更新速度を犠牲にして文字数を……
リアルの方が忙しくなって、さらに不定期更新になると思います。
……本当に申し訳ない。
会長との面談が終わってから三日後。
試験会場のホテルの、何故かやたらと広い一室に受験者は集められた。
中央には布がかかったホワイトボードみたいなものがある。多分試験に使うとは思うけど、その試験自体が何をするか知らされていない。今いる部屋も広いだけで特に仕掛けは無いから、単純なものだとは思う。
最終試験ともあって会長はもちろん、これまでの試験官達もいる。前回の試験で、それぞれ受験者を尾行していた人達は試験官に入るのだろうか。
「最終試験は一対一の、トーナメント形式で行う。」
会長がそう話を切り出した。
予想通りの単純な試験だった。3次試験の塔を降りる試験より、ずっと分かりやすい。運が良ければ、合格は簡単だ。あくまでも、運が良ければの話だけど。
「その組み合わせはこうじゃ。」
会長がそう言うのと同時に、そばにあったホワイトボードにかかっていた布を外した。
普通のトーナメントとは一風変わったものだった。それぞれで試合数が変わっていた。最高で五回、最低でも二回。
どんなルールがあるのだろうか。面倒なルールでないことを願いながら、先に会長の説明を聞くことにした。
「最終試験のクリア条件だが、いたって明確。たった一勝で合格である!
つまり、このトーナメントは敗けた者が上に登っていくシステム。」
まだ会長が話している続きを聞きつつ、再度組み合わせを見てみる。
第1試合はどうでも良い。
問題は第3試合目からだ。
第3試合
第1試合の敗者 対 301
301、つまりギタラクルだ。この試合が私に関係無かったら良かった。せいぜい相手の受験者に同情するくらいだ。
でも、そのギタラクルが私と試合する可能性があるのだから、乾いた笑いをうかべることしかできない。
表をには、第3試合の線の上の上、つまり、第7試合のところにしっかりと私の番号があった。何度見ても、その事実は変わらない。
とてつもなく嫌だ。ギタラクルが敗け続けると私と当たる。実力的に無いとは思いたいけど、ヒソカのように強くてもわざと敗けるタイプかもしれない。
そもそも、私と戦う可能性のあるメンバーが問題だ。
ゴン、294番、ギタラクル、キルアのうちの誰か。
まだ、294番は良い。ハンゾーとかいう奴で勝てそうだから。まあギタラクルは論外として、ゴンとキルアはヒソカに目をつけられてる、特にゴン。キルアは実家が駄目。たとえ家出してるとしても傷つけすぎるのはアウト、だと思う。予測にすぎないけど、可能性はあるので心配しておくにこしたことはない。
考えてもどうにもならないので、とりあえず不安を振り切るように頭を振った。頭を振って現実がどうにかなるなら良かったが、生憎そんな簡単な世の中では無かった。
「戦い方も単純明快。武器OK、反則無し。相手に『まいった』と言わせれば勝ち!ただし、相手を死にいたらしめてしまった者は即失格!その時点で残りの者が合格。試験は終了じゃ。」
「一つ、質問しても?」
そう言うとこの場の視線が私に集まる。面倒だったけど、一つだけ確認しておきたかった。
「自分の試合では無いときに、受験者では無い人を……そこの黒いスーツを着てる人とかを殺害しても失格になるの?」
「勿論失格じゃ。最終試験が終わるまで、この場にいる誰かを殺してしまうと不合格、そう思ってくれて構わん。」
良かった、と思い切り心の中で安堵した。最終手段だけど、もし私がギタラクルと戦うことになったら、そのときは誰かを殺せば良い。本当に最後の手段として考えてよう。ゴン達の反応は面倒なことになるだろうけど、ギタラクルと戦うことに比べればまだマシだと思う。
「第1試合、ハンゾー対ゴン。」
ハンゾーとゴンが向かい合った。ハンゾーとやらには少し同情する。実力はハンゾーが圧倒的に高い。それでもこの勝負は、どちらかが諦めなければ終わらない。ゴンみたいな、単純で頑固な奴がすぐに『まいった』なんて言う訳が無い。
「始め!!」
その瞬間に、ゴンはすぐさま駆け出した。その行動は多分無駄。
ゴンとハンゾーでは実力差がありすぎる、そのことにゴンは最初から気づくべきだった。
私の予想通り一瞬で追いつかれ、首に手刀をうちこまれた。勢いよくその場に倒れたゴンは意識を失ってないが、すぐに動くのは難しそうだ。
まあこの後の展開はだいたい分かる。
『まいった』と言わせる為に、ゴンをひたすら痛めつけるだけだ。
私はゴンの実力不足なので自業自得だと思うが。まあそう言うと確実にクラピカやレオリオあたりが怒りそうなので、黙って見るだけにしてよう。下手に怒りを買いたくない。
♦ ♦ ♦ ♦
試合開始からおよそ三時間。
ゴンは、もう血反吐が出なくなるほどに痛めつけられていた。けれど、ゴンはとても運が良い。骨を折られたり、爪を剥がされたりもしていない。確かに痛いとは思うが、火で炙られることも無く、後遺症が残るような傷も無い。三時間たっているのに、全身の打撲ですんでいることに感謝した方が良い。
でもまあ、ゴンの頑固さもなかなかだ。生まれ育った環境を聞く限り、痛みには慣れていないはずなのに、三時間は耐えているのだから。
「いい加減にしやがれ!ぶっ殺すぞてめぇ!オレが代わりに相手してやるぜ!」
ついに見ていられなくなったのかレオリオが叫ぶ。
個人的には、無駄としか言えない。レオリオがハンゾーと戦ったところで、負けるに決まっている。
ルール上、勝負に介入はできないらしく、仮に今レオリオが手を出したとしても失格になるのはゴンの方だ。そう言われて、レオリオは押し黙った。
「大丈夫だよ、レオリオ……」
足は震えてボロボロだけれど、それでもレオリオに大丈夫だと言い切るゴン。心配をかけたくないのかは分からないが、強がっているように見えた。実力では勝てないことは、この三時間でゴンも分かっているはずなのだから。
そんなゴンの様子を見て、ハンゾーはゴンを動かないようにして左腕を掴んだ。
「腕を折る。」
ゴンが諦めないことが分かったのか、そう宣言した。
さすがにゴンも諦めるだろうか。
そう思ったけど──
「っ嫌だ!」
予想に反して『まいった』とは言わなかった。
バキリ、ポッキリ?
そんな効果音が似合うくらいに綺麗にゴンは腕を折られた。
歯を食いしばってゴンは痛みに耐えている。それでも叫ばなかったのは根性だろうか。
クラピカとレオリオはそれを見て激怒している。クラピカは冷静そうに見えて怒りやすい。
というかゴンの勝負は、周りがどうこう言っても何も変わらない。ハッキリ言えば無駄だ。それに心配するのはまだ分かるが、相手に怒るのは少し違う気がした。ハンゾーは『まいった』と言わせる為の行動をしているだけで、反則した訳ではない。今のゴンの状況も本人の実力不足が原因だ。
人によって考え方は違うと分かっているが、思わず二人に呆れて溜息をついた。その溜息が聞こえていたのか、クラピカとレオリオはこちらを向いた。
どうしよう、間違えた。焦ったけどもう遅かった。
「てめぇ、ゴンがあんなふうになってんのに何にも思わねえのかよ?!」
まあこうやってレオリオが怒るのは予想してたし、気持ちもわからなくもない。クラピカは何も言わないけど静かに怒ってる。レオリオが怒ることで、周囲の視線がこちらに向いた。
ルール説明のときに質問したから今更とは思うけど、注目されるのは都合が悪い。一次試験が始まる前に、トンパに貰ったジュースを壁に叩きつけて注目されたけれど、あれにはちゃんとした理由があった。ああいう性格だと
私がハンター試験に絶対向いてない、ヒラヒラした余計な布が多い服を着ているのも、髪を染めているのだって探し屋と私が同一人物だとバレない為だし。まあほぼ意味なんて無い保険だけど。
心の中で強く後悔しつつ、ゆっくりと口をひらいた。
「確かに二人が心配するのも分かるけど……ゴンは、『大丈夫』って言った。だったら、その言葉を信じるのも────『仲間』ってやつじゃないの?」
目の前にいるレオリオとクラピカを見てそう言えば、二人は少し驚いていた。
綺麗事を久しぶりに言った気がする。『仲間』なんてものはよく分からないけど、一応嘘はついてない。ときには何かを信じるのも大切だと思っている。まあ二人が良い感じに勘違いしてくれるのを願う。
「私は、ゴンなら大丈夫だって信じてるよ。」
──ゴンなら大丈夫。
この言葉も嘘ではない。ハンゾーは痛めつけても、多分殺さないだろうと"信じてる"。それに、ゴンがどれだけ傷つくのかは分からないけど、ゴンが諦めなければ試合に勝てる可能性はある、と"信じてる"。
嘘はついてない、どれも本心で言ってる。レオリオとクラピカがどう勘違いするのかは分からないけど。
多分、
その証拠に──
「その……さっきは、悪かったな。」
こうやってレオリオはすぐに謝ってきた。
「……私の方からも謝罪し──」
「全然気にしてないから別に謝罪なんてしなくても大丈夫だよ。」
私はクラピカの言葉を遮った。
謝罪されても迷惑なだけだったのも理由の一つだけど、なによりも今の状況が、周囲の視線がこちらに向いている状況が嫌だった。
他人に注目されるのは、好きでも嫌いでもない。だけど、この場にヒソカがいるときに注目されるのは嫌だ。
人探し屋と私が同一人物だと、ヒソカにバレない為にしていた細工が見破られる。
二人の意識を試合の方に戻すように促して、私自身も試合を見るフリをする。ペラペラと何かハンゾーが語っていたが全く頭に入ってこない。
私のことがヒソカにバレた、確実に。その証拠にさっきからヒソカがこっちを見ている。気持ち悪いので今すぐ止めてほしい、というか私に関わらないでほしい。
どうしようか。
そんな考えで頭が埋め尽くされていた。こんな風に解説できてるのは慌てすぎて一周まわって冷静になってるだけだ。
仕事で
という訳でハンターの資格をとるまでは逃げるつもりは無い。いや、危険になったら潔く諦めるが。
ヒソカにバレること自体はまだ、百歩譲って良い……としよう。最悪の事態は私がヒソカと戦うことだ。多分、大丈夫だと……そう思いたい。……大丈夫、か?考えれば考えるほど不安になってくる。あのヒソカが戦わないのなら、私にとっては有難いがそれはもうヒソカの皮をかぶった別人だ。
「足──斬り────れば─お前も──だろう─最後のた──だ。『まいった』と言ってくれ。」
ハンゾーの言葉で意識が一旦引き戻される。集中してると周りが見えなくなるのは私の悪い癖だ。
どうやら私が考えていた間に事態は思ったより進んだらしく、ハンゾーはゴンの足を斬り落とすつもりらしい。仕込んでいた刃を出している。
やっとだ。この第1試合だけで三時間以上かかっている。遅すぎるとは思うが、それでも決着がつくのは嬉しい。そんなことを考えていると──
「それは困る!!」
──ゴンが、そう叫んだ。
何を言ってるのだろうか。
聞き間違いか見間違いだろうか。何でゴンはそんな堂々と大声でこんなことを言ってるのだろう。答え方を間違えたら、自分の足が切り落とされるのに。つい先程、目の前の相手に腕を折られたのに、何でそんなことを言えるのだろう。分からない、全くと言っていいほど分かる気がしない。
私の方がおかしいのだろうか。そう思って周りを見てみると、誰もが驚いていた。良かった。私がゴンの思考回路を分からないのは、いたって普通のことだったらしい。
対戦相手であるハンゾーも、まさかこんな風に言われるとは思ってなかったらしく、驚いて一瞬固まっていた。むしろ、ゴンがこう返答すると予測してたのなら、私はハンゾーのことを尊敬していただろう。
「足を斬られちゃうのは嫌だ!でも、降参するのも嫌だ!だから、もっと別のやり方で戦おうよ!」
ゴンはハンゾーに痛めつけられて頭がおかしくなっているのだろうか。実力差はゴン自身が充分にこの三時間で理解しているはずだ。そして先程の、足を斬り落とすというハンゾーの言葉は嘘ではないということに。
「なっ!自分の立場分かってんのかてめぇ!勝手に進行するんじゃねぇよ!舐めてんのか!その脚マジでたたっ斬るぜコラァ!」
「それでもオレはまいったって言わない!そしたらオレは血がいっぱい出て死んじゃうよ?そうすると失格になるのはあっちの方だよね?」
ゴンが死んだら確かにハンゾーは失格になるけれど、それでも失格になるだけだ。命を失うことと、失格になるのはつり合わない。そのことをゴンは理解しているのだろうか。
「それじゃお互い困るでしょ。だから考えようよ。」
ハンゾーは目を白黒させてたじろいでいる。ゴンがこんな返答をするとは思わなかったのだろう。
ここまでくるとこれは一種の才能だと思う。先程までの張り詰めていた空気が無くなったのだから。
ただ、事態が変わる訳ではない。ハンゾーが刃をゴンに突きつけた瞬間、再び空気が凍った。
「やっぱりお前は何にも分かっちゃいねぇ。死んだら、次もないんだぜ。かたやオレは、来年また挑戦すればいいだけの話だ!オレとお前は対等じゃねーんだ!」
ハンゾーかゴン、どちらかが一歩でも踏み出せばゴンは死ぬであろう距離。現に今も、少しづつではあるがゴンの額からは血が出ている。
そんな状況でも、ゴンの瞳は揺らがない。しっかりとハンゾーを見据えている。
「なぜだ。たった一言だぞ……?それで来年また挑戦すればいいじゃねーか!命よりも意地が大切だってのか?!そんなことでくたばって本当に満足か?!」
「……親父に会いに行くんだ。親父はハンターをしてる。今はすごい遠いところにいるけど、いつか会えると信じてる。でも、もしここでオレが諦めたら、一生会えない気がする。だから、退かない。」
そこに欠片も理屈など存在しない。けれどその理由はゴンにとって命よりも重いものなのだろう。ゴンの声は全く震えていなかった。
「退かなきゃ……死ぬんだぜ?」
そう言われても、ゴンは目線を逸らさなかった。ただ、まっすぐハンゾーを見ていた。
「
父親を探しに行く。
もう忘れてしまって思い出も何一つないけれど、私も昔はゴンのようにまっすぐな目をして、親を探したことはあったのだろうか。
何故だか、ふとそんな考えが頭をよぎった。
ヒソカにバレない為にしていた細工とかは、多分天空闘技場編で分かると思います。
原作の試合(トーナメント)との変更点
リゼが原作のイルミ(ギタラクル)の立ち位置
イルミが原作のポックルの立ち位置
ハンターの素質云々は大目に見て頂けると嬉しいです。
第3試合でハンゾーはイルミとあたることになります。
……絶望的ですね。