『毎月うーちゃん』
5月
と言えば、こどもの日。
新聞紙で作った兜を被り、剣を振り回す卯月はかわいい。
世間では5月はゴールデンウィークがあるため、我が鎮守府では、5月中に数日の休みを設けることにしている。
遠征もなくはしゃぐ卯月。かわいい奴め。
ちょっと目を離したら、同じく兜に剣を持った皐月と闘っていた。
ーーー卯月の頬を皐月の剣先が掠める。
身体をひねり剣を避けた卯月はその捻じりを利用し、皐月に渾身の一撃を叩きこもうとする。
それに気づいた皐月は、振った剣を切り返し、卯月の剣を受け止めようとする。
だが、時すでに遅し。卯月の剣は、皐月の目の前まで迫っていた。
皐月は咄嗟に身体を下げ、避けようとする。そこに一閃が走る
一閃はたまたま近くにいた三日月のアホ毛を切り裂いたのであった。
6月
鎮守府を雨が包む。一部の雨好きの艦娘以外の駆逐艦からは、外で遊べないため、退屈な時期である。
そんな中、室内にも関わらず、水たまりができているのはなぜか。それは、新聞紙で作った兜を窓際に飾っておいたら、湿気で台無しになってしまった、卯月が大泣きしているからである。ただ、泣いている卯月もかわいい。これに見かねた長門は、新聞紙で兜を折ろうとするが、机にヒビが入ったタイミングでやめた。
「止まない雨はないさ。」、とどこかで聞いたことがあるセリフを言いながら卯月に近寄ってきたのは、水無月であった。その手にはアホ毛を掴まれた三日月の姿が。
「作ろうよ、てるてる坊主。」
そういって水無月は、三日月を卯月の前に差し出した。
てるてる坊主の効果もあってか、その日の夜頃から雨は止み、雲一つない空に満面の星。そんな夜空には、綺麗な三日月が浮かんでいたそうな。
「綺麗な三日月が浮かんでるね!」
「もう片方の三日月は浮いてるっていうか、吊るされてるぴょん。」
7月
願いを込める、七夕の日。鎮守府に笹を運び込んできて、短冊も用意する。するとたちまち笹は短冊でいっぱいになる。さながらクリスマスツリーのイルミネーションのようである。
皆の短冊を少し見てみよう。
『戦艦になれますように。』
『レディになれますように。』
『ボーキサイトをもっとください。』
『出撃の機会を…』
『夢も谷間もでっかく』
『遠征をもうちょっと少なく…』
『磯波と間違えられない個性がほしい。』
『改二はよ』
『オリョクルを許すな』
ほぼ、目安箱の役割であった。結構不満があったような気がするが気にしない事にする。提督業は、こういう精神も大切である。
ところで、7月には土用の丑の日がある。
特に深い意味はないが、卯月を追い回す。
逃げる卯月。追う自分。悪戯するのは好きだが、されるのは慣れていないらしい。逃げ惑う卯月はかわいい。
途中、文月に、鬼ごっこをしているのか、と聞かれた。
「鬼だったら、捕まえた子は食べないといけないね。」
といって、また卯月を追いかけ始める。
文月は首を傾げたままこっちを見ている。ピンときていないらしい。そう。文月は、それで、良い。
8月
今日は出撃も、遠征も、演習もなく、各々が自由に過ごす。朝から駆逐艦たちに鬼ごっこやかくれんぼに誘われ、とにかく走り回った。
提督業は体力を使うとは聞くが、こういうことなのだろうか。
昼は間宮で睦月型の皆と間宮で昼食をとる。もちろん、食後のアイスまで食べる。
ふと気づくと他の駆逐艦も混ざってきていた。どさくさに紛れて間宮券も何枚も無くなっていた。
夕方、遊び疲れて和室で眠る卯月たち。扇風機の風と、扇風機の前に飾って無理やり鳴らしている風鈴の音が心地良い。
壁に目を向けると、そこには今日の日付に大きな赤丸がつけてあるカレンダーがある。その赤丸をつけたのは自分である。
それは、彼女等が迎えられなかった終戦日を、この戦いを終わらせ、今度こそ迎えさせてやる、と心に決めたことの証明であった。
9月
うさぎ うさぎ
なに見て はねる
十五夜 お月さま
見て はねる
「間宮さんのお団子、美味しそうだびょん!」
花より団子。いや、月より団子であった。
ぴょんぴょん跳ねる卯月。一方で、自分と一緒に縁側に座る長月は、月を眺めている。
「夜戦中は空を眺める余裕など無いからな。こういう機会は貴重だ。」
そう言い、月を眺める長月。
人は、突如としてクシャミが出そうになったり、あくびが出そうになる。それと同じように、自分は急に『からかい』をしたくなる。
多分、一種の発作なんだと自分では思っている。
横で月を眺める長月に、月が綺麗だな、と声をかける。
自分の予想では、
「なっ…//急に何を言うんだ!!///まっ…//まったく…//」
と、照れるかと思っていたが、予想とは裏腹に、
「ああ、そうだな。」
と、言われた。これは、単純に意味を知らなかったのか、それともめちゃくちゃ長月に嫌われているかのどちらかだと思うが、後者の場合、精神的ダメージが大きすぎるため、前者だと思うことにする。
「し…しれいか〜ん?そ…それは…どういう意味で言ったぴょん…?」
長月からは反応がなかったが、卯月からは反応があった。悪戯をするときは、このような反応をしてくれることが嬉しい。釣りをしていて、魚が竿にかかったときのような楽しさがある。
「特に。そのままの意味だよ。」
と伝えると、卯月は怒った顔と安堵の顔の半々みたいな顔をした。やっぱり卯月はかわいい。
花より団子。
月より卯月だ。
10月
ハロウィンが近づくとはしゃぎだすのは、墓場のゾンビと棺桶のミイラだけではない。
ハロウィン。卯月曰く、日本語では、『合法的にイタズラし放題の日』と言うらしい。
卯月にとっては、盆と正月がいっぺんに来たような日である。
卯月のイタズラは毎年の恒例行事であり、去年は『スリッパの足を入れるところに粘土を詰める。』で、一昨年は『執務室のクーラーにクサヤを入れる。』であった。
執務室にお菓子を用意して卯月たちを待つ。
「トリック・アンド・トリート、だぴょん!」
暫くして、勢いよく執務室の扉を開けて、卯月とそれに続いて菊月がやってきた。
「私は別に興味は無いのだが…」
と言う菊月の魔女っ子衣装には、真新しい値札がつきっぱなしになっていた。
そんな2人にお菓子を渡す。
菊月にはカントリーパパ(バニラとココアのクッキー)、
卯月には酢昆布(2箱)を渡す。
「あ…ありがとう…。…えっと…卯月のは…」
「……」
その後、無言で卯月は執務室中のマッキーやマーカーペンのキャップを窓から投げ捨てるというイタズラをしてきた。数日で使い物にならなくなるだろう。
しかし、いつまでもイタズラされっぱなしの自分ではない。実は、事前に卯月の自室に、とある悪戯を仕掛けた。
きっと自室に帰った卯月は、部屋に置いてある大きなホールケーキに驚くだろう。忙しく、祝えなかった進水日の分である。
幸せそうな卯月の顔が目に浮かぶ。
…よし、水風船持って卯月の部屋に行こう。
後編へ続きます。後編はまた、来週ぐらいになると思います。
実はYouTubeにssを動画にしてあげたりしてます。