青年と少女のマルチプル・オンライン 作:グラハムさんとピンクマ
第36話「それでもあなたは」
グラハム(スティラがGGOに来てから何週間経ったっけ、、、)
そう思いながら、今日もグラハムは朝早くからGGOにログインする。
グラハム(いつかは現実世界のことも話さなくちゃならないな)
スティラ「おはようございます、グラハムさん。今日の夜はどちらにいらしてたんですか?」
ログイン処理を終えると、スティラがホームで武器の強化をしていた。
グラハム「少し遠出をしていたんだ。次の戦闘区域の下見をした為にね」
実際は現実世界で寝てたんだけどね。
スティラ「そうだったのですね。その戦闘区域は何処なのてすか?」
グラハム「再び月へ向かおうと思う」
スティラ「無重力空間ですか、、、私がお供しても大丈夫なのでしょうか?」
グラハム「大丈夫だよ。この数週間でスティラのレベルは140まで上がったし、武器の手入れだって自身で出来るようになった。宇宙での大きな動きは確かに不安だろうけど、その場合は俺達が必ず守るから」
正直俺も久しぶりの宇宙戦だから不安だけど、俺がしっかりしてなきゃスティラを守れない。
スティラ「分かりました、精一杯頑張ります!」
グラハム「よし、それじゃあ、もうすぐエディ達もホームに戻って来るはずだから待っていようか」
スティラ「はい。あ、すいません、聞きたいことがあるのです」
スティラは武器の手入れを止めてグラハムに質問した。
グラハム「お、何?」
スティラ「グラハムさんの、えっと、赤く光って高速移動する力は私にも使えますか?」
グラハム「トランザムか。あれはまだスティラには早いと思う、、、かな。練習したいと思うなら協力するけど、俺も完璧って訳じゃないからちゃんと力になれるか分からないんだ」
トランザムで今まで何度体勢を崩しそうになったことか。
スティラ「そうだったのですね。でしたら、今から私と少しだけとらんざむ?の練習を行いませんか?」
グラハム「いいの?」
スティラ「はい、これもまたグラハムさん達を守る為です。そして、隠し玉として習得しておきたいですし」
確かに何かしら能力を身につけさせたいな。
グラハム「分かった。エディ達が来るまでもう少し時間がかかるはずだから練習しよう」
残影の荒野…
上手く教えられるかな、、、いざとなったら俺が壁がわりやら何やらやってやるか。
グラハム「え〜と、俺が補助してみせるから、まずはスティラが自由にやってみて」
スティラ「了解です、、トランザム」
スティラは不安そうにしながらもトランザムを発動させた。
トランザムは必ず安定するようになってるのかな。今まで見てきたトランザムを使ったプレイヤーを思い返すと、失敗している人はいない。
スティラ「あの人型は見えますか?あの敵を狙います」
グラハム「あそこか、了解」
スティラのターゲットは約70m先にいるヒューマノイド・デストロイヤーだ。そいつの武器はロケットランチャーだから直撃はないだろう。
スティラ「行きます、、、!」
スティラは宣言すると一瞬でグラハムの前から消える。
グラハム「あの速さに耐えられるかな?」
同時刻、スティラ視点…
スティラ「これが3倍の速さ、、、っ!もう目の前に!」
スティラはトランザムの速さに驚きつつも、前方のヒューマノイド・デストロイヤーを視認する。
スティラ(ダメ、剣を取り出す時間が、、、!)
スティラはそう思い、やむを得ず瞬時にエネミーを蹴り上げる。
スティラ「これでぇ!」
蹴り上げた後、後方へ一回転し剣を取り出し一振りでエネミーを撃破した。
スティラ「、、、ふぅ」
グラハム「お疲れ様、初めてなのによく蹴りを入れられたな」
スティラ「実は、あれは奇跡的に命中しただけです」
グラハム「そうだったんだ、、でも、その後の剣技も見事だったよ」
スティラ「ありがとうございます。そう言って頂けると励みになります」
ピロリンッ
スティラが感謝を述べていると、エディからメッセージが届いた。
グラハム「エディからか。スティラ、エディ達が帰ってきたみたいだから戻ろうか」
スティラ「了解です」
ロケット発射台…
グラハムとスティラがロケットに乗り込んだ時には、既にエディ達は座席に座っていた。
グラハム「ごめん、待たせた!」
エディ「大丈夫だよ、トランザムの練習してたんでしょ?」
グラハム「あれ、見てた?」
エディ「うぅん、スティラさんがメールくれたの」
グラハム「そうだったんだ」
いつの間にやり取りしてたんだ、、、。でも、スティラがこの世界でのルールに慣れてきたってことかな?
アファシス「皆さんシートベルトは締めましたか?」
グラハムが2秒ほど考え込んでいると、運転席に座っていたアファシスが安全確認を取った。
グラハム「あ、ちょっとだけ待って、、、よし、もういいよ!」
アファシス「それでは飛び立ちますね!」
ゴゴゴゴゴ………
月面都市のグラハム達のホーム…
グラハム「残影の荒野から戻ったよ」
コハル「おかえり!」
クレハ「遅いわよ〜!」
グラハム「現実より2、3日も早いけどな」
クレハ「現実と比べるものじゃないでしょ!」
スティラ「現実、、、?ここはグラハムさん達の世界じゃないのですか?」
スティラが『現実』という言葉に引っかかって反応した。
エディ「それは、、、」
グラハム「もういいかも、いずれ言わなきゃならないから」
グラハムは誤魔化そうとしてくれるエディを引き止めた。
スティラ「?」
グラハム「スティラ、ずっと黙っててごめん。俺達は、その、、さらに別の世界の人間なんだ。この世界よりずっと向こう?の星に住んでるんだ」
スティラに黙っていたことが多すぎて流石に信用がなくなってきてるかもな。てかもう全くないかもしれない、、、。
エディ「黙っててごめんね、本当はスティラさんがこの世界に来てすぐの時に言ってあげたかったんだけど、それだと混乱するかなと思ったの」
スティラ「、、、」
ずっと秘密にしてたことを怒ってる?でも言っちゃ失礼だけどスティラはその程度で怒らないはず、、、。
グラハム「あ〜、怒ってる、、、?」
何故俺は怒ってるか確かめた?怒ってたら間違いなく殴られるやつ。
スティラ「あ、いえ!怒ってないです!」
グラハム「そ、そう?スティラって自分の思ったことをあまり表に出さないから気分を害してるんじゃないかと思ってね、、」
スティラ「大丈夫です、グラハムさん達に対して嫌悪など一切ないので!」
良かった、怒ってないみたいだ。もうデリカシーのない発言はするんじゃないぞ俺。
クレハ「、、、それじゃあ、秘密を明かしたところで、月面攻略再開するわよ!」
少し気まずくなりそうな雰囲気をクレハが流してくれた。
グラハム「そうだな、そうしよう」
スティラは秘密を黙っていたことをあまり気にしていないようだったが、グラハムは申し訳なさで調子を取り戻すのにしばらく時間がかかった。
夜、寝室にて…
グラハムが調子を取り戻した後、スティラ達との時間はどんどん過ぎていき、早くも1日が終了した。グラハムはエディを横に眠らせてからシステムウィンドウを操作している。
グラハム「月面だから体内時計が狂うな、、、。しっかり現実の時間を確認しながら行動しなきゃ」
シュイン…
グラハムが独り言を終えると寝室の扉が開いた。その開いた先には、エディから貰ったワンピースを着たスティラがいた。
スティラ「あ、すみません、ノックしようとしたんですがまだ自動ドアに馴染めていなくて、、、」
グラハムは隣で眠っているエディを起こさないように、控えめの声量で話しかける。
グラハム「大丈夫だよ、どうしたの?」
スティラ「これからグラハムさんが眠るところでしたら下がるのですが、もしそうでなければもう少しお話したいなと思いまして」
グラハム「いいよ、すぐ行く」
グラハムはシステムウィンドウを閉じ、エディを優しく撫でてからリビングに向かった。
リビング…
スティラ「今日はトランザムの練習に付き合って頂き、本当にありがとうございました」
グラハム「礼なんていいよ、何もコツとか教えてあげられなかったから」
スティラ「それでも見守って頂けたので何かお礼をさせて下さい」
グラハム「お礼をさせてと言われても、いつも部屋の掃除とか言わなくてもやってくれてるから逆に礼がしたい」
この流れも久しぶりだな。
グラハムがユーフォニア王国にいる時、何か感謝することが起こればスティラとお礼の言い合いをしていたのだ。
スティラ「この流れ、懐かしく感じますね」
スティラも同じことを思っていたらしい。
グラハム「うん、俺もそう思ったよ。フワァ、、、」
スティラ「フフッ、すいません、眠る時間を取ってしまって」
グラハム「い、いや!今のは失礼すぎた!、、、でかい声出ちゃった」
俺朝から失礼極まりないことしかしてないよ、、、。
スティラ「大丈夫ですよ。眠るのであれば、こちらに来ますか?」
グラハム「?」
何処に?と思っていると、スティラはソファに座り、膝をスカートから出した。
グラハム「あ〜、その気持ちはすっごく嬉しいんだけど、俺が完全に眠っちゃったらスティラの脚がしびれちゃう」
スティラ「痺れの心配はございません。それに、、、」
グラハム「それに?」
スティラはスカートから膝を出した状態のまま微笑んだ。その微笑みは何か企んでいるように見える。
スティラ「グラハムさんが本当に失礼だと思っているなら、謝罪の意を示す為に来てくれますね?」
そうきたか、やるなスティラ、、、。俺が情けなさすぎるだけかもしれないけど。
グラハム「うっ、それを言われると何も言い返せない。そ、それじゃあ、甘えさせてもらおう、かな」
グラハムはソファに歩み寄ってスティラの素足に頭を乗せた。
グラハム「し、失礼します」
スティラ「はい、、、♪」
うわ〜、柔らかくて気持ちいい。エディがいるというのに、俺はなんて罪なやつなんだ、、、。
グラハム「俺の髪の毛でチクチクしない?」
スティラ「意外と髪質は固くないので大丈夫ですよ」
そう言いながらスティラはグラハムの頭に手を添える。
やめて、めっちゃドキドキするから。これから恥ずかしさで顔を合わせて話せなくなりそう。
スティラ「グラハムさん」
グラハム「な、何?」
グラハムがスティラの顔を見て話す為に自身の顔を向けると、思ったよりスティラの顔との距離が近かったので思考が一瞬止まった。
スティラ「今朝、グラハムさん達は別世界の人って言ってましたが、本当の名前があったりするのですか?」
グラハム「鋭いな、あるよ、本当の名前」
スティラ「私、もっとグラハムさんのことが知りたいので、教えて下さい」
グラハム「いいよ。俺、本当は繊月 明日人っていうんだ」
スティラ「せんげつ、、、何だか不思議な名前です」
グラハム「多分、俺達の世界の概念とは違うからかな」
概念じゃないな、人種って言えばいいの?アメリカ人の名に近いって言いたいけど伝わるかどうか。
スティラ「繊月さんは元いた世界でもトップレベルの剣士なのですか?」
グラハム「いや、信じられないかもしれないけど、本当の俺はただの民間人だよ」
スティラ「本当に信じ難いですね、、、。それでも、あなたは皆を救える力を秘めているはずです。それがどのようなものかは分からなくとも」
グラハム「ありがとう。なんだか胸にきたよ」
スティラ「少し、出しゃばり過ぎましたね。お話に付き合って頂きありがとうございました」
グラハム「出しゃばってなかったから大丈夫だよ。こっちこそありがとう楽しかったよ、おやすみ」
スティラ「おやすみなさい」
グラハム(スティラがベッドへ移動するから動かなきゃ、、、なのに、睡魔が、、、)
グラハムはスティラに膝枕されながら眠ってしまった。
スティラ「ここで眠ってしまった、、、今日も私達を懸命にフォローしてくれましたからね」
静かに頭を撫でながらスティラもうとうとし始める。
スティラ「また明日もよろしくお願いしますね、、、」
グラハムをしばらく撫でた後、スティラも続いて眠りについた。
ピンクマ「5000文字近くになっちゃった!でも投稿間隔遅いからいい、、、のかな?(笑)」