ペルソナ THE PHANTOM ELEVENS ~心の怪盗団と革命の風~ 作:ヒビキ7991
蓮がルブランにやって来た日の夜、天馬と蓮は各々のベッドで横になっていた。
蓮
「なるほど、雷門中を出て秀尽学園に進学。進学を期にコッチに居候しに来たって訳か。」
天馬
「俺の親戚の姐さんと惣治郎さんが知り合いでさ、姐さんが惣治郎さんに頼んでくれたんだ。蓮は何でコッチに?」
蓮
「お前と似たような感じだ。俺の両親がこの店の客と知り合いだったらしくてな。」
天馬
「………あのさ、詳しく聞いても良いかな?蓮が訴えられたって話。」
蓮
「………聞いてどうする?」
天馬
「どうもしないよ。同じルームメイトなんだから、相手の事は知っておいた方が良いと思って。それに、事情を知ってる方が万が一何かあったとき、フォロー出きるでしょ?」
天馬は優しい笑みを蓮に見せる。それを見て蓮も何故かフッと微かに笑った。
蓮
「お前は優しいんだな………分かった、話すよ。」
蓮は身体を起こし話し始めた。
事の始まりは数ヵ月前、帰りが遅くなり夜道を歩いていると、遠くから男女が言い争う声が聞こえてきた。声を辿ると、酒に酔った男が嫌がる女に付きまとっていた。
男
「いいから車に乗れ!」
女
「いや!離して!警察呼びますよ!」
男
「おう、呼んでみろよ?警察なんて俺の犬だ。言っても無駄だがな!」
女
「っ!?た、助けて!!」
蓮
「っ!!」
女は蓮に助けを求め、蓮は勇気を振り絞って男を女から引き剥がした。だが酷く酔っていた男は引き剥がされた拍子に転倒。額に怪我をしてしまった。
男
「くそっ、このガキ!訴えてやる!」
女
「これ以上するなら、あのお金のこと告発しますよ!いいんですか?」
男
「そんなの、『お前が勝手にやった』って言えば済む話だ!」
女
「えっ!?そ、そんな………」
男
「俺を誰だと思ってる?お前らみたいな無能な連中は、黙って俺の舵取りに従ってればいいんだ!お前、警察には『ガキが俺に乱暴してきた』って証言しろ!余計なこと言うなよ!」
蓮
「それからしばらくして警察がやって来た。女は男の言う通り警察に証言して、俺は傷害の罪で逮捕された。そこから先は、惣治郎さんの言った通りだ………」
天馬
「そんな、酷すぎるよ………相手は勝手に倒れて勝手に怪我したんでしょ?それなのに傷害なんて、どう考えても可笑しいよ………それに、蓮に助けてもらった女の人だって………」
蓮
「過ぎたことだ。今になって悔やんでもどうしようも無いさ。とにかく俺は、言われた通り1年間は大人しく過ごす。それだけだ………」
蓮はそう言うと、再びベッドに横になった。だが話をしてる時の蓮は、とても悲しそうだった。
天馬
「蓮………」
天馬は灯りを消し、2人は眠りに着いた。だが………
蓮
「ハッ!?」
目が覚めると、蓮は何故か牢獄の中に居た。服は囚人服に代わり、手には両手を繋ぐ手錠。左足は鎖で鉄球に繋がれていた。
蓮
「これは………?」
「気付いた様だな、囚人。」
檻の向こうから少女の声がする。蓮は立ち上がり、檻の前に立つ。檻の向こうには、片方は右目、もう片方は左目に眼帯をした、まるで鏡会わせの用な姿をした2人の少女と、円状に並ぶ同じ牢獄。そして、その中央には長い鼻とひょろっとした姿で、不気味な笑みを浮かべる男が居た。
長い鼻の男
「ようこそ、私の《ベルベットルーム》へ。」
蓮は状況が分からず言葉を失う。
「蓮?」
隣の牢から聞き覚えのある声がする。隣の牢には同じく囚人服姿の天馬が居た。
蓮
「天馬!」
少女L
「現実の貴方達は睡眠中。これは夢としての体験に過ぎません。」
少女R
「主の御前だ、姿勢を正せ!」
長い鼻の男
「御初に御目に掛かる。此処は夢と現実、精神と物質の狭間にある場所。何かの形で契約を結んだ者のみが訪れる部屋。私は主を務めている《イゴール》。覚えてくれたまえ。」
蓮
「イゴール?」
天馬
「あの、ベルベットルームでしたっけ?俺達は何故ここに?」
イゴール
「お前達を呼び出したのは他でもない。お前達の命にも関わる、大切な話をするためだ。だがその前に………」
イゴールはベルベットルームをマジマジと見回す。
イゴール
「しかし、これは驚いた。この部屋の有り様は蓮、お前自身の心の有り様。よもや牢獄が立ちはだかるとは………お前は正しく運命の『囚われ』。近い将来、その身に破滅が待ち受けているに相違ない。」
蓮
「破滅?どういう事だ?」
イゴール
「文字通り、『全ての終わり』の事だ。」
イゴールの言葉を聞いて、天馬と蓮は目を見開き耳を疑った。
イゴール
「案ずるな。抗う術が無い訳では無い。自由への『更正』、それがお前が破滅を回避する唯一の道。」
天馬
「それって、蓮の前歴が消えるかもって事?」
イゴール
「場合によってはそうなるかも知れん。そして………」
イゴールは天馬に目を向ける。
イゴール
「お前は、その更正を後押しする風。どのような逆境に立たされようと、常に勝利へと民を導く、正に《革命》と言う名の風だ。」
天馬
「革命………」
イゴール
「………世界の歪みに、挑む覚悟はあるかね?」
イゴールの言い放った世界の歪み、この時の2人は、その意味を理解して居なかっただろう。だが2人の答えは決まっていた。
蓮
「………もちろんだ、破滅するのは御免だからな。」
天馬
「俺も、絶対に蓮を破滅させたりなんかしない!」
イゴール
「ククッ、お前達の更正の軌跡、拝見させて貰うとしよう。それと紹介が遅れてしまったが、右が《カロリーヌ》、左が《ジュスティーヌ》。共に看守を務めている。」
カロリーヌとジュスティーヌは、天馬と蓮に身体を向けた。
カロリーヌ
「ふんっ、精々足掻くがいい囚人!」
ジュスティーヌ
「看守とは元来、囚人を守る職務。私達もまた協力者です。ただし、貴方達が従順ならですが………」
チッチッチッ………
イゴール
「さて、そろそろ夜も更けてきた。此処の事は、少しずつ理解してくれれば良い。」
と、イゴールは手に持っていた懐中時計を机の引き出しに仕舞う。
ジリリリリリリリ………!!
突然、ベルベットルームに警報が鳴り出した。
カロリーヌ
「さあ時間だ。大人しく眠りに付くがいい!」
カロリーヌがそう言い放った途端、2人の視界が急に暗くなり、2人は意識を失った。そして再び目を覚ますと、そこはルブランの屋根裏部屋だった。
天馬
「う~ん………」
蓮
「うぅ………」
天馬と蓮はゆっくりと身体を起こす。時刻は朝9時を少し回ったところだ。
天馬
「おはよう、蓮………」
蓮
「おはよう。何だか変な夢を見た気がする………」
天馬
「俺も………蓮と俺が何故か牢獄の中に居た………」
蓮
「お前もか、天馬………俺も同じ夢を見たよ………」
天馬
「蓮も?」
蓮
「ああ。更正だとか破滅だとか、内容は詳しく覚えてないがな。」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
~渋谷駅 田苑都市線ホーム~
しばらくして、蓮は惣治郎と共に秀尽学園に挨拶参り。天馬は一旦稲妻町に戻る事になり、四茶から田苑都市線で渋谷駅に来ていた。
プシュー
上り電車のドアが開き、天馬は電車を降りる。だがその時だ。
『下り線、車両異常を確認中です。』
ギギギギーーー!!ドーン!!
天馬
「うわあああああ!?」
突然、物凄い金属音と共に中央林間行きの下り電車が反対側のホームに猛スピードで突っ込んで来た。電車は先頭車がホームの端を削りながら脱線し停止。中間車は横転、乗り上げ等、大惨事と化した。
天馬
「あ……あ……」
天馬は又しても目の前で大惨事が起きたことに言葉を失った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
~ルブラン 店内~
その日の夜、蓮と惣治郎がルブランに帰ってきた。
惣治郎
「やれやれ、あんな渋滞するとはなぁ………店、どうすっかね?」
天馬
「あ、お帰りなさい。」
天馬はカウンターに座りテレビを見ていた。
天馬
「遅かったですね?」
惣治郎
「ああ、地下鉄事故のせいで酷く渋滞しててな………」
惣治郎と蓮は秀尽学園に挨拶に行った帰り、天馬が遭遇した地下鉄事故によってダイヤが乱れ、それに伴う渋谷駅周辺の交通規制発生により発生した渋滞に巻き込まれ、帰りが遅くなってしまったらしい。
惣治郎
「そうだ蓮、お前に預けておくモンがある。」
惣治郎は蓮に1冊のノートを渡した。
蓮
「これは?」
惣治郎
「日記帳だ。保護観察中と言っても、法律守れってこと以外は別に行動に特別な制限がある訳じゃない。ただ俺には報告の義務がある。日々の記録だけはつけてもらうぞ?」
蓮
「分かった。」
プルルルル
突然、惣治郎のケータイが鳴り出した。
惣治郎
「悪い、電話だ。」
惣治郎は電話に出る。
惣治郎
「よう、どうした?……ああ、今から出るよ。大丈夫だって、すぐ行くから。じゃあ後でな。」
ピッ
惣治郎
「じゃあ帰るわ。店閉めとくから、後はお前達の好きにしろ。ただし、店の中荒らすんじゃねぇぞ?」
惣治郎はそう言うと、ルブランを後にした。蓮は天馬の隣に座り、共にテレビを見る。
『これは、事故直後の映像です。警察によると、運転手は負傷していたものの命に別状は無く、調べに対し『何故過剰にスピードを出したのか、自分でも分からない』と答えており、詳しい動機の解明が急がれます。』
テレビでは、例の地下鉄脱線事故がニュースに取り上げられていた。
蓮
「酷い事故だな。80人も巻き込んだのか………」
天馬
「この間はトラックが広場に突っ込んで、その前は確か女の子が亡くなったって。何だか最近多いね、事故………」
蓮
「明日は我が身、何て事もあるかもな。」
天馬
「物騒な事言わないでよ………」
プルルルル………
天馬・蓮
「ん?」
突然、カウンターに置かれた黄色い公衆電話が鳴り出した。
ガチャ
天馬は受話器を取り電話に出る。
天馬
「もしもし?」
『おう、俺だよ俺!』
声の主は惣治郎だった。
天馬
「惣治郎さん?」
惣治郎
『そうだ。実は扉の表札を裏返すの忘れてな……まぁ『OPEN』になってても誰も来ないと思うが、戻るのも面倒なんで代わりにやっといてくれないか?』
天馬
「構いませんけど、何で公衆電話に?」
惣治郎
『俺は男の番号は登録しない主義なんだ。まぁでも、ちゃんとコッチに出てくれて助かったよ。それじゃ表札の件、頼んだぞ?』
プチッ
惣治郎は電話を切り、天馬は受話器を戻した。
蓮
「惣治郎さんか?」
天馬
「うん。表の表札、裏返しといてくれだって。俺行ってくるよ。」
天馬は店の外に出て表札を裏返し、そして店内へと戻った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
~都内某所~
その頃、都内某所のとある施設に、黒いスーツ姿の女性が1人居た。
「呼びました?」
女性が歩く先には、銀のアタッシュケースを持ったイケメン少年が1人。
少年
「事件ですか?」
スーツ姿の女性
「まだよ、意見を聞きたいだけ。」
少年
「まぁ、貴方の見立ては大抵当たりでしょうけど。話、寿司屋にしませんか?夜遅くに子供をコキ使ってる訳だし。」
スーツ姿の女性
「いいわよ。ただし、回るヤツね。」
少年
「ええ………」
回るヤツ、それを聞いた少年は少しガッカリした様だった。