テスト期間が迫っているので次回の更新は遅れます。
ただでさえ遅いのに……
どうやったら更新早くできるんでしょうね。
リゼが目を覚ますと目の前にはネテロ会長と、大の字で寝ているゴン。
ゆっくりともう一度リゼは瞬きをしてみるが、目の前の光景は変わらない。夢であってほしい、とリゼは思ったが、昨夜ゲームを見ていた、という記憶が夢では無いと告げていた。
「おやお嬢ちゃん。起きたかの。」
そう話かけられたリゼも寝起きだからなのか、まだぼんやりとして反応していない様に見える。まあ実際は
(ゲームが終わったらいなくなると思ってたんだけど……)
ただ目の前に会長がいるという事実を認めようとせずに、現実逃避をしているだけだ。夢では無いと分かったらしい。時計を見て見ればまだ8時半。2度寝をしようか、と真剣に考え始めるリゼ。もう会長の事を考え始めたら負けだ、とリゼは思い始めている。
(シャワーに行ってこようかな。)
早くこの場を離れたいと思うリゼ。
もちろんお風呂に入りたい、という気持ちもある。リゼは一応会長にお辞儀をしてからドアから出た。無視はしていないということを教えるために。
ただ単に会話をしたく無いという気持ちだったのもあるけれど。
♦ ♦ ♦ ♦
『皆様、大変お待たせいたしました。目的地に到着です。』
アナウンスが飛行船の中に響く。飛行船が到着したのは高い塔の頂上だった。見る限りは何も無い様に見える。
「ここはトリックタワーと呼ばれる塔のてっぺんです。ここが3次試験のスタート地点になります。
さて試験内容ですが、試験官からの伝言です。
"生きて下まで降りてくること"、制限時間は72時間。」
説明が終わり、3次試験が開始する。リゼは下を覗き見て見るが、地面がぼんやり見えるか分からないぐらいの高さだった。1人の受験者が壁をつたって降りようとするが、怪鳥に食い殺されている。
「さてと、私は行くとしますか。」
リゼはそう言って隠し扉のもとへ向かう。ゴンとキルアには伝えなくても大丈夫だろう。リゼはそう思って2人には話しかけなかった。
ガコン、とかるく音をたてて、地面に仕掛けられた扉はひっくり返る。リゼが降りた先にあったのは小さな小部屋。
小部屋の前方にはタイマーがあり、その上には文字が書かれている。
『 孤独の道
君はここからゴールまでの
道のりを1人で乗り越えなけ
ればならない 』
リゼはその文を読むと、予想が的中したのが嬉しかったのか満足気に頷いた。わざわざ1人専用のコースと思われる、周囲に隠し扉が無い場所を選んでリゼはこの部屋に入ったのだ。必ず1人で進むために。
(
職業上ヒソカに顔を知られているリゼは、1次試験からずっと故意に関わるのを避けている。深緑色に髪を染めて、普段なら絶対にしないような服装をしているのにも訳がある。
ハンター試験を受けているリゼが "人探し屋" だと知られるのを防ぐためだ。とはいえ髪を染め、服装を変えたとしても気づかれてしまう可能性は少なからずある。リゼはそう思っていたのだ。
……ゴンとキルアに出会うまでは。
(新しい
ゴンとキルアには少しばかり悪いとリゼは思っているが、考えを改める気にはならなかった。他人の平穏か、つかの間の自分の平穏か。リゼは自分の平穏を望んだ。
自分も巻き添えになってしまうのを避けるため、リゼは深く2人と関わりたく無かった。けれど、やはり
いつか
2人と関わりたく無かったのは、そういう理由でもある。
こんなことを考えていても仕方ない、そう思いリゼは歩き出す。やけにリゼの足取りは重かった。
けれどゴンとキルアに関わってしまうのは、心の何処かでリゼは楽しいと思っているからだろう。
そうでなければリゼは、
1次試験でゴンがヒソカに目をつけられた時に、2人と関わらないために全力で動くはずなのだから。
♦ ♦ ♦ ♦
コツコツ、と狭い道にリゼの足音が響く。ハズレだ、そう思いながらリゼは歩いている。リゼが進み始めてから約3時間程が経過した。特にこれといって特筆することは無い。
誰とも出会わずに、ただただ道を歩いているだけだ。何故だか道は迷路になっていたけれど。
もう"孤独の道"なんていう名前では無く、"迷路の道"の方が似合うんじゃないか。だんだんリゼはそう思い始めていた。
そちらの方が、ハンター試験らしくは無いが、少なくとも可愛らしさはあるだろう。
更に9時間後
グルグルグルグルとひたすらに迷路は続く。
別に迷路を進むのはリゼにとっては苦ではない。ただ何時間も進んでいればさすがに嫌気がさしてくる。しかもこの道は階段が少なく、リゼの進むペースは早いが、実際はそこまで下には降りていない。
迷路の壁を壊せれば苦労はしないが、生憎最初の小部屋で試験官に禁止事項として伝えられた。
「……試験官。最初"この道"は1人で進まなきゃなんない、そういう風に書いてあったよね。」
リゼは途中にある休憩場所に着いた途端、溜息を軽くついた後話かけた。部屋の隅にあるカメラに。
試験官がこちらを見ていることを知っていたからだ。ちなみにリゼは休憩しようとは微塵も思っていない。
『……』
「聞こえていれば返答しなくてもいいよ。話を戻すけど"この道"はってことはさ、別の道だったら1人で進まなくても良いってことでしょ?」
スピーカーからは返答が無かったが、リゼは関係ないと言わんばかりに話を続けている。ルール違反では無いことを確信していたので、肯定はいらなかった。
少し不機嫌そうにリゼは立ち上がり、部屋の壁を見る。
ドゴン
そう大きく音をたてて壁が砕け散った。リゼが壁を殴りつけたからだ。もちろん素手で。
あたりに壁の破片が飛び散り、部屋はぐちゃぐちゃになっている。
加減をしたからそこまで酷くは無いはず。……多分。リゼはそう思いつつ、ぐちゃぐちゃになった部屋から目を背け、自身が殴りつけた壁を見ることにした。まだ砂埃は収まっていないが、ぼんやりとリゼが殴りつけた場所が見えてくる。
壁が厚かったのにも関わらず、穴が空いている。人1人が充分に通れる位の。
「ゲホッ、ゴホッ……何だいきなり……?」
「……半日ぶりって言えばいいのかな?ゴン、キルア。まあクラピカとレオリオは1日ぶりだけど。」
「「リゼ!?」」
砂埃が収まり奥が見える様になると、リゼは自身が空けた穴を覗いた。そこには咳き込んでいるレオリオと、リゼが現れたことに驚いているゴンとキルア。クラピカはリゼが素手で、壁に穴を空けたことに驚いている。あとは青ざめているトンパ。
(あー、ゴン達が進んでるコースだったか……)
まあ穴を空けてしまったんだから仕方ない、とリゼは3次試験でゴン達と関わらないことを諦めた。
「まあいろいろあって、自分のコース進むの嫌になったからこっちのコース着いて行っても良い?」
試験官からの伝言は
『"生きて下まで降りてくること"、制限時間は72時間。』
だった。だから途中でコースを変えることも、壁を壊すことも一応ルール違反では無い。だから最悪、床に穴を空け続ければ下に降りれる。
そうリゼが自信ありげに胸を張って宣言をする。
「まあ私は基本多数決にも参加出来ないんだけどね。」
ゴン達が進んでいるのは"多数決の道"。途中からコースを変えたリゼは多数決には参加出来ない。そうスピーカーから試験官に言われた。
「つーかこの穴どうするんだよ?」
キルアに文句を言われるが、リゼは知らない、と言わんばかりに顔を背ける。リゼ自身も空けた穴を塞ぐのは考えていない。
「にしても50時間か、長いね。」
ゴン達もいろいろあったらしく、50時間を小部屋で過ごすことになったらしい。
リゼは50時間を無駄にするのなら元の道に戻るか、と考えているが迷路を進みたくないので、元の道に戻る気はあまり無いだろう。
「キルア、さっきの技はどうやったんだ?」
クラピカが本を読んでいるキルアに話かける。
さっきの技?、と事情を知らないリゼが1人で首をかしげているとゴンが説明する。
どうやらキルアは試練官と対戦したときに、相手の心臓を奪い殺害したらしい。
「技って程のもんじゃない。ただ抜き取っただけだよ。
ただし────
ちょっと自分の肉体を操作して盗みやすくしたけど。」
キルアが手をのばす。手はビキビキと音をたてつつ、爪が刃物の様に鋭くなっていた。
見た目は血管が浮き出て、少しばかり気持ち悪いが、確かに心臓を抜き取るには最適だろう。
「オヤジはもっと上手く盗む。抜き取るとき相手の傷口から血が出ないからね。」
味方の内は頼もしい限りだ、とクラピカは思う。ゴンとレオリオは単純に驚いている。リゼはもう関心を無くして、座って読書をしている。
「リゼはどうやって壁を壊したの?」
次にゴンがリゼに話しかける。リゼが壁を素手で壊したのを不思議に思ったらしい。リゼが周りを見て見ると、キルアとクラピカ、レオリオもリゼを見ていた。
「どうやって、と言われてもね。軽く殴っただけだし……」
リゼの言葉にこの場にいた全員が驚く。そんなことは気にせず、
どう説明しようか……と悩むリゼ。
自分が通れる位で良いかな、と考えて軽く殴ったつもりだった。壁を壊せたことは説明することはできるが、まだ4人には早い話だろう。そう
頭の中でリゼは悩む。
「まあ多分、鍛えたらできるようになるよ。……保証はしないけど。」
詳しいことは説明せず、リゼは苦笑いしつつそう4人に言った。全員、納得はしていないが、リゼに聞くのは無駄だと分かったらしい。誰も深く追求はしなかった。クラピカは特に不満そうな顔をしている。
♦ ♦ ♦ ♦
50時間後
少し走ると2つの階段が見えてくる。登るものと降りるもの。どちらへ進むかは多数決で決めるようだ。
登る道を選んだが、結果は30分走って逆戻りとなってしまった。
その後も進んで行くが、多数決はやたらと多かった。
電流クイズ、○✕迷路、地雷つき双六、 etc
まあ罠がある度にリゼが破壊しているので、大きな怪我をせずに全員が進んでいる。
そして残り時間は1時間を切った。5人ともボロボロになっているが、リゼは少しも傷はついていない。
「見なよ、皆。どうやら出口が近いぜ。」
扉が開いて、キルアが指を部屋の中へさしてそう言うと、全員が部屋へ足を踏み入れる。
『 最後の別れ道
ここが 多数決の道 最後の
分岐点です。
心の準備はいいですか。
○→はい ✕→いいえ 』
そう書かれていた。リゼ以外の5人が多数決で決めるために、ボタンを押す。○が4、✕が1だったが詮索している暇は無い、と無視して指示が何かを聞く。
『それでは扉を選んで下さい。道は2つ……
全員で行けるが長く困難な道。
3人しか行けないが短く簡単な道。
ちなみに長く困難な道はどんなに早くても、攻略に45時間はかかります。
短く簡単な道はおよそ3分ほどでゴールに着きます。』
スピーカーから聞こえてくる機械音。その内容に少なからず動揺するゴン達。リゼは予想の範囲内だったのか、平然としている。
『長く困難な道なら○。短く簡単な道なら✕を押して下さい。
✕の場合壁に設置された手錠に、残された内の2人がつながれた時点で扉が開きます。
この2人は時間切れまでここを動けません。』
端的に言えば3人を見捨て、もう3人が合格出来る。部屋のいたる所に武器があるのは戦って、進む3人を決めろということだろう。
それぞれ表情を険しくする。ゴンだけはあることに気づいて嬉しそうな顔をしている。
「リゼ!前みたいに壁壊せる?」
「当たり前、絶対壊せるよ。」
多数決に参加出来ないため、黙っていたリゼにゴンは尋ねる。
他の4人はリゼとゴンのやり取りを聞いて、ゴンが言いたいことが分かったらしい。
長く困難な道の方から入って壁を壊し、短く簡単な道の方へ出る。
確かにこの方法なら全員が時間内にゴールできるだろう。
♦ ♦ ♦ ♦
「到着っと。」
短く簡単な道は滑り台になっていて、3分でゴールに着くことが出来た。タイマーを見てみれば残り時間にも余裕があった。
本当に素手で壁に穴を空けるとは思わなかったのだろう。リゼが壁に穴を空けたとき、レオリオとトンパは青ざめていた。
レオリオはともかくトンパは1次試験が始まる前、壁にヒビを入れたのを見ただろう、とリゼは心の中で悪態をつく。
(あんまり関わりたく無かったんだけど。)
結局、2人と関わっちゃったな、とリゼは自嘲しながら考える。
4次試験では絶対に……、と無理だろうなと思いつつもリゼは頭を働かせる。
自分自身が傷つかないために。
何処かで2人といるのが楽しいと感じる自身に嘘をついて、リゼは溜息をつく。
(ハンター試験……受けなきゃ良かったかな。)
『3次試験 24名合格』
アナウンスされた言葉もリゼの耳には届かないまま、ハンター試験は進んでいく。
主人公が思った以上に臆病だったり、暗くなりました。
……何故に?
というか未だに口調がつかめて無いです。