有城くん奮闘記(リメイク版)   作:icy tail

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第10話

4人での帰り道。

みみみが場を繋ぐために、なにも聞かれないようになんでもない話を並べている。

そんなとき、たまが真正面から切り込んだ。

 

「みんみ。それよりも、聞きたいことがあるんだけど」

 

「…なに?」

 

「葵のこと、嫌いになったの?」

 

「え…」

 

夏林らしいなぁ。

みみみは本当は聞いてほしくないんだろうけど、それじゃあ意味がない。

そうして話を聞いていると…

 

「葵はキラキラしてるし、特別、だし…」

 

特別か…

だめだな。

俺は黙っていようと思ったが…ただ聞いていることはできない。

 

「ちょっといいか?」

 

「…なにかな?有城」

 

「俺はみみみがなにを思って陸上部を辞める決心をしたのかも分からないし、どれだけ努力してきたのかも分からない。日南に勝てないのなら勝てないんだろう。現実なんてそんなもんだ。でもな、お前を見てるやつはいるぞ。少なくともここに3人」

 

「な、なにを…」

 

「だから分けろ。悔しい?妬ましい?いいじゃねぇか。辛い?苦しい?いいじゃねぇか。人間なんて元々そんなもんだ。そんなちっぽけな荷物くらい俺らが一緒に持ってやる」

 

「…っ!」

 

「諦めるのは簡単だ。手放すのも簡単だ。壊すのだって簡単だ。けど、忘れるな。逆はもっと難しいぞ。それこそ1人じゃどうにもできないほどに。だから俺達を頼ってくれ。1人でかかえるな。お前を心配してる人のことも見てくれ」

 

今のみみみがどうしようもなく、ただただ足掻いていた昔の俺と重なってしまった。

いや、俺よりもずっと辛いだろうな。

俺は誰かと比べられる程に強くなかった。

ただ皆の背中をがむしゃらに追いかけているだけで良かったからな。

俺がみみみのために言葉を放った後、少しの沈黙がありみみみが口を開く。

 

「…嫌いになんてなれるわけない」

 

みみみは涙を流しながら、悲しそうな顔で言葉を吐き出していく。

 

「葵は!…葵はすごくいい子で、友達思いで、いっつもがんばっててさ。でもそれを鼻にかけなくて、いっつも私のことを気にかけてくれてて。私の気持ちも、ちゃんと全部、わかってくれてて。だから私さ、葵のことが、大好きなの」

 

俺達に本心をぶつけてくれている。

自分よりもすごいと思ってしまう相手が友達にいるっていうのは確かに辛いことだ。嫉妬だってするだろう。醜い感情が出てくることだってあるだろう。

だけど、俺はみみみに諦めてほしくないと思った。

それは別に理由があってのことではないが、そういった関係が羨ましく思ってしまったのかも知れない。

みみみ自身は辛く苦しいのだろう。でも、競い会える仲間がいるのは素晴らしいことだ。

だから繋ぎ止めてほしいものだ。

だから…あとは頼んだぞ夏林。

 

「…みんみは」

 

「え?」

 

「みんみは、どうしても、1番になりたいの?」

 

「だ、だって私…なんにもない…」

 

「なんにもない?」

 

「葵みたいにキラキラしてないし、友崎みたいに誰にも負けない特技とかもないし、有城みたいな強い心も持ってないし、たまみたいに自分持ってないし…私、がんばらないと、空っぽ…」

 

みみみが1番大きく感じてしまっているのは、多分だが、日南の光が強すぎて自分の影がどんどん濃くなってしまうような無力感なんだろう。

自分も同じように頑張っているのに、努力をしているのに背中はどんどん遠くなっていく。

そう感じていることだろう。

だが…夏林はそれでもみみみを諦めない。

 

「…みんみはね。みんみは、私のヒーローなんだよ?」

 

「…え?」

 

「いっつも大丈夫って言って、笑って、無理して、がんばって。でもそれを表にださないで…私を助けてくれる。私はね、葵のことも、みんなのことも好きだけど、…私のヒーローなのは、みんみだけなんだよ?」

 

「…でもさ」

 

「もしそれでも!1番になりたいっていうんだったら!」

 

どうしようもなく弱々しく呟くみみみに、夏林はいつものように…いや、いつも以上に力強く言った。

 

 

 

『私の中で、みんみは世界一のバカ!それで我慢する!』

 

 

 

夏林の温かさはみみみにちゃんと届いたようだ。

強いな夏林は。本当に。

本当に…なんて、綺麗な関係だろうか。

俺の冷めた心に沁みていくのが分かる。

まぶしいなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、いつも通り…と言うかいつもより元気になったみみみを伴い4人で帰路に着く。

一件落着だな。

俺は前で文也にだる絡みをしているみみみを夏林と少し後ろから追いかけている状態だ。

 

「夏林おつかれさん」

 

「うん!ありがとう!有城のおかげ!」

 

嬉しそうに言ってくる夏林がなんか愛らしくて乱暴に頭を撫でる。なんか、懐いた猫みたいだな。

 

「おーぅ。感謝しろよぉ」

 

「ちょっ!有城やめる!」

 

顔を赤くしながら距離をとる夏林。

おぉ、今度は威嚇してらぁ。

そして、足早にみみみ達の方へ向かった夏林に声をかける。

 

「たまぁー!」

 

「っ!な、なに?」

 

「こちらこそありがとな」

 

それは何にたいしてなのか、自分でも分からない。

でも、なぜか伝えたかったんだ。

そしてたまはまた眩しいくらいの笑顔で言った、

 

「どういたしまして有城!」

 

その笑顔をみて、また俺の心に熱が灯った気かした。

不思議な感覚だなぁ。

でもきっと、とても大切なモノだ。

 

 

 




友崎の出番なかったな!笑


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