0.暗礁宙域
宇宙世紀0092年。アクシズのハマーン・カーンが引き起こした『第一次ネオ・ジオン戦争』が終結してから三年あまり……。
戦禍から解放されたこの地球圏には、再び平穏な時間が流れている。しかし、この穏やかな時を取り戻した今もなお、地球連邦軍やアナハイム・エレクトロニクス社によるモビルスーツの開発と生産が続けられていた。平和の維持を名目にして。
地球と月の間――月に近いL1ジャンクション付近にある旧サイド5――新サイド4の
さらにこの暗礁宙域は『一年戦争』の終結後、エギーユ・デラーズ率いる艦隊――通称デラーズ・フリートが
そんな“
その光の主達は、先頭の一機の頭部を除いた全てが同じ姿をしている。この明灰色――いや、開発コードが示す通り銀色と言うべきか――の機体達は、戦闘のものでも偵察のものでもない動きをしていた。
1.銀の弾丸
「こちら
先頭の機体に乗っていたパイロットが報告をする。
「了解した。
母艦であるクラップ級宇宙巡洋艦《ウンカイ》にいるオペレーターが機体のパイロット――S001に答えると、続けてもう二機のパイロット達に指示を出す。
「S002了解!」
「S003、了解です」
指示を受けた二人はそう言って、指定された場所へと機体を向かわせた。離れていくその二機にS001は目をやる。
ARX-014《シルヴァ・バレト》。
地球連邦軍とアナハイム・エレクトロニクス社による準サイコミュの技術研究を目的として、同社のグラナダ工場において誕生した試作型モビルスーツである。
『銀の弾丸』の開発コードを与えられたこの機体はその出自が非常に複雑で、この宙域と同じく曰く付きのモビルスーツと言えるであろう。
そもそもの大元となった機体が生まれたのは、地球連邦軍のオーガスタ研究所であった。
ORX-013《ガンダムMk-Ⅴ》。
《
それは宇宙世紀0088年にまで
一機は、小惑星〈ペズン〉に駐留していた地球連邦軍教導団の一部将校たちがニューディサイズを名乗り、連邦政府に対し反旗を
しかし、その《ガンダムMk-Ⅴ》を搭載していた艦隊がニューディサイズ側に合流。同組織の首領が駆る機体として、討伐隊の先陣として投入されていたα任務部隊と交戦したのである。
パイロットの技量と機体性能でα任務部隊のモビルスーツを撃破するが、最終的にそのα任務部隊の中核であった《Ex-Sガンダム》との戦闘で撃墜された。
そしてもう一機。
それは、オーガスタ研究所の技術者の一人であるローレン・ナカモトが、未完成状態であったと思われる《ガンダムMk-Ⅴ》を、アクシズへ亡命する際の手土産として
アクシズは提供されたこの機体をベースに――さらにはグリプス戦役時に回収、修復した《サイコ・ガンダムMk-Ⅱ》の機体データを使用し、第四世代モビルスーツとしてAMX-014《ドーベン・ウルフ》を開発。結果的に少数に止まったのだが、当時の次期主力量産機の座を争っていた《ザクⅢ》に勝利し、ネオ・ジオン軍の高性能量産機として制式採用された。
《ドーベン・ウルフ》はその性能の高さから、精鋭部隊へ優先しての配備が行われる事になったのだが、時を同じくしてネオ・ジオンにて内部抗争が勃発。配備されていた《ドーベン・ウルフ》は
そして第一次ネオ・ジオン戦争が終結した後、地球連邦政府の管理下に置かれた〈アクシズ〉から、残されていた《ドーベン・ウルフ》数機が接収される。
これが《シルヴァ・バレト》誕生の切っ掛けとなった。
そう。この機体――《シルヴァ・バレト》のベース機となったのは、連邦の《ガンダムMk-Ⅴ》から生まれたネオ・ジオンの《ドーベン・ウルフ》であったのだ。
この接収された《ドーベン・ウルフ》の解析と《シルヴァ・バレト》への改修を担当したチームは、かつてローレン・ナカモトが籍を置いていた元オーガスタ研究所のスタッフが多数を占めていると言う。
――『狼』に対して『銀の弾丸』……開発側もよくこんな皮肉めいた名前を思い付くものだ。
それがこの《シルヴァ・バレト》のテストパイロットに選ばれたS001の最初の感想だった。
この《シルヴァ・バレト》にはいくつかの特徴がある。
まず一つは、ベース機である《ドーベン・ウルフ》に設定されていたジェネレーター直結型火器、胸部メガ粒子砲がオミットされている点だ。
これにより、胸部メガ粒子砲とビーム・ライフルを接続した際に使用できる大出力のメガ粒子砲――メガ・ランチャーはなくなったが、武装のオミットに伴って外装を構成する装甲部材を更新。それによって機体の大幅な軽量化と、モビルアーマー級のジェネレーターから生み出されるエネルギーの効率的な供給によって、高出力状態を維持したまま安定させ、良好な
そしてもう一つ。
ネオ・ジオンの《ドーベン・ウルフ》から、連邦の《シルヴァ・バレト》へ生まれ変わった事を表す特徴的な部分。それが新たに設定された二種類のヘッド・ユニットである。
上述した通り、一機――S001の《シルヴァ・バレト》は他の二機と頭部が違う。と言っても、外見の差異があるのはフェイス部分のみしかないのだが。
S001が搭乗している《シルヴァ・バレト》にはガンダム・ヘッドが選択されている。これは本機の開発目的であった準サイコミュ兵装のテストに主眼に置いて用意された物であった。
ではS002とS003の駆る二機はどうか。
両機にはシステム解析用に、測定センサーを強化したジム・ヘッド――そのフェイス部分の形状は二年ほど前より順次、実戦配備が進められている《ジェガン》の物に近い――が採用されている。
こうした違いから、この特徴的なヘッド・ユニットは当然フェイス部分が注目される事が多い。しかしこのヘッド・ユニットは新規に用意された物でありながら、これまで歩んできた複雑な機体の系譜を象徴するような
頭頂部に備えられたメインカメラは《ガンダムMk-Ⅴ》を、側頭部や
また、これらの要素から武装面に置いても一部の見直しが図られた。
胸部メガ粒子砲のオミットにより不要になった《ドーベン・ウルフ》のビーム・ライフル――メガ・ランチャーだが、機体の改修を担当したチームの『携行火器を充実させることで高精度のテストを行える』という提案によって、改造を施した上で本機のシールドとして装備される事となった。一口にシールドと言っても、実際にそう呼べるのは上半分が転用された《ジェガン》用シールドの部分であろう。
その大部分はメガ・ランチャーをショートバレル化して組み込んだビーム・ランチャーが占めている。
ビーム・ランチャーの射撃時にはメガ・ランチャーと同様に砲身がスライドして伸長、先端部のメガ粒子制御リフレクターが展開する。ある程度の長距離狙撃にも対応が可能な高出力のビーム兵装だ。
《ドーベン・ウルフ》での専用装備であったビーム・ライフルがビーム・ランチャーになった事で、携行火器としては《ジェガン》用のビーム・ライフルと同等品がそのまま装備される。取り回しの良い携行火器が必要とされる場合の武装であるとされるが、これが事実上のスタンダードとなっているのは間違いないだろう。
今回もこのビーム・ライフルが選択され、三機の腰部背面にマウントされている。
ヘッド・ユニットも新規の物が設定された事により、《ドーベン・ウルフ》にて装備されていた30mmバルカン砲は連邦軍のモビルスーツにおいて標準装備である60mmバルカン砲へと改められている。
これらが《シルヴァ・バレト》における武装の主な変更点だ。
この他の武装は《ドーベン・ウルフ》の物から基本的に変わらないのだが、一部武装に関して選択式だった仕様の固定化や若干の改良が施されていた。それはこの機体の要である準サイコミュ兵装であった。
「S001へ。準サイコミュシステムの状態はどうか?」
オペレーターの声にS001はシステムチェックをかける。
「システムオールチェック……有線式ハンド、インコム共に異常なし」
彼の言葉通り、モニターには機体に搭載されている二種類の準サイコミュ兵装に問題がない事を示していた。
まず上述した選択式であった仕様の固定化について。これは有線式ハンドの事である。
《ドーベン・ウルフ》の腕部には他の機体には見られない珍しい仕様があった。
ビーム・ハンド――ハンド・ビームとも――と呼ばれる腕部は、マニピュレーターに高圧電流発生機能とビーム発射口が備わっている。珍しい仕様と言うのは、このビーム・ハンドのある機能を使った際の状態にある。
ビーム・ハンドには前腕部を射出してのオールレンジ攻撃を行う事が出来る。通常、一般機用の仕様としては有線式準サイコミュ誘導兵器として設定されていた装備だ。
それに対して指揮官機、もしくはニュータイプ能力が高いパイロット専用とされる機体にはレーザー通信による無線式準サイコミュ誘導兵器へと変更されているのである。さらにこの無線式には前腕部の内部に隠し腕を装備しており、ビーム・ハンドの射出後にはその隠し腕でビーム・ライフルやビーム・サーベルを保持、使用する事が可能であった。
《シルヴァ・バレト》では有線式ハンドと言う名称の通り、一般機用である有線式誘導兵器がそのまま標準装備となっている。
機体のレイアウトは基本的に《ドーベン・ウルフ》の流用である為、無線式への換装も可能であると思われるが、現状で確認されている全機――開発が進められている連邦製大型ファンネルの搭載予定機も含めて――が無線式ではなく有線式であった。これは恐らくベース機である《ドーベン・ウルフ》においても、改良された準サイコミュシステムを
そしてもう一つの有線式準サイコミュ誘導兵装、インコム。こちらは《ドーベン・ウルフ》の物より若干の改良がなされている。
バックパックに二基を搭載しているインコムは《ドーベン・ウルフ》の時点ですら《ガンダムMk-Ⅴ》で装備していたそれよりも洗練された物であった。本機のインコムはさらにユニットを改良した事で、形状はそのままに装弾数の増加と再チャージ時間の短縮に成功したのである。
こうして連邦、ネオ・ジオン双方の技術を融合させて誕生した《ドーベン・ウルフ》のその高い性能をさらに引き上げた《シルヴァ・バレト》は、準サイコミュシステムのテスト用モビルスーツでありながら想定された数値を大幅に超えて、実戦に十二分に耐えられる高いレベルを示す機体に仕上がったのだ。
2.最終稼働実験
「艦長、全機の配置完了を確認。こちらでのモニターも良好です」
「よし……ではこれより、《シルヴァ・バレト》の最終稼働実験を始める」
オペレーターの言葉を聞いた《ウンカイ》の艦長が号令を発する。
「S001は指定された目標に対し、有線式ハンド及びインコムの試射。S002、S003は各データ収集を開始せよ」
各機が指示に返答をして動き出す。
S001の《シルヴァ・バレト》に目標データが送信され、全天周モニターにターゲットである複数のダミーバルーンの情報が表示された。
「目標を確認した」
機体を動かしてターゲットへと向かってウェポンセレクターを操作。まずは有線式ハンドを選択すると、そのまま正面に捉えたダミーバルーンに狙いを定めた。
「有線式ハンド、射出……!」
操縦桿のトリガーを押すS001の声に呼応するかのように《シルヴァ・バレト》のツインアイが光る。
その後、右腕の有線式ハンドが射出されると、宙域に漂っているデブリなどを避けながら接近、標的のダミーバルーンを掴む。
「まず一つ」
彼がそう呟くと同時に、掴んだ右手の掌底部から放たれたビーム砲によってダミーバルーンが破裂した。
「ターゲットの破壊を確認。S001、続けて標的を撃破せよ」
「了解」
指示に従ってさらに有線式ハンドのビーム砲をダミーバルーンへ二つ、三つと連続で命中させていく。
ある程度の標的を破壊した段階でまだ幾つか残っているのだが、S001は有線式ハンドを機体本体へと戻す。次のターゲットに《シルヴァ・バレト》を向かわせると、再びウェポンセレクターを操作して今度はインコムを選択した。
「インコム射出!」
バックパックから二基のインコムがコントロールワイヤーを延ばしながら射出される。一定の長さまで到達したインコム本体から小型のリレー・インコムが一基放出され、それを中継してさらにワイヤーを延ばしたインコムが標的を上下に挟み込むようにして狙う。
「よし……当たれ!」
インコムから発射されたビームの光束は正確にターゲットのダミーバルーンを撃ち抜いた。
「お見事です!」
「良好ですね」
「このまま最後まで行く」
データの収集をしているS002とS003の声に答えながら、S001は残りの目標をインコムで撃破していく。
「ターゲットの全撃破を確認」
オペレーターが最後のダミーバルーンを撃破した事を知らせる。S001も全ての標的を破壊したのを確認し、インコムを戻して機体のバックパックへと収納させた。
「有線式ハンド及びインコムのテスト終了。準サイコミュシステムは無事に所定の性能を発揮したようです」
オペレーターの報告に《ウンカイ》艦長は頷く。
「そうか。ならば予定通りに《シルヴァ・バレト》三機での模擬戦を始めてくれ」
「はい。各機は開始位置へ移動せよ」
パイロット達はそれぞれに了解と返すと、機体を指定されたポイントへ向かわせながらビーム兵装の出力を模擬戦用に設定する。
三機の《シルヴァ・バレト》が配置に着いたのをオペレーターが確認した。
「各機、準備はよろしいか?」
「S001準備完了だ」
「S002も同じく準備完了!」
「S003、こちらも完了です」
オペレーターは三人に模擬戦の内容を伝える。
「まずはS001一機に対してS002、S003の二機で模擬戦を行ってください。S001の撃墜認定か、S002とS003両機の撃墜認定で終了です。設定された制限時間内に決着がつかなかった場合においても同様に終了となります」
各機のモニターに五分の制限時間が表示された。
「カウント合わせます……五、四、三、二、一、開始!」
その合図に三機の《シルヴァ・バレト》は一斉に動き出す。
S001の《シルヴァ・バレト》へS002とS003の《シルヴァ・バレト》二機が左右から距離を詰める。
「行きますよ、大尉!」
そう叫んだS002の機体がビーム・ライフルを一回、二回と発射する。
模擬戦用に出力調整をされたビームは、目標に命中してもその対象を焼くことはない。模擬戦用のビームがモビルスーツの胴体に直撃しようが、モニターに撃墜の表示がされるだけであり、実際に爆発はせず死にもしないのだ。
しかし当然な話ではあるが、パイロット達は実戦と同じように相手のビームを避け、逆に自分の攻撃を当てるよう狙う。それは互いに腕を競い合い、操縦技術を高める事で、戦場において長く生き抜く力を付けるためにも必要な事であった。
「狙いが甘いぞ、S002!」
S001は飛んできたビームを最小限の動作で回避すると、S002に――ではなく、反対側から狙っていたS003の《シルヴァ・バレト》へとビーム・ライフルを撃ち放った。
「ッ……!」
「S003はよく反応したが、油断しない事だ」
「……肝に銘じておきます」
一射でS003の動きを止めさせたS001だが、自身はすぐさま《シルヴァ・バレト》のメインスラスターを噴射させ、迫っていた二機の包囲網から抜け出した。さらに機体を反転させたS001は、ビーム・ライフルによる
S002はしっかりと防御姿勢を取りながら回避行動に移るのだが、
「おわっ!?」
近くにあったスペースデブリ――コロニーの残骸の一部に機体をぶつけてしまい、バランスを崩したところに《シルヴァ・バレト》の左脚に模擬弾の被弾判定を受けてしまった。
――全く……。
まるで新米パイロットのようなミスをするS002に、S001は内心呆れる。
「何をやってるんですか、S002!」
S003も
「分かってるよ!」
その援護射撃の間にS002は体勢を立て直し、コロニーの残骸から離れた。
「あれで《シルヴァ・バレト》の性能は全て引き出せるのかね……」
三機の模擬戦を観戦していた《ウンカイ》の艦長がそんな事を零す。
「その為に三機での試験をしているようなものです。データの取りこぼしがあると困りますから」
そう答えたのは、この最終稼働実験のために艦に同乗していたアナハイムの技術スタッフだ。平然と言うその様子に、S002が聞けば文句を言っているかもしれないな、と艦長は思わずにはいられなかった。
「……オペレーター、模擬戦の状況はどうかな?」
「流石は大尉、と言ったところですね。機体性能を高いレベルで出してくれています」
「いいデータが取れているならば、アナハイムも文句はないのではないですかな?」
「これ以上の性能を《シルヴァ・バレト》は引き出せますよ」
――フン、技術屋どもめ。
先程と変わらない口調の技術スタッフに、艦長はいい表情をしない。
視線を模擬戦の様子を映しているスクリーンに戻す。状況は変わらずS001の《シルヴァ・バレト》が優勢であった。
「この調子だと、予定より早く任務を終えられそうですね」
《ウンカイ》のブリッジにいる他のクルーもついついそんな軽口を叩く。
「最後まで気を抜くな。一年前にNSPが解散宣言をしたと言っても、ジオンの残党やエグムと言った連中はまだ多いんだからな」
艦長がそう口にするのも無理はない。
一年戦争の終結から十年以上が経った今でも、ジオン残党が――そしてアクシズのネオ・ジオン残党も各地で抵抗運動を続けている。その上、宇宙世紀0090年の初頭にはエグムやNSPという反地球連邦組織のテロ活動も小規模ながら活発化していた。
彼が言ったようにNSPは既に解散したとはいえ、全ての脅威が消え去ったわけではないのだ。
「これは……艦長!」
「む!?」
そう、このような暗礁宙域では特に――。
3.
「S002!」
「もう一度、同時攻撃!」
今度は左右からではなく、S001の《シルヴァ・バレト》に対してS002機が正面、S003機が左側から攻撃を仕掛けようと動く。
S001も二機の動きに合わせて後退した瞬間だった。
「――なんだ!?」
三機の《シルヴァ・バレト》の間、それも先程までS001の機体がいた場所を、模擬戦用ではない高出力メガ粒子砲の光束が幾つかの小さなデブリを消滅させながら駆け抜けていった。
「S002、S003、無事か?」
「は、はい!」
「自分も問題ありません」
二機の無事が確認できた事にS001はひとまず安心する。
「しかし、今のビームは……」
「S002とS003はビームの出力を実戦用に戻しておけ。《ウンカイ》へ。状況を教えてくれ」
S001は二人にそう指示を出しながら、自身もビーム兵装の設定を実戦用の出力に戻す。それと同時に、《ウンカイ》に対して今の長距離ビーム射撃を行ってきた者の正体を聞いた。
――この方向は、確か〈茨の園〉があったはずだ……ただの
だが、この攻撃をしてきた正体不明の相手の動きは早かった。
「高熱源体、テストチームへ接近!」
オペレーターが叫ぶ。
「数は!?」
「一機です!」
所属不明機の数を聞くのと同時に、《シルヴァ・バレト》の全天周モニターがその機影を捕捉する。
「こちらでも捉えた。コイツは……!」
S001が驚くのも無理はない。照合したデータから表示された所属不明機の正体は、彼らが乗っている《シルヴァ・バレト》の兄弟機と言える機体――AMX-014《ドーベン・ウルフ》であったのだ。
――さっきのはメガ・ランチャーでの攻撃だったか……。
「二人とも気を付けろ! 単機で来る奴は厄介な相手だ!」
「りょ、了解!」
「了解!」
三機は即座に臨戦態勢を取った。
「総員、第一種戦闘配置! 対空警戒を怠るな! 他にも隠れてる連中がいるかもしれないんだからな! 特に、奴の母艦が近くにいないかしっかり探せ!」
「モビルスーツ隊は発進準備を急いでください!」
《ウンカイ》艦長が対空監視の指示を出すと同時に、オペレーターは艦載機――《ジェガン》のパイロット達にスクランブルを伝える。艦内が一気に慌ただしくなり、特に格納庫ではメカニックマンがすぐに《ジェガン》を発進させられるように動き回っていた。
艦長は今にも艦載機を発進させて、テストチームの援護をさせるつもりだった。
しかし――
「待ってください、艦長」
そう声をかけてきたアナハイムの技術スタッフに《ジェガン》隊の発進を止められてしまう。
「どういうつもりだ!?」
「現状、敵機はあの《ドーベン・ウルフ》一機のみです。ならばここは、《シルヴァ・バレト》の三機に相手をさせて、実戦でのデータ収集を行わせるというのはどうでしょう?」
――何を言い出すかと思えば……!
「もちろん、テストチームが危険になるようであれば援護の部隊を出していただいて構いません」
当然でしょう? と言わんばかりに口にする彼に、艦長は思わず怒鳴りそうになった。そのやり取りを見ていたオペレーターも、困った表情でどうするのかと目で訴えかけている。
それを見た彼は深呼吸をして自身を落ち着かせると、
「……いいでしょう」
そう言って、艦長は技術スタッフの提案を承諾した。しかし彼はテストチームが危険にならずとも、敵の母艦か援軍の気配があれば、すぐにでもモビルスーツ隊を出撃させるつもりでいる。
「モビルスーツ隊はいつでも出せるようにして待機だ。あの所属不明機はテストチームに対応させろ」
「了解……」
一安心、というような表情と声でオペレーターが言う。そのままモビルスーツ隊に待機を伝えている間に、艦長が《シルヴァ・バレト》のテストチームに三機で所属不明の《ドーベン・ウルフ》へ対処するよう指示を出す。
「――最終稼働実験の予定を変更する。テストチームには実戦での《シルヴァ・バレト》のデータ収集を行ってもらう」
その言葉にS001は「了解」と短く返して機体を前に出すと、すぐにS002とS003を自分の左右後方へ
三機の《シルヴァ・バレト》の動きを認識した《ドーベン・ウルフ》は、ビーム・ライフルを構えた。
「来るぞッ!」
《ドーベン・ウルフ》がビーム・ライフルを発射する。飛来するビームをS001は避けると、反撃にと《シルヴァ・バレト》三機がそれぞれにビーム・ライフルを撃つ。
「三機相手に勝てると思うなよ!」
そう言うのはS002だ。
確かに複数のモビルスーツを相手に、単機のモビルスーツが勝つ事は難しい。しかし、単機で挑んでくるこの《ドーベン・ウルフ》はそれを承知の上で向かってきたのだ。
「油断するな。一歩間違えば、死ぬのは自分だぞ!」
目の前でビーム射撃の光束を軽々と回避する敵機に、S001は相手がエース級の腕前である事を判断する。
――撃墜しようと欲を出して行くのは危険だな……!
「各機、無理に墜とそうと思うな。追い払うのが第一だ」
「了解!」
「了解」
ビーム・ライフルの連続射撃を避けていた《ドーベン・ウルフ》が、デブリを盾にするようにして陰に隠れた。
次の出方を
「ッ……!」
彼は
――あの一瞬でデブリとこちらの位置の把握だけではなく、不意打ちを仕掛けられる大きさだと判断したのか……もし相手がニュータイプだとすれば、尚更に厄介な相手だな……!
その考えに、改めてS001は気を引き締め直す。
「二人は奴を左右から挟み込め!」
「S002、タイミングを!」
「分かってるよ!」
S002はS003に叫ぶと同時に、可動式のメイン・ブースター・バインダーに搭載されている対モビルスーツ用ミサイル――弾頭は《ドーベン・ウルフ》の時と変わらず《ガザD》に搭載されている物と同タイプのAMS-01H型である――二十四発を一斉に撃ち放った。
飛来するミサイル群を認識した《ドーベン・ウルフ》は急速離脱をかけるが、S003が駆る《シルヴァ・バレト》のビーム・ライフルによる的確な射撃が逃げ道を潰していく。
「よし……」
S001は回避に専念している《ドーベン・ウルフ》へ向け、シールドに装備されているビーム・ランチャーを構える。砲身の展開から発射までにわずかなタイムラグがあるが、今のタイミングなら避けるのは難しいはずだ。
「当てる!」
そうして放たれたメガ粒子の塊は《ドーベン・ウルフ》を撃ち抜く――はずだった。
「なッ……!」
《ドーベン・ウルフ》はミサイルとビーム・ライフルの光束を避けていた中、迫るビーム・ランチャーの攻撃を回避する為、なんと自身のビーム・ライフルを放り投げて盾にしたのである。それによってS001の《シルヴァ・バレト》が放ったメガ粒子はビーム・ライフルを撃ち抜き、モビルスーツを撃破した際よりも小規模ではあるが、爆発による閃光が《シルヴァ・バレト》三機の視界を埋めた。
4.孤高の強者
「アイツは!?」
「ロストした……?」
S002とS003も周囲を見渡す。
「まだどこかに潜んでるはずだ。各機は警戒を――」
S001が言い切る前に警告音が鳴り響く。
「大尉!」
先に気付いたS003の声がS001の耳を打った瞬間、《シルヴァ・バレト》の目の前に突如として姿を見せた《ドーベン・ウルフ》は、右
――ッ!?
この斬撃に対して咄嗟にシールドを前に出せたのは、彼が積み重ねた経験から身体が自然に反応して行動できたからであろう。しかし完全に防げた訳ではなく、ビーム・サーベルによってビーム・ランチャーの砲身が溶断させられてしまった。
「ハァッ……!」
S001は大きく息を吐きながら《ドーベン・ウルフ》から離れると同時に、シールドの左右側面部に内蔵されている二連装ミサイル・ランチャーを全弾斉射。その後すぐにシールドを切り離した。
《ドーベン・ウルフ》は30mmバルカン砲でミサイルを迎撃しつつ回避する。さらに《ドーベン・ウルフ》は
「これは……!」
今にも掴みかからんとするビーム・ハンドにわずかな動揺を見せながらも、S001は得物をビーム・ライフルからビーム・サーベルに変えて切り捨てる。その直後、《ドーベン・ウルフ》がビーム・ハンドを飛ばした左側から、S002の《シルヴァ・バレト》が同じくビーム・サーベルを手にして接近するのが見えた。
「もらったァ!」
しかし彼はある事を見落としていた。
「
S001が言い終わる前に振り下ろされるビーム・サーベル。だが、その一撃を《ドーベン・ウルフ》はもう片方のビーム・サーベルで受け止めていた。
それはビーム・ハンドを射出した左腕――隠し腕であった。
「隠し腕!?」
「S002、離脱しろッ!」
その声にS002の《シルヴァ・バレト》が離れようとするが、《ドーベン・ウルフ》が空いている右手で逃がさないように機体を掴んだ。
「なっ――!?」
――やらせるか!
すぐさまS001は機体を操作してインコムを射出する。先程のテストで消費したエネルギーは、そのほとんどが回復している。
「S003はフォローを!」
「了解です!」
リレー・インコムで二機の上下まで位置したインコムがビーム射撃をした。
この攻撃を、《ドーベン・ウルフ》はS002の《シルヴァ・バレト》から離脱して避ける。その先で今度は反対側からS003の《シルヴァ・バレト》がビーム・ランチャーを構えて狙っていた。
「今なら……!」
背後からメガ粒子を撃ち込む。しかし、それを読んでいた《ドーベン・ウルフ》は光束を難なく回避する。
それだけではない。
《ドーベン・ウルフ》が振り返ると同時に右腕を振るう。
「何を――うわぁッ!?」
《ドーベン・ウルフ》の右腕から何かが見えたと持った瞬間、S003の《シルヴァ・バレト》は吹き飛ばされ後方にあったデブリに激突した。
「S003! 無事か!?」
S001の問いに応答はない。どうやら衝撃で気を失ってしまったようだ。
「くっ……S002はS003の機体を連れて下がれ! 奴は通常の《ドーベン・ウルフ》とは違う!」
「りょ、了解!」
指示を出しながらS001は彼らが後退しやすいようにメイン・ブースター・バインダーのミサイルと肩部ビーム・キャノンで牽制をする。この射撃を《ドーベン・ウルフ》はS003の《シルヴァ・バレト》から距離を取りながら避けていく。そんな中でS002が素早くS003の機体を引き連れて下がって行くのをS001は確認した。
――よし……!
攻撃をミサイルと肩部ビーム・キャノンからビーム・ライフルに切り替えたS001だが、決して《ドーベン・ウルフ》の
それはS003の《シルヴァ・バレト》へ右腕を振ったあの瞬間、《ドーベン・ウルフ》の腕部から伸びた
「ッ……!」
――来たな!
その間合いに入らない動きに《ドーベン・ウルフ》も気付いたようで、ビーム射撃を回避しながら距離を縮めてくる。
「――速いッ!? チッ!」
驚いたS001は機体を後退させるが、遅い。
《ドーベン・ウルフ》の右腕――その手首部分から伸びてきた鞭状の武装が、《シルヴァ・バレト》のビーム・ライフルとそれを持っていた右腕に絡み付いて来た。
「ヒート・ロッド……ッ!」
それは本来の《ドーベン・ウルフ》には存在しない装備だった。
《ドーベン・ウルフ》は準サイコミュ装置と大型のジェネレーター直結型のメガ粒子砲を搭載している第四世代モビルスーツとして完成した機体である。
しかしその設計段階――正確にはサイコミュの導入が決定される以前において、格闘戦用の武装としてヒート・ロッドが装備されていたという。
当然ながら、これはベース機とされる《ガンダムMk-Ⅴ》や《サイコ・ガンダムMk-Ⅱ》には見られない装備であり、《ドーベン・ウルフ》を見ても、その豊富な内装武器による圧倒的火力を
閑話休題。
こうした本来は不採用になった装備まで持ち出してくるのはただの宙賊ではない。その考えがS001の頭を
「が――あ゛あ゛ぁぁぁぁッ!!」
《シルヴァ・バレト》の右腕に絡み付いていたヒート・ロッドに、強力な高圧電流が送られた。
いくらシートの耐電性能が強化されているとは言え、この攻撃を浴び続けていれば無事では済まない。しかし今の彼は抵抗できる状態ではなかった。せめて左腕の有線式ハンドを射出させる事が出来ていたならばすぐに抜け出せただろうが、一人で《ドーベン・ウルフ》と対峙している現状では、もうどうする事も出来ない。
いずれは機体の電子機器がダメージを受け、その機能が停止してしまうだろう。そうなれば、S001に残されたのはそのまま死を待つのみだ。
「――尉! 大尉!」
絶望的な状況の中、強烈な電撃に耐えているS001の耳に聞き馴染みのある声が響いた。
それと同時に、S002とS003を後退させた方向から、いくつものビーム射撃の光束が《ドーベン・ウルフ》へと降り注いでいく。ヒート・ロッドでS001の《シルヴァ・バレト》を拘束していた事で回避行動を取れない《ドーベン・ウルフ》はそれが牽制射撃であると見て最小限の動きで直撃を避けていくが、一つの光束が偶然にもヒート・ロッドを撃ち抜いた。
それを見た《ドーベン・ウルフ》はすぐに後退すると、ヒート・ロッドの攻撃から解放された《シルヴァ・バレト》を守るようにして連邦の機体――S002が乗る《シルヴァ・バレト》を先頭に、二機の《ジェガン》がビーム・ライフルを撃ちながら立ちはだかった。
「ご無事ですか、大尉!」
射撃しながらも心配するS002の声に、S001は身体の痛みを
「――それよりも、S003はどうした?」
「アイツはもう一機いた《ジェガン》に預けました。先に《ウンカイ》へ送り届けてもらってます」
彼は気絶したS003を連れて《ウンカイ》へ向かっていたところ、戦況を見ていた艦長が発進させた《ジェガン》隊と合流。その内の一機にS003の《シルヴァ・バレト》を任せて、S001の援護に戻ってきたのだ。
「そうか……ありがとう、助かった」
S001は機体の右腕に巻き付いたままのヒート・ロッドを外しながらそう口にする。
「いえ、いつも大尉には助けられてますから……!」
そのS002の声は明るいものである。だが、いつまでもこうして会話をしている訳にはいかない。
S001は《ドーベン・ウルフ》に目を向けた。
――さて、どうする?
射撃を回避する《ドーベン・ウルフ》の次の行動をS001は警戒する。
あのパイロットは確かに強い。それに機体も応え、その性能を遺憾なく発揮している。
しかしこれまでの戦闘で《ドーベン・ウルフ》の武装は減り、さらに《ウンカイ》からの増援が来た。この状況では、エース級の腕前であったとしても無傷というのは難しいであろう。
ここで《ドーベン・ウルフ》が撤退するならいいのだが、捨て身の攻撃をするのなら自分たちに損害が出る前に撃墜しなければならない。その覚悟を決めて目の前の敵を見据えていた。
その間にS002の《シルヴァ・バレト》と《ジェガン》が包囲しようと動き始める。
「ッ……!」
だが、それよりも先に《ドーベン・ウルフ》が動く。胸部左右――脇下に隠される形で装備しているグレネード・ランチャーを一発、二発と対峙していた彼らへと発射した。
S002と《ジェガン》隊はシールドを構え、S001は胴体を守るように両腕で防御姿勢を取りながら散開する。発射された二発のグレネード弾が
「うわっ!?」
「閃光弾――チッ!」
すぐにS001は《ドーベン・ウルフ》の攻撃に備えるのだが、閃光弾の光が消えると今度は煙幕によってその機体の姿が見えなくなっていた。グレネード・ランチャーから発射された二発目はスモーク弾であったようだ。
《ジェガン》隊も周囲を警戒する。しかしセンサーを切り替えて熱源反応を探ってみても、《ドーベン・ウルフ》の気配はどこにもない。
「いない……?」
姿を見せない《ドーベン・ウルフ》に、同じように周囲を見渡すS002が
そこへ状況を見ていた《ウンカイ》からテストチームとモビルスーツ隊に通信が入った。
「こちらで敵機の後退を確認した。敵の増援も確認されてない」
――奴は引いてくれたか……。安堵したS001は一つ息を吐く。
「S001、了解した。各機、《ウンカイ》へ帰投する。念のため周囲の警戒は怠るな」
彼はそう言って機体を《ウンカイ》に向かわせると、S002や《ジェガン》隊のパイロットも「了解」と返事をしてS001の後に続いた。
「敵機が下がったからと言って気を抜くなよ! 各員は対空警戒を厳にせよ!」
《ウンカイ》ブリッジ内の張りつめていた空気が《ドーベン・ウルフ》の撤退で緩みかけたところを、艦長はクルーに指示を飛ばす。それから彼はアナハイムの技術スタッフに目を向けた。
「機体のテストはこれで切り上げ、月に戻ります。よろしいですね?」
「仕方ありませんね……《シルヴァ・バレト》の最終稼働実験としては良好なデータが取れたのでしょうが、相手を逃がしてしまったのは残念です。あの機体性能なら、撃破は十分に出来るものだと思っていましたが……」
技術スタッフの彼は先程と変わらぬ様子だ。
「……撤退した《ドーベン・ウルフ》が、《シルヴァ・バレト》をただのマイナーチェンジだと判断したと願うばかりですかな?」
「そう思うのはあちらの勝手ですが、あの《シルヴァ・バレト》は連邦軍にとって重要な機体になるのです。それをただのマイナーチェンジなどと」
鼻で笑うように口にする技術スタッフに、艦長は聞こえないように「そうかい」と漏らしては、着艦コースに入った《シルヴァ・バレト》を視界に入れるのだった。
5.次弾装填
《ウンカイ》のモビルスーツデッキにて、帰還した《シルヴァ・バレト》三機はそれぞれに整備を受けていた。
その様子をS001他――テストパイロットの面々が眺めていたが、《ドーベン・ウルフ》との戦闘で気を失ったS003は苦い表情を浮かべている。
「申し訳ありませんでした、大尉」
S003のその言葉に、S001は視線をそちらへ向けた。
「気にするな。こうして全員無事に帰って来られたのだからな」
「しかし、機体のテストは……」
「上の連中やアナハイムからすれば満足いくものではないかもしれないな。だが、今回の事が無駄になる訳ではないだろう」
それに、と彼は続ける。
「ハンス・ロックフォード大尉が、この《シルヴァ・バレト》をさらに改修した試験機のテストパイロットを務めるそうだ」
「例の、連邦軍が開発しているファンネルを搭載した――って機体ですか?」
「ああ。優秀な彼なら、我々以上にいいテスト結果を出してくれるだろう」
自分としても悔しい気持ちはあるがな。と言ってS001は穏やかに笑う。
襲撃を受けたとはいえ、一機の相手に圧倒されていたのだ。《シルヴァ・バレト》の最終稼働実験のテストパイロットを任された身としては、今回の試験を満足いく形で終わらせたかったのは彼も同じであった。
「それにしても、あの《ドーベン・ウルフ》は何者だったんですかね?」
S002が聞いた。
「さてな……」
「ネオ・ジオンの残党か、ただの宙賊か……いずれにしても、エースなのは間違いないですね」
「あぁいう奴の相手はそれ相応の部隊にお願いしたいもんですよ!」
そんな文句を言うS002。
「しかし、《シルヴァ・バレト》とは別に搭載されているモビルスーツは最新鋭の《ジェガン》ですよ? 初めてこの艦に来てから驚きの連続です」
S003がそう言うのも無理はない。
彼らが乗艦している《ウンカイ》は新鋭艦のクラップ級宇宙巡洋艦であり、艦載機としても新型量産機《ジェガン》が配備されていた。この部隊は残党掃討の為に編成された訳ではない。それでも《ジムⅢ》が未だ多くの部隊に現役で配備される中で、このような真新しい機体が並んでいたのだ。
「上の連中が考える事など、一テストパイロットの我々には分からんよ」
二年前に発足した
――上の連中も一枚岩じゃない、と言うのは厄介な事だがな……。
彼が口にしなかったそれは、この《シルヴァ・バレト》の試験に現れた《ドーベン・ウルフ》が、一直線にテストチームへ向かってきた状況を思い返しての事であった。
兄弟機が持つ因縁がそうさせたのか、それとも何者かの手によって引き合わされたのか――いずれにせよ、先程の《ドーベン・ウルフ》のような存在が動いているのだ。あれがたった一機で動いているという事もないだろう。
裏で暗躍している者の存在が確実にある。S001はそう結論付けた。
「テストチーム各員、グラナダ到着までに《シルヴァ・バレト》試験レポートの提出を、とのことです」
「――お呼びのようだ」
艦内に響いた放送にS001は思考を打ち切る。
「レポートは苦手なんだけどなぁ……」
「そんなこと言ってないで、行きますよ」
主な参考資料
・機動戦士ガンダムUC プリズマティック・モビルズ part1
・機動戦士ガンダムUC プリズマティック・モビルズ part2
・機動戦士ガンダムUC MSV楔
・HGUC 1/144 シルヴァ・バレト説明書
・旧キット 1/144 ドーベン・ウルフ説明書
・HGUC 1/144 ドーベン・ウルフ説明書
・総解説 ガンダム事典 Ver.1.5
・マスターアーカイブ モビルスーツ RX-93 νガンダム
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