人探し屋の少女は何を思う   作:旅たまご

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前回よりも少し長めです。


テスト期間が迫っているので次回の更新は遅れます。
ただでさえ遅いのに……
どうやったら更新早くできるんでしょうね。


4 3次試験

リゼが目を覚ますと目の前にはネテロ会長と、大の字で寝ているゴン。

ゆっくりともう一度リゼは瞬きをしてみるが、目の前の光景は変わらない。夢であってほしい、とリゼは思ったが、昨夜ゲームを見ていた、という記憶が夢では無いと告げていた。

 

「おやお嬢ちゃん。起きたかの。」

 

そう話かけられたリゼも寝起きだからなのか、まだぼんやりとして反応していない様に見える。まあ実際は

 

(ゲームが終わったらいなくなると思ってたんだけど……)

 

ただ目の前に会長がいるという事実を認めようとせずに、現実逃避をしているだけだ。夢では無いと分かったらしい。時計を見て見ればまだ8時半。2度寝をしようか、と真剣に考え始めるリゼ。もう会長の事を考え始めたら負けだ、とリゼは思い始めている。

 

(シャワーに行ってこようかな。)

 

早くこの場を離れたいと思うリゼ。

もちろんお風呂に入りたい、という気持ちもある。リゼは一応会長にお辞儀をしてからドアから出た。無視はしていないということを教えるために。

ただ単に会話をしたく無いという気持ちだったのもあるけれど。

 

 

♦ ♦ ♦ ♦

 

 

『皆様、大変お待たせいたしました。目的地に到着です。』

 

アナウンスが飛行船の中に響く。飛行船が到着したのは高い塔の頂上だった。見る限りは何も無い様に見える。

 

「ここはトリックタワーと呼ばれる塔のてっぺんです。ここが3次試験のスタート地点になります。

さて試験内容ですが、試験官からの伝言です。

"生きて下まで降りてくること"、制限時間は72時間。」

 

説明が終わり、3次試験が開始する。リゼは下を覗き見て見るが、地面がぼんやり見えるか分からないぐらいの高さだった。1人の受験者が壁をつたって降りようとするが、怪鳥に食い殺されている。

 

「さてと、私は行くとしますか。」

 

リゼはそう言って隠し扉のもとへ向かう。ゴンとキルアには伝えなくても大丈夫だろう。リゼはそう思って2人には話しかけなかった。

ガコン、とかるく音をたてて、地面に仕掛けられた扉はひっくり返る。リゼが降りた先にあったのは小さな小部屋。

小部屋の前方にはタイマーがあり、その上には文字が書かれている。

 

『 孤独の道

君はここからゴールまでの

道のりを1人で乗り越えなけ

ればならない 』

 

リゼはその文を読むと、予想が的中したのが嬉しかったのか満足気に頷いた。わざわざ1人専用のコースと思われる、周囲に隠し扉が無い場所を選んでリゼはこの部屋に入ったのだ。必ず1人で進むために。

 

ヒソカ(アイツ)とは絶対に会いたくない……)

 

職業上ヒソカに顔を知られているリゼは、1次試験からずっと故意に関わるのを避けている。深緑色に髪を染めて、普段なら絶対にしないような服装をしているのにも訳がある。

ハンター試験を受けているリゼが "人探し屋" だと知られるのを防ぐためだ。とはいえ髪を染め、服装を変えたとしても気づかれてしまう可能性は少なからずある。リゼはそう思っていたのだ。

……ゴンとキルアに出会うまでは。

 

(新しい玩具(オモチャ)を見つけたら試験の間は、少し位夢中になってくれるでしょ。……多分。)

 

ゴンとキルアには少しばかり悪いとリゼは思っているが、考えを改める気にはならなかった。他人の平穏か、つかの間の自分の平穏か。リゼは自分の平穏を望んだ。

自分も巻き添えになってしまうのを避けるため、リゼは深く2人と関わりたく無かった。けれど、やはり

 

いつか2()()()()()()()()()()()()

()()()()()()()とリゼは分かっているから。

 

2人と関わりたく無かったのは、そういう理由でもある。

 

こんなことを考えていても仕方ない、そう思いリゼは歩き出す。やけにリゼの足取りは重かった。

 

 

 

 

 

けれどゴンとキルアに関わってしまうのは、心の何処かでリゼは楽しいと思っているからだろう。

 

 

そうでなければリゼは、

 

 

 

 

1次試験でゴンがヒソカに目をつけられた時に、2人と関わらないために全力で動くはずなのだから。

 

 

♦ ♦ ♦ ♦

 

 

コツコツ、と狭い道にリゼの足音が響く。ハズレだ、そう思いながらリゼは歩いている。リゼが進み始めてから約3時間程が経過した。特にこれといって特筆することは無い。

誰とも出会わずに、ただただ道を歩いているだけだ。何故だか道は迷路になっていたけれど。

もう"孤独の道"なんていう名前では無く、"迷路の道"の方が似合うんじゃないか。だんだんリゼはそう思い始めていた。

そちらの方が、ハンター試験らしくは無いが、少なくとも可愛らしさはあるだろう。

 

 

 

更に9時間後

グルグルグルグルとひたすらに迷路は続く。

別に迷路を進むのはリゼにとっては苦ではない。ただ何時間も進んでいればさすがに嫌気がさしてくる。しかもこの道は階段が少なく、リゼの進むペースは早いが、実際はそこまで下には降りていない。

迷路の壁を壊せれば苦労はしないが、生憎最初の小部屋で試験官に禁止事項として伝えられた。

 

「……試験官。最初"この道"は1人で進まなきゃなんない、そういう風に書いてあったよね。」

 

リゼは途中にある休憩場所に着いた途端、溜息を軽くついた後話かけた。部屋の隅にあるカメラに。

試験官がこちらを見ていることを知っていたからだ。ちなみにリゼは休憩しようとは微塵も思っていない。

 

『……』

 

「聞こえていれば返答しなくてもいいよ。話を戻すけど"この道"はってことはさ、別の道だったら1人で進まなくても良いってことでしょ?」

 

スピーカーからは返答が無かったが、リゼは関係ないと言わんばかりに話を続けている。ルール違反では無いことを確信していたので、肯定はいらなかった。

少し不機嫌そうにリゼは立ち上がり、部屋の壁を見る。

 

 

ドゴン

 

 

そう大きく音をたてて壁が砕け散った。リゼが壁を殴りつけたからだ。もちろん素手で。

あたりに壁の破片が飛び散り、部屋はぐちゃぐちゃになっている。

加減をしたからそこまで酷くは無いはず。……多分。リゼはそう思いつつ、ぐちゃぐちゃになった部屋から目を背け、自身が殴りつけた壁を見ることにした。まだ砂埃は収まっていないが、ぼんやりとリゼが殴りつけた場所が見えてくる。

壁が厚かったのにも関わらず、穴が空いている。人1人が充分に通れる位の。

 

「ゲホッ、ゴホッ……何だいきなり……?」

 

「……半日ぶりって言えばいいのかな?ゴン、キルア。まあクラピカとレオリオは1日ぶりだけど。」

 

「「リゼ!?」」

 

砂埃が収まり奥が見える様になると、リゼは自身が空けた穴を覗いた。そこには咳き込んでいるレオリオと、リゼが現れたことに驚いているゴンとキルア。クラピカはリゼが素手で、壁に穴を空けたことに驚いている。あとは青ざめているトンパ。

 

(あー、ゴン達が進んでるコースだったか……)

 

まあ穴を空けてしまったんだから仕方ない、とリゼは3次試験でゴン達と関わらないことを諦めた。

 

「まあいろいろあって、自分のコース進むの嫌になったからこっちのコース着いて行っても良い?」

 

試験官からの伝言は

 

『"生きて下まで降りてくること"、制限時間は72時間。』

 

だった。だから途中でコースを変えることも、壁を壊すことも一応ルール違反では無い。だから最悪、床に穴を空け続ければ下に降りれる。

そうリゼが自信ありげに胸を張って宣言をする。

 

「まあ私は基本多数決にも参加出来ないんだけどね。」

 

ゴン達が進んでいるのは"多数決の道"。途中からコースを変えたリゼは多数決には参加出来ない。そうスピーカーから試験官に言われた。

 

「つーかこの穴どうするんだよ?」

 

キルアに文句を言われるが、リゼは知らない、と言わんばかりに顔を背ける。リゼ自身も空けた穴を塞ぐのは考えていない。

 

「にしても50時間か、長いね。」

 

ゴン達もいろいろあったらしく、50時間を小部屋で過ごすことになったらしい。

リゼは50時間を無駄にするのなら元の道に戻るか、と考えているが迷路を進みたくないので、元の道に戻る気はあまり無いだろう。

 

 

「キルア、さっきの技はどうやったんだ?」

 

クラピカが本を読んでいるキルアに話かける。

さっきの技?、と事情を知らないリゼが1人で首をかしげているとゴンが説明する。

どうやらキルアは試練官と対戦したときに、相手の心臓を奪い殺害したらしい。

 

「技って程のもんじゃない。ただ抜き取っただけだよ。

ただし────

ちょっと自分の肉体を操作して盗みやすくしたけど。」

 

キルアが手をのばす。手はビキビキと音をたてつつ、爪が刃物の様に鋭くなっていた。

見た目は血管が浮き出て、少しばかり気持ち悪いが、確かに心臓を抜き取るには最適だろう。

 

「オヤジはもっと上手く盗む。抜き取るとき相手の傷口から血が出ないからね。」

 

味方の内は頼もしい限りだ、とクラピカは思う。ゴンとレオリオは単純に驚いている。リゼはもう関心を無くして、座って読書をしている。

 

「リゼはどうやって壁を壊したの?」

 

次にゴンがリゼに話しかける。リゼが壁を素手で壊したのを不思議に思ったらしい。リゼが周りを見て見ると、キルアとクラピカ、レオリオもリゼを見ていた。

 

「どうやって、と言われてもね。軽く殴っただけだし……」

 

リゼの言葉にこの場にいた全員が驚く。そんなことは気にせず、

どう説明しようか……と悩むリゼ。

自分が通れる位で良いかな、と考えて軽く殴ったつもりだった。壁を壊せたことは説明することはできるが、まだ4人には早い話だろう。そう

頭の中でリゼは悩む。

 

「まあ多分、鍛えたらできるようになるよ。……保証はしないけど。」

 

詳しいことは説明せず、リゼは苦笑いしつつそう4人に言った。全員、納得はしていないが、リゼに聞くのは無駄だと分かったらしい。誰も深く追求はしなかった。クラピカは特に不満そうな顔をしている。

 

 

♦ ♦ ♦ ♦

 

 

50時間後

少し走ると2つの階段が見えてくる。登るものと降りるもの。どちらへ進むかは多数決で決めるようだ。

登る道を選んだが、結果は30分走って逆戻りとなってしまった。

 

その後も進んで行くが、多数決はやたらと多かった。

電流クイズ、○✕迷路、地雷つき双六、 etc

まあ罠がある度にリゼが破壊しているので、大きな怪我をせずに全員が進んでいる。

そして残り時間は1時間を切った。5人ともボロボロになっているが、リゼは少しも傷はついていない。

 

「見なよ、皆。どうやら出口が近いぜ。」

 

扉が開いて、キルアが指を部屋の中へさしてそう言うと、全員が部屋へ足を踏み入れる。

 

『 最後の別れ道

ここが 多数決の道 最後の

分岐点です。

心の準備はいいですか。

○→はい ✕→いいえ 』

 

そう書かれていた。リゼ以外の5人が多数決で決めるために、ボタンを押す。○が4、✕が1だったが詮索している暇は無い、と無視して指示が何かを聞く。

 

『それでは扉を選んで下さい。道は2つ……

全員で行けるが長く困難な道。

3人しか行けないが短く簡単な道。

ちなみに長く困難な道はどんなに早くても、攻略に45時間はかかります。

短く簡単な道はおよそ3分ほどでゴールに着きます。』

 

スピーカーから聞こえてくる機械音。その内容に少なからず動揺するゴン達。リゼは予想の範囲内だったのか、平然としている。

 

『長く困難な道なら○。短く簡単な道なら✕を押して下さい。

✕の場合壁に設置された手錠に、残された内の2人がつながれた時点で扉が開きます。

この2人は時間切れまでここを動けません。』

 

端的に言えば3人を見捨て、もう3人が合格出来る。部屋のいたる所に武器があるのは戦って、進む3人を決めろということだろう。

それぞれ表情を険しくする。ゴンだけはあることに気づいて嬉しそうな顔をしている。

 

「リゼ!前みたいに壁壊せる?」

 

「当たり前、絶対壊せるよ。」

 

多数決に参加出来ないため、黙っていたリゼにゴンは尋ねる。

他の4人はリゼとゴンのやり取りを聞いて、ゴンが言いたいことが分かったらしい。

長く困難な道の方から入って壁を壊し、短く簡単な道の方へ出る。

確かにこの方法なら全員が時間内にゴールできるだろう。

 

 

♦ ♦ ♦ ♦

 

 

「到着っと。」

 

短く簡単な道は滑り台になっていて、3分でゴールに着くことが出来た。タイマーを見てみれば残り時間にも余裕があった。

本当に素手で壁に穴を空けるとは思わなかったのだろう。リゼが壁に穴を空けたとき、レオリオとトンパは青ざめていた。

レオリオはともかくトンパは1次試験が始まる前、壁にヒビを入れたのを見ただろう、とリゼは心の中で悪態をつく。

 

 

 

 

 

 

(あんまり関わりたく無かったんだけど。)

 

結局、2人と関わっちゃったな、とリゼは自嘲しながら考える。

 

4次試験では絶対に……、と無理だろうなと思いつつもリゼは頭を働かせる。

自分自身が傷つかないために。

何処かで2人といるのが楽しいと感じる自身に嘘をついて、リゼは溜息をつく。

 

(ハンター試験……受けなきゃ良かったかな。)

 

 

 

『3次試験 24名合格』

 

アナウンスされた言葉もリゼの耳には届かないまま、ハンター試験は進んでいく。




主人公が思った以上に臆病だったり、暗くなりました。
……何故に?
というか未だに口調がつかめて無いです。

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