ペルソナ THE PHANTOM ELEVENS ~心の怪盗団と革命の風~   作:ヒビキ7991

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Act.07/志帆の悲劇 踊れ、私のペルソナ!《前編》

~教室棟 1年A組~

 

 

証人探しの翌日、4月15日 金曜日の午前。

天馬は自分の教室で授業を受けていた。

 

 

天馬

「………」

 

 

無言で授業に集中する天馬。すると………

 

 

「おい、あれ見ろ!!」

 

 

突然、廊下側の男子生徒が立ち上がり、窓の外を指差した。

 

 

 

「あれって、バレー部の鈴井先輩じゃない?」

 

 

天馬

「えっ?鈴井さん?」

 

 

天馬は席を立ち、廊下に出て外を見る。そして自身の目を疑った。実習棟の屋上を囲うフェンスの外に、志帆が立っていたのだ。

 

 

天馬

「鈴井さん!?何であんな所に!?」

 

 

1年に限らず、教室棟で授業を受けていた全クラスの生徒達が何事かと廊下の窓際に集まる。すると次の瞬間、志帆は屋上から1歩前へと歩み始める。

 

 

天馬

「マズイ!!」

 

 

天馬は廊下の窓を開け、窓枠の上に乗る。

 

 

ドンッ!

 

 

そして志帆が飛び下りたと同時に、窓枠を蹴り大きくジャンプ。

 

 

ガシッ! ドシーン!!

 

 

2階付近で志帆を受け止め、そして中庭に勢いよく着地。その衝撃で中庭の地面が着地地点を中心に大きく窪んだ。

 

 

天馬

「グッ………!鈴井さん!!」

 

志帆

「松風………君………?」

 

 

天馬は志帆の無事を確認し、一安心した。

 

 

天馬

「よかった………鈴井さん、何で………」

 

 

「おい、何だよ今の!?」

 

 

「コラ!授業に戻らんか!」

 

 

すると、気が付けば中庭は生徒達の野次馬と教職員達で溢れかえっていた。そこへ、蓮・竜司・杏が野次馬を掻き分けやって来た。

 

 

「天馬!!」

 

天馬

「蓮!竜司!高巻さん!」

 

竜司

「おい、いったい何があった!?」

 

「志帆!!」

 

 

杏は大慌てで志帆に語りかける。

 

 

志帆

「杏………私、もう無理………」

 

 

志帆はそう呟くと、気を失った。

 

 

「志帆!?しっかりして志帆!!」

 

天馬

「大丈夫、気を失っただけです。」

 

 

天馬は志帆を抱いたまま立ち上がる。すると、飛び下り自殺の一部始終を見ていたであろう三島が、怯えながら教室棟へ逃げていく姿が見えた。

 

 

天馬

「………蓮、竜司、俺は鈴井さんを病院に連れていく。2人は三島さんに、もう一度話しをしてみてくれないかい?」

 

 

蓮と竜司は無言のまま頷き、天馬は2人に「頼んだよ」と言うと、志帆を抱いて病院へと向かった。

 

 

「志帆………何で………」

 

 

杏も天馬の後を追いかけ、蓮と竜司は三島の後を追った。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~山皇病院 病室~

 

 

天馬は志帆を蒼山一丁目駅の南にある《山皇病院》に運んだ。幸い無傷で命に別状は無く、天馬と杏は一安心。そして午後、志帆は病室のベッドで目を覚ました。

 

 

「志帆!」

 

 

ギュッ

 

 

杏は志帆を抱き締め、泣き出した。

 

 

「よかった、志帆が無事で………!」

 

志帆

「杏、ごめんね………」

 

天馬

「無事でよかったです、鈴井さん。」

 

志帆

「松風君………」

 

天馬

「………いったい、何があったんですか?」

 

志帆

「………私、鴨志田先生にずっと、殴られてたの………」

 

 

志帆は自分が知る全てを話した。

話によると、志帆や三島を始めとする秀尽学園バレー部は、鴨志田から特別指導という名の体罰を受けていた。鴨志田は部員を指名しては体育教官室に呼び出し、自身のストレス発散を目的に暴行を与え続けていたらしい。そして志帆は先日、急に鴨志田に呼び出されてはいつも以上に酷い暴行を受け、そして遂に耐えきれなくなり自殺を図ったという。

 

 

「そんな………」

 

天馬

「体罰の噂は、本当だったんだ………」

 

 

天馬は驚愕し、杏は絶望した。志帆の飛び降りの原因は、昨日自分が鴨志田の誘いを断った腹癒せにされたからだと思ったからだ。

 

 

ブー………ブー………

 

 

突然、天馬のスマホが竜司からの電話を受信した。天馬は咄嗟に電話に出て竜司と話す。どうやら三島から同様の情報を得ることが出来たらしい。そして竜司の話によると、蓮と天馬の噂の原因は、鴨志田から命令されて仕方なくネットへの書き込みを行った三島の犯行。さらに次の理事会で、蓮・竜司・天馬・三島の4人を吊し上げ退学処分にすると言われたらしい。

 

 

天馬

「………竜司、放課後中庭に集まろう。モルガナとグッディも一緒に………うん、分かった。」

 

 

天馬は電話を切り、スマホをポケットに仕舞う。彼の心は今、怒りの炎がメラメラと燃えていた。

 

 

天馬

「………高巻さん、鈴井さんの事、頼みます!」

 

「えっ?」

 

志帆

「松風君?」

 

天馬

「鴨志田先生は、俺達が何とかします!」

 

 

天馬はそう言うと、杏と志帆を残し病室を後にした。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

~中庭 休憩スペース~

 

 

放課後、天馬・蓮・竜司の3人は中庭に集まった。そこにはモルガナとグッドストライカーの姿もある。

 

 

竜司

「モタモタしてらんねぇぞ!さっさとあっちの世界行って、あの野郎をぶっ飛ばさねぇと!」

 

モルガナ

「覚悟は出来たって事でいいんだな?例の廃人になるかもってヤツ。」

 

竜司

「あの野郎のせいで人が死にかけたんだ!もうどうなろうが、知ったこっちゃねえ!!」

 

「ああ、覚悟は出来てる。」

 

天馬

「俺も、覚悟決めてきたよ。」

 

 

モルガナは3人の眼を見る。そして確信した。3人の覚悟は本物だと。

 

 

モルガナ

「よし、ならいい。」

 

竜司

「ところで、パレスを消滅させるのって、やっぱ大変なのか?試した事あんだろ?」

 

モルガナ

「我輩がいつそんな事言った?」

 

 

モルガナの返答に、一同はキョトンとする。

 

 

グッドストライカー

「………まさか、知ったかぶりってヤツ!?」

 

 

 

「………ねぇ、退学って本当?」

 

 

そこへ、病院から戻った杏が現れた。グッドストライカーは咄嗟に自販機の影に隠れる。

 

 

天馬

「高巻さん!って、何で知ってるんです?」

 

「噂になってる………」

 

竜司

「またか………鴨志田の野郎!」

 

「………ねえ、鴨志田ヤるなら私も交ぜてよ!志帆があんな目に会わされたのに、何も出来ないなんて嫌だよ!」

 

竜司

「お前には関係ねえ………首突っ込むな。」

 

「関係無くない!」

 

竜司

「とにかく邪魔すんな!!」

 

 

杏を拒絶し、追い払おうとする竜司。杏は黙り込み竜司を睨むと、その場から走り去った。

 

 

天馬

「竜司、いくら何でも………」

 

竜司

「分かってる、言い過ぎたって事も、アイツの気持ちも………でも、高巻をあんな危ない場所に連れて行けねぇよ………」

 

「思い詰めなければいいが………」

 

モルガナ

「だよな………いざって時の大胆さは、男より女の方が上らしいしな………」

 

竜司

「さっさと鴨志田ヤりゃ済む話だ。今から行こうぜ!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

~正門前 路地~

 

 

一同は正門から外に出て、正門前路地に移った。

 

 

モルガナ

「ここからは向こうに着いた途端に《怪盗》扱いだ。気合入れてけよ?」

 

竜司

「カイトウ?」

 

グッドストライカー

「密かに忍び込み、華麗にオタカラを盗み出す。正に怪盗だろ?」

 

天馬

「へぇ………何かカッコいいね!」

 

「ああ、悪くない。」

 

竜司

「しかも、潜入道具はスマホのアプリか。しっかし、いったいどんな仕組みなんだ?誰がこんなアプリ作ったんだ?」

 

モルガナ

「その件については今は置いておこう。」

 

「ああ、行こう!」

 

 

蓮はスマホを手に取り、イセカイナビを起動する。だが一同は、路地の外から物陰に隠れ見る杏に気付いていなかった。

 

 

「やっぱり、何かする気だ………スマホが関係あんの?」

 

 

イセカイナビ

『ナビを開始します。』

 

 

ブォーン………

 

 

ナビを起動し、学校は古城に姿を変え、蓮・竜司・モルガナの姿も変わった。

 

 

「ウソ………何これええ!?」

 

 

杏は突然起きた現象に驚き叫ぶ。すると、叫び声に気付いた天馬達が杏に気付き驚いた。

 

 

竜司

「た、高巻!?」

 

「その声、坂本?それに松風君に、雨宮まで!?」

 

天馬

「な、何で高巻さんが此処に!?」

 

「知らないわよ!てか、此処ドコ!?学校なんでしょ!?」

 

 

混乱する杏と天馬達。が、何故かモルガナは唖然としていた。そして、頭からピンクのハートが1つ………

 

 

グッドストライカー

「おいモルガナ、どうした?」

 

モルガナ

「えっ?あいや、何でもない………どうやら、ナビってやつに巻き込まれたんだろう。」

 

「1人が使えば一緒に入れるなら、使ったヤツの周りも巻き込むって事か。」

 

竜司

「とにかく高巻、お前は出てけ!」

 

「鴨志田と関係あんでしょ?だったら絶対に嫌だ!」

 

グッドストライカー

「お前ら少しは落ち着けよ………」

 

モルガナ

「あんまり騒ぐとシャドウに見つかるぜ?」

 

 

追い返そうとする竜司と、それを拒む杏。2人をあだめるモルガナとグッドストライカー。すると、杏は初めてモルガナとグッドストライカーの存在に気付いた。

 

 

「えっ?何か喋った!?化け猫!?それに謎メカ!?」

 

 

ガーン

 

 

モルガナ

「化け………」

 

グッドストライカー

「………おーい、大丈夫か?」

 

 

杏に化け猫扱いされ、ショックでフリーズするモルガナであった。

 

 

竜司

「こうなったら仕方ねえ!お前ら手貸せ!」

 

 

竜司は天馬と蓮の手を借り、3人で杏を持ち上げる。

 

 

「ちょ、何すんのよ!?」

 

竜司

「終わったら全部話す!だから今は出てってくれ!!」

 

「ちょっと待って!うわあああ!?」

 

 

3人は杏を放り投げ、杏をパレスの外に追い出した。

 

 

竜司

「ふぅ………今度からナビ使う時は気を付けてねぇと………」

 

モルガナ

「使う道具の事は確かめとけ!ってか何で見てた我輩の方が詳しいんだよ!?」

 

竜司

「う、うっせえ!ってか、出鼻から高巻に知られちまったよ………さっさと鴨志田の野郎片付けねぇと!」

 

モルガナ

「とにかく潜入開始だ。お前ら気合い入れてけよ?」

 

天馬

「ああ、気合い十分!何時でもいいよ!」

 

 

と、天馬はいつの間にか秀尽学園の制服から雷門サッカー部時代のユニフォームに着替え、これまたいつの間に用意してたのか、あの超有名な2人で1人の仮面シンガーを彷彿とさせる白いハーフマスクを顔に巻いていた。

 

 

竜司

「お前、いつの間に!?………てか、何でサッカーのユニフォームなんだ?」

 

天馬

「こっちの方が気合いが入るんだ。それに制服より動きやすいし。」

 

竜司

「いや分かるけど、逆に目立たねぇか?」

 

モルガナ

「………まぁいい。頼りにしてるぜ、《ジョーカー》!」

 

 

そう言って、モルガナは蓮を見る。

 

 

「ジョーカーって、俺の事か?」

 

モルガナ

「お前のコードネームだ。パレスで名前を大声で呼び合ったら、どんな影響が出るかも分からんからな、念のためだ。それに、本名で呼び合う怪盗なんて間抜けだろ?我輩嫌だ。」

 

竜司

「でも、何でコイツがジョーカーなんだ?」

 

モルガナ

「戦力的に『切り札』だからさ。」

 

「なるほど………悪くない。」

 

 

どうやら蓮は満更でも無い様子。

 

 

モルガナ

「次に竜司、お前は………《ヤンキー》だ!」

 

竜司

「喧嘩売ってんのか!?」

 

 

モルガナに真っ先に反論した竜司。

 

 

天馬

「じゃあ、そのドクロマスクに因んで《スカル》とかどう?」

 

竜司

「おっ、いいんじゃね!ぶっちゃけこのマスク案外嫌いじゃねぇし、貰った!」

 

 

どうやら竜司は気に入った様だ。

 

 

モルガナ

「じゃあ次は天馬。お前はペルソナが無いから、取り敢えず仮決めだ。」

 

竜司

「そういや、天馬も俺らみたいにペルソナ使えるようになったりするのか?」

 

モルガナ

「可能性は大いにある。だから、ペルソナ使いに目覚めるまでの間の仮のコードネームだ。でも仮とはいえ、カッコいいコードネームにしろよ?」

 

「その胸の稲妻に因んで、《ライトニング》とかどうだ?」

 

竜司

「カッケーけど、ちょっと安っぽくね?《ライデン》とかどうよ?」

 

天馬

「おお、何か強そう!俺ライデンにする!」

 

グッドストライカー

「じゃあオイラは《グッディ》だ。で、残すはモルガナだな。」

 

竜司

「《モナ》でどうよ?」

 

モルガナ

「まぁ、ジョーカーがそれで呼びやすいなら構わんが………」

 

「決まりだな。」

 

モルガナ

「よし、では我々はたった今から、ジョーカー、スカル、ライデン、グッディ、モナだ。今後はコードネームを徹底するように!」

 

竜司

「んじゃ、とっととオタカラを盗りに行こうぜ?」

 

 

一同は城に向けて歩きだす。

 

 

キイイィィィン!!

 

 

すると突然、蓮と竜司の手の中に光る玉が現れ、蓮の持つ光る玉は背中にダイヤルを持つ黒いジェット戦闘機、竜司の持つ光る玉は後方に引き金の付いた黒いモンスタートラック型のアイテムに変化。さらにモルガナからも光る玉が出現し、モルガナの光る玉は黒いボディに黄色いラインが入った新幹線型アイテムに変化した。

 

 

「これは?」

 

竜司

「うおっ!?何だこれ、ミニカーか?」

 

モルガナ

「………オモチャかと思ったが、どうやら違う様だ。」

 

 

3人は突然現れた謎アイテムに驚きと興味を示す。が、何故かグッドストライカーが一番驚いていた。

 

 

グッドストライカー

「おいお前ら、それ《VSビークル》じゃねーか!?」

 

天馬

「知ってるの?グッディ。」

 

グッドストライカー

「ああ、オイラやVSチェンジャーと同じく、アルセーヌがルパンコレクションを改造して作ったアイテムだ。背中にダイヤルが付いてる飛行機っぽいのが《ダイヤルファイター》、後方に引き金が付いてる自動車っぽいのが《トリガーマシン》、電車っぽいのが《エックストレイン》って呼んでる。ソイツをVSチェンジャーにセットする事で変身或いはパワーアップ、更に巨大化してビークル召喚が出来るんだ。」

 

竜司

「………つまりこれは、お前の世界のアイテムになるのか?」

 

グッドストライカー

「本来はな。でも、何故かそのVSビークルはお前らから出てきた。それに何れも初めて見るタイプだ。どうなってやがる………?」

 

竜司

「グッディでも分かんねぇのか………でもさ、コイツってVSチェンジャーで使うんだろ?なら俺らが持ってても無用の長物じゃね?」

 

「確かに。ここはライデンに預かってもらった方が得策だ。」

 

 

と、蓮・竜司・モルガナは自分の持っていたVSビークルを天馬に預けた。

 

 

「ライデン、俺達のビークルを預かってくれ。」

 

天馬

「うん、分かった。」

 

 

と、天馬は3人から預かったVSビークルを見てふと思う。

 

 

天馬

「………名前どうしようか?」

 

「名前?」

 

天馬

「VSビークルの名前だよ。」

 

竜司

「なら、持ってた奴の名前付けた方が分かりやすいんじゃね?」

 

モルガナ

「確かにそうだな。となると我輩の持ってたビークルは電車だから………《エックストレインモナ》だ。」

 

竜司

「俺のは車だから、《トリガーマシンスカル》だな。」

 

「俺は飛行機だから、《ジョーカーダイヤルファイター》と言ったところか?」

 

天馬

「うん、どれも良いと思う!」

 

グッドストライカー

「オイラもそう思うぜ!」

 

竜司

「んじゃ名前も決まったことだし、改めて!」

 

モルガナ

「ああ、潜入開始だ!」

 

天馬

「OK!」

 

 

天馬は3人から預かったVSビークルを仕舞い、一同は城への潜入を開始した。

 

 

 

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