「あ!リゼもいたんだ。」
リゼに気づいたゴンが手を振ると、周りにいた他の受験者もリゼに気づく。
「数時間ぶりだね。ゴン。そっちの人達は?」
リゼの視線の先には金髪のゴンの知り合いらしい404番の受験者と、顔が腫れている403番の黒髪の受験者がいた。
「ああ。すまない。私はクラピカだ。で、こっちのが」
「レオリオだ。よろしくな。」
金髪の方がクラピカ、黒髪の方がレオリオという名前だった。
「ええ、よろしく。私はエリーゼ、リゼって呼んで。」
自己紹介を終えると、時間は正午に近づいていた。受験者が集まる前には白い大きな建物があり、不思議なうなり声が響いている。
壁には『本日 正午 2次試験スタート』
と書かれた紙が貼ってあり、正午に近づくにつれ、周りの受験者の緊張が高まっている。
そして、時計の針が正午を指し示したその瞬間、ついに扉が開いた。
中にいたのは2人の男女。
男の方は大柄で、うなり声のような腹の音が聞こえる。受験者がうなり声だと思っていたのは、腹の音だったようだ。
女の方は露出の高い服装をしており、スタイルの良さが目立つ。
「どお?お腹は大分すいてきた?」
「聞いてのとおり、もーペコペコだよ」
「そんなわけで2次試験は料理よ!!美食ハンターあたし達2人を満足させる食事を用意してちょうだい。」
試験官の言葉を聞いて受験者は動揺を隠しきれない。誰だってハンター試験で、料理をするとは思っていなかっただろう。
「まずはオレの指定する料理を作ってもらい」
「そこで合格した者だけが、あたしの指定する料理を作れるってわけよ。つまりあたし達2人が"美味しい"と言えば晴れて2次試験合格!!試験はあたし達が満腹になった時点で終了よ。」
男性の方はともかく、女性の方はあまり食べそうには見えない。2次試験で多くの人数が落とされるだろう。
「オレのメニューは豚の丸焼き!!オレの大好物。森林公園に生息する豚なら種類は自由。」
「それじゃ2次試験スタート!!」
試験官の言葉を聞き、いっせいに受験者は走り出す。探し始めて10分程。リゼは豚を見つけた。ビスカ森林公園に生息する世界で最も凶暴な豚、グレイトスタンプ。大きな鼻で押し潰そうとしてきたが、倒すことは簡単だった。単調な攻撃を避けて、額を軽く叩けば気絶してしまったからだ。味はあまり気にしていないらしく、リゼは適当に焼いて合格していた。他の受験者も同じくあっさりと合格していた。
「あ〜食った食った。もーお腹いっぱい!」
その言葉と同時に鐘の音が鳴り響く。
「終〜了〜」
男の試験官の後ろには、豚の丸焼き70頭分の骨が積み重なっていた。明らかに男の体積よりも大きい。
「理論的におかしくない?」
「やっぱりハンターって凄い人達ばかりなんだね」
「ああはなりたくないけどな。」
キルアの言葉にリゼは全力で同意した。確かに凄いとは思っていたが、なりたいとは全く思っていない。
「豚の丸焼き料理審査!!70名が通過!!」
「あたしはブハラと違って辛党よ!!審査も厳しくいくわよー」
美食ハンターが審査を厳しくしたら、誰も合格出来ないのでは?そんな疑問を抱きつつ、試験官の言葉を聞くリゼ。
「2次試験後半、あたしのメニューはスシよ!!」
スシとは?そんな疑問をこの場の誰もが思った。ただ2人を除いて。
294番のハンゾー。スシは彼の国の伝統料理だった。
もう1人はリゼ。1度だけジャポンに旅行に行き、スシを食べたことがあった。尤も形状や味を覚えているだけで、作り方は知らないのだが。
「ふふん。大分困っているわね。ま、知らないのも無理ないわ。小さな島国の民族料理だからね。」
得意そうな顔で試験官は説明する。そんなに受験者がスシを知らないのが嬉しいのだろうか。
「ヒントをあげるわ!!中を見てごらんなさい!!ここで料理を作るのよ!!」
そこには所狭しと調理台が置いてあった。見れば、包丁も一通りは揃っていて、設備には困らない。
「最低限必要な道具と材料は揃えてあるし、スシに不可欠なゴハンはこちらで用意してあげたわ。そして最大のヒント!!スシはスシでもニギリズシしか認めないわよ!!それじゃスタートよ!!」
あたしが満腹になった時点で試験は終了。試験官のその言葉を聞いて、すぐにリゼは池に向かった。
(ス、という調味料を使ってゴハンを味付けしていた。具材は魚。)
スの代用品の果実と、池の魚を数匹捕り終わり、戻っていた時前方から受験者達が走って来るのが見えた。誰かがスシには魚を使うことをばらしたらしい。
「あっ!ズリーよリゼ!スシが何か知ってやがったな!」
「早い者勝ちって言葉知ってる?」
文句を言うキルアをおいてリゼは走り出す。調理台に戻ったとき受験者はいなかった。
(まずは魚を捌いて……)
そう思い、まな板の上に魚を置くが、スシを食べたとき見た魚とは違った。それもそのはず、スシに使われる魚はもっぱら海水魚だ。対してリゼが捕って来たのは淡水魚。そもそも森林公園で海水魚なんて捕れるはずが無い。
(迷っていても仕方ない。)
とりあえず頭を落とし、腹から内臓を取り出す。動作は少しぎこちないが、捌くことはできた。
果実を絞り、少しづつゴハンに混ぜていく。多少味は違うが仕方ない。魚はもう切り身にしていて、後は握るだけだ。何年か前、スシ屋の店主が言っていたことを頭の中で繰り返す。
『タネに体温がうつらないように、早く握るんだ。握りが強すぎてもいけない。シャリが堅くてほぐれないからね。シャリの形に、タネの切り方、他にも重要なことは多くある。10年以上の時間をかけて修行するんだよ。』
(あれ、これ無理じゃない?)
そんな考えがリゼの頭をよぎった。10年以上修行するくらいなのだから、今できるはずが無い、と。
リゼは諦めかけたが、とりあえず握ってみよう、とシャリを手にとる。
いくつか握ったとき、他の受験者が戻ってくる。見られないうちに、と皿を持って試験官のもとへ向かうとやはり、リゼが最初だったようだ。
「じゃあ、お願いします。」
そう言って出したスシは見た目が良いからなのか、なかなか好印象だ。
「見た目は及第点ね。味は……」
試験官がスシを食べる。少し顔が険しいものになっているが、味は大丈夫なのだろうか。
「初心者にしては良い方だけど……ワサビが無いわね。やり直し。」
(ワサビとは?)
リゼはスシを知っていたが、ワサビは知らなかった。リゼがスシを食べたのは10~12歳頃。どちらにせよ子どもだったリゼに店主は気をつかい、サビ入りのスシを出していなかったのだ。まあそんなことをリゼが知るはずも無く、ワサビのことを知らなかった。
「よし!!出来たぜー!!名付けてレオリオスペシャル!!さあ食ってくれ!」
そう言って自信があるレオリオが提出したのは、ゴハンに生きたまま魚をつきさしたようなゲテモノ。当然合格はしない。
ゴンやクラピカも挑戦はしていたが合格はしていなかった。むしろレオリオと同じレベルと言われている。
「そろそろオレの出番だな。」
スシを知っているハンゾーが自身の作ったスシを自慢げに渡すが……
「ダメね。おいしくないわ!」
試験官に一蹴された。
「な、なんだと!?メシを1口サイズの長方形に握って、その上にワサビと魚の切り身をのせるだけのお手軽料理だろーが!!こんなもん誰が作ったって味に大差ねーべ!?」
「いや、バラさないでよ。」
思わずハンゾーの言葉につっこむ。スシの作り方をバラしてしまえば他の受験者が作り、試験官が満腹になってしまう。もう遅いのだが。
「お手軽!?こんなもん!?味に大差無い!?ざけんなてめぇ、鮨をマトモに握れるようになるには、10年の修行が必要だって言われてんだ!!キサマら素人がいくらカタチだけマネたって、天と地ほど味は違うんだよ、ボゲ。」
「んじゃそんなモンテスト科目にすんなよ!!」
ハンゾーの言っていることも一理ある。が、キレている試験官にはそんなこと関係ない。試験官の暴言は続く。ハンゾーが可哀想に思えてくるくらいに。
ハンゾーのスシの作り方を聞いていた受験者は、形だけ作ったものを持ち、試験官の前に並ぶ。当然、リゼの前には何人もの受験者が並んでおり、試験官が満腹になるまでに渡すことは出来ないだろう。
そして予想通り、
「ワリ!!おなかいっぱいになっちった。」
第2次試験 後半 合格者なし!!
話がなかなか進まない……
10/25
加筆修正しました。
ストーリーは変わっていません。