少し時間が経ち佐為がヒカルに声を掛ける。
「ヒカル! 私、この人にします」
佐為が提出する資料を見せる。
「オレは……」
ヒカルがパラパラとその資料をめくった後もう一度辺りを見渡し1人のテレビの女性を見つめる。
テレビの資料を見て、
「オレはこの人にするよ」
その人は何処となく生きていた頃の母親に似ていた。
資料を2人揃って提出しに行く。
佐為とは別の部屋に案内された。
「こちらにお座り下さい」
「あ、はい」
ヒカルは言われるがままに通された部屋の椅子に座る。
お姉さんも対面に座る。
「では、少し質問させて頂きますね。……えっと、今回はどんな人生にしたいのですか?」
「佐為……さっきの人と一緒に、神の一手を極める棋士になりたいです」
「囲碁の棋士ってことですね。身体に要望はありますか?」
「からだの要望?」
「少し不自由さがある状態で目指したいとかかなりのハンデを背負って目指したいとか……」
(ハンデ? 神の一手目指すのにハンデなんかあったら目指せねぇよな)
ヒカルは安直にそう思って答える。
「いえ、特に無いので五体満足でお願いします」
「分かりました。それでは少々お待ちください」
そう言うと受付のお姉さんはパソコンらしいものに向かって意識を集中させる。
画面が上下に動いたりポップアップがたくさん開いたりした後、こちらに体を向き直す。
「お相手の方は選んで頂いたご家庭がベストのようです。それで、こちらから提案なのですが、今の方でもあなたのやりたい事はできますがお相手との物理的な距離が遠くかなり会うまでにもお時間がかかりそうです」
「それで?」
「単刀直入に言いますと、こちらの方にしませんか?」
お姉さんは別の資料をヒカルに見せた。
「あなたの子孫に当たる家系で、お相手との距離も近く中学が同じ区画なので比較的すぐにお会いすることができます。来年ご妊娠される予定ですが早生まれになるので学年も一緒ですよ」
「! オレ、その人で大丈夫です!! この人が良いです」
ヒカルは資料に添付されている写真を見て即答した。
顔は全然違ったが、紛れもなく母親の生まれ変わりだと分かったからだ。
「ありがとうございます。それでは手続きに入りますね。奥の部屋にお進みください」
お姉さんは笑顔で言うと奥の部屋に進む方へ腕を伸ばした。
「あ、ありがとうございます。」
ヒカルも釣られて笑顔で答えると席を立ち、奥の部屋に歩みを進めた。
奥の部屋に行くとすでに佐為がいた。
「佐為!」
ヒカルが後ろから佐為を呼ぶと、佐為は声のした方へ振り返る。
「ヒカル! 良かったですね。2人とも無事に現世へ行けそうで」
「そうだな。中学で会えるらしいから楽しみだな!」
現世への生まれ変わりに対して期待とともに不安もあったがすぐに会える事がはっきりしたため2人とも期待大きく満面の笑みで会話を楽しんだ。
「藤原佐為さん! 進藤ヒカルさん!」
今度は男性の職員が2人を呼ぶ。
「「はい!!」」
ヒカルと佐為が返事をして一緒に職員のいる方へ向かう。
「藤原佐為さんと進藤ヒカルさんですね。では扉の向こうへどうぞ。良い人生を」
男性職員がそう言うと扉を開けて2人に中に入るように促す。
2人は一緒に顔を見合わせてから手を繋いで扉に入っていった。
今度は2人、別つ事のない人生を望むように……