ペルソナ THE PHANTOM ELEVENS ~心の怪盗団と革命の風~ 作:ヒビキ7991
~秀尽学園 校舎一階 正面玄関~
校舎に入った天馬。彼の目に最初に飛び込んで来たのは、棚に飾られた大量の金メダルと金のトロフィーだった。
天馬
「うわぁ、凄い数だ………サッカー部のはあるかな?」
天馬はサッカー大会のトロフィーが無いか捜す。が、飾ってあるトロフィーは殆どがバレー大会のモノだった。
天馬
「どれもバレー大会の優勝トロフィーばかりだ。ひょっとして、この学校ってバレー部が強いのかな?」
まじまじとトロフィーを眺める天馬。するとそこへ、一人の男性教師が声をかける。
男性教師
「キミ、ひょっとしてバレー部に興味があるのかい?」
天馬
「ん?」
天馬は声に気付き振り向く。男性教師は背が高く筋肉質で、若干モジャッとした黒い髪をしている。
男性教師
「どうだい、ウチのバレー部は凄いんだぞぉ?何せ実力は全国大会クラスだからなあ!」
天馬
「あの、貴方は?」
男性教師
「おっとすまない、僕は《鴨志田 卓》。秀尽学園の体育教師でバレー部の顧問だ。あと自慢じゃないが、こう見えて僕は元オリンピックの金メダリストでね。」
天馬
「そうなんですか?凄いですね!」
鴨志田
「だろ?ところで、キミは新入生だろ?名前を聞いても良いかな?」
天馬
「松風天馬です!」
鴨志田
「松風君か。君もバレー部に入部しないかい?一緒に全国優勝目指そうじゃないか!」
鴨志田は笑顔を見せ、天馬をバレー部に勧誘する。が、当然天馬は………
天馬
「ありがとうございます。でもすみません、俺サッカー部に入ろうと思ってるんです。」
鴨志田
「そうか、なら仕方ない。色々大変だと思うが、自分なりの高校生活を楽しみなさい。」
天馬
「はい!では、俺はこれで。」
天馬は鴨志田の勧誘を断り、礼をして指定されたクラスに向かった。だが、鴨志田は走り去る天馬を見て先程の笑顔から一変、何やら険しい表情を浮かべていた。
鴨志田
「松風天馬………そうか思い出した、松風天馬と言えば中学サッカーの名門、雷門中サッカー部のキャプテンだった男じゃないか!まさか彼がこんな学校に進学するなんて………流石に彼のような実力者がサッカー部に居るのは非常に厄介だな………」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
~体育館~
暫くして、体育館で入学式が行われた。
司会
『開式の辞。これより、秀尽学園高等学校の入学式を執り行います!』
『新入生、入場!』
入場の合図と共に、新入生がクラス別にゾロゾロと入ってきた。保護者席に座る保護者の中には、惣治郎の姿もある。
天馬
(今日から遂に高校生!楽しみだなぁ!)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
~校舎三階 1ーA~
入学式が終わった後、天馬は他の生徒と共に自身がお世話になる《1年A組》に移動した。ホームルームが始まり、天馬達は担任の指示で一人ずつ、軽く自己紹介を始める。
天馬
「松風天馬です!中学時代は雷門中に通っていて、サッカー部に所属してました!ポジションはミッドフィルダーです!ヨロシクお願いします!」
天馬は自己紹介を終え、教卓の前から自分の席に戻った。
「雷門中の松風って、アレだよな?」
「中学1年で1軍キャプテンの座に就いて、雷門中を3年連続ホーリーロード優勝に導いたって言われてる、あの松風天馬か?」
「何で彼が秀尽学園に?もっと良い高校あったと思うけど?」
教室中から天馬に対するヒソヒソ話が聞こえてくる。次に前に出たのは、鮮やかな赤いローファーと赤い瞳、ウェーブがかった赤毛を真っ赤なリボンで結ったポニーテールの可愛い少女。
少女
「《芳澤かすみ》です!新体操をやってます!ヨロシクお願い致します!」
かすみは自己紹介を終え、深く礼をする。が、その角度は有に90度を超えていた。
天馬
(うわぁ、身体柔らか………)
天馬以外にも同じ印象を持った生徒が居たに違いない。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
~正門前~
ホームルームを終えて正午過ぎ、天馬は下校するため正門に向かった。
惣治郎
「よう。」
正門前では惣治郎が愛車の66年型ビートルと一緒に待っていた。
惣治郎
「乗れよ。ホントは男を乗せる席は用意してないんだが、今日は特別に乗せてやる。」
天馬
「ありがとうございます!」
天馬は助手席に乗り込み、惣治郎はビートルのエンジンを始動させ、2人を乗せたビートルは走り出した。
惣治郎
「どうだ?無事に高校生活送れそうか?」
天馬
「はい!」
惣治郎
「ソイツは結構。それより明日からは電車通学だな。朝の四茶からコッチは混むから気を付けろよ?」
天馬
「分かりました。」
惣治郎
「さて、そんじゃ今日は天馬の入学祝いだな。四茶に美味いラーメン屋があるんだ。奢ってやる。」
天馬
「ホントですか!?ありがとうございます!!」
その後、天馬と惣治郎は昼食にラーメンを食べ、夕飯の買い出しをして夕方、ルブランに戻った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
~職員室~
次の日の放課後、天馬は早速サッカー部に入部するため、サッカー部顧問の先生に入部届を渡した。
サッカー部顧問
「雷門中での君の活躍は聞いてるよ。君みたいな実力者が来てくれるなんて実に光栄だ!早速明日の放課後、入部テストを行いたい。構わないかい?」
天馬
「はい!是非お願いします!」
サッカー部顧問
「いい返事だ。期待してるよ?」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
~ルブラン 店内~
夜、天馬は惣治郎に明日入部テストを受けることを報告した。
惣治郎
「そうか、明日早速入部テストか。まぁお前程の実力者なら、多分難なく入部出来るだろうな?」
天馬
「でも油断は出来ません。中学の頃とは訳が違うでしょうから、気を引き締めておかないと。」
惣治郎
「そうだな。入部テスト頑張れよ!」
天馬
「はい!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
~渋谷駅前広場~
翌朝、天馬は御守り代わりに雷門サッカー部のユニフォームとスパイクを持って登校した。四茶から渋谷に向かい、地下鉄銀坐線に乗り換えるため駅前広場を歩く。
ピコン
突然、天馬のスマホから通知音が鳴った。天馬がスマホを取り出し画面を立ち上げると、ホーム画面に以前削除した筈の謎アプリが入っていた。
天馬
(アレ?このアプリ、前に消した筈だけど………まぁいっか。)
不思議に思う天馬だったが、特に気にせずそのまま置いとく事にした。スマホをポケットに仕舞い、銀坐線の改札へと向かう。すると………
ブブー!
突然、天馬の居る駅前広場に1台のトラックが突っ込んできた。
天馬
「うわあああああああ!?」
ドカーン!
トラックは減速すること無く、そのまま駅ビルに突っ込んだ。天馬は紙一重で何とか避けたため怪我は無かったが、事故現場からは幾多もの悲鳴や叫び声が聞こえてくる。
ウウー!!
事故の通報を受けて、消防車・救急車・パトカーが大勢やって来た。
天馬
「あ………あ………」
天馬は突然目の前で起きた大惨事に言葉を失い、その場で立ち尽くしていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
~秀尽学園 職員室~
その後、天馬は何とか遅刻せず登校する事が出来た。その日の授業を終え放課後、天馬はサッカー部への入部テストを受けるため職員室を訪れた。だが………
天馬
「えっ?テストは中止!?」
天馬は顧問から突然のテスト中止を言い渡された。
サッカー部顧問
「実は、部員達が急に君をサッカー部に入れたくないって言うんだ。昨日話した時は、みんな大いに喜んでくれてたのに………」
天馬
「どうして、急にそんな事に………」
サッカー部顧問
「何でも、君の悪い噂を何処かで聞いたらしいんだ。『自分が活躍するためなら味方を怪我させる事さえ平気でやる奴だ』とか、或いは『1年でキャプテンなんて絶対に裏がある』とか。もちろん、僕は君が噂通りの人間だとは微塵も思ってない。でも、部員達がこんな状態じゃとても………」
天馬
「そう、ですか…分かりました………」
天馬は礼をして職員室を後にし、渋々帰宅した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
~ルブラン 店内~
夕方、ルブランに戻った天馬を見て、惣治郎は少し驚いた。
惣治郎
「お帰り………って、どうしたんだ天馬?」
天馬はテストを受けれなかったショックか少し沈んでおり、手にはアルバイトの求人雑誌が握られていた。天馬は荷物を置き、カウンターに座る。
惣治郎
「どうした?学校で何かあったのか?」
天馬
「実は………」
天馬は入部テストが突如中止になった事を惣治郎に話した。話を聞いた惣治郎は驚いた。
惣治郎
「急に入部テストが中止?しかも何やら身に覚えの無い噂まで言われてるってか?」
天馬
「顧問の先生の話じゃ、昨日の時点ではみんな俺がテストを受けるのを喜んでくれてたらしいんです。でも、何故かみんな急に俺をサッカー部に入れたくないって………」
惣治郎
「………まぁ、お前が悪いことする人間じゃないってのは明白だ。そんなでっち上げの噂なんて直ぐに消えるさ。」
天馬
「はぁ………」
『次です。今朝渋谷駅前で発生したトラックの暴走事故から10時間。事故現場では警察による現場検証が進められています。』
テレビでは今朝渋谷駅前で起きた事故がニュースに取り上げられていた。
天馬
「俺、今日この事故に巻き込まれそうになって………」
惣治郎
「マジか!?よく無事だったな!死者こそ出なかったものの、負傷者20人の大惨事だったらしいぞ?……そう言えば、先月にも大きな交通事故があったな。その事故で亡くなった子、15歳だったけなぁ……親御さんさぞかし……」
天馬
「15歳…俺と同い年だ…」
惣治郎
「お前も気を付けろよ?万が一お前が大怪我でもしたら、秋ちゃんや両親に顔向け出来ねぇ!」
天馬
「はい!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
~四軒茶屋 路地~
それから数日間、天馬は部活の代わりにアルバイトをしながら普通の高校生生活を送っていた。だが例の悪い噂はサッカー部に止まらず、遂には教室中でも噂が絶えなくなっていた。そして4月11日土曜日、この日は半ドンで午前中に授業が終わり、バイトの予定も無かったので天馬は早めに帰宅した。すると、ルブランの前に1人の少年の姿があった。同じ秀尽の制服姿で、黒髪のくせっ毛に黒縁眼鏡をしている。
天馬
(お客さんかな?)
天馬は少年に近づき声をかける。
天馬
「こんにちは。」
少年
「ん?」
少年は天馬に気付き顔を向ける。
天馬
「もしかして、ルブランに用があるの?」
少年
「ああ、今日からここで世話になる事になってるんだ。」
天馬
「えっ?じゃあ、惣治郎さんが前に言ってた居候って…」
少年
「多分俺の事だろう。」
天馬
「そうなんだ。俺も今年から此処でお世話になってるんだ。あ、俺は松風天馬。秀尽学園高校の1年生だよ。」
少年
「《雨宮 蓮》だ。今年から高2になる筈だった。」
天馬
「あ、俺より年上だったんだ……えっと……」
蓮
「蓮で良い。あと、呼び捨てで構わない。」
天馬
「………じゃあ、ヨロシクね蓮!」
蓮
「ああ、よろしく。」
天馬と蓮は握手をし、2人はルブランに入った。店内では惣治郎が相変わらずクロスワードを解いていた。
惣治郎
「えっと……縦は『真珠の養殖に使う貝の名前』と……ん?」
惣治郎は天馬と蓮に気付き、新聞を畳んだ。
惣治郎
「よう天馬、帰ってたのか。」
と、惣治郎は蓮に目を向ける。
惣治郎
「お前が蓮だな?佐倉 惣治郎だ。1年間、お前を預かる事になってる、どんな悪ガキが来るかと思ったが、まさかお前がねぇ。」
惣治郎は蓮を見て少しにやけた。その後、惣治郎は天馬と蓮を屋根裏部屋に連れていった。
惣治郎
「今日からここがお前達の部屋だ。夜はお前達だけになるが、くれぐれも悪さすんなよ?騒いだら2人とも容赦なく放り出すぞ!」
天馬
「は、ハイ!」
蓮
「分かった。」
惣治郎
「蓮、一応お前の事情は聞いてるよ。確か男に言い寄られてる女を庇ったら、男が怪我して訴えられただっけか?で、前歴が付いたお前は、晴れて地元の高校を退学処分。裁判所の指導で転校・転居を迫られ、両親もそれを承諾と。要は厄介払いされてここへ来たって訳だ。」
惣治郎の話を聞いて、天馬は驚いた。
天馬
「そんな、女の人を助けたのに訴えられたなんて……」
惣治郎
「大人相手に余計なことするからだ。怪我させたのは事実なんだろ?」
惣治郎の問いに、蓮は無言で頷いた。
惣治郎
「余計なことは言うなよ?これでも客商売だからな。向こう1年は大人しく暮らせ。何も起こさなきゃ観察は解ける。」
天馬
「観察?」
惣治郎
「ああ、コイツは来年の春まで保護観察期間なんだ。だから、ここに居るのは1年って事になってる。だが期間中に問題起こせば少年院送りって訳だ。それと蓮、明日は秀尽に行くぞ?」
蓮
「秀尽に?日曜なのにか?」
惣治郎
「ああ、先生方に挨拶参りさ。ったく、折角の日曜だってのに……」
と、惣治郎は屋根裏部屋を後にした。