個人的にはウボォーギンがしっくりくるけど、何話か前でウヴォーギンにしていました。短期間で心境の変化があったみたいです。
とりあえず今回はウボォーギン。
口喧嘩──あれを口喧嘩と呼ぶかは謎だが──は、とりあえず殺人を迫られたときに相談する、という結論に収まった収めさせた。
だからグリードアイランドを手に入れるため、金を稼ごうとしているんだけど……予想通りというか、結果は芳しくない。寧ろ減ってる。
そもそも自分たちでオークションに出品して、上手いこと売りつける……なんて上手くいく筈がない。
私はまず何もしてないんだけどね。仕方ない、家の至る所を掃除していたのだから。庭に生えていた雑草は抜いたし、汚れていた屋根と窓も拭いた。他の場所も掃除していたら予想以上に時間がかかった……というのは建前で、実際は協力する気になれなかったから別のことをしていただけだ。
金が集まらないのなら、最悪競り落とされたグリードアイランドのゲーム機を力づくで奪えば良い。気は進まないけど、いざとなったら仕方ない。
万が一の場合のためにそんなことを考えつつ二人と一緒に市場を見ていると、後ろから視線がきた気がした。殺気ではなかったので無視していたが、その正体はすぐに分かった。向こうからこちらに話しかけて来たからだ。
「よう。三人とも久しぶりだな。」
久しぶりに会ったレオリオはそのまま携帯電話を値切り始めた。やたらと声がデカいからギャラリーが出来てる。一桁代で値切る奴なんて珍しいよな。値切る方法は知っているから、少しだけ加勢しよう。
「ねぇ、おじさん。もうちょっとだけ、まけてくれない?」
ダメ?と普段の三割増高くした声で、首を傾げて尋ねる。少しだけ上目遣いで猫を二、三匹被ったような表情を維持しつつ。そうすれば大体まけてくれる。
後ろから二人の引いた声が聞こえるが全て無視する。
私の容姿だって立派な武器なんだ。自分のものを使って何が悪い。と、随分安くなった携帯電話を片手に持つ二人に力説したが、全く理解はしていない様子だ。金にうるさいレオリオだけは共感してくれたが。ここにいないが、クラピカには苦言を呈されそうだ。
「少しでも節約出来んなら良いでしょ。どっかの誰かが所持金減らしたんだし。」
「それを言うならリゼだって何かしろよ。」
「じゃあ、その何かって?」
「うーん……」
「やっぱスロットで……」
「それで失敗した奴は誰だっけ?」
と、こんな調子で話は堂々巡りだ。手っ取り早く金を稼げる方法なんてあったら元から苦労はしていない。かといって、カジノはリスクが高い。深くゴンとキルアと揃って溜息をついたとき、レオリオが口を開いた。
「いや、案外良い方法があるかもしれねーぞ。」
♦ ♦ ♦ ♦
だだっ広い大通りに何の変哲もない机と、椅子が二つ。手前の椅子にはゴンが座って、キルアは輝くダイヤを持って、レオリオは司会進行。
私はただニコニコ笑って立っているだけ。見た目だけは良いんだから黙って立ってろ、と三人に言われた。髪は鬱陶しいのを我慢してほどき、洋服も一応着替えたので、一般的な少女に見えているはずだ。長袖だから傷跡は見えないはずだし。化粧で隠しても良いが、それには道具も技術もない。
私も後でゴンと代わるのだから、ただ突っ立っているだけが仕事だとも言えないが。
ゴンがしているのは腕相撲で、客の方が勝ったら証明書付きのダイヤを貰える。参加費は一回一万ジェニー。ホイホイと客は寄って来るので、効率的ではないが確実に──それも真っ当に──稼げる方法だと言えるだろう。
時間がそれなりに経過したので、渋々──外見には出していないが──交代する。ちなみに参加費が役三倍に釣り上がっても客足が途絶えないのは、ただ単に見た目で侮られてるからだ。その分私は苦戦している演技をしなければならないが、きっと普段から猫を被っているのだから楽勝だ。
数人に軽く勝って、早々に面倒になって来た頃、次の対戦相手を見て心臓が飛び出るかと思った。
そこにいたのは
「すみません。女性が参加するなんて思っていなかったので……少し驚きました。お手柔らかにお願いしますね。」
なんて言葉も添えれば、きっと何も疑われない。心臓は強く脈打っているし、背中には冷や汗が伝っているけど、バレていませんように。ああ、本当に日頃から猫を被っていて良かった。
「レディー……ファイト!」
シズク=ムラサキ。そう……間違っていなければ、確かそんな名前だった気がする。比較的新しい団員の一人。
こんなことを考えるくらい余裕はあるのかと言われれば、腕力的には私の方が上だったようで肉体的には余裕──試しの門で鍛えてて良かった──だ。精神的には……まあ余裕な訳がない。負けるか勝つかでとても悩んでいる。
……勝つしかないよなぁ。負けたら三人がうるさそうだし。ダイヤくらい私の金で買えるが、少しでも資金を減らすのは避けたい。
そもそも常人なら、幻影旅団の団員とまともに腕相撲なんて出来る訳がないのだから、もう勝っても負けても注目されるのは避けようのないことだ。腹を括るしかない。
半ば諦めてシズクに勝ち、少し痛む腕を振っていると、ゴンとキルアが寄ってきた。多分私が全力で腕相撲をしていることに気づいたからだろう。
「二人ともさっきの客の顔、必ず覚えておいてね。」
「リゼの知り合い?それにしては何も言ってなかったけど……」
「いや、仕事で一方的に知ってるだけだよ。何があってもアイツには……アイツらには手は出すなよ。」
幻影旅団の一人、と言うと騒ぎそうだから言わなかったが、クラピカがいるなら衝突は避けられないのか、と思いつつ次の対戦相手に笑顔を向けた。さて一体、これはいつ終わるんだろうか。
♦ ♦ ♦ ♦
三人の話を聞いて、はぁ?と声を上げてしまったのは仕方ないことだと思う。
もう噂が広まっていて稼げないだろうと、三人を見送ったのが半日前。三人は逆にその噂を利用してコロシアム──それも比較的裏社会に近い──に行き、とあるかくれんぼに参加することになった。まあ
その探す相手が旅団のメンバーでなければ。
「つい昨日忠告したばっかりなんだが……?」
何でそんなに早く破るんだ。確かに幻影旅団だと言わなかった私も悪いけど。恨みがましく睨んでも事態は何も解決しなかった。
「さすがに幻影旅団は厳しいよ。探せたところでその後どうすんのさ?殺せるわけでもないのに。」
「仕方ねーだろ。それしか方法がなかったんだよ。」
「確かにそれはそうだけど……全くと言っていい程、賞金とリスクが釣り合ってないんだよ。もう何倍か増やしても安いくらいだ。」
そもそも三人は幻影旅団に手を出す危険性を理解しているだろうか。能天気な三人──キルアはまだマシだけれど──を見ていると不安しかない。
「マジかよ……そんなにヤバい奴らなのか?その幻影旅団って奴らは?」
「例えるのなら、ヒソカみたいに強いのが何人もいる感じ。」
キルア曰く、数年前に『幻影旅団には手を出すな』と言われたことがあったらしい。それも父親に。
それを聞いていて何故二人を止めない。
参加費は支払ってしまったので、今更探さないという選択肢はないらしい。やってしまったものは仕方ない……なんて割り切れるわけが無い。
「ちょっと、協力するかは考えさせて。」
とりあえず自室に戻って考えたい。そう伝えながら、ストレスで痛みそうな胃を抑えた。実際に痛んだことは一回もない。
ベットに倒れこんで、ボーっと天井を見つめた。もうこのまま何も考えないで寝たい。
その欲望が出たのか、考え続けるうちについ寝ていた。というか気がついたら早朝になっていた。三人に協力するか、結論は未だ出てこない。
枕を抱え込み、その柔らかさを実感していると、手元の携帯電話が振動した。何だか嫌な予感がするが、手に取らないわけにもいかない。
『依頼?』
もしもし、と態々言う気にもなれなかった。相手がヒソカだし、敬語も使うのが面倒だった。
『やぁリゼ♥今、時間空いてるかな♦ちょうど依頼があるんだけど♣︎』
『……内容は?』
『ウボォーギンを探してほしいんだ♠』
『あー分かりました。少々お待ちください。』
またか、と内心溜息をつきながら
『いませんね。この世のどこにも、ウボォーギンという人間は存在いたしません。』
『……嘘じゃねぇだろうな?』
いきなり声が変わって少し驚いたが、近くに旅団のメンバーがいたのだろう。ノイズが混じっていて、誰の声だかは分からなかった。
『仕事で嘘はつかない主義なので。』
少なくとも、今の私は。だからウボォーギンが死んだという事実も、黙って受け入れてもらうしかもない。恐らく殺された。相手がクラピカではないことを願う。
『殺した奴は誰だ?』
『せめて名前さえお伝えくだされば、探せる可能性はありますが。』
地を這うような声が聞こえる。怒っていることは充分に分かっているから、早く電話をきりたいのだけれど。
というかヒソカは何故こんな嫌な依頼を持って来たんだろうか。腹いせとして数倍の料金を後で請求しておこう。フツフツと私も怒りがわいてくる。
その後も、ある程度の情報がないとウボォーギンを殺した相手を探すのは難しいことを、やんわりと伝えるのに神経を集中させた。激昂している人間を落ち着かせるのは難しい。相手が単純なら尚更。
ドッと疲れが襲ってきて、再びベットに倒れこんだ。そして事実確認をするためにすぐさまクラピカに電話をかける。まさか、と心臓が早鐘を打っているのが分かる。大分長いコール音の後に、やっと繋がった。
『……リゼか。何の用だ?』
疲れたような声が聞こえてくる。果たしてそれは仕事三昧だからなのか、ウボォーギンを殺したからなのか。
『朝早くから悪いんだけどさ、一つ確認したいことがあって。ウボォーギン、この名に聞き覚えは?とある賞金首で見た目としては野生動物みたいな感じの。』
『ない、と言ったら嘘になるな。それが、どうかしたのか?』
『それは一番そっちが知ってるんじゃない?ちょうど昨日の夜あたりかな?』
クラピカは随分会わないうちに少しだけ冷静になった気がする。こういう、まどろっこしい話ができるくらいには。昨日の夜、というのは当たるか不安だったが、黙り込んだのでおそらく正解だ。
『殺した。と言ったらどうするんだ?』
『そんなに殺気立つなって。別に私はどうもしないよ。依頼がこない限りね。幻影旅団はアンタの顔も名前も知らないみたいだし。』
『人探し屋』は中立だから態々教える気はない、と告げると張り詰めていた空気が少しだけ和らいだ。
にしてもやっぱり犯人はクラピカだったか……ウボォーギンに何の感情もないし、敵討ちだとか咎める気は一切ないが、仲間だと思われるのは一番避けたい事態だ。
何でこうも厄介な問題が重なるのか。もういっそ幻影旅団をクラピカが全員殺してくれればいいのに。寝起きの頭では、ついそんな空想をしてしまった。
とりあえず今しなければならないことは、下手な芝居をうつことだけだ。
『クラピカ。ゴンの手綱を握る方法を知らない?この間も色々苦労することがあってさ。』
『……?』
『知らないならいいや。朝早くにごめんね。ゴン達の愚痴を言うためだけに電話しちゃって。まあ久々にクラピカの声が聞きたいのもあったけどさ。』
私はただ友人──そんなふうには全く思っていないが──の声が聞きたくなって、電話をした。そんな筋書きだ。クラピカも察してくれたようで、話を合わせにきた。
『ああ、別に構わない。』
『じゃあ、また今度ね。』
そのときクラピカが生きているのかは分からないが。まあ死んでもこちらに被害がなければいいんだ。
私は何も聞いていない。そのことをより事実に近づけるために会話の前半を忘れてしまおう。幻影旅団には幸い私の能力はバレていない。ヒソカは……薄々勘づいているくらいか。
「あ、そうだ。」
会話を忘れるよりも、良い方法があった。多少リスクはあるが、まあ一かバチかだ。
私は
主人公の誕生日っていつだろうと思ったので、とりあえず今日(十月十六日)します。