何とか二月中に更新したい……
そう思った結果、今回キャラの口調が迷子になっていたり、誤字があるかもしれません。
「オレにはお前が殺せねぇ。かと言って、お前にまいったと言わせる術も思い浮かばねぇ。オレは負け上がりで次に賭ける。」
そう言ってハンゾーはその場から去ろうとした。三時間にも及んだ試合の決着。全てが丸く収まろうとしていた。そう、収まろうと"していた"のだ。
「そんなの駄目だよ!ズルい!」
ゴンがそう叫ばなければ、そのまま終わっていただろう。
(何でだよ、感傷に浸ってた私の気持ちを返してくれ。)
リゼは顔を引き攣らせながらそう思うが、そんなことは露知らずに堂々とゴンはハンゾーの方を見据える。まるで先程のように。硬直している。驚きではない、怒りでだ。この状況でゴンがズルいなどと言うとは、ハンゾーも誰も予想していなかった。リゼにいたっては驚きも怒りも通り越して呆れ果てている。きっと、まともに反応をすると疲れると察したのだろう。
「ちゃんと二人でどうやって勝負するか決めようよ!」
「……そう言うと思ったぜ。バカかこの!てめーはどんな勝負しようがまいったなんて言わねーよ!」
ゴンの頑固さを充分に理解したハンゾーがそう怒鳴る。
「だからってこんな風に勝ったって全然嬉しくないよ!」
「ゴン、嬉しいとかの問題じゃなくて。勝ちは勝ちだから。今何を言っても結果は覆らないから。」
言外に、さっさと諦めて無駄なやりとりを終わらせろとリゼは言う。もう三時間も待っているので、リゼは次の試合を初めたかった。すぐに終わらせて、一秒でも早くヒソカから逃げたかった。
「でもこんなの勝ったなんて言えないよ!」
「じゃあどうするんだよ!?」
「それをいっしょに考えようよ!」
(いや、納得しなくてもルール上では勝ったんだよ。)
テンポよく会話が進んでいく中で、言葉にはしないがリゼはツッコミを入れる。リゼとゴンの価値観の違いだ。勝ったのだから良いと考えるか、自分が納得できるかどうかを考えるか。
「要するに……オレはもう負ける気満々だが、もう一度勝つつもりで真剣に勝負をしろと。その上でお前が気持ち良く勝てるよーな勝負方法を考えろと。こーゆーことか?!」
「うん!」
「アホかーー!!」
まさにその通り。
リゼは、ハンゾーによって殴り飛ばされ目を回して倒れているゴンを見ながらそう呟いた。改めてゴンの思考回路を聞くとあまりにも酷いと思ったのだ。常人とは
「何でわざと負けたの?」
リゼが内心で独り言ちていると、ハンゾーにそう問いかけているキルアの声が聞こえた。
キルアとしては、この試合が不可解なものに見えたらしく、試合中も何度かリゼと同じように怪訝そうな表情を浮かべていた。
試合中にそれを見て、分かると何度かリゼは言いかけた。リゼ自身もゴンの行動は理解し難いものであった為である。
一方キルアは、リゼがそんな風に思っていたとはつゆ知らず、逆にリゼの放った言葉ばキルアの中で渦巻いていた。
『私はゴンなら大丈夫だって信じてるよ。』
(何であの状況で信じてると断言できるんだ……?)
リゼが勘違いするように本音を上手く伝えた影響か、リゼの思惑通りキルアには『どんなに不利な状況でも仲間を信じている』と、幸か不幸かリゼの思惑通りに伝わってしまった。
キルアはこれまでリゼと関わってきた短い間でも、なんとなく性格を理解しているつもりだった。
出会った当初は明るく振舞っていたが、何かがおかしかった。気を抜くと見逃す位の小さな違和感。演技をしているかのような、作り物めいた不自然さ。少しだけ興味が湧き、最初は暇つぶしのつもりで本当の性格を引き出してやろうと、積極的に関わってみることにした。
度々、リゼのそばにいる中で本質が見えたような気がした。容姿に似合わず面倒くさがりで、溜息をつくことが多い奴。ゴンとは対照的で、どちらかといえば自分に似ている。
最初のイメージはなんだった?そう思ったが本人曰く『人探し屋』をやっていると言っていた為、わざと周りに与える印象を変えているのだと納得した。
打ち解けていると、そう思っていた。
あの状況で、信じてると断言したことが信じられなかった。『仲間』、『信じてる』、把握していたはずの性格ではおよそ言うはずのないもの。けれどリゼは予想を裏切り、キッパリと言い切った。嘘をついているようには見えなかった。
面倒くさがりなリゼと『信じてる』と言い切ったリゼ。
どちらが本当なのかがキルアには分からなかった。
一方、リゼは──
確実に迫ってくる現実を前に絶望していた。
ゴンの言葉によって一時的には意識が逸れていたが、その後"ヒソカに正体がバレた"という事実に意識が向いたからだ。
ヒソカが獲物を見つけたような目でリゼを見ている為、リゼは先程から震えている。怖気ではなく、生理的嫌悪で。誰だって自身にまとわりつくような視線を感じれば、リゼのようになるのは仕方がないことだろう。
そんな中でもリゼにとって唯一幸いだったのが、周りに受験生がいたことだった。
ヒソカが攻撃を仕掛けようとしても、周りの受験生が邪魔でヒソカが仕掛けてくる可能性は低い。受験生の中にはヒソカが目をつけるキルア達がいるからだ。その為、すぐに戦闘になることはほとんどない。
そのことを理解しているリゼは、ヒソカに正体がバレた今、わざわざ隠す必要がないと判断し、自身が『人探し屋』であることを隠すのを諦めた。
「第2試合、クラピカ対ヒソカ──開始!」
戦いの火蓋が切られ、初めにクラピカが動き出す。ヒソカが強いと分かっている為、その動きに油断は一切ない。そして──
数十分後、決着がついた。
互いにボロボロであるのは、ただ単にヒソカが思い切り手加減していたからだ。今のクラピカを倒すことは、ヒソカにとって至極簡単なものだろう。クラピカはただヒソカの手の上で踊らされていただけだった。
その為、リゼの目には茶番のようにしか映らなかった。前回の試合のように何時間もかかる、なんてことは起こらずに短時間であっさりと決着がついたのでリゼとしては嬉しい。
結果はクラピカの勝利。
ヒソカがクラピカへ何かを呟いた後、『まいった』と宣言した。何を伝えたのかは本人達以外聞き取ることは出来なかった。ただクラピカが深刻そうな顔をしていた為、恐らく蜘蛛に関係することだとリゼは予測した。どうせヒソカが関わるのだからろくな事ではない、そう思ってリゼはこちらへ向かってくるヒソカを見ながら眉間に皺を寄せた。
♦ ♦ ♦ ♦
「久しぶりだね、リゼ♠」
「……白々しい。その気になれば最初から私に気づけるだろ。」
気づかなかったのは、ヒソカが私を見つけようとしていなかっただけ。
私としては都合が良かったけれど、いつバレるのか分からないのは心臓に悪かった。
「それで、何か用?こっちは暇じゃないからさっさと消えて欲しいんだけど。」
だから口調が不満気になっても仕方がない……半ば八つ当たりに近いけれど、ヒソカ相手ならどんな対応をしても問題ない気がする。というかその対応を周囲にさせるくらい、ヒソカは好かれていない。
「酷いこと言うね♣労ってくれてもいいと思うケド♦」
「……」
こういうとき、どんな反応をすれば良いのだろうか。とりあえず、返事をしないですぐにこの場から離れた。今はクラピカ達がいて良かった気がする。ヒソカよりクラピカ達といた方がまだ疲れない。
「お疲れ様……合格おめでとうの方が良い?」
近づいて何も言わないというのも違和感があるので、とりあえず当たり障りのない言葉をかける。
「……そうか。」
けれどクラピカはどこか嬉しくなさそうというか、放心状態な気がした。ヒソカに最後言われたことが気になっているのだろう、多分私の声もほぼ届いていない。なら、別に話しかけなくても良かった気がする。そんなクラピカを気遣って、レオリオもどこか居心地が悪そうにしている。私にはどうにもできないので、こっちを見ないでほしい。
「第3試合、ハンゾー対ギタラクル──開始!」
私にはこの勝負でどちらが負けるのかが重要だ。クラピカがどうなろうと知ったことではないし、関係ない。私としてはハンゾーに負けてほしい。前回の試合に続いて不憫だとは思うが、それでも──
「──まいった。」
「──は、」
息を呑んだ小さな音がやけに大きく感じた。カタカタと音をたてるギタラクルは、何を考えているか分からないような無表情だ。顔に何本も針を刺している奴の考えなど、元からあまり分かる気がしなかったけれど。それにしても、ハンゾーと戦わずに降参した理由は不明な点が多すぎる。実力はギタラクルの方が圧倒的に上。ここで負ければ、キルアと戦うことになるだけで──それが目的?ギタラクルは何らかの事情があってキルアとトーナメントで当たりたかった。そう考えるのが妥当だと思う……合ってるかどうかは分からないけど。
「第4試合、ヒソカ対ボドロ──開始!」
これ以上考えても仕方がないので、とりあえず第4試合を見ていることにした。といっても結果は分かりきっていることだった。ボドロが負ける。これはさすがに確実だと思う。だってボドロはヒソカが気に入りそうな
思った通りに試合は進んだ。ボドロはヒソカにボロボロにされ、最後にヒソカに何かを言われたと思ったらすぐに降参した。クラピカのときと同様にヒソカが何を言ったのか分からない。
第1試合が異様に長かったからだろうか、第3試合に続いてこうもトントン拍子に進むと少し不安になってしまう。もうすぐ私がギタラクルと戦うのかが決まるからもあるが。というかそっちの不安の方が大きい。個人的にはとてもキルアに負けてほしい。ハンター試験に来たのも暇つぶしだと言っていたような気もするし……多分。まあ、キルアはきっとハンター試験に落ちても特に問題はない、と思う。それにギタラクルと私に負けても、その後はレオリオかボドロだ。両方とも実力的には勝てる相手だ。だからキルア、私のためにここで負けてくれ。
そう願っても、ギタラクルが第3試合のように降参してしまったら無駄なのだろうけど。それでも願わずにはいられない。
「第5試合、キルア対ギタラクル──開始!」
緊迫した空気で試合は開始した。他の試合よりも空気が固まっているのは、試合を見ている私自身が緊張しているからだろう。それに周りの受験者達も、今まで謎に包まれていたギタラクルの試合ともあり、真剣な面持ちで見ている。ギタラクルは前回の試合で何もせず、すぐさま降参している、実力は充分にあるはずなのにだ。それに加えてギタラクル自身の容姿も奇妙……とても怪しげなので、そんな人物に興味をもたない方が無理な話だろう。
この場にいるほぼ全員が固唾を呑んで見守る中、ついにギタラクルは動き出した。
「久しぶりだね、キル。」
そう言って顔の針を抜いたのだ。
バキボキと、とてもじゃないけど人の顔から出なさそうな音をたてて、ギタラクルの顔が変形している。変わり終わったころには元の顔の面影が一切ないくらいに。変わるのを見ていたこっちだって同一人物なのか疑うくらいの変装なのだから、キルアに見抜けるはずがなかった。冷や汗をかき、目を大きく見開いて驚きつつも
「……兄……貴?!」
と、ギタラクルをよんだ。
……顔見知りであることはさっき理解したけど、まさか兄弟であったとは。キルアの髪は銀色、そしてところどころはねている。それに比べて
「母さんとミルキを刺したんだって?」
「まあね。」
「母さん、泣いてたよ。」
近くにいるレオリオがそりゃそうだ、と言っているが本当にそうだろうか。普通なんてものからかけ離れた暗殺一家で母親をしているんだ。そんなに普通の反応をするのだろうか。その答え合わせは思ったより早くきた。
「感激してた。あの子が立派に成長してくれて嬉しいってさ。」
「はぁ?!」
予想どうり。悲しくて泣いたのではなく、嬉し泣きだったのは少し驚いたけど、暗殺一家の母親にはしっくりくる。他の受験者達は予想していなかったらしく、驚いて固まっているけど。
「でもやっぱりまだ外に出すのは心配だからって、それとなく様子を見に行くように頼まれてたんだけど。奇遇だね。まさかキルアがハンターになりたいなんてね。オレも次の仕事の関係上、資格がとりたくてさ。」
「別にハンターになりたい訳じゃないよ。ただ何となく受けてみただけさ。」
なら、別に今降参しても良い気がするのだけれど。というかそうしてくれるととても嬉しい。ハンターになりたい訳じゃない、そう言うのなら別に今降参してもキルアにとってデメリットはないと思う。わざわざ冷や汗をかき、顔が強ばるくらいの恐怖の対象と対峙する必要はないだろう。まさか逃げるのは嫌なのか?そんなことはありえないとは思うが、私は人の心が読める訳ではないので完全に予測するのは無理だ。
「……そうか、安心したよ。心置き無く忠告できる。お前はハンターに向かない。お前の天職は殺し屋なんだから。」
心置き無く忠告ってことは、ハンターになりたいとキルアが言っていたら忠告しづらかったのか?……弟を思うからこそ?だとしたらとても面倒な人間だ。弟のことを思って行動しているのに、その弟には嫌われているのだから。まあ全部が予測だから確証はないのだけれど。それでもキルアの意見も聞かずに無理矢理連れ帰ってしまうより、まだ理不尽ではないと思う。
「お前は熱をもたない闇人形。自身は何も欲しがらず何も望まない。陰を糧に動くお前が喜びを抱くのは唯一人の死に触れたとき。お前は親父とオレにそう育てられた。そんなお前が何を求めてハンターになると?」
「確かにハンターになりたい訳じゃない。けど、オレにだって欲しいものはある。」
「ないね。」
闇人形……言うほどキルアは闇でも指示に従う人形でもないと思うんだけど。年相応に騒ぐし、喜ぶし、悔しがるところもある。焦ったり驚いたりすることもある。随分と人間らしい人形だな。何となくイラッとしてギタラクルにそう言ってみたくなった。そんな度胸はないので黙ったのだけど。何で私はムカついたのだろう。
「ある!今望んでいることもある!」
「ふーん……言ってごらん、何が望みか。」
キルアは一瞬押し黙った。そこは躊躇したら駄目だとは思うが、見る限り兄に苦手意識があるのだろう。反論しただけでも良い方だ。
「どうした?やっぱりないんだろう。」
「違う!!……ゴンと……友達になりたい。もう人殺しなんてうんざりだ。普通に友達になって普通に遊びたい。」
「……呆れた。何言ってんのか分かってる?」
そう言うとキルアはこちらに目線を向けてきた。そんな絶望しきった顔はしなくても良い気がするんだけど。あと、レオリオはすぐに怒るな。人の話は最後まで聞いてろ。
「私が見る限り、とっくにゴンとキルアは友達だと思ってたけど。まあ普通なんて私も分からないけど、それでも私からは仲良さげに見えるし。それに、気になるならゴンに直接聞いてみたら?多分即答するよ、『友達だ』って。」
単純だから。悪いって訳じゃないけど、よく騙されそうではある。キルアとの相性は良さそうでもあるが。まあ友達なんてものを知らないから説得力はないと思うけど。
「そうなの?まいったな……そっちは既に友達のつもりなんだ……よし、ゴンを殺そう。」
「!!」
「殺し屋に友達はいらない。邪魔なだけだから。」
そう言ってギタラクルはスタスタと扉へ向けて歩き始める。
「今、ゴンを殺したらルール上そっちは不合格になるよ。そうすればキルアはハンターになって、せっかくの忠告が無駄になると思うんだけど、それでも良いの?」
「なら、合格してからゴンを殺そう。それなら仮にこの場にいる全員を殺したとしても問題ないよね?」
「ルール上では問題ない。」
……余計なこと言わなければ良かった。僅かな親切心でギタラクルへ忠告をしたら、自分の首を絞めることになってしまった。どうせハンター試験が終わったらすぐに帰る予定だったので、特に問題は(多分)ない。ゴンがギタラクルに殺されようが、キルアがハンターになれなかろうが、私には関係ないのだから。
「……なら、私から言うことは何も無いよ。」
度々会話に入ってしまったからなのか、ギタラクルが"また何か言うの?"と言いたげにこちらを見てきたので訂正する。別に私は兄弟喧嘩に首を突っ込もうという気持ちは微塵もない。私から見てあまりにも可笑しいやり取りだったから、ただそれだけだ。
「……キル。お前にオレが──」
ギタラクルが私に話している訳でもなく、話の内容にも興味はないので、聞き流すことにする。内容的には、『ゴンが殺されたくなかったらオレを倒してみせろ。』というのを、脅しを加えてギタラクルが長々と語っているだけだ。どうして簡潔に語らないのかはよく分からないが、どうやらギタラクルはキルアがハンターになることに反対しているらしい、ということは分かった。
そして試合は、
「まいった……オレの負けだ。」
というキルアの宣言と
「お前に友達を作る資格はないよ。」
というギタラクルの言葉で終わった。結局、最後までギタラクルの本名は分からないままだった。
文字数が多くなっているのに、話が進むのが遅くなる……
何故に?