(更新を)頑張った結果がこれですよ(白目)
普段より大きめに足音をたてて廊下を歩く。室内からでも、誰かが通っていることが分かるくらいに。足音を極端に消していると違和感を覚えられることが稀にある。その対策だ。
そして昨日のように──場所は天空闘技場だが──ある部屋のドアを開けた。部屋の明かりが眩しい。まあ、つまりは二日連続で呼び出された訳だ。今日はヒソカにも会わず、部屋でゆっくりと過ごしていたので良いけど。
……護衛?キルアの場所は確認してるけど、
「で、どうだった?……と言ってもその
二人とも私の言葉に軽く反応した。キルアは特に不満そうだ。ゴンはそこまでではなさそうだが。対極的というか、反対だからこそ相性が良いのだろう。
「どういうことだよリゼ。あれ絶対誤魔化されてたぜ。」
「キルアの言うあれが何なのか知らないけど、まあそうだろうね。」
「どういうこと?」
「まだ早いってこと。少なくとも今は、念を覚える時期じゃない。200階に行けば嫌でも覚えられるけどね。安全は保証しないけど。」
「200階?やっぱ上に何かあるの?」
「そう解釈してくれて良いよ。とりあえず、念を覚えたいなら上を目指せば?」
「つまりはリゼの指示に従ってりゃあ良いんだろ。いいように転がされてるみてーで嫌だけどな。」
実質そう。但し、気づいたところで二人にはそれしか道は無い。ウィングが念を教えない限り、二人は私を頼るしか方法がないのだから。まあ、せいぜい頑張れ。二人の実力なら運が良くて一週間くらいで200階に上がれるだろう。
「一つアドバイスしとく。200階に上がったら、ウィングが念を教えるまで試合はしない方が良い。痛い目にあいたいなら別だけど。」
「分かった、ありがとう。」
「あ、もう一つ言うけど、ゴンの通帳の方から依頼料引き落としたから。多分今頃ここに来る前くらいになってるよ。」
「え?」
「いや、ぼったくりすぎじゃね?」
「忘れてなかったらもう少し低かったけど?」
忘れた分の利息を多めにしたのだから当たり前だ。全部持って行かなかっただけ感謝してほしい。慌てるゴンを後目に部屋を出た。
向かうのは200階の受付。私の試合がないか確認する。ヒソカだったら……そうだな、放棄しよう。私の敗けとなるが、別に10勝した後のフロアマスターになりたい訳でもない。キルアの護衛という依頼が失敗しなければ良いのだ。
まあ、つまり……
「カストロ?誰それ?」
私が無意味に試合をする理由はないということだ。カストロが余程のザコじゃなければの話だけど。試合の予定は三日後。どんな奴か一旦見て放棄するか決めよう。夜中だから明日にするが。
♦ ♦ ♦ ♦
「朝早くに失礼、少し用事があるんだけど……」
予定通りカストロを見てみることにした。部屋に行って。これが一番手っ取り早い。評判を聞く限り、いきなり攻撃される可能性は少ないだろうし。もしものときは逃げるくらいなら出来るはずだ。
まあ、どうやら気配を読み取ると、居留守みたいだけど───
「───なんて、さっさと出てくれば?それとも、人間観察が趣味だったりするの?」
「これは驚いたな。まさか見破られるとは。」
わざとらしくそう言って出てきたのは、今部屋にいたはずの男。おそらくコイツがカストロだろう。こんな場面で思うのもなんだけど、予想以上に鬱陶しい服装というか……ヒラヒラしてる。やたら布面積が多いし、長髪だし邪魔じゃないのか?
「次の対戦相手がノコノコ訪ねてきて、何か仕掛けない訳ないでしょ。」
「ああ、その通りだよ。それで何の用かな、お嬢さん?」
「それは勿論、敵情視察だけど。一回くらいは見たくてね。」
「それで、お嬢さんのお眼鏡にかなったかな?」
「想像以上に面倒だな、とは思ってるよ。」
「それは良かった。」
そう、想像以上に面倒だ……性格が。お嬢さん、なんて態々言わなくても良いだろう。女性人気は高いらしいが、正直よく分からない。鬱陶しくて、拳を握った。
「戦う日を楽しみにしてるよ。」
そう言ってカストロは去って行った。部屋はここだけど入らなくて良いのだろうか。まさか、格好つけるために?さすがにそれは無いと思いたい。
……とりあえず、カストロの能力は何となく分かった。瞬間移動か、分身。幻影の可能性もあるけど、それは多分ない。拳を握って爪をくい込ませたが、何も起こらなかった。何より気配や声、それに甘ったるい香水の匂いはあったから、そこまで偽る幻覚となると制約が大きすぎるはずだ。
瞬間移動と分身、どちらにせよ問題ない。私との相性が良すぎる。いや、相性以前に勝てる相手だけれど。
計画変更だ、試合をしよう。
♦ ♦ ♦ ♦
そうして迎えた試合当日。どこからバレたか分からないけど、ゴンとキルアも見に来ていた。それにウィングとズシも。ウィングはともかくゴンとキルアは何がなんだか全然分からないと思うけど。
「いよいよやってきました、この試合!エラ選手は可憐な見た目と裏腹に、これまで一撃で誰もを沈めてきた強者です!今日はどんな試合を見せてくれるのか?!そして、その実力はカストロ選手に届くのか?!」
会場に響く解説に思わず耳を塞いだ。いや、業務なのは分かるけど……さすがに少しうるさすぎた。
相手の方を見ていると目が合ったので、一応話しかける。何も言わないというのも気まずいし。
「宜しく。」
「こちらこそよろしく。出来れば手加減してほしいけど。」
「ハハ、それは随分と無理な相談だね。」
「そう、それは残念。」
残念だけど、こういった念使い同士の戦いで強くなれるのもまた事実。久しぶりに動かないと体が鈍る。
さて、終わるまで何分かかるかな……見たところ念を覚えて年月はそこまで経ってない。戦闘向きではない私でも大丈夫だろう。
「それでは試合、始め!!」
先ずは一応距離をとって相手の出方を見る。瞬間移動だとしたら、この状況はうってつけだけど……こちらに近づくということは瞬間移動の可能性は低い。それに腕にオーラが集まってるから多分近距離タイプ。
能力は消去法で分身かな。
とりあえず考えるのは後にして、こちらも迎え撃つことにした。と言っても、もう近くにカストロは来ていた。
こちらに迫って来ていた右腕の手首を掴み、左足を軸に顔面へ蹴りを放った。膝蹴りが飛んできたので、蹴りの方向を変えて太腿あたりを勢いよく踏みつける。カストロの足を踏み台にして、左足でこちらも膝蹴りを顔にしたが、左手によってそれは阻まれた。
切り替えるように後ろへさがると、意外そうな顔でカストロがこっちを見ていた。
「そんな間抜けな顔晒して何がしたいの?」
「いや、少し予想が裏切られたからね。まさか君がここまで動けるとは──」
「思っても見なかった?一つ言うけど、私みたいな嘘つきも世の中にはいる。最初の印象で判断しない方が良い。」
「……忠告痛み入るよ。」
カストロは私の実力を見誤った。二日前、私はわざとオーラを揺らした。表情だけ平静を装った、まだ扱いに慣れていない初心者のように。それにコイツは見事に引っかかったという訳だ。
そして、実力を見誤ったのはこちらも同じ。
予想以上に───弱い気がする。私が少し期待したのも悪かったけど……何かな。期待はずれな感じがする。ちょっと残念というか、まだ念を覚えてからの期間が短いんだろう。
というか、能力を出し惜しみするなよ。肉弾戦だから私との相性も何もなくなるだろうが。どうやら私の能力は使わないで良さそうだ。
とりあえず戦いを再開しよう。長くなりそうだ。
そして数時間後──
「───勝者、エラ選手!」
審判の声が響いても、観客は疲れ切った声しか出さなかった。それもそうだ。試合が嫌になるほど長引いたら誰だってそうなる。
私が狙ったのはスタミナ切れ。理由は知らないが、カストロは手の内を隠したがっているようだったので、肉弾戦で攻めただけだ。ひたすらに攻撃を避けて相手の集中力が切れる頃に、一層速い攻撃をする。一撃をもらったことに動揺して、オーラの消費は増える。気持ちは高ぶってるから、後になって気づいたときには残りのオーラは極わずか。
ちなみに能力は終盤になるまで使おうとはしなかった。まあ、結局オーラが足りずに使えなかったのだけれど。ホント、何がしたかったかは分からずじまいだ。
「お疲れ様、リゼ。」
「そっちもお疲れ、あんな地味だと見てて飽きたでしょ。」
「いや、地味ってか……」
「動きが速くて、目が慣れるまでは何が起こってるのか分かんなくて……もしかしてあれも念?」
「まあ、そういうこと。二人はもう少しで200階だっけ?」
「ああ、ちょうど今日にある試合に勝てたらな。」
今日か。まあ、中々に早いな。早い分、ヒソカの興味が移るから私としては嬉しい。
二人の試合の時刻が近づいてきたらしいので、二人と別れて私は自室に戻ることにする。そして部屋に足を向けると、後ろから足音が聞こえた。
振り返ってみるとカストロがいた。私がつけた傷の治療も受けずに走って来たらしい。ところどころ血がついてるし、息も上がっている。
「ありがとう。君のおかげで足りないものが分かった気がする。」
「へぇ……あんな地味な試合で何かを学べたんだな。まあ、頑張ってね。」
「ああ、もっと強くなってみせるよ。」
カストロがどうなろうが私には関係ないのでどうでもいいが、本人は満足そうだし良いか。それに今回は変に格好つけなかったから、顔つきが前より良くなった気がする。少しでも強くなって、願わくばヒソカあたりを殺してほしい……さすがに無理だな。強くなってもカストロにヒソカが倒せるとは思わない。大体手加減されて腕を落とせるくらいか。
にしても疲れたな。怪我も何もしていないが長時間動いていて、まだ窓の外が明るいのが信じられないくらいには疲れている。さっさと部屋に戻って休もう、そう思って足早に部屋へ向かった。
部屋に戻り、シャワーを浴びて着替えた。ああ、昼食はどうしようか。一食抜いたくらいで死にはしないが、まあ一応食べた方が良いだろう。一応買いたいものもあるし、外に食べに行くか。日差しが強く暑そうだが、この際それは仕方ない。どうせ入る店は涼しいだろう。
♦ ♦ ♦ ♦
多種多様な店が建ち並ぶ商店街。舗装された道を一人で歩くのは勿論リゼだ。歩く度に揺れる紺色の髪……言うなればポニーテールという髪型をしていた。さすがの暑さに髪を上げていたかったらしい。薄水色のシャツと髪と同色のズボンを着ていて、引き締まった白い腕が眩しい。よく見ると腕にはうっすら無数の傷がある。
リゼはあまり着飾らないが、しっかりと顔立ちは整っている。ただ大抵顰めっ面か呆れるか無表情なので──仕事の際は除いて──顔立ちの良さはあまり意味が無い。
見た目だけ美少女が一人で歩いている。そんな訳で周囲の視線はリゼに向いていた。本人は全て無視しているが。
そのままリゼは一つの店に入った。こじんまりとした本屋だ。と言っても置いてある本は大体が教材や小難しい論文、辞書などで、物語は一切ない。しかし今回はリゼの目的がそこにあった。
古い店内で、リゼは片っ端から手に取っていく。手に取らなかったのは既に読んでいるものと、必要ないと判断したものだ。山のように積み上がった本を目の前に店員は気圧されているが、リゼは何も気にせずカードで支払った。金は余る程度には持っているので、これくらいで懐が痛むことはない。
本がパンパンに詰まった大きい紙袋を五〜六袋持った様子に、街ゆく人々は最初とは別の視線を向けた。美しい腕にどれだけの力があるかが分かったのだろう。両手が塞がらないように、全て片手で持っていたので尚更だ。
その状態で天空闘技場に辿り着き、エレベーターで上に上がり── エレベーターガールには三度見された──部屋に戻り、リゼは手に取ったものから見ていく。
文字を素早く目で追い、内容を理解する前にページをめくっている。ペラペラという音が室内に響いていき、紙袋から段々と本が出され整っていた室内に散乱する。
全ての本が散らばる頃には、もう日が暮れていた。
リゼは本を雑に積み重ね、部屋の隅へ追いやった。管理は全くなってないが持ち主は気にしていない。もしもここに本好きの某クモ団長がいたら空気が凍りついていただろう。
そんなことも露知らずリゼはソファに身を預け、蒸しタオルを目に当てていた。長時間酷使していた目をじんわりと温める。ほぐれていくようなその感覚がリゼは好きで、タオルを外した後も少しだけ頬を緩ませていた。
少しだけ湿って肌に張り付いた髪、温められて色付いた頬、やや細められた輝く黄色の瞳、緩やかな弧を描く淡い色の唇。普段は絶対に有り得ないが、とても絵になる光景だ。
このまま寝てしまおうか、
そう考えるくらいにリゼは上機嫌だった。そうして瞼を閉じかけたとき───机に置いていた携帯が震えた。
♦ ♦ ♦ ♦
場所は変わって天空闘技場前のホテルの一室。
私の予想通りゴンとキルアはウィングに念を教わるようで。ただし、
ウィングがいながら何故私が呼び出されたのか、それは……教える人数は多い方が良いよね、という
そんな訳で安眠を妨害された。私はあのまま朝まで惰眠を貪る予定だったのに。これはゴンを恨めばいいのか、元を辿ればヒソカのせいだ。もう全部アイツを恨もう。
「私は教えるの下手だから、質問があるなら全部ウィング……さん?に聞いて。」
「言い難いならウィングで良いですよ。」
それは良かった。歳上だから一応さん付けするか迷ったけど、本人が言うならいいや。
「ただ見てるだけって……リゼは何のために来たんだよ?」
「私が聞きたい。というか呼んだのは
あまりにも退屈なので借りるよ、と声をかけて近くにあった本を手に取る。何でページが破けてるんだ?まあ、気にしていても仕方ない。
それから何十分、もしかしたら一時間くらい経過したかもしれない。どうやらウィングは二人に念とは何かを教え終わったみたいで。これから体の精孔を開くらしい。何となく興味があるので本を閉じて二人をしっかり見ることにする。
「ちなみに、リゼさんはどちらの方法で精孔を開いたんですか?」
「さぁ?私自身よく分からないままオーラが見えてたから。正式な方法はやったことがない。」
「あ、教えなかったのはそういう理由だったんだね。」
「そういうこと。まあ、面倒だったのは事実だけど……」
とりあえず時間がもったいないので話もほどほどに、二人はウィングの指示に従い上着を脱いで背を向けた。背に触れない程度の位置までウィングは手を伸ばす。
ああ、なるほど。二人にオーラを飛ばして無理矢理に精孔をこじ開けるのか。敵意がないから成せることだ。危険そうだけど、二人は才能だけはイラッとするほどにある。ゾルディック家の暗殺者にジンの息子。血筋がこれだから才能はあるに決まってる。
二人の精孔がこじ開けられて、オーラが立ち上っていく。沸騰したときの湯気みたいに勢いよく。このまま何もしなきゃ死ぬだろう。
抑える方法は簡単。オーラを操って体に纏う……
まあ、私のイメージだと二人に合わない可能性もあるし黙っていよう。どうせウィングが指示をしている。
「これから、今度は敵意をもって君たちに念を飛ばします…… リゼさんもお願いします。」
「分かった。それくらいならするよ。」
纏よりオーラを練り上げる、つまりは練をすれば良いだけなのだからそれくらいは協力する。まあ、少し暗いかもしれないけど。それは我慢してほしい。
「「ッ」」
「これは……」
「まあ、そういう反応するよね。」
ヒソカのように気持ち悪く粘着する感じはないが、自分自身でも刺々しい気はする。心做しか青っぽく見えるし。
「
「兄貴よりは確かにマシか……」
私だって何故こんな風になったかはよく分からない。オーラは生命エネルギーみたいなものだし、多分私の性質が現れてるんだろう。私、こんな尖った性格だったか……?少々当たりが強いのは自覚してるけど。
……直す気は一切ない。
オーラが変だと強キャラ感が出る……気がしないこともないはず。
あんまり意味はないです。
というかズシが空気ですけど、あくまでもリゼの主観なので気にしないでください。