夏休みに入った。
約束通り佐為と会う約束の日には2人で碁会所巡りをする。
普段はいつものバイクでいつもの碁会所に行っていた。
今日はバイクでなくファミリカーに乗ってきたヒカル。
「佐為、おはよ」
「ヒカル! おはようございます。どうしたんですか? その車」
佐為はそのまま疑問をぶつける。
ヒカルはニカッと笑って答えた。
「今日は親の車借りれたからいつもとは違う碁会所に行こうぜ」
「はい! それは面白そうですね」
「乗れよ」
ヒカルはそう言うと助席のドアを開けて乗車を促す。
佐為が乗り込む。
「地図。碁会所」
ヒカルがそう言うと車のフロントガラスいっぱいに地図と碁会所のある場所が表示された。
「どこ行く?」
「うわぁ。こんなにたくさんあったのですね! せっかくなら車でしか行けない所に行きたいですね」
佐為が目移りしながら言う。
ヒカルはしばらくその様子を眺めていたがずっと喜んだまま一向に決めない佐為にしびれを切らす。
「もう! じゃあ、ここな!」
そう言って指でタッチすると車が動き出した。
碁会所に着き車が勝手に駐車場まで移動して止まる。
降りて、碁会所まで徒歩で行く。
碁会所の看板は「道玄坂」と書いてあった。
ちょうどタクシーの運転手の格好をしたオジサンも入っていくのを佐為が見る。
「あ、入口はあそこみたいですよ」
佐為が指を指す。
「ホントだ。じゃ、オレ達も行こうぜ」
「はい!」
小走りで入口に向かうヒカル。
それに佐為も続く。
カランコロン
ドアを開けるとマスターらしき白髪の小太りの男性がヒカルに気づき声をかける。
「いらっしゃい」
「こ、こんにちは」
「こんにちは!」
ヒカルと佐為も挨拶を返す。
「今日び子供なんて珍しいな」
席に座って打っていた常連客が振り返って声をかける。
「マスター。せっかく来てくれたんだから今日はサービスしてやれよ」
「堂本さん、勝手な事言わないでおくれよ」
すかさず席亭の女性が口を挟む。
受付をしていたタクシー運転手の男性がニヤニヤと笑いながら言った。
「俺に勝ったらサービスしてやるよ、ハハハ」
ヒカルの頭をクシャクシャと揉みくちゃにし、ヒカルはタジタジである。
「河合さんったら……」
「じゃあ、3子で勝ったら席料サービスしてくれる?」
マスターは呆れ顔で言う。
ヒカルは思い付くように提案した。
「ナニー?! 俺が3子? ナメやがってぇ、コイツゥ。座れ!!」
河合さんがさらにヒカルの頭をぐしゃぐしゃにしてから腕を引っ張って行く。
「河合さん! もう仕方ないなぁ。君も席料掛けて打つかい?」
マスターは佐為にも声をかける。
「はい!」
佐為は笑顔で答えた。
佐為はヒカルの隣に座る。
マスターも河合さんの隣、佐為と対面に座り3子黒石を置く。
「「宜しくお願いします」」
4人が一斉に頭を下げ、ヒカルと佐為は第1手目を同時に打ち込んだ。