように震えながらビルドダイバーズを見ている存在を見つけた。
「おい、あれって……」
「確かヒトツメの……!」
「あの時全てがGBNに来たわけではなかったのか」
彼らが見つけた存在とは、ヒトツメという名称の由来になった
「何故あのヒトツメがこの村に?」
ヒロトがフレディとマイヤに問いかける。
「フレディ、もしかして言ってないの?」
「う゛、忘れてた……」
「おいおい、一体どういう事だよ?」
「実はみんなが前に来てから、その後しばらく経っての事なんだけど、カリコさんとザブンさんが行く当てがなさそうだったからって連れてきたのよ」
マイヤがフレディに代わってガードアイが村にいる経緯を説明した。それを聞いていたヒナタは震えているガードアイに近付いていく。
「こんにちは」
彼女がガードアイに話しかけるのを見た他のメンバーは驚いた。
「おい、ヒナタ……!」
「知ってるよ、この子達がみんなと戦ったって。でも今はもう違うでしょ?」
「……そうだな。ヒトツメを操っていたアルスはもういない。それにフレディやマイヤが普通に接しているという事は、他の住民達もそうなのだろう?」
メイがそう問いかけると二人は頷く。
「うん、最初はみんなも怖がってたんだけどね。村の事とか手伝ってくれて、今じゃトワナやアシャ、フルンの三人も懐いてるわ」
マイヤがそんな事を話していると――
「あー、みんな来てたんだー!」
ちょうど名前が出たアシャが走ってきた。その後ろにはトワナとフルンの姿も見える。
「おう、三人とも元気にしてたか?」
「元気だよっ!」
「ヒトツメも一緒に遊んでくれるしね~」
アシャ、トワナ、フルンの三人はそう言ってガードアイに近付く。対するガードアイはそれがいつも通りであるように三人を受け入れる。
「本当に懐いてるんだな……」
その光景を見たカザミは驚くしかない。
最初に話しかけたヒナタも子供達と遊んでいるガードアイに触ると、それに気付いたガードアイは自身に触れている彼女の手をそっと触り返す。
「私はヒナタ。よろしくね」
ガードアイはしばらくヒナタをじっと見ていたが、やがてアシャ達と同じように彼女を受け入れた。
「ヒナタも一緒に遊ぶー?」
「うん、勿論! でもその前に、マイヤがご飯作ってくれたからそれを食べてからね?」
「はーい!」
「それじゃあ、しゅっぱーつっ!」
ヒナタはそう言って子供達と、そしてガードアイも連れて村長の家へと歩き始める。
「……俺達も行くか」
「そうだな」
他の面々もその後に付いて行った。
× × ×
村長の家でマイヤの料理を堪能した後、子供達やガードアイと遊んだビルドダイバーズのメンバーは、かつて水上都市セグリがあった地へと向かっていた。
「アイツらも元気そうで良かったぜ」
カザミは元気に遊ぶアシャ達の姿を思い返す。
「結構遊んじゃいましたね」
「三人とも、私達が来るのを余程楽しみにしていたのだろう」
「あんな風に遊んだの久しぶりで楽しかったぁー! なんだか、子供の頃にヒロトと遊んだの思い出すね」
「そ、そうか?」
突然ヒナタにそのような事を言われてヒロトはドキリとする。
「そうだよっ! あーあ、昔のヒロトは可愛げがあったのになぁ」
「変な事を言うな……」
「そうなのか。昔のヒロト、私も見てみたいな」
メイまでもがそんな事を言い出す。
「今度会う時に昔のアルバム見せてあげるね!」
「ぜひ頼む」
「勘弁してくれ……」
ヒロトは頭を抱えたくなったが機体の操縦をしていて手が離せない。
「いちゃついてんなぁ」
「なっ、カザミまで何を言ってる……!」
「あ、あはは……」
――僕も見たいって言ったら見せてくれるかな……。
そんな事を思いながらもパルヴィーズは苦笑いを浮かべるしかなかった。
「お、見えてきたぜ!」
セグリ――水上都市と言うだけあり、かつては海の上に浮かぶとても栄えた街であった。しかしアルスとの戦いにおいて、“月の雷”と呼ばれる衛星砲の攻撃によって消滅した。
アルスとの戦いが終結した現在、そのセグリがあった場所にはビルドダイバーズと共に戦ったエルドラの聖獣、クアドルンが住んでいた空中神殿を移す形で街の復興が行われている。
「クアドルンさんが住んでた神殿が地上にあるのって、やっぱりなんだか不思議な感覚ですね」
「まぁ俺達、聖獣さんと会ってからはほとんど空の上だったからな」
カザミ、ヒロト、パルヴィーズの三人はそれぞれの機体を降下させた。彼らが機体から降りてくると、それを出迎えるように一人の男が出てくる。
「久しぶりだな、ビルドダイバーズ」
「ムランさん」
ヒロトが応じたその人物は、レジンタンスの小隊長としてヒトツメと戦ったムランだった。
初めは過去に共に戦ったガンプラの民――シドー・マサキとの事もありビルドダイバーズに対して懐疑的であった。しかし彼らの戦いを見て信用したムランは、このエルドラだけではなくアルスをも救いたいというビルドダイバーズの想いに完全に納得した訳ではなかったが彼らを信じて最後まで協力した。
今では、この場所で街の復興を手伝っている。
「随分進みましたね」
「ああ、皆が頑張ってくれているおかげだ」
ムランは周囲の作業状況に目を向けて笑みを浮かべると、それを見ていたビルドダイバーズの面々も表情を綻ばせた。
「これならそう遠くない内に新たな都市として機能するだろうな」
「僕達にも手伝える事があったら言ってください!」
「感謝する」
「ところで、聖獣さんはいるのか?」
カザミがそう尋ねるとムランは頷く。
「神殿の中にいる。案内してやりたいが、私はまだ作業が残っているからな……」
「いいって、場所は分かってるんだからよ」
「そうだな……ではまた後でな」
ムランと別れたビルドダイバーズはクアドルンがいる神殿へと向かう。
ビルドダイバーズが神殿に到着するとクアドルンが待っていたのが見えたのだが、その隣に見慣れた機体が立っていた。
「テルティウム……!?」
シドー・マサキ――マサキが使用するガンプラ、ガンダムテルティウム。その強化型であるガンダムアドバンスドテルティウムが召喚台の上にあった。
「来たか」
「待っていたぞ」
クアドルンとマサキが声をかける。
「シドー・マサキも来ていたのか」
「クアドルンから君達がその子を連れてくるというのを聞いてな」
マサキとクアドルンはメイが抱えていた赤ん坊に目を向けた。
「その赤子がアルスだったとは一目では分からぬものだな……」
「俺達も最初は驚いたぜ。ELダイバーが生まれるところなんて初めて見たしな」
メイはクアドルンとマサキがいる場所へ向かい、赤ん坊の顔がよく見えるようにする。当の本人はクアドルンを見て不思議そうな顔をしたかと思えば、すぐに笑顔を見せた。
「私を見て驚いたりせぬのだな」
「案外、聖獣さんの事を分かってたりするかもしれないぜ?」
カザミが笑いながらそんな事を言う。
「……ガンプラの民には感謝してもしきれんな。このエルドラだけではない、アルスの事もだ。
そう口にするクアドルン。
「へへっ、いいってことよ!」
「僕達は出来る事を精いっぱいやっただけですから」
「それに、アルスも救ってやりたいと最初に言い出したの私だ」
「そのアルスを救いたいと言った時、思うところはあっても最後まで信じてくれたエルドラの人達に、俺達も感謝しています」
それにカザミ、パルヴィーズ、メイ、ヒロトの四人それぞれが笑顔で応える。その様子にクアドルンは満足気に「そうか……」と呟くのだった。