人探し屋の少女は何を思う   作:旅たまご

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土曜に間に合わなかったし、なんなら急いで書いたので色々おかしなところはあると思います。ゴメンなさい。


17 ゲームと

「グリードアイランド?とんでもなく高いゲームの名前でしょ……」

 

外でのんびりと日光浴をしつつ微睡んでいたら、無情にもゴンとキルアが叩き起こしてきた。そして開口一番、謝るでもなく発したのは、グリードアイランドというゲームを知っているかという質問だった。まだ夢半ばの脳でも正確に答えた私に感謝してほしい。

 

「何でそんなこと聞くの?そこまでゲーム好きだっけ?」

 

「もしかしたら、ジンの手がかりになるかもしれないんだ。」

 

「それを早く言えって。」

 

それなら早く協力したのに。一瞬で眠気が吹っ飛んだ。詳しく話を聞くとミトさんから、ジンがゴン宛に用意していたものを受け取ったらしい。そこにグリードアイランドのカードが入っていた、と。

 

「私も詳しくは知らないけど、買うのに最低でも九十億くらいないと無理だったはず。」

 

「九十億……」

 

「それで最低かよ……」

 

「まあ、ハンター専用のサイトで情報取り扱うやつあるから、多分それ使ったらもう少し分かるんじゃない?確か『狩人の酒場』って名前の。」

 

ハンターライセンス目当ての奴らが集まって来るから、ここじゃ使えないけど。九十億という言葉に慌てている2人に言い放った。

 

「その様子じゃ資金も足りないでしょ?まずは金稼ぎも兼ねて都市に移動する方が先。なんならクラピカとレオリオより先にヨークシンに行っても良いし。」

 

この二人に金がないのも半分私が理由なんだけどね。一億以上依頼料としてゴンから貰ったし。その責任として協力はしてやろう。何にしても一回、機械設備が整っている場所に行くべきだな。

ヨークシンにはあまり近づきたくないけど、九月じゃないからまだギリギリ幻影旅団は来ていないはず……多分。というかそう思いたい。どうせ九月にもヨークシンにいる予定だけどな。

嫌な未来を想像して私は深く溜息をついた。

 

 

♦ ♦ ♦ ♦

 

 

ミトさんに約一日分の感謝を伝えてゴンの実家を後にした。何故か一番別れを惜しんだのが私だったが、ゴン曰くいつでも会えるから、らしい。大事な人が突然死なないとは限らないのにな。

目的地はもちろんヨークシン。このルートだと……そうだな、あそこに寄ろうか。

 

「二人とも、私の家に来る気はある?扱いで言えば一応『人探し屋』の事務所になるんだけど。」

 

家って言ってもここ最近はずっと帰りはしなかったけど。ハンター試験やら依頼やらで忙しかったから仕方ない。その考えを読んだのか、キルアが隣にいたゴンに話しかけた。

 

「どうするゴン?半年くらい帰ってねぇなら、ゴミ屋敷になってる可能性も……」

 

「確かにその可能性は充分有り得るけど、出かける前にゴミは捨てたし、多分せいぜい埃が積もってるくらいだから安心して。」

 

「じゃあ逆に物が全く無かったりとか?」

 

「いやいや、ちゃんと家具くらい置いてるよ。」

 

但し依頼人を応接するスペースだけだが。私室はほぼ何もない。ミニマリストというか、あまり家具には興味ないし、これと言った趣味もない。それに、よく外出しているので家にいる時間も少ない。家具を置く方が無駄だろう。

 

「今から宿泊先今から見つけるのも時間かかるし、そこまで言うなら行こうよ。」

 

「しゃーねーな。そうと決まればさっさと行こうぜ。」

 

よし。掃除の人手は手に入れた。私自身も家の状態がどうなってるか知らないので、そんなところを一人で掃除したくはない。

 

家の方向を知っているのは私だけなので、私が前に立って進む。途中途中しっかりゴンの足音で着いて来ているかは確認しているから、きっとはぐれることはないだろう。郊外の森を進んでいるから、足音が聞こえやすい。キルアは前の職業柄、足音は消されてるんだけどね。

 

十分程歩くと、開けた土地と一軒の家が見えてくる。勿論我が家……というか、人探し屋本店?支店も建てる予定はないが。

劣化した扉の張り紙を取り、扉を開けた。埃っぽい空気が押し寄せて来るので、咄嗟に服の袖で口元を覆った。

 

「お邪魔しまーす。って、わ!」

 

ゴンの驚きつつも咳き込む声をBGMに、とりあえず明かりをつけると部屋の様子が益々見えた。天井の隅には蜘蛛の巣が張ってあるし、床にも机にも埃が積もっている。埃っぽいので掃除以前に換気が必要かな。

 

「悪いけど、窓片っ端から開けて来てくんない?自由に部屋は見て良いから。殆ど空き部屋か倉庫だけどね。」

 

「結局こーなるのかよ!」

 

「埃が飛ぶから一旦落ち着いて。」

 

キルアは更に文句を言いたげだったが、ゴンに半ば引きづられる形でついて行った。名門育ちのキルアには慣れないだろうけど、我慢していてほしい。

蜘蛛の巣を取り、埃を叩いて棚を拭き、掃除機をかけて……落ち着いて座れる頃には数時間が経過していた。

 

「はい、勝手にコーヒーにしておいたけど良い?まあ、お茶請けになる菓子はないけど。」

 

「……最初の目的は忘れてねーよな?」

 

「それは勿論。けど、起動してる最中だからもう少し待って。」

 

棚の奥に、一度も使っていないコーヒー豆があった。見た目だけを重視して買った、恐らく最新型のコーヒーメーカー──いつ購入したかは忘れた──を見つけた。

応接室は落ち着ける空間になるように金をかけたので、少しの時間を待つには最適な空間だと思う。

座っているソファは質がいいし、上から吊り下げられてる明かりは、装飾が華美すぎることもなく照らしてくれる。壁にはシミひとつなく、雰囲気のある謎の絵画──芸術が全く分からので、良さも分からないが── が掛かっている。色々高級だが、成金めいた感じはないはずだ。

それもここだけのことだが。

一度奥の廊下に出れば、全くと言っていい程装飾品がなく、シンプルな空間がひろがっている。悪くいえば殺風景。

個人的には殺風景な方が好みだ……収納と寝具さえあれば良いと思う。そう話したら二人には呆れられたが。

 

「パソコンは細工してるから、探知されることはないよ。」

 

年に数回使うかどうかのパソコンで、宝の持ち腐れだから存分に使ってくれ。自分でも何で買ったか忘れるくらいどうでもいいんだ。

暫く時間がかかりそうなので、私は私室の方にいる。グリードアイランドは二人から聞けばいいや。

 

 

♦ ♦ ♦ ♦

 

 

暫くして二人から話を聞くと、私の記憶は大体合っていたらしく、最低でも八十九……ほぼ九十億近くの金が必要らしい。

 

「こっちでも思い出して見たけど、今年はオークションに運良くグリードアイランドが大量に出回るらしい。ただ、多分百億あっても無理だ。」

 

「どうして?」

 

「バッテラっていう大富豪が、ここ数年グリードアイランドの本体を買い占めてるらしいから。この期間でそこまで稼げるわけが無いし。」

 

「リゼの金合わせても、か?」

 

「百五十億超えてから数えてないけど、結構厳しいよ。個人的にはジンの情報欲しいし、手に入れたいんだけど。」

 

「百五十億?!」

 

だって使い道ないし。幻影旅団(クモ)の依頼が来てくれれば、なんとかなるとは思うけど……そんな都合よく来るわけないか。危険すぎるからか、あまり幻影旅団を探す依頼はない。きっとクラピカみたいな奴を除いて。

まあクラピカもそんな金持ってるわけないか。望みは薄い。

 

「二人が裏仕事受けられんなら良いんだけど。さすがにそれは難しいか。」

 

「裏仕事って……?リゼは受けたことあるの?」

 

「そりゃあ勿論。麻薬の運搬とかお偉いさんの護衛、これまたお偉いさんの誘拐から、どっかの組織の裏切り者とか賞金首の抹殺まで、本当になんでも。人探し屋始める前は受けてたかな。」

 

何故だか急に静かになったので、二人の方を見たらキルアは気まずそうにゴンを見て、ゴンは怒ったような戸惑っているような顔をしていた。

 

「何でリゼはそんなふうに軽く言えるの?それで死んだ人だっているんでしょ?」

 

自分が間違っていないという目で見てくるゴンはとても眩しく、それと同時にとてもイラつく。私からしたら、何故ゴンがそんなことを言えるのか理解出来ない。

 

「それがどうかしたの?死んだのはそいつが私より弱かったからでしょ。違う?」

 

「それでも、その人にだって家族がいたはずでしょ?何でそれを知ってて簡単に人を殺せるの?!」

 

「はぁ?」

 

「ゴン、一旦落ち着けって……」

 

ゴンの視界を遮るようにして、キルアはゴンの目の前に立った。私を落ち着かせるためかもしれない。ゴンの背後にある窓に写った私の目は、とても冷たかった。なんならゴンがジンの子じゃなかったら、殺していたと思う。

 

「……ゴン。アンタの常識が私と同じだと思わないで。私にはこういう生き方しかなかった。そんな世の中にしてきたのは私じゃない誰かで、私は自分が死なない為に行動してきただけだよ。それのどこが悪いんだ?」

 

家族がいたら、殺してはいけない?そんな甘いことを考えたら、私はここにいない。それにキルアだって仕事という名目で何人も殺してきているはずだ。私と同じじゃないのか。

 

「ゴンは、良くも悪くも馬鹿だよ。何も知らないからこそ、純粋にいられる。私だって純粋でいられるなら、そう成りたかったさ。」

 

その言葉で頭が少し冷えたらしく、怒りで立ち上がっていたゴンも大人しく私の向かいのソファに座った。その隣に暗い顔をしたキルアも。

 

「二人は流星街を知ってる?」

 

 

───

 

流星街は何を捨てても許される場所だ。ゴミは勿論、赤子だって。そこで産まれた子どもには戸籍すらない。そもそも大人まで生きられるかも分からないところなんだけど、私はそこに捨てられた。大体三歳くらいの頃だったかな。

そこで産まれてない私には戸籍はあるけど、多分もう死人扱いだ。

 

流星街に捨てられた後は死にものぐるいで生きてた。人間の生存本能ってやつ?私だって死にたくなかったから、生きるために何でもした。比喩抜きでね。

流星街はほぼゴミの山だから食料が少ないし、雨風を凌げる場所もない。あっても強い大人たちが取り合って使えないし。非力な子どもが生き残るのは簡単じゃなかった。念の存在に早く気づけたのは運が良かったとしか言いようがない。

念を身につけた後は少し生きるのが楽になった。襲ってくる大人も倒せた……いや、殺せた。殺さなかったら私が死ぬ。そんなときに一々家族がどうだって考えてらんないよ。私は女だったから尚更ね。気持ち悪いおっさんになんて抱かれたくないし。

 

流星街を出てからも生きていくのに必死だった。戸籍で死人ならマトモな仕事になんて就ける訳がない。文字の読み書きも教わってないし、法律とか社会常識なんて以ての外。

金がないなら飢え死にするだけだから、そんなら私みたいな奴も働ける裏の仕事しかないでしょ。流星街出身の奴なら死んでも問題ない使い捨ての道具としては優秀だし。

 

小さい頃からそんな生活してたら、今更変えられないでしょ?私はまだ殺しが好きじゃないんだからマシな方。

 

それでも殺人に抵抗を抱けって?

 

それは我儘すぎるだろう。能力的には出来るけど、過去の記憶の大半を忘れることになる。そうしたら念は体が覚えているかもしれないけど、それでも忘れる前より劣るだろう。

 

『人探し屋』として働く以上、場所を探せる私を狙う賞金首はそこそこいるし、実力が低くなったら私が死ぬ確率が増える。

 

 

───

 

「死にたくないから誰かを殺す。私のやってることはゴンから見たら認められないことかもしれないが、その原因を作ったのは誰だよ?……私じゃないだろ?私は望んで流星街に捨てられたんじゃない。」

 

それでも何か言うの?と睨んだら、ゴンは俯いていて表情は分からなかった。いい気味だと、顔には出さずに心の中で笑っていたら、突然ゴンが顔を上げた。予想以上の勢いに思わず笑いは止まったが。

 

「っごめん!オレ、リゼのこと何も知らなかった!」

 

「ああ、そう。」

 

……で?次の言葉を腕を組んで待つ。自身でも不機嫌な言い方をしたとは思うが、実際に不機嫌なんだから仕方ない。

 

「死にたくないなら、オレとキルアがリゼを守るよ!そしたら殺しはしなくて良いよね?」

 

「……ん?一応聞くけど何でそんなことになったんだ?」

 

ゴンは何としてでも私に殺人をしてほしくないようだけど、それだって我儘だろう。というかそれじゃ私どっかの姫様とか嬢様みたいに守られるの?それは自由に行動出来ないし嫌だ。なんなら二人と一緒にいない方が、クラピカ関係の問題はなくなるから安全なんだけど。

私が言いたかったのは、殺しについて何も口出しするなってことだったはずだけど、一体どこで論点を間違えた?

 

「というか私の行動をゴンが指図しないでよ。他人に人生を左右されたくない。」

 

「でも、仲間でしょ?」

 

誰と、誰が仲間?早く仲間という言葉を辞書で引いて来い。そしてもし仮に仲間だとしても、それが何だって言うんだ?私を二人が守るから私が殺しをしない、もう条件も滅茶苦茶だ。今現在もう裏の仕事── 『人探し屋』は除く──は受けてないのだから、それで納得してくれ。

 

「キルアもそれで良いよね?」

 

「キルアこれどう止めれば良いの?話全く聞かないんだけど……!」

 

ゴンの横で私と同じように呆けてるキルアをぶっ叩いて──中々いい音がした、結構痛そう──意識をこっちにもって来させて相談する。

 

「そんなことオレが知るかよ!?つーかお前が原因なんだからどうにかしろよ!つーかゴン。オレはリゼのこと守るなんて反対だからな!」

 

「私だって知らないし反対だよ!?」

 

二人にまだ力はないから正直言って戦うとき足でまといだとか、二人に守られるのは何か気持ち悪いとか、そもそもいつまで三人一緒にいるつもりだとか、色々言いたいことはあったけど、とりあえず嫌なことは変わらないので、一刻も早く止めたい。

 

説得するのに何時間もかかることを、この時はまだ知らない。

 

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