翌週日曜日。
ヒカルは楽しみにしながら学校に向かった。
「佐為ー!」
やはり既に来ていた佐為に手を振る。
前と同じように車を停める。
「さっそく行こうぜ!」
ヒカルは待ちきれない。
足は既に碁会所に向いている。
「はい!」
前回とは打って変わって積極的なヒカルの態度と表情に佐為も釣られて笑顔になる。
碁会所に着くとヒカルはさっそく教えてもらおうと棋譜を並べる。
並べたのは今より少し上レベル。
前世の院生2組上位の頃。
「ここの黒石の意味教えてよ」
ヒカルは指を指す。
「オレ的にはこっちの右辺を先に守った方が良いと思うんだけど先に下辺を守りに行ってるだろ?」
「そうですね。ここの黒石が下辺を先に守ったのは白石のギリギリを攻めた手ですよ」
「ギリギリを攻めるぅ?」
「この頃は白石の強さや思考が分かって来た頃で、少しずつ分かるが故に手が手控える事が多かったのです。それを克服しようとしてたのです。今のヒカルと同じですよ」
「……」
自分と同じと聞いて考え込むヒカル。
フッと微笑んで佐為は提案した。
「実際に打ちながらやってみましょう」
「おぅ!」
碁盤の石を片付け白石を佐為の方へ渡す。
「「お願いします」」
ヒカルから打ち始める。
中盤に差し掛かり佐為が声を上げる。
「今の手ですよ」
「!」
「少しずつ切っ先が見えているから逃げの一手となっているのです。勇気を出してギリギリを攻めるのです」
「勇気を出して、ギリギリを攻める……」
「ありがとうな! また来週教えてよ」
「ええ! もちろん」
あれから何十局と打ってギリギリを攻める感覚が掴めたヒカル。
佐為は笑顔で約束をする。
それから毎週のように碁会所へ行って少し上のレベルの棋譜を並べて意味を学び、実践で対局する日々が続いた。
7月下旬、ヒカルはプロ初段くらいまで力を付けていた。
「来週から夏休みだな。」
ヒカルはセミの声に耳を傾けながらつぶやいた。
毎週のように佐為と会って碁を打つ。
ヒカルにとって楽しい時間だった。
しかし、夏休みは家庭の事情もあるのでなかなか友達に会えなくなる事が多い。
「ヒカルは何か予定があるのですか?」
佐為はすかさず質問する。
「学校の講習くらい。後はお盆にじいちゃん家に行くよ。佐為は?」
「私も同じようなものです」
ヒカルはぱっと表情を明るくし提案する。
「じゃあさ、夏休みの間、会えるときは碁会所巡りでもしない? ずっとお前とばっかり打ってるからたまには別の人と打ちてぇよ」
「良いですね! 行きましょう!!」
「やったぁ!!」
佐為も快諾しヒカルは両手を上げ全身で喜びを表現する。
「かぁ〜! 夏休みが楽しみだぜ」
「はい! さっそく来週の予定を教え合いましょう」
佐為も満面の笑みを浮かべる。
お互い予定を確認して来週夏休みは週2〜3回会う約束をして解散した。