ハーモニクサーD×D 作:無玄
「うっひょう!イッセー!これこれ、これ見てくれよ!」
朝っぱらから凄いテンションで話しかけてくる松田。いったい何があったんだ?
「ついに手に入れたぞ!」
と言って差し出してきたのは……エロ本だった。
「3000部限定の超レアモノだ!下手するとプレミアがつくかもしれないぞ!」
「よし、くれ。」
俺は即答した。しょうがないじゃん、俺だって健全な男だし。それに多分そんな本の存在を知ったらあのじっちゃんが絶対に手に入れろとか言ってくるし……。
「タダではやれん。」
「じゃあ、ちょーだい♡」
可愛らしいおねだりのポーズ。やべ、自分で言ってて気分悪くなってきた。松田も元浜も吐き気をこらえるようなポーズをしている。
「男のお前がやっても気色悪いだけだ。」
「悪い。」
素直に謝る。もうこの話はしているだけで俺の
「お前の持っているコレクションのうち、ダブっているものを全部寄越せばこれはくれてやる。」
足元を見てきやがった。まぁ、コレクション全部とか言われなくて助かった。
「よし、商談成立だな。」
放課後家に帰って取って来るとしよう。部活よりも他人の命よりも大切なものが俺にはある!
「と、思っていた時期が自分にもありました。」
いや、上手いこと部長やら木場やらの目を掻い潜って学校を出たのはいい。そのまま帰ってコレクションを取りに行けば良いんだからな。でもねぇ……
「すみません、日本に来たばかりで道もわからないし言葉も通じないしで……」
絶賛迷子中のシスターとエンカウントするってどういうことよ?いや、どこかのビ○チな堕天使と違って良い子そうだから許すけどさ……。なんかこう、いざ戦場へ向かおうとする兵士の前に絶滅危惧種の動物が飛び出てきたような感じだよ。しかもなんか妙な流れで俺が案内役にされちまった。
「日本語って難しいですね。」
「うん。その気持ちは理解できる。」
俺はこう見えて海外生まれだ。と言っても生まれた場所は日本じゃないということ以外わからない。育ちはイギリスのウェールズで、数年前までそこで暮らしてた。俺も最初日本に来たときはわけが分からなかったな……。文字が何種類もあって漢字で書く場合と平仮名で書く場合とがあって、たまにカタカナが入ってってややこしいんだよね。
じー
ん?なんかこの子ずっとこっちを見てるんだけど。正確には俺の目。
「何?俺の目が珍しい?」
「いえ、目の色が知り合いにそっくりだったものですから。」
珍しいな。俺の目は親父からの遺伝で、先祖代々こんな感じで赤いらしい。
「ま、世界は広いんだ。同じような目の色をした人間くらい何人もいるだろうよ。」
「そうですね。」
俺はこの話をあまりしたくなかったので、話を切り替える。
「それで?結局どこに向かってるんだ?」
「あ、はい。ここなんですけど……」
差し出された地図を見てびっくりした。この場所はあのオンボロ教会じゃないか。確かにシスターだから教会にいるものだろうけど……ここって確かかなり前に閉鎖されてたような気がするんだ。
「マジで?ここであってるの?」
「そのはずなんですけど……」
二重の意味で俺はその場所に行きたくなかった。一つ目の理由は俺が悪魔だからだ。悪魔が教会に近づけばどんなことになるのか想像に難くない。二つ目はそこの地下にあるものの存在だ。アレは……
「悪いことは言わない、やめとけ。あそこには高濃度のマリスが溜まってる。下手に近づけば正気じゃいられないぞ。」
俺は警告する。
「マリス?」
「人や動物たちに悪影響を及ぼす物質だとでも思えばいい。」
人の精神を汚染、発狂させて怪物とする存在である
「それでも、行かないといけないんです。」
随分と固い決意のようだ。なら、俺がここで引き留めても無駄であろう。仕方がないので案内してやる。
「ありがとうございます。」
「行くのなら、せめてこれを持って行け。」
俺は数枚の葉っぱを差し出す。
「これはピュアリーフという、薬草のようなものだ。ちょっとでも体調がおかしいなとか、息苦しいなとか感じたときに飲め。」
「え?あ、はい。ありがとうございます。」
いざという時の保険はかけておいた。これで多少はマシになるだろう。
「主よ、ご加護に感謝いたします。」
「グッ!?」
横でお祈りをされたせいか頭が痛ぇ。
「どうかしましたか?」
心配そうな顔で訪ねてくるシスター。
「いや、なんでもない。」
この場は男のやせ我慢で耐えた。
「例のブツだ。」
「確かにいただいた。」
秘蔵のコレクションの一部を渡し、目的のエロ本を受け取る。そしてそれを一気に読む。
「限定3000部だけあって内容は濃いな。だが、残念ながら俺好みの女はいないな。」
「いつも思うんだけどさぁ……お前どんな女が好みなの?」
元浜が聞いてくる。しかし俺はその問いに答える気は全くない。
「ヒ・ミ・ツ。」
「うぜぇ。」
わざとウザったく言う。自分の女の好みを教えるなんて恥ずかしいじゃないですか。ケケケ。
「それよりもういいだろ?俺は部活に行くからよ。」
「おう!じゃあな。」
「また明日!」
そう言って二人は帰っていく。やれやれ、この調子だと今年中には俺のコレクションがすっからかんになりそうだ。
「教会に近づいたですって!?」
「すいません部長。」
俺が教会までシスターを送って行ったことを素直に話したら滅茶苦茶驚かれた。無理もない。領地に侵入した者は即刻死刑という国の国境をまたぐギリギリのところまで行ったようなものだからな。
「私たち悪魔が教会に近づくということは、それだけで教会……天使に敵対する行動と行っても過言ではないわ。下手をすればすぐさま攻撃を受けるかも知れないのよ。確かにあなたの能力には凄まじいものがあるわ。でも、今はその力の一部を失ったことで今までと同じようにはいかないでしょ?」
どうやら部長は俺が能力を失ったことに対して責任を感じているようだった。別にいいんだけどね、怪物でも狩ってればそのうち元に戻るし。
「本当にすみません。で、そのことなんですが……」
俺は部長にあの教会について話した。部長もあの協会が閉鎖されていることは知っていたようだが、あそこに溢れているマリスについては初耳だったようだ。
「そんなものが溢れているの?」
「かなりヤバイ状態です。後1ヶ月ほどあのままにしておくと、この街全体が怪物で満たされるかも知れないです。」
長年マリスによって生まれた怪物を相手にしてきた俺は、ある程度なら知識がある。これまでの経験から言わせてもらえば、一ヶ月以内に怪物で満たされるというのはまず間違いない。
「わかった。あの教会に対する対策は考えておきましょう。……話を戻すわね。教会の中でも私達が特に気をつけなければならないのが『
エクソシストか、昔は散々やりあったなぁ……。つまりあれって俺のことを悪魔と勘違いして襲ってきてたってことか?ま、無理もないか。いきなり怪物に変身するような奴を見て、人間だなと思う方が間違ってるわけだし。あと、俺も一応エクソシストの血を引いてたりするんだけどね。その辺はどうでもいいか。
「それより、俺の後ろで何やってんの?」
「あらあら。バレていましたか。」
姫島先輩が俺の背後に忍び寄ってきた気配を感じたので、純粋な疑問から尋ねる。まさか俺を背後からグサリ!なんて事はないだろうけど一応確認。
「朱乃、どうかしたの?」
「お話の最中に申し訳ありません。大公から討伐の依頼が来ました。」
はぐれ悪魔ね。確か爵位持ちの悪魔の配下の悪魔が下克上を行うとそう呼ばれるんだっけ?そりゃあ悪魔になれば強大な力を手に入れられるわけだし、己の力に酔う奴もいるんだろう。が、俺から言わせてもらえば悪魔になったところで手に入る力はたかが知れていると思う。でなきゃ魔王をはじめとした上下関係なんて出来上がるわけもない。
「今回の目標ははぐれ悪魔バイサー。はぐれ悪魔の中でも典型的なタイプよ。」
件のはぐれ悪魔が潜んでいるという廃屋が見えてきたあたりで今回の目標について確認する部長。
「イッセー。今回は私達の戦いを見ておきなさい。」
「つまり、俺は手を出すなってことか。」
うーむ、本当ならとっととそのバイザーだかグラサンだかをクシャクシャに丸めてゴミ箱にポイして帰りたかったんだが仕方ない。
「それじゃあ行くわよ。」
廃屋に向かって歩き出すオカ研一同。
「……血の臭いがひどいです。」
廃屋の前に来たあたりで小猫嬢が呟く。確かに酷い臭いだ。あまり気分がいいもんじゃないな。見ろ、木場なんてポーカーフェイスを崩さないようにしながらも顔が若干ひきつってるぞ。
「どうやらお出ましのようね。」
「不味そうな匂い、美味そうな匂い。どんな味かな?」
人間の3倍はあろうかという大きさの、女の上半身に気持ち悪い四本足をくくりつけたかのような化物が現れた。信じられるか?コイツ、マリスが生んだ怪物じゃないんだぜ。しかもなんかやたら声が気持ち悪い。俺のSAN値をガリガリ削ってきやがる。信じられ(ry。
「はぐれ悪魔バイサー、あなたを消滅しに来たわ。」
ケタケタケタケタケタケタケタケタ
「うわっ!気持ち悪い笑い声!」
つい反射的に声に出してしまった。
「主のもとを逃げ、己の欲求のためだけに暴れまわるのは万死に値するわ。グレモリーの名においてあなたを消し飛ばしてあげる。」
「小賢しい!小娘ごときが!その紅の髪のようにお前の体を鮮血で染め上げてくれるわぁぁぁ!」
お、うまいこと言うな。座布団一枚やろう。じっちゃんから貰ったとっちゃん坊やの陰陽師が乗ってたらしいふわふわ浮く座布団しかないけど。
「貴様ら全員打ち首獄門じゃぁぁぁ!」
バイサーがいきなり襲いかかってきやがった。いつもなら回避と同時にカウンターを入れてやるところだが、部長からの命令があるのであくまで避けるだけにしておく。
「雑魚ほど洒落た台詞を吐くものね。祐斗!」
部長の指示を受けて木場が飛び出す。その動きがかなり速いところを見るに、おそらくスピード系。
「祐斗の役割はナイト。特性はスピード。」
騎士の駒で転生した者はスピードタイプってことか。それに木場の得物は剣、相性は悪くない。もしこれで武器が弓とかだったら悲惨なことになってたな。
「次は小猫、役割はルーク。特性は馬鹿げた力と圧倒的な防御力。」
戦車の駒で転生した者はパワータイプのタンクか。小柄な小猫嬢があれほどの怪力を見せるとは……あ、今バイサーを投げ飛ばした。
「最後は朱乃ね。」
「あらあら、どうしようかしら。」
いい顔で、倒れているバイサーに歩み寄る姫島先輩。なんかちょっと気が合いそうだ。
「朱乃の役割はポーン、ナイト、ルーク、ビショップ全ての能力を併せ持つクイーンよ。」
随分なチートだな。あらゆる能力に補正がかかるってことだろ?
「ギャァァァァァァァァァァァ!」
雷が落ちてきた。最初は1個や2個だったのがどんどん増えていき、最終的には数えるのも馬鹿らしいほど落ちてきた。しかもひどいのはそれだけの雷を落としているのにも関わらず、バイサーにトドメを刺していないということだ。つまり、長く苦しみを与えるということ。いい感じのバイサーの悲鳴を聞いて、俺もなんかゾクゾクしてきたぜ。
「彼女は究極のSよ。」
やっぱりね。俺はノーマルなつもりだが、人からはサディストと呼ばれる。まったくもって不本意だが、ここで彼女に共感してしまった以上認めるしかないや。
「最後言い残すことはあるかしら?」
雷の洗礼が終わったところで部長がバイサーに尋ねる。
「ふざ……けるな!貴様のような小娘なんぞに!」
バイサーがその言葉を言い終わった瞬間、バイサーの体を赤い光が包み込んだ。これは間違いなくマリスの光。光が収まると、中から出てきたのは異形の怪物だった。女の上半身は逆さまになり、四本の足はその先端から更に四本に別れ、蛇のような尻尾は腐敗の進んだ死骸のようになっていた。
「おお、力が漲ってくる!」
精神もマリスに飲まれている、あれではもう正気に戻ることはないな。予想外の事態に全員固まっているようだし、どうやらここからは俺の出番のようだ。
「部長、ここからは俺がやります。」
「え、ええ。任せるわイッセー。」
部長の許可をもらった瞬間、俺はバイサーが変化した怪物に向かって一気に飛びかかった。
「ふん!」
全身のバネを使ってバイサーの腹の部分、体の重心のある位置を思いっきりぶん殴る。今殴ってみてわかったが、コイツはかなり重い。おそらく相当な人間を喰らってきたんだろう。少しはダイエットしやがれ。
「オラ!」
壁にぶつかって動かなくなった怪物に、グーパン2発→掌底→グーパンのラッシュ→踵落としを決める。
「ガッ……グァァァァァァァァ!」
アモンにフュージョンし、トドメを刺すための魔力を溜める。
『
破壊神の一撃を受け、はぐれ悪魔バイサーはこの世から完全に消滅した。