ペルソナ THE PHANTOM ELEVENS ~心の怪盗団と革命の風~ 作:ヒビキ7991
~秀尽学園 正門前~
モルガナと別れパレスから脱出した3人は、気付けば秀尽学園の正門前路地に居た。
天馬
「よかった、戻ってこれた!」
竜司
「その、悪かったな二人とも。今日は振り回しちまったみたいで………」
竜司は今回の件を謝罪し、蓮は「気にするな。」と笑顔で言った。
竜司
「ふぅ………てか、マジ疲れたわ………お前ら平気なわけ?」
天馬
「いや、俺もかなり………」
蓮
「俺もだ………」
と言って肩を落とす3人。だが顔に疲れが見える天馬と竜司に対し、蓮は全く疲れた顔をしていない。
天馬
「蓮って、顔に出ないタイプなんだね?」
竜司
「それよりさ、マジだったらおもしれぇ事になるぜ?鴨志田が奴隷扱いしてる奴らの顔、俺バッチリ覚えたから。ソイツら探して体罰の事吐かせりゃ、鴨志田も終わりだろう。体罰の証人探し、手伝ってくれるよな?」
竜司は蓮と天馬に協力を仰ぐ。
天馬
「俺は構いませんけど………」
蓮
「中々骨が折れそうだな………」
竜司
「今までのバケモノに比べりゃチョロいもんだろ?………あと蓮、協力してくれるかどうかは別で、これだけは聞いてくれ。」
と、竜司は突然先程とはうって変わって真剣な目を向ける。
竜司
「前歴あるから大人しくしとけって言われてんだろうけど、意味ないぜ?もう学校中に知れ渡って、変な噂やレッテル貼られ放題だからな。」
天馬
「確かに、今日も蓮の噂話してるところ見たよ………」
蓮
「一体、何故そんなことに?」
竜司
「鴨志田がバラしやがったんだ………!」
竜司の発言に、二人は驚いた。
蓮
「まさか、教師がやったって言うのか!?」
竜司
「即バレなんて、教師以外にありえねーだろ?野郎は気に入らない奴が居れば、生徒でも部でも教師でも平気で潰しやがるんだ。俺の時みたいに………」
天馬
「そんな………」
竜司
「あと天馬、お前の噂の原因も恐らく鴨志田だ。」
竜司の言葉に二人は又しても驚いた。
竜司
「お前、サッカー部が急な掌返しして入部取り消されたんだろ?恐らく、お前がサッカー部に入るのを阻止するために、鴨志田がデタラメな噂を学校中にばら蒔いたんだ。」
天馬
「そんな………」
竜司
「………俺の言うことなんか、誰も真面に取り合ってくれねぇ。でも、体罰の噂は本当かも知れねぇ。それに実際、鴨志田の歪んだ心っての見たら、それこそ放っておけねえだろ!?」
蓮
「確かにその通りだ………よし分かった、体罰の証人探し付き合ってやる。」
天馬
「俺も手伝うよ、竜司!」
竜司
「おうよ!頼りにしてるぜ、蓮!天馬!」
二人が協力してくれる事になり、竜司は大いに喜んだ。
グウウゥゥ~
と、三人の腹の虫が同時に鳴いた。辺りは薄暗く、夕暮れ時を迎えていた。
天馬
「そういえば、もう夕飯の時間だね………」
竜司
「ここで解散ってのも何だし、3人で何か食いに行こうぜ?つかぶっちゃけ、お前らの昔話とか聞きたいし。」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
~渋谷セントラル街 牛丼屋~
二人は竜司に誘われ、渋谷セントラル街にある牛丼屋で牛丼を食べた。牛丼を食べながら、蓮は以前天馬に話した自分が秀尽に来るまでの経緯を竜司に話した。
竜司
「はあ!?んだよそれ、ソイツくそ過ぎんだろ!?」
蓮
「落ち着け竜司。」
竜司は怒りの声をあげては拳を握りカウンターを強く打つ。蓮は竜司をあだめ、竜司は少し落ち着いた。
竜司
「聞いてるだけで腹立ってくるぜ………ほんで、地元からこっちに居候して、天馬と相部屋って訳だ。」
竜司は牛丼を平らげ、満腹になりようやく落ち着いた。
竜司
「………何だろう、俺らって性根が似てんのかな?」
蓮
「そっちは何を?」
竜司
「流石にお前みてぇに前はねぇよ………つか、そこじゃねぇよ。」
蓮の質問に竜司は突っ込んだ。
竜司
「周りから厄介モン扱いされて、居場所無いとこ?俺もよ、前に学校でヤラかしちまってな………」
蓮
「竜司………」
竜司は何処と無く悲しい表情を浮かべていた。
竜司
「お前ら、確か四茶から来てんだっけ?地下鉄は丁度これからラッシュで混むから、時間ずらした方が良いぜ?」
と、竜司は突然天馬と蓮の牛丼に紅しょうがを入れ始めた。
竜司
「明日、奴隷にされてた奴ら探して話聞こうぜ。」
天馬
「確か、明日は球技大会だったよね?」
竜司
「ああ、鴨志田推薦のバレー大会とか胸クソ悪いけどな………でもお陰で午後から授業ねぇから、みんな浮かれてる。ウロついてても気付かれにくい筈だぜ?」
蓮
「取り敢えず、詳しい話は明日にしよう。」
竜司
「………そうだ、せっかくだし連絡先交換しようぜ?あと、チャットのIDも。」
3人は各々スマホを手に取り、竜司と連絡先を交換した。
竜司
「じゃ改めて、明日から頼むぜ?二人とも!」
と、竜司は二人の牛丼に紅しょうがを入れ続ける。
蓮
「ところで、さっきから何してる?」
竜司
「気にすんなよ、協力の礼だ!明日に備えてガンガン食って、体力付けようぜ!」
天馬
「あー、でも………」
竜司
「まぁまぁ遠慮すんなよ!ショウガなら沢山あるからよ!」
「ショウガはタダだから意味ないぞ」と言いたかったが、せっかくの好意を無にする訳にもいかず二人はそっと堪えた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
~ベルベットルーム~
夜、ルブランに戻り眠りに着いた天馬と蓮は、夢の中でベルベットルームに呼び出されていた。
イゴール
「今宵はいつぞやの話の続きをと思ってな、呼び出させてもらった。どうだ二人とも、この場所には慣れてきたかね?」
天馬
「正直、まだ少し慣れませんね………」
蓮
「俺もだ。」
イゴール
「うかれた日常からここへ戻る事には、中々抵抗があるかろう。だが、慣れてもらわねばならぬ。」
蓮
「それで、話の続きとは何だ?」
イゴール
「うむ………今日、お前達は同じペルソナの力に目覚めた隣人と、協力の約束をしたな?」
蓮
「隣人………竜司の事か?」
イゴール
「他者と関わろうとする事は、更正にとって重要な足がかり。大いに結構だ。だが勘違いするな、馴れ合って友になれと勧めているのでは無い。」
天馬
「どういう事ですか?」
イゴール
「生半な友情ではない、美学や信条によってお前達に力を貸さんとする者達の輪………言うなれば居場所を奪われた者共との絆なだ。その広がりが、ひいてはお前達自身を育むことになろう。」
ジュスティーヌ
「ペルソナは心の力………貴方達を取り囲む絆が強くなれば、それだけペルソナも力を得るでしょう。」
カロリーヌ
「街には非力なお前達には無い才覚を持った者が数多く居る。せいぜい知恵を絞って味方に付けるがいい。その者達とお前達との絆を、我々が力に変えてやる。」
イゴール
「無論、この私ですら利用する心構えで無ければ、お前達の大義は果たされん。どうする?」
イゴールは蓮と天馬に問う。2人は黙ったまま答えなかったが、イゴールは2人の表情から答えを察した。
イゴール
「フフッ、契約成立だな。今はまだ完全に理解出来ないだろうが、まぁ案ずるな。時が経てば、自ずと飲み込めよう。引き続き更正に励むがいい………」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
~秀尽学園 体育館~
翌日、4月13日 水曜日の午後。
秀尽学園の体育館では、鴨志田推薦のバレーボール大会が行われていた。現在は鴨志田率いる先生チームと学生チームによる試合の真っ最中。生徒達は全員、赤いジャージを身に付けている。
鴨志田
「ソイや!」
バンッ!
男子
「グハッ!」
だが突然、鴨志田の放ったサーブが学生チームの男子生徒の顔面を直撃。男子生徒は倒れ気絶してしまった。
鴨志田
「すまん!大丈夫か?」
鴨志田は直ぐ男子生徒のところへ向かい、保健委員を呼んだ。
蓮・竜司・天馬
「………」
他の生徒達と鴨志田が男子生徒を心配する傍ら、試合を見物していた天馬達3人は感付いていた。あのサーブは偶然ではなく故意………つまり、鴨志田はワザと男子生徒にボールをぶつけたのだと………
竜司
「………おい。」
竜司が蓮と天馬に静かに声をかける。蓮と天馬は静かに首を縦に振り、3人は静かに体育館から外に出た。
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~中庭 休憩スペース~
球技大会を抜け出した3人は、中庭の休憩スペースに居た。
竜司
「あの野郎、現実でも王様気取りって訳か………何が親睦だぁ?テメェが目立つためのワンマンショーじゃねぇか!三島のこと心配するフリしやがって、体罰上等のクソ教師が………」
ついてから小声でブツブツと呟く竜司。
竜司
「………まあいい。今のうちに、昨日奴隷になってた奴ら探しに行こう。今日はバレー部、全員来てる筈だ。」
天馬
「それで、何処から探す?」
竜司
「パッと思い付いたのは2年D組、蓮のクラスの奴だ。だからD組から行こう。」
蓮
「すんなり聞き出せるといいが………」
竜司
「そこなんだよなぁ、問題は………」
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~2年D組~
2年D組に到着して早々、3人は顔中に傷を負ったバレー部員を見つけた。
竜司
「アイツだ。」
天馬
「酷い怪我………サッカーの練習でも、あそこまで酷い怪我は滅多にしない筈だけど………」
蓮
「ただの練習の怪我とは思えないな………よし、早速聞いてみよう。」
3人は教室に入ると、蓮がバレー部員に声をかけた。
バレー部員
「何だよ………つか、球技大会サボり?流石、噂の転校生だな………俺に何か用か?」
蓮
「随分と酷い怪我だが、何かあったのか?」
蓮が怪我について伺うと、バレー部員は動揺し始めた。
バレー部員
「ぶ、部活でだよ!関係無くね?」
竜司
「鴨志田のせいじゃねぇのか?」
竜司の一言に、バレー部員は反応した。
竜司
「なぁ、証人になってくれよ。鴨志田の体罰のさ。」
バレー部員
「い、意味分かんないんだけど………」
竜司
「隠すなって。別にチクったりしねぇから………」
バレー部員
「わけ分かんねー………つか、もう放っといてくれよ!」
結果、1人目は頑なに拒否され終わった。
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~教室棟 廊下~
3人は一旦教室を離れ、廊下の端に集まった。
竜司
「あの怪我、どう見ても普通じゃねぇだろ!?それでも認めねぇってか!?」
天馬
「参ったなぁ、この調子じゃ球技大会が終わっちゃうよ………」
蓮
「仕方ない、ここからは3人で手分けしよう。」
蓮の提案に2人は賛成し、竜司は実習棟、蓮は3年生、天馬は1年生と手分けして証人探しに向かった。が、何れも不発に終わった。
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~中庭 休憩スペース~
球技大会が終わり放課後、天馬と蓮は竜司と合流するため中庭で待っていた。
「ねえ、ちょっといい?」
そこへ、1人の女子生徒が現れた。
蓮
「お前、確か高巻だったか?」
杏
「そうだよ。君は蓮だったよね?雨宮 蓮。」
杏の質問に、蓮は「ああ」と答えた。
杏
「で、君が松風 天馬君だっけ?」
天馬
「えっ?あ、はい………」
天馬は少し驚いた。同じクラスの蓮ならともかく、面識があるとは言え話した事は無く、ましてや学年もクラスも違う自分の事を彼女は知らないと思っていたからだ。
蓮
「それで、何の用だ?」
杏
「あんたらさ、一体何なの?この間の遅刻、あれ噂だよね?オマケに2人とも、妙な噂あるし………」
竜司
「ソイツらに何か用か?」
と、そこへ竜司が合流した。
杏
「そっちこそ何?クラス違くない?」
竜司
「偶々知り合っただけだよ………」
杏
「鴨志田先生に何するつもり?」
杏の放った言葉に、3人は驚いた。杏は竜司を睨み、竜司は杏を睨んだ。
竜司
「………なるほど、そういう事か。お前、鴨志田と仲良いもんな?」
杏
「坂本には関係無くない?」
竜司
「野郎が裏で何やってっか知ったら、お前ゼッテー別れたくなるから。」
杏
「裏………?」
竜司の言葉に、杏は何か疑問を持った様だ。
杏
「………まぁいいわ。何しようとしてるか知らないけど、誰もアンタらに協力なんてしてくれない。それだけ、一応忠告しといたから………」
杏はそう言うと、スタスタと中庭を離れた。
竜司
「相変わらず気の強え女だぜ………」
天馬
「もしかして、知り合い?」
竜司
「中学が一緒だっただけだ。それより、俺の方はダメだった………蓮は?」
蓮
「俺もだ。天馬はどうだ?」
天馬
「2年の《三島》って人が鴨志田先生から特別な指導をされてるらしんだけど、それ以上は聞き出せなかった………」
竜司
「特別な指導ねぇ………確かに、アイツいつも痣だらけだしなぁ………よし、三島に直接聞いてみようぜ!」
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~正面玄関~
3人は三島と言う生徒を探して正面玄関へとやって来た。玄関には丁度学校を出ようとする、藍色の髪に茶色の瞳をした全身傷と痣だらけの男子生徒が居た。
竜司
「アイツが三島、バレー部2年の《三島 由輝》だ。」
天馬
「あれ?あの人って………」
天馬は三島の顔に見覚えがあった。それは彼が先程、球技大会中に鴨志田のサーブを受けて保健室送りになった生徒だからだ。
竜司
「おぅ三島、ちょっといいか?」
竜司は三島を呼び止め、三島は3人に気づいた。
三島
「坂本?それに雨宮まで………俺に、何か用か?」
竜司
「話するだけだよ………風の噂で聞いたんだけど、鴨志田から指導されてんだって?体罰じゃなくてか?」
三島
「ち、違いますよ!」
三島は体罰を否定したが、明らかに動揺している様だ。
竜司
「何で敬語だよ………ま、いいけど。」
蓮
「お前、今日球技大会でボールぶつけられてなかったか?」
三島
「アレは、俺が下手なだけで………」
竜司
「いや、にしたって痣多すぎねぇか?」
三島
「練習なんだよ!」
頑なに否定を続ける三島。するとここで、天馬が思いきって出た。
天馬
「三島さん、もしかして鴨志田先生から口止めされてるんですか?」
三島
「ッ!!そ、それは………」
天馬の質問に、三島は狼狽えた表情を見せる。
「何をしてる?」
するとそこへ、1人の教師が現れた。鴨志田だ。
鴨志田
「三島、部活の時間だぞ?」
三島
「今日はその、ちょっと具合が悪くて………」
鴨志田
「だったら辞めるか?練習以外じゃ、下手くそは治らないぞ?」
あからさまに偉そうな態度を見せる鴨志田。
竜司
「テメェ!」
竜司の怒りがヒートアップし、竜司は鴨志田を睨む。すると、天馬が鴨志田の前に立った。
天馬
「御言葉ですが、体調が万全でない人に練習を強行させるのは、部を預かる者として如何なモノかと。」
天馬がそう言うと、鴨志田は天馬を睨み付けた。天馬も負けじと、鴨志田に対し鋭い眼を向ける。
鴨志田
「君か………部外者は黙ってろ!バレーの事、何一つ分からない癖に!」
天馬
「確かに俺はバレーについては無知です。ですが俺も以前はサッカー部に所属し、キャプテンを努めていた身です。体調が万全でない彼に練習を強行させるのは、反って重大な怪我に繋がり兼ねません。大事な試合だって近いんでしょ?練習を行うのはもちろん大事ですが、部員の体調が悪いならしっかりと休ませる。これも立派な練習の内だと俺は思いますが?」
鴨志田
「っ!?」
天馬の意見に鴨志田は少し怯んだ。天馬の意見も一理あると思ったからだ。
鴨志田
「そ…そうだな、確かに君の言う通りだ………三島、前言撤回だ。今日は帰ってゆっくり休め。」
そう言うと、鴨志田は去っていった。蓮・竜司・三島は天馬が鴨志田に意見し説得させた事に驚いている。
三島
「君は、いったい………?」
天馬
「すみません三島さん。俺は1年の松風 天馬。雷門中でサッカー部キャプテンをしていた者です。」
三島
「1年の松風………雷門中………そうか、ありがとう………」
三島は天馬に礼を言うと、竜司に目を向けた。
三島
「坂本、これだけは言っとく。体罰の証明なんて、意味無いよ。」
竜司
「は?どういう事だよ?」
三島
「みんな知ってるのさ。校長も、親も、知ってて黙認してるんだ………」
三島の放った言葉に、3人は驚愕した。
三島
「正直迷惑だ、こっちの気も知らないで………」
三島はそう言うと、1人学校を出て行った。
竜司
「三島………」
蓮
「これからどうする?」
坂本
「………明日、他の奴らを説得してみる。それしか手がねぇ。………つか、可笑しくねぇか?アイツの言った事がマジなら、校長も親も体罰のこと知ってんだぞ?何で誰も何も言わねぇんだよ?」
天馬
「………多分、鴨志田先生が怖いんだと思う。」
蓮
「怖い?」
天馬
「ほら、昨日パレスで鴨志田先生のシャドウが言ってたじゃん。『ここは俺様の城。俺様が何をしても許され、誰もが俺様に気に入られたいと願う場所。』って。確かバレー部って、鴨志田先生が顧問をしてるから有名になれたんだよね?」
竜司
「だからアイツには逆らえない。アイツに気に入られていれば安全。だから誰も口出しせず黙ってるって訳か………だからって、何しても許されるなんて可笑しいだろ!?生徒は体罰受けてるのに、我慢するしかねぇんだぞ!?クソッ、何も知らねぇ取り巻きは呑気だなぁ………!」
蓮
「取り巻き?」
竜司
「高巻だよ。さっき中庭で………そうだ!!」
竜司は何か思い付いた様だ。
竜司
「蓮、天馬、明日高巻から話聞いてみてくれないか?」
天馬
「高巻さんから?」
蓮
「どういう事だ?」
竜司
「高巻はバレー部の鈴井ってヤツと親友なんだ。もしバレー部の連中から聞き出せなかったとしても、バレー部の知り合いからなら話聞けるかもじゃん?まぁ本人はあんな感じだし、協力は期待できねぇけど………」
蓮
「………まぁ、聞くだけ聞いてみる。」
竜司
「ああ、そっちは頼んだぜ!俺も俺で、頑張るからよ!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
~教室棟 渡り廊下出口~
翌日、4月14日 木曜日の放課後。
蓮と天馬は竜司と会うため、中庭に向かっていた。
志帆
「………」
道中、渡り廊下出口付近でスマホを見る志帆を見つけた。
志帆
「………あ、ごめんなさい。邪魔だよね………」
志帆は2人の気配に気付き、慌てて扉の前から退いた。すると、2人は彼女の顔に酷い痣がある事に気付いた。
天馬
「その顔………」
蓮
「もしかして、怪我してるのか?」
志帆
「えっ?う、うん………ちょっとね………」
と、志帆は蓮の顔を見る。
志帆
「見ない顔だね。もしかして、D組の転校生?」
蓮
「ああ、雨宮 蓮だ。こっちは俺の友人、1年の松風 天馬。」
志帆
「私は鈴井 志帆。あの、余計なお世話かも知れないけど、噂…気にしない方がいいよ?………私の親友もね、見た目だけで色々誤解されてる子で………」
天馬・蓮
「………」
志帆
「………ごめんね、勝手にベラベラと………私、もうすぐ部活だから行かなきゃ………またね。」
志帆はそう言うと、その場から去っていった。
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~中庭 休憩スペース~
中庭に到着するや否や、竜司がイライラしながら自販機に当たっていた。
竜司
「どうなってやがんだ!?どいつもコイツも三島みてぇな事言いやがって………ゼッテー鴨志田に何か言われてんだ!!こうなりゃ、野郎に直談判するしかねぇのかなぁ………?」
蓮
「あの教師がその程度で口を開くとは、到底思えん。」
竜司
「だよな………闇討ちは………バレたら即終わりだし、警察に通報しようにも城の事なんかゼッテー信じてもらえねぇし………」
頭を悩ます竜司と蓮。すると、天馬が何かを思い付いた。
天馬
「………ねぇ、鴨志田先生じゃなくて先生のシャドウを何とか出来ないかな?」
竜司
「鴨志田のシャドウって、あっちの鴨志田か?それ意味あん………」
「やっと見つけたぞ!」
突然、何処から途もなく誰かの声がした。
竜司
「何か言ったか?」
竜司の問いに、天馬と蓮は首を横に振る。すると、3人の目の前に見覚えのあるメカが現れた。
グッドストライカー
「ようお前ら!元気してたか?」
天馬
「グッディ!?何で此処に?」
パレスで別れた筈のグッドストライカーの突然の登場に驚く3人。すると、今度はテーブルの上に1匹の黒猫が現れた。
黒猫
「我輩に仕事させておいて、タダで逃げようなんて思うなよ?この間は勝手に帰りやがって………」
ナゼか普通に喋りだす黒猫。だが3人とも黒猫の声に聞き覚え、色合いに見覚えがあった。
蓮
「その声………まさか、モルガナか?」
そう、黒猫の正体はモルガナだった。だがそれ以上に驚くのは………
天馬
「猫が喋ってる!?」
モルガナ
「猫じゃねぇ!こっちに来たらこうなったんだ!」
竜司
「ちょっと待て!お前、こっち来れんのかよ!?まさかスマホ持ち!?」
モルガナ
「我輩くらいになると自力さ!抜け道、かなり迷ったけどな………」
グッドストライカー
「それより、何で猫が喋るんだ?」
モルガナ
「知るか!そういうお前は姿変わってねぇじゃんか!」
グッドストライカー
「だから前に言っただろ?オイラは生まれた時からこの姿だって。」
モルガナ
「………まあそれより、お前ら手こずってるみたいだな?証人がどうとかってヤツ。鴨志田を何とかする方法、無い事も無いぞ?」
竜司
「えっ?マジ!?」
「この忙しい時に猫探しとはなぁ………」
「今、この辺で鳴き声しませんでしたか?」
と、丁度近くの渡り廊下を風紀委員の生徒と教師が歩いていった。
蓮
「鳴き声?俺達以外には言葉に聞こえてないのか?」
天馬
「どうなってるの………?」
困惑する天馬と蓮であった。
竜司
「それより、さっき言った事詳しく聞かせろ。」
モルガナ
「いいだろう。でも此処じゃ不味い。何処か人気の無い場所に連れて行け。」
竜司
「よし、じゃあ屋上に行こうぜ。」
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~屋上~
一同は屋上に場所を移し、モルガナから話を聞くことにした。
竜司
「それで、鴨志田を何とか出来る方法って何なんだ?」
モルガナ
「さっき天馬が言った通りさ。こっち側からじゃなくて、城の方から攻めるのさ。あの城は鴨志田が見てるこの学校だ。城の事に本人は気付いちゃいないが、心の奥ではちゃんと繋がってるのさ。だから仮に城が消えちまえば、当然鴨志田本人にも影響が出る。」
グッドストライカー
「あの城、つまりパレスは歪んだ欲望その物だ。ソイツが消えるって事はつまり………」
蓮
「歪んだ欲望が消えて………」
天馬
「鴨志田先生が真面になるって事?」
竜司
「マジか!?いやでも、それって追い詰める事になるのか?」
モルガナ
「パレスを消すってことは、要は『改心』させるって事だ。でも歪んだ欲望が消えたからって、犯した罪は無くならない。それに耐えきれなくなって、鴨志田は自分から罪を告白しちまう筈だ!」
モルガナの発言に3人は驚いた。
モルガナ
「しかもパレスが消える以上、そこで我輩らがした事も忘れちまう。足も付かず、鴨志田を自滅させられるって寸法だ。」
竜司
「スゲェ!で、どうやったら出来るんだ!?」
モルガナ
「パレスの《オタカラ》を盗む。」
天馬
「盗む?」
モルガナ
「こっから先はヤると決まってからだ。何しろ取って置きの秘策だからな。こっちの手伝いもするなら教えてやる。どうする?」
天馬
「ここはモルガナの言う通りにするしか無いんじゃないかな?証人探しも詰みだし………」
天馬の意見に、蓮は「そうだな。」、竜司は「ああ」と答えた。
モルガナ
「それと、これは注意事項だ。よーく聞いとけ。パレスを消せば、歪んだ欲望は間違いなく消えるだろう。でも欲望その物は、生きる上で必要なもんだ。もしも歪んだ欲望だけじゃなく、欲望全部が消えちまったら、そりゃ廃人と一緒だ。保護でもされなきゃ、死んじまう事になる。」
モルガナの話を聞き、3人は耳を疑い驚愕した。
天馬
「し、死ぬ!?」
竜司
「それ、俺達のせいになるって事か?」
モルガナ
「それくらいの覚悟は出来てんだろ?ま、別にバレる事はねぇから安心しろ。」
竜司
「そういう問題じゃねえ!バレなきゃ何してもいいってんなら、鴨志田がやってる事と同じだろ!?」
モルガナ
「だが、他に方法は無いんじゃないか?………また来るぜ。」
そう言うと、モルガナは去っていった。
グッドストライカー
「………なぁ、お前ら大丈夫か?」
竜司
「………俺、他に方法無いか考えてみる!じゃあな!」
竜司はそう言うと、一目散に屋上を離れた。
天馬
「竜司………」
グッドストライカー
「その、悪かったな………モルガナも悪気があってあんな事言ったんじゃ………」
グッドストライカーはモルガナの事を謝罪した。
蓮
「気にするな。お前もモルガナも、何も悪くない。」
グッドストライカー
「オイラも、もう行くよ。じゃあまたな!」
そう言うと、グッドストライカーは空の彼方へと飛んでいった。天馬と蓮も屋上を離れ、下校し家路についた。
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~渋谷駅 駅前広場~
天馬と蓮は銀坐線に乗り、渋谷駅で降りた。改札を抜け、駅前広場から田苑都市線ホームへ向かう途中………
杏
「いい加減にしてもらえません!?本当に体調が悪いって………」
偶然、電話中の杏を見つけた。だが、何やら揉めている様だ。
杏
「えっ?ちょっと先生、話が違う!」
天馬・蓮
(先生?)
杏
「志帆の事と、話別じゃ………あっ」
どうやら電話は途中で切れた様だ。杏は電話が切れるなり、その場にしゃがみ込んでしまった。
杏
「志帆の、スタメン………」
天馬と蓮は互いにアイコンタクトし頷くと、そっと杏に近づいた。杏は2人の気配に気付き顔を上げ、立ち上がった。
杏
「雨宮………それに松風君………もしかして、聞いてた?」
天馬
「いやその、わざとじゃないんです。偶々通り掛かったら声が聞こえて、それで………」
蓮
「揉めていた様だが、何かあったのか?」
杏
「べ、別に何でも無いから!何でも………」
杏はそう言うと、その場から駆け出し地下街へ続く階段を下りていった。
蓮
「様子が変だ。」
天馬
「追いかけよう!」
蓮と天馬も地下街へと下り、杏を追いかける。
天馬
「高巻さん!」
蓮
「おい、ちょっと待ってくれ!」
そして田苑都市線の改札付近で蓮が杏の右腕を掴んだ。
杏
「放して!放っといてよ!」
杏は足を止め、蓮の腕を振り払った。
ドサッ
だが振り払った拍子に足を滑らせ、バランスを崩し尻餅をついた。
杏
「いったぁ………」
天馬
「大丈夫ですか!?」
杏
「何で………アンタ達に心配されなきゃいけないの………うぅ………」
杏はその場で膝を抱え、泣き出してしまった。
蓮
「………落ち着けるところへ行こう。」
蓮はそう言って、杏に手を差し伸べる。杏は蓮の手を取り立ち上がった。
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~渋谷セントラル街 ビッグバン・バーガー~
3人はセントラル街にあるバーガー店《ビッグバン・バーガー》に場所を移し、店の目立たない席に座った。
杏
「話すことなんて無いんだけど。ただ、ちょっと揉めてるだけだし………」
蓮
「………相手は、鴨志田か?」
杏
「………」
杏は俯き、黙り込む。彼女は相当に思い詰めてる様だと、2人は察していた。
杏
「………噂くらい知ってるよね?鴨志田先生と………その………出来てるってヤツ………」
天馬
「昨日、竜司が言ってた事ですか?」
杏
「うん。でも、あんな奴とそんな訳………!さっき、鴨志田から電話掛かってきたの。番号教えろって誤魔化してきたのに、これから鴨志田の部屋に来いって………」
蓮
「それは、まさか………」
杏
「うん、そういう事………断ったら私の友達を………志帆をレギュラーから外すって脅されて………志帆のためだって自分に言い聞かせてきたけど、もうこれ以上は………あんな奴の言いなりになるなんて、もう無理だよ!でも、志帆の………私のたった1人の友達のためだもの………私には志帆しか居ないから………」
杏は泣きながら話し続け、天馬と蓮は拳を握りながら真剣に聞き続け、そして感じた。彼女も鴨志田に居場所を奪われ、言いなりにされた、被害者の1人なのだと。
杏
「………何言ってんだろう、私。貴方達と、ほとんど話した事無いのに………」
天馬
「………だからこそ、話せたんじゃないですか?」
蓮
「かもな………俺もそう思う。」
杏
「………変な人だね。みんな、私なんかほとんどシカトなのに………貴方達って、ホントに悪い人?噂の通りとは思えないんだけど………」
天馬
「どんな噂なんです?」
杏
「雨宮君なら、ナイフ持ち歩いてるとか、怒らせたら襲ってくるとか、学校内で麻薬密売とか…松風君なら、前の中学でやりたい放題してたとか、1年でキャプテンとか絶対裏があるとか…ホントは薄々気付いてたんだ。噂、大袈裟過ぎるって。何処と無く寂しそうって言うか、居場所無いって感じ?私と同じだから、こういうこと話せたのかも。」
杏の顔に、少しだけ笑顔が戻った。
杏
「私じゃ、志帆の力になれないのかな………アイツの気が変わってくれないかな………私の記憶とか、気持ちとか、全部無くならないかな………」
杏の話を聞いて、2人はモルガナの話を思い出した。鴨志田から歪んだ欲望を消し去り、改心させるあの方法を。
杏
「そんな都合の良いこと、起こる訳無いよね………」
天馬
「………いや、起こるかも知れませんよ?」
蓮
「ああ、もしかすると………」
杏
「ちょっとちょっと、2人同時にマジレスやめてよ!」
2人は真剣に答えたつもりだろうが、杏には冗談に聞こえた様だ。だがこの時だけ、杏は2人に初めて本当の笑顔を見せた。
杏
「………ありがとう、話聞いてくれて。ちょっとスッキリしたわ。」
蓮
「こちらこそ、話してくれてありがとう。」
杏
「今の話、誰にも言わないでよ?鴨志田を説得する方法、考えてみる。じゃあ、また明日………」
杏はそう言うと席を立ち、店を後にした。
天馬
「蓮………」
蓮
「ああ………」
2人は互いに真剣な眼でアイコンタクトし、共に頷く。そして会計を済ませ、静かに店を後にした。