ハーモニクサーD×D   作:無玄

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第2話

「ハーモニクサー?」

 

目の前の女、リアス・グレモリーが聞いてくる。ややこしいので今は先輩と呼ぼう。

 

「名前くらいは聞いたことない?」

 

「無いわね。」

 

即答しやがった。人気急上昇中のアイドルが自分のこと知らないか訪ねて、「知らない」って言われた時の気持ちを思い知った。別に俺はアイドルじゃないけど。

 

「簡単に言うと、怪物やら悪魔やらの魂と融合して力を得る人のこと。」

 

「魂と融合!?」

 

吃驚しやがった。「あなたの特技は?」と質問されて、「世界を救うこと」と真面目に答えて驚かれる人の気持ちを思い知った。別に俺の特技じゃないないけど

 

「実際にやって見せたほうが早いか。」

 

話だけでは理解されないだろうと思って、俺はいつも通りにフュージョンしようと胸に手を当てる。その直後、それは起こった。

 

「!?」

 

いつもの感覚が……来ない。

 

「どうしたの?」

 

俺は横から聞こえる声も認識できないほどに焦った。この感覚、魂が無い?

 

(ウェントス!パルピュイア!ジェネラル!)

 

俺の心の呼び声にも全く反応しない。嘘だろ?本当に魂がなくなったのか?

 

(アモン!)

 

その時、いつもの感覚が復活した。回路のスイッチが入ったかのように俺の体の芯が熱くなる。

 

「ガッ!グゥゥゥルァァァァァァァァァア!!」

 

だが、いつもより俺の心を飲み込もうとする負の感情が少ない。いつもなら立っていることすらままならないというのに。

 

「これが……。」

 

俺の姿を見て驚いている。体は黒く、翼が生えている感覚もある。だが、俺がアモンにフュージョンしたときにいつも見ている高さより少し低い。

 

[……『魂と肉体の再生』]

 

考えるのはほどほどにし、アモンの特技『魂と肉体の再生』によって体の傷を治した。俺は一度フュージョンを解除し、元の姿に戻る。うん、戻る方は難なく出来た。

 

「今のが魂の融合?」

 

「ああ、けど何かおかしい。」

 

俺は今のフュージョンの感想を呟く。間違いなく俺、正確には俺の中の魂に異常が出ている。

 

「おかしい?」

 

「俺の体に入ってた魂が無くなってる。かろうじて残ってた魂もかなり弱体化してるみたいだ。」

 

「そう……。」

 

俺の言葉に先輩は少し表情を暗くする。別に先輩のせいではないと思うが……。

 

「やっぱり一度死んだのが原因か?悪魔に転生したってのは関係なさそうだし。」

 

体の感覚も今まで通りだし、フュージョンの感覚も弱体化した以外ではほとんど同じだ。多分一度死んだから、俺の体に封じてた魂が解き放たれたのかもしれない。

 

「そういえば、俺を蘇らせた理由は何?」

 

一旦、フュージョンに関する考えをやめる。今の混乱した頭では考えてもあまり意味がないと判断したからだ。

 

「あなたが生きることを望んでいたからよ。」

 

確かにうっすらと覚えている。俺は最後に死にたくないって呟いたな。

 

「それで?『願いを叶えた代わりに何か対価を寄越せ』とかあるの?」

 

「話が早いわね。でも、今日はもう遅いわ。明日の放課後に改めて説明するから一度家に帰りなさい。」

 

先輩の言葉を聞いて俺は窓の外を見た。ゲッ!外完全に真っ暗じゃん。しかも夜中の11時かよ!家の鍵締まってないだろうな。

 

「それじゃあ失礼するわ。また明日ー。」

 

最後の挨拶だけ済ませて俺は部屋を出る。ホント、最近運がないなぁ。

 

 

 

 

 

「行ったわね。」

 

彼と話をしてわかった。彼はちょっと変な力を持っているだけの一般人だ。敵対関係にある悪魔や堕天使達の手先ではない。

 

「それにしても、凄かったわね。」

 

あの融合の力。あの子が言っていた通り、凄まじいものがあるわね。見ているだけでこちらの精神を削り取ってくる。あれで弱体化している?あれ以上の存在がいるなんて、考えただけでもゾッとする程ね。

 

「ポーン8個ね……。」

 

彼がどういった存在なのか、もっと詳しく知らなくては。

 

 

 

 

 

翌日の放課後。俺は机に突っ伏してまどろみに身を委ねようとしている。ああ、昨日は酷い目にあったぜ。無理矢理デートさせられるし、殺されるし、フュージョンは弱くなるし、親からは説教されるし、挙句の果てには日差しのせいで今非常にだるい。

 

「おいイッセー!」

 

「昨日はどうだったよ?」

 

「最悪だよ畜生!」

 

そしてまどろみを吹き飛ばすこの悪友(松田&元浜)である。今日一日中うるさいったらありゃしない。俺の運はどこに行った?

 

「やばいもんぶっ刺されるわ(光の槍的な意味で)朝まで絞られるわ(説教的な意味で)おかげで寝不足だぜ。」

 

「ぶっ刺される(ソッチな意味で)!?」

 

「絞られる(アッチな意味で)!?」

 

「ああ、だから今日はおとなしく寝かせてk」

 

「「コノヤロー!!」」

 

いきなり掴みかかってきやがった。何すんだこの馬鹿共。

 

「羨ましい!あんな美少女に突っ込まれるなんて!」

 

「妬ましい!あんな美少女に搾り取られるなんて!」

 

ごめん、この変態どもにあんな説明した俺が馬鹿だった。

 

「そういう意味じゃねぇ!」

 

仕方がないので軽く拳を入れる。うん、俺の拳は堕天使の光の槍を砕く程度の威力だけどしょうがないよね。

 

「「ゴバァ!」」

 

綺麗に顔面にヒットした。手加減はしていたので骨が折れたりはしていないと思うが、鼻血がドバドバと出ていた。あ、昨日のあのアマと被る。

 

「ほれ。」

 

とりあえずティッシュを投げつけてやる。この前福引で外した際に貰ったものだ。

 

「ちょっと良いかな?」

 

その時、横から声をかけてくる奴が居た。正直、この騒ぎを見て声をかけてくるコイツはよほどの勇気があると見た。

 

「って木場か。」

 

木場祐斗、俺と同学年でかなりのイケメン。女子生徒からの人気も高いらしい。若干羨ましい。フンだ。俺だって女友達の一人くらいいるよ。

 

「部長の指示で、君を呼んでくるように言われたんだけど。」

 

「部長?それってリアス先輩か?」

 

「うん。付いてきてくれるかな?」

 

昨日言ってたしね、昼休みに説明するって。

 

「あいよ。」

 

そう言って立ち上がり、木場の後をついていく。さーて、何が出るのやら。

 

 

 

 

 

色々驚いた。なぜなら目的の場所がオカルト研究部の部室で、その中に『駒王学園の二大お姉さま』ことリアス先輩と姫島朱乃先輩が並び、学園のマスコットこと塔城小猫がソファで寛いでた。ごめん、正直オカ研舐めてた。木場といい彼女らといい異常な美形率だな。場違いな感が否めないよ。そして極めつけは……

 

「唐突だけど、あなたを私の下僕にしたいの。」

 

わーお!悪魔流の儀式でも出てくるかと思えば、いきなり俺を下僕にしたいと言ってきた。これは予想外。しかし、それに対する答えは決まっている。

 

「いいよ。」

 

「え?」

 

「あっさり決まっちゃいましたね。」

 

かなり驚いた顔をしているが、俺からしたら当然だと思う。ただでさえ蘇生してもらった恩がある相手だ。最低限の条件は出させてもらうが、基本的になんでも言うことは聞く。

 

「下僕ってどんなことするの?」

 

「ええと……まず、オカルト研究部に入部してもらって、私の配下として戦ってもらったり、レーティングゲームに参加してもらったり。」

 

「レーティングゲーム?」

 

俺の疑問に、先輩は一から丁寧に教えてくれた。うーん、要約するとチェスを元にした悪魔版のサバゲーみたいな感じか?あと、悪魔の駒(イーヴィル・ピース)というのがあって、俺はそれによって復活させられたらしい。

 

「へー。」

 

「そういえば、まだ悪魔については教えてなかったわね。」

 

そういえばそうだった。なまじ俺自身が今まで悪魔のように扱われてたから、すっかり知ってる気になってた。

 

「それで悪魔というのは……」

 

要約すると人間ではない種族で、悪魔、天使、堕天使等がいるらしい。悪魔のトップには魔王がいて、その下に爵位を持った貴族やら何やらがいる。で、リアス先輩のような純血の悪魔もいれば俺のような転生した悪魔もいるそうだ。

 

「ほー。」

 

色々と初めて聞くことが多いな……そういえばこれ、あのじっちゃんは知ってるんだろうか?今度聞いてみようかな。

 

「さて、まずは下僕としての下積みをしてもらうわね。……このチラシを配ってきてちょうだい。」

 

部長からチラシの束を渡された。結構な量あるな。

 

「了解、早速行ってきますよ。」

 

俺はさっさと済ますため、駆け足で部室を出た。

 

 

 

 

 

「あー俺はどれだけツイてないんだ。」

 

チラシを配り終わる頃には既に日は完全に沈んでいた。昨日みたいに深夜までかかったわけではないけど。

 

「お帰りなさい兵藤君。」

 

「イッセーでいいですよ。」

 

「そう、ならそう呼ばせてもらうわ。それでちょっとこの子が話があるそうなんだけど。」

 

そう言って出てきたのは塔城小猫だった。こんな時間まで残っていたことに少し驚く。

 

「何か用?」

 

「お礼とお詫びをしたくて。」

 

「礼?詫び?」

 

「昨日のことです。助けていただいてありがとうございました。」

 

そうか、あの時あの場所にいたのは彼女だったのか。

 

「いや、礼を言うのはこっちの方だ。先輩に報告したのって君なんだろ?」

 

「はい。……それと。」

 

いきなり頭を下げてきた。まぁ、何について謝るのかは想像がつくがな。

 

「部長から話は聞きました。ごめんなさい、私のせいで力を失ったんですよね?」

 

「別に気にしてねぇよ。多少は弱体化してるけど、怪物共を倒しまくってればいつかは元に戻るからさ。」

 

「本当ですか?」

 

実際、本当のことである。怪物共を倒せば、その(ソウル)が手に入る。並の怪物では大したソウルにならないが、溜めて他の強い魂に喰わせることで、強い魂をより強くすることができる。聞いた限りでは悪魔になったことで身体能力が上がっているらしい。子供の頃に怪物退治して溜めた時よりいくらか楽に魂も集まるだろう。

 

「大丈夫だって。完全に力失ったわけじゃないし。流石に昔みたいな無茶は出来ないけど。」

 

「それを聞いて私も安心したわ。もしよかったら、力を取り戻すのに協力するわ。」

 

横からリアス先輩が話しかけてくる。

 

「それはありがたいけど……良いの?下僕にそんなに手間をかけて。」

 

「イッセー、私は下僕をただの使い捨ての駒とは思っていないわ。悩んでいるのなら悩みを聞いてあげるし、力を失ったのなら取り戻す手伝いもする。上に立つものとして当然の責務よ。」

 

俺はその言葉に心を動かされた。これがカリスマというやつなんだろうか。

 

「了解、頼りにさせてもらいます。先輩。」

 

「それから、私のことは部長と呼びなさい。」

 

「部長、これからよろしくお願いします。」

 

俺と部長はガッチリと握手した。部長の手は、綺麗で柔らかい手だった。





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