俺は今教室を連れ出されて近くの空き教室に連れてこられていた。
「わりぃ。もう大丈夫だから離してくれ」
「あ、ああ。それにしてもどうしたんだ?楓らしくもない」
「まぁ色々あるけどよぉ。自分のことを棚にあげて相手を見下すような言い方が嫌いなだけだぁ。ましてやその矛先が大切なやつだとなおさらなぁ」
「まぁ…そうだな」
「楓は間違ってねえよ」
「だな」
「そうっしょ!」
「ありがとな」
俺は自分の行動を間違ってるとも思わないし、理解してほしい訳でもない。
だけど、やっぱり親しい奴らに理解きてもらえるのは理屈じゃなく嬉しいもんだなぁ。
しばらく話していると葵もやって来た。
「葵ぃ。悪かったな。抑えられなかった」
「ううん。気持ちは分かるし!」
「そうかぁ。後始末もしてくれたんだろぉ?ありがとな」
「大丈夫だよ!…楓は…さ、私でもああやって本気で怒って、助けてくれる…?」
「あぁ?何言ってんだぁ?そんなん当たり前だろ。ぜってぇ助けるさぁ」
「そっ…かあ。期待しちゃうからね?」
「おーよ。まぁお前がそうゆう状況になるのは想像できないできないけどなぁ。ま、そろそろ教室戻ろうぜぇ」
そんな話をして教室に戻った。
教室の雰囲気は最悪で、俺が戻るとさらに空気が重たくなる。
だが、俺は気にせずに普通に入っていく。
そうすると花火が駆け寄ってきた。
「楓!」
「よぉ。花火」
「私のために怒ってくれたんだよね」
「礼はいらねぇぞ」
「いや、それでも…ありがと!」
「ははっ。律儀だなぁ」
「うん!私、頑張るから!見ててね!」
「あぁ。見てる」
無理だけはするなよなぁ。
そうして花火はみみみのところに戻っていった。
「たまおかえりー!ねえ見て!これこないだ買ったの、かわいくない?たまもいる?」
「えー?これはあんまりかわいくない。これじゃあまた友崎にかわいくないって言われるよ?」
「ひど!じーっと見てるとじわじわくるんだって!」
「えーほんとに?」
「ほんとほんと!」
よし。いつも通りちゃんと話せてるなぁ。
これ以上悪い方向に行くことはないだろぉ。
それから何日かがたったが相変わらず紺野の嫌がらせは続いていた。
しかし、空気はもうすでに紺野の味方ではない。
紺野が操っていた空気は俺が無いことにした。
もうそろそろ終わるだろうなぁ。
俺はあとは支えてやるだけだ。
・
そして放課後。
忘れ物をしたのを思いだし教室に戻ると…
花火と文也が話をしていた。
side 夏林花火
私は今、友崎と話をしている。
「紺野から攻撃されたりして、つらくないのかな、って」
「えっとね、つらいよ。けどね」
「…けど?」
「私はね、大丈夫なの」
「それは…自分の中で確信があるから?」
私が伝えるべきことを。
うん。自分は間違ってないって、楓が教えてくれたから…私は平気」
「…そっか」
私の、本心で。
「間違ってるのはあっちだし、正しいのはこっち。だからなにされたって、絶対に負けない。自分が信じてる自分のやり方を折るほうが、私はいやだ」
「…うん」
ちゃんと伝える。
「自分が自分のままいられるなら、私はなんでも、我慢できる…だから、私は平気」
「うん。…じゃあ、なんでもない。…それじゃあ、応援してる」
「けどね、友崎」
でも、私だけじゃだめなんだ。
「ん?」
「楓が、私のために怒ってくれてるんだ」
楓が、私のためにあんなに感情をあらわにして怒ってくれた。
「みんみが、悲しんでるんだ」
いつも元気なみんみがたまに見せる悲しい顔を見てしまった。
「だから私ね。自分を、変えたいの」
そんなの到底耐えられるようなことじゃない。
「いま話しても思ったけど、やっぱり私って、友崎と似てると思うんだ。思ったことばっかり言って、演じるのが得意じゃなくて。けど…友崎って、最近、すごく変わったと思う。うまく空気読んだり、笑ったり、みんなと馴染んだり。私と似てるのに、本当は得意じゃないことに挑戦して、ちゃんと変わってる。そうゆうことってできるんだ、って思った」
だから私は、私のために。
私の大切な人達のために…
「だからね。そのやり方を…戦い方を、私にも教えて」
自分を変えるのだ。
sideout
花火の静かだが、決意のこもった言葉が俺の心に沁みていく。
その時、曖昧に俺の中で漂っていた感情の答えを知った。
「戦い方を、私にも教えて」
あぁ、本当に花火は真っ直ぐで、眩しくて、強くて。
どうしようもないくらいに好きだと思わされてしまう。
やっぱりそうだよなぁ。
この心が温かくなる感覚。
これが『恋』かぁ。
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