有城くん奮闘記(リメイク版)   作:icy tail

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第23話

試合が終わった翌日の昼頃。

今日は、試合の後と言うことで久々にオフだ。

 

「どうすっかねぇ。せっかくだしなぁ…」

 

考えながらとりあえずテレビをつける。

適当にチャンネルを回していると、バラエティ情報番組でスイーツが取り上げられていた。

 

「おぉ!決まりだな!」

 

甘いものは元々好きだったからな。

忙しくて店を探してる暇もなかったし、行くかね。

取り敢えず携帯で近くに店があるかを調べる。

 

「あるじゃんか。しかも評価高いなぁ…ここにすっか」

 

行く店を決めると、俺は着替えてすぐに家を出た。

こりゃ久々に楽しみだなぁ。

 

 

 

 

 

side 夏林花火

 

 

 

私の家は洋菓子屋だ。

夏休みに入って、何も用事がないときは基本的に店を手伝っている。

今日も用事はないから手伝うつもりだ。

 

「あら、花火!今日も手伝ってくれるの?」

 

「うん。用事ないし」

 

「ありがとう!でも遊びに行ってもいいのよ?」

 

「ううん。大丈夫」

 

「そうなの?でもそろそろ花火も彼氏の1人でも作ればいいのに!」

 

「な、なんで?か、彼氏なんて…!」

 

「あらあら?もしかして…」

 

「き、着替えてくる!」

 

お母さんのからかうような視線に耐えられなくなった私は着替えると言って部屋に駆け込んだ。

な、なんで?

あいつの事が浮かんだの?

まあたしかにいいやつだけど!

たしかに優しくて、ちゃんと回りをみてて、かっこよくて…

ってそうじゃなくて!

でも、あの時からの私は変だ。

みんみを助けたかった、だけど私1人じゃなにもできなくって。

正直、私も辛かった。

大好きな親友が辛いときに何もできなかったことが。

だけど、あいつは一緒に助けようとしてくれて。

それでみんみを助けることができた。

多分、あいつは私が抱えていたことも見抜いていたんだと思う。

それで、頭を撫でられて…///

も、もう考えるのはやめよう!

私は頭を振って深呼吸をする。

とりあえずあいつのことは置いておこう、有城のことは。

 

 

 

 

 

sideout

 

 

 

 

 

俺は今、隣の駅に向かって歩いている。

店は家から最寄りと、1つ隣の駅との丁度真ん中らへんにあるようだ。

しばらく歩いていると、それらしき店が見えてきた。

 

「えーっと…あった!ここが『ル・プティ・ボワ』かぁ」

 

店の外見は、一目で洋菓子屋と分かるような見た目だった。

俺はガラス戸を開けて中に入る

すると、バターと小麦の香ばしい香りが漂ってくる。

 

「いらっしゃいませー!」

 

入店に気づいた、愛想のいい女性の店員さんが良く通る声で迎えてくれた。

うん。ポイント高いなぁ。

俺がショーケースに目を移しケーキを見ていると奥の方で声が聞こえた。

 

「花火ー!お客様きたわよー!」

 

「今行くー」

 

ん?花火?

いや…さすがになぁ。

 

「いらっしゃいませー!」

 

…うーん。

聞き覚えがあるんだよなぁ。

そう思って顔をあげると…

 

「あ、有城!?な、なんで!?」

 

「よぉ、たま。バイトか?」

 

「いや、家の手伝い…じゃなくてっ!なんでここにいるの!?」

 

「なんでって言われてもなぁ…テレビでスイーツ特集見てたらケーキが食いたくなってよぉ。調べたら家の近くに評価高い店があったから来てみたんだよ。そしたら…たまがいた」

 

「なに、その偶然…」

 

たまと2人でそんな話をしていると、先程の店員さんがやってくる。

 

「あら?花火のお友達かしら?同い年位だとは思ってたけど」

 

うん?家の手伝いってことは…たまの母親かぁ。

ちゃんと挨拶しないとな。

 

「はじめまして。花火さんのクラスメイトの有城楓です。花火さんとは仲良くさせてもらっています」

 

一通り礼儀はならったからな。

俺はそういって頭を下げる。

 

「あらあら!ご丁寧にどうも!今時珍しいほどしっかりした子じゃない!あっ!もしかして花火の彼氏だったり?」

 

「…///」

 

「あら?花火どうしたの?」

 

「…えっ?///ち、違う!彼氏じゃない!」

 

「あらあら?これはこれは」

 

くく、パワフルな人だなぁ。

とりあえず一段落して、ケーキを選んでいる。

 

「楓くーん!ケーキ決まったら声かけてね!」

 

「はい。分かりました」

 

うーん。悩むなぁ。

こうゆうときはやっぱり…

 

「たまぁ!ちょっといいか?」

 

「なに?」

 

「おすすめ教えてほしいんだけどよぉ」

 

「あ、うん!えっとね!」

 

俺がおすすめを聞くと、たまは楽しそうな顔で話し始めた。

やっぱり好きなんだろうなぁ。

そう考えながらたまの横顔を眺めている。

 

「…しろ!有城!」

 

「ん?どれだぁ?」

 

「これとー、これ!」

 

「おーぅ。ありがとなぁ」

 

そう言って反射的にたまの頭に手を伸ばし、優しく撫でた。

なんか、丁度良いところに頭があるし、猫みたいだから手が勝手に動くんだよなぁ。

 

「ちょっ!///有城やめる!///」

 

「はは、わりぃ。無意識だったぁ」

 

そんなやり取りをしていると、裏に行っていたたまのお母さんが出てきた。

 

「あら!仲良いじゃない!それで楓くん決まったの?」

 

「あ、はい。これと、これを1つずつ」

 

「はい!わかったわ!それじゃ花火、楓くんをお部屋に案内してあげて!楓くんは時間大丈夫?」

 

「へ?」

 

「はい。大丈夫です」

 

「なら良かったわ!ほら花火!早く案内して!」

 

「いや、ちょっと!お母さん!なに言って…」

 

「もう!遅いわね!楓くんこっちよー!」

 

「はい。お邪魔します。おい、たまぁ!先行ってるぞぉ」

 

せっかくお呼ばれしたから遠慮すんのは悪いだろう。

たまは少しの間放心していたが、慌てて俺達を追ってきた。

 

「ちょっ、もう!ってかなんで有城はそんなに従順なの!?」

 

こんなことがありながらも、たまの部屋でケーキを食べた。

初めは緊張?していたたまだけどだんだんいつも通りに戻っていて、なんだかんだ色々話をした。

たまの母親が茶々を入れてくるたびに顔を赤くして怒っていたのはご愛嬌だ。

そうして…

 

「それじゃ、そろそろ帰るわぁ」

 

「え…?うん…」

 

そんな寂しそうな顔すんなよなぁ。

そうして俺はたまの頭を優しく撫でる。

 

「ちょっ、ちょっと!///」

 

「たま」

 

少し抵抗していたたまだが、俺が真剣な声で呼ぶとおとなしくなる。

 

「な、なに?」

 

「お前はいつも笑っててくれなぁ。元気でるからよぉ」

 

「っ!///」

 

たまは俯いてしまった。

ありゃ、大きなお世話だったかぁ?

そう思っていると、たまが顔をあげた。

あぁ…そんなことなかったなぁ。

そして、たまは笑顔で言った。

 

「うん!ありがとう!!」

 

本当に、眩しいなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は移って店の前。

 

「それでは、お母さんごちそうさまでした。すごくおいしかったです。また、来ます」

 

「ありがとね!それに、『お義母さん』なんて気が早いわねえ楓くん!」

 

「ちょっ!お母さん!」

 

「冗談よ!」

 

「ははっ。それじゃ帰るなぁ、たま」

 

「うん!また来て!」

 

そうして2人に見送られ帰路に着き、少し歩いたところでたまに声をかけられた。

 

「か、楓!」

 

「ん?」

 

「バイバイ!楽しかった!」

 

「おー!こちらこそだぁ!じゃーな、花火ぃ!」

 

やっぱり、たまの笑顔は綺麗で好きだぁ。

 

 

 

 

 

 

 

side 夏林花火

 

 

 

「行っちゃった…」

 

楓が帰っていった方を見つめているとお母さんが後ろから話しかけてきた。

 

「楓くん、いいこじゃない!礼儀正しいし、顔もかっこいいし!なにより、守ってくれそうよね!」

 

「だから!そんなんじゃ…」

 

「好きなんでしょ?」

 

「っ!///へ、部屋戻る!」

 

もう、お母さんは!

でも…この気持ちが大事なものだっていうのは分かる。

だから確かめよう。

私らしく。

 

 




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